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日生劇場開幕半世紀記念東京東部独逸歌劇祭開幕! [音楽業界]

北とぴあで「フィガロの結婚」を聴いて参りました。王子、日比谷、三ノ輪と何故か東京の東地区で「フィガロ」、「フィデリオ」、「トリスタン」の三連発。いったい何が起きちゃったんだ、これは今月初めからの溜池某所でのパリ管、ヴィーンフィル、コンセルトヘボウ、ベルリンフィルの四連発よりも、実はもっとトンでもない事態ではなかんべーか。何も知らない後世の日本演奏史研究者がこのデータだけを知れば、「これは半世紀前に日本国で最も大きな保険会社が鹿鳴館隣に私立のオペラハウスを設置し、当時欧州に存在した西独逸という国の、当時存在した西伯林という街に国威発揚の為に新設されたばかりの歌劇団を招聘し、日本国に独逸歌劇の本質を伝えたことを記念してのフェスティバルに違いない」と全く筋の通った誤解をすること必至でありましょうぞ。

てなわけで、これはやっぱり追体験せねばならぬ。で、今日はまず、「フィガロ」です。この三連発、どれも極めて特徴が明快な上演で、本日は秋の今頃にもう10数年も北区が行っている「北とぴあ音楽祭」のメインイベント。
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この類いの業界ではお馴染みの顔ばかりが並んだ古楽オケで、指揮が寺神戸さんですから、まあどのようなものかは想像がお付きになるでしょうし、全くその通り。冒頭の序曲で、いきなり弦と管が死んでも混じってやるもんか、って勢いのもの凄いアクセントのフォルテがジャンジャン鳴った瞬間に、ああこれは俺は駄目だ、と感じる方もいておかしくないでありましょう。

とはいうものの、それほど圧倒的に「古楽」を強調していたわけでもなく、ある意味自然体。ただ、古楽系オペラでいつも気になるオケと歌手のヴィブラートの違いの問題は、やっぱり今日のように古楽系に慣れた歌手さんを並べても気になると言えば気になるんですよねぇ。最初の伯爵夫人の歌い出しなんて、ちょっとギクっとしたほどでした。でも、これだけ曲が長いと慣れちゃうもんだなぁ、って己のいい加減さに呆れたりして。

日曜日にもう一度予定されているこの半演奏会形式上演(サントリーで数年前にデ・ニース様が跳んだり跳ねたりしてたコンサートオペラ形式よりは全然演奏会形式寄りで、何年か前にシンガポールのエスプラネードでオーストリア共和国文化交流としての派遣で上演された小澤指揮ヴィーン国立歌劇場によるこの曲の演奏会形式上演にいちばん似てた)、こんなん。
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眺める価値があるかと真っ正面から尋ねられれば、一番安いチケットでも問題ないから興味のある方は行っても損はないんじゃないの、ってお応えしましょう。

というのも、第4幕で普通の上演ではカットされるマルツェリーナとバジリオのアリアがちゃんと演奏されるのですわ。これ、いろんな意味で興味深いです。この曲って、ぶっちゃけ、今時の公演では前半として演奏される1,2幕は話がドンドン流れるのだけど、後半の3,4幕になると話がグチャグチャしてきて見えにくくなる、って傾向にありますわな。ところが、この普通はカットされるアリアを入れて4幕を演奏すると、「なーるほど、4幕って、よーするに前半はアリア大会になってるのね」ということがよーく判ります。ただ、敢えて言いますが、200年以上上演を繰り返されている曲でカットされるにはやっぱり理由はあるなぁ、と感じされられるですよ。特にマルツェリーナのアリアは、実はモーツアルトの曲じゃなくてヴァンハルが書いたんだよ、って言われても信じます。ええ。バジリオのアリアの方は、嵐の描写が中にあったりしてそれなりに面白いけど、やっぱりこれもサリエリが書いたんだぞ、って嘘を言われたら信じちゃうかもね。

それにつけても、久しぶりに真面目にガッツリこの曲を聴いたんだけど、いやぁ、モーツァルトはホントにとんでもない台本に曲を付けたなぁ、とあらためて感心します。モーツァルトに感心するバカがどこにいるかと言われても、だってそう思ったんだもん、としか言えぬ。嘘とホントがクルクル入れ替わる微妙な台本に、あの編成のオケと基本はドレミだけ(はっきり違うスペイン風の音楽は結婚行進曲の後のファンタンゴのみだもんねぇ)の音楽でこれを書き切ったんだから、いやぁ、凄いなぁ。偉いなぁ。

個人的にはモーツァルトのトップ3といえば、K.387終楽章と、K.488終楽章と、ドン・オッターヴィオのクラリネットのオブリガート付きアリアで、次点は「プラハ」の冒頭楽章かK.563全部、って信じてるんだけど…いやぁ、「フィガロ」はやっぱりスゴイ曲だ。うん。

こいつはアホか、みたいなこと書いてるなぁ。さあ、明日は午前中にひとつ原稿やって、午後は「フィデリオ」。夜には厄天庵で「どうでしょう」新DVD上映会が予定されてる。ユンケル飲んでがんばろー!

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タッチ

湯布院(由布院?)本の出版を首を長くして待っているF市のクァルテットファンです。K.387終楽章とK.488終楽章は大賛成です。K.563は四重奏ではない(ヴァイオリンが1挺足らない気がする)ことにもどかしさを感じていましたが、改めて聴き直してみます。
by タッチ (2013-12-02 20:45) 

Yakupen

タッチさま

ゆふいん本は、今、小生の手元に地元で赤が入った直し稿原案が投げ返されている状況で、今月後半に雑誌系年末進行が終わったら1週間くらいで手を入れ決定稿を作り、年内に原稿はオシマイ。あとはデータの未完成部分20年分くらいをやって、作文系は終わりになる予定です。付録のCDはもう去年の暮にマスターテープが出来ています。問題は、どこから出版するかがまだ制作委員会の委員長が決めかねていること。ってか、もう決めてる感じはあったのだけど、ローカル出版社ですので、そちらとのやりとりは小生は全然やってないので、流れが見えない、ってことです。お待たせしてスイマセン。でも、夏時点で実行委員長が「まあ、この原稿を半年寝かせて…」なんて仰ってたタイムラインはどうも冗談ではなかったみたい。
by Yakupen (2013-12-03 09:47) 

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