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ライアンエアは貧乏人を満載して今日も飛ぶのだ [たびの空]

LCCの二大巨頭と言えば、ビジネスモデルを作り上げたアメリカ合衆国のサウスウエスト航空と、ヨーロッパの勇たるライアンエアであります。最近はエアアジアとかジェットスターだとか、はたまた春秋航空とか、アジア・オーストラリア圏にも近未来の音楽業界のNAXOSみたいなことになりそうな会社は出てきているけど、やっぱりこのふたつが現時点での世界LCC界の両横綱なんでしょうねぇ。

てなわけで、ライアンエアの本拠地ロンドンの茨城空港と呼ばれる(誰が?)スタンステッド空港から、ここザルツブルクの山の裏にあるちっちゃな空港まで、ひょいっと飛んでやってきました。「たびの空」カテゴリーとすれば、やっぱりライアンエアさんに敬意を表しないわけにはいかぬ。眠いし、ヴィーンフィルのでっかいけどどっかだらしない音で疲れたんで、ささっと記します。写真中心。

週に何便あるかしらないが、LCCのスケジュールは「飛ぶ日もあるし、飛ばない日もあるし、時間もいろいろ」というのが基本。で、この辺りでロンドン地区からザルツブルクに行くのなら、朝6時20分スタンステッド空港発のライアンエアがある。お体ひとつなら25ポンド、20㎏までの手荷物は30ポンド、他はいろいろ細かく決まってます、ってまともとは思えぬお値段。これに乗らなければ、シュトックハウゼンからツィンマーマンまで、LHやエアベルリンを乗り継ぐか、ちゃんと買ったらお値段500ユーロくらい平気でかかってしまうぞ。陸路だってユーロスター以下、安くはないし。

てなわけで、当然、貧乏人はこの便に乗るのであります。そのためには、前の晩にロンドン市内から北東に50キロくらい、田園地帯の中に広がるスタンステッド空港近くの宿に泊まらねばなりません。それでもまだ安いしさ。

で、空港ホテル、朝の4時15分発の2ポンド也のシャトルバス初便は、航空会社クルーも乗れないくらいの満杯状態です。
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真っ暗な中をぶっ飛ばし、昼間のように明るい空港ターミナルに4時半前には到着。おお、人がいっぱいじゃ。空港というよりも、深夜過ぎの長距離バスターミナルみたいな感じ。6時を過ぎると次々と出発便があるライアンエアのカウンターはもの凄い人だかりだけど、おねえさんもいっぱい出てるし、乗る方も慣れてるみたいで、荷物の課金を怒る奴もいなければ、無茶をいう輩もおらぬ。ガンガンと処理されてきますので、思った程時間はかかりませんでした。気分としては、アッという間だった。
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なんせこの会社、ネット利用が前提で、チケットはネットでしか買えなくて、カウンターに来る前には必ず自分でチケットをプリントアウトしてこないとダメ、ってんだからさ。この開き直りっぷりは見上げたもんです。デジタル弱者はBAでもLHでも乗りなさい!

セキュリティチェックも朝の5時前とは思えぬ人海戦術と、乗客の方の「安いんだからいろいろ仕方ない」という気持ちを前提にした全面協力態勢のお陰で、そこそこさっさと通り抜けられます。空港はとっても広いロビー空間だけど、朝もはよからスターバックスも売店もガンガンに売ってて、人が列を成しているし、席は足りないくらいに満杯。なんかオリンピックっぽいぞ。
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パラリンピックは選手団が到着しているところだし。回転寿司チェーンのヨースシさんだけはまだ開店準備中だった。他はみんな開いていて、昼間のようです。

さあ、5時35分になって、ザルツブルク行きのゲートが出ました。わああ、遠くだぁ。慌てて歩く。どんどん歩く。で、ゲート前、LCCお馴染みの、席取り行列です。「優先搭乗権を買った方はこちら、そうじゃない方はそちらに並んで下さい」です。
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これ、日本のLCCはやってないですよねぇ。どうしてやらぬのかしら。まるでボーディングブリッジがありそうな立派な2階建てターミナルなんだけど、なんのことはない、ここでチケットを見せてチェックされると、階段を下ります。かなりキツイです。
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デカイ荷物など持っては下りられません。弱者の方のためのエレベーターなんて金がかかるものはありません。そういう方はAFとかKLMとかに乗って下さい!

で、夜も明ける空を背景に待ってる搭乗機へとゾロゾロ歩き、タラップへ。LCCは出来るだけ新しい機材を使って故障を減らし、定時制を確保するのが常識なんで、ライアンエアは737の最新型ばかり。
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シートはこんなもの。無論、全部自由席。
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思ったより余程ちゃんとしてました。セキュリティ案内は目の前に貼ってある。機内にも「バスチケットは機内で買うとお得」って宣伝が隅から隅まで貼ってある。

さても、定刻の6時20分に離陸。丘の上にギリギリの長さの滑走路しかないルートン空港と違い、ここは国際線や戦略爆撃機だって離着陸できる長さの滑走路が2本平行にある立派な空港なのに、他の航空会社は殆どいないので、全くライアンエアさんの好き勝手に滑走路を使えてます。
離陸し、ロンドンを眺め、ドーバー上空で巡航高度に向かっている辺りで、あれええ、なんでまたブリテン島の方に旋回してるんじゃい。べったり平らなイングランドから海上に抜けるだけなんだから、ミラノのマルペンサ空港みたいにアルプス方向に向かうには離陸直後にグルグル旋回して高度を取らねばならない、なんて特殊な場所じゃないでしょーに。ったら、「機内空調が暖房にしかなりませんので、引き返してチェックします」と機長さんのアナウンス。そういえば、さっきから頭の上から暖気急降下で、みんな慌てて空調を切ってたもんなぁ。意外にも安全性にはうるさいのか、それともアライアンス系大手とは違ってザルツでなんて田舎空港で修理になったらスタッフ手配が出来ないからか、1時間のロンドン南部地区遊覧飛行を終えてスタンステッドに着陸。ターミナルの端っこで延々と修理します。しばらくすると、「直るか、機材替えになるか、判るまで30,40分かかります」と機長の連絡。乗客は、別に自分の用事や都合ではなく、ライアンエアさんの側の都合でこんな朝っぱらの便に乗ってるだけだから、2時間や3時間遅れようが困らない。定時に着かなければならぬビジネスマンの方は、SASやスイスインターナショナルに乗って下さい!

前後の扉を開け、外の空気を入れながら修理作業の進行を待ってます。みんな、しょーがないなぁ、って感じで、全然ピリピリしてません。
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ぼーっと外を眺めてると、このツアーで始めて姿を見るBAが下りてくる。おおおお、なんとなんと、最新鋭の8ジャンボカーゴじゃないかぁ!
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そうこうするうちに、「直りましたので機材変更なしで行きます」と機長さん。かくて2時間40分遅れで仕切り直し。同じ方向に向けて離陸し、ロンドン市街を遙か右手に眺め
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ドーバー海峡を越えてベネルクスやフランス上空を横切り、ラインを跨ぎ
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シュトゥットガルト上空辺りから、遙か南にアルプスが見えてくる。音楽祭やってるブレゲンツも、世界でいちばんチケットが髙い室内楽音楽祭シューベルティアーデをやってるフォアアールベルク山中のシュワルツェンベルクも見えてる筈。
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待たされたお陰で、腹を空かせた客らがサンドイッチをジャンジャン買う。飯を売り終わったら「2ポンドで、その場スクラッチで当たりが判るロッタリーはいかが。今なら10ポンドで6枚です。ロッタリーで皆さんの運命を変え、子供たちを救いましょう」なんてアナウンス。いやはや、大変だなぁ、ライアンエアの乗務員さん。

かくて、昼前にザルツブルクに到着。このちっちゃなノンビリした空港にはDC-3がよく似合う。こいつ、現役なのかしら。
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市内に向かう路線バスからは、いつものように世界中の観光客でごった返すモーツァルトの生家が。
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てなわけでライアンエアのたびの空、日本語文化圏では突拍子もない話しか聞かないので、旅の選択肢とするにはちょっとオソロシー感もある悪名高き航空会社けど、これだけのハプニングがありながらも、それはそれでなんとも手慣れた風にテキパキやってました。
降り際にちゃらっと「本日は多少の遅れで申し訳ありませんでした」ってアナウンスあり。2時間ちょっとくらいの遅れはは、この航空会社さんとすれば「多少の遅れ」なんだろーね。

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コメント 2

上野のおぢさん

先生、いつもながら楽しみながら拝読させていただいております。そのライアンエアとやら、サンドイッチ売上増加のために、わざと空港に引き返したとは考えられませんか?話がうますぎます・・・(爆)
by 上野のおぢさん (2012-08-29 08:05) 

Yakupen

いやあ、機材繰りを考えれば、そこまで悪辣なことはさすがにせんでしょう。それに、ここで使った1時間分の燃料代はサンドイッチ売り上げでは取り返せないでしょうしね。ちなみに、ライアンエアはちょっと前に日本ではこんなオソロシーことが報道されてましたから。それを考えると、機長は良く決断した、って思えてきますね。
http://www.asahi.com/business/news/xinhuajapan/AUT201208200100.html

by Yakupen (2012-08-29 15:26) 

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