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優勝団体に遭いにいく・その1:第2回大阪国際室内楽コンクール第1部門ヘンシェルQ  [大阪国際室内楽コンクール]

[後期]いきなりですが、以下の作文、11月10日には「インディーズとしての「来日公演」」というタイトルでアップしましたが、12月12日の時点でタイトルを変更いたします。内容は変えてませんです。

※※※※

去る月曜日から、ミュンヘンのヘンシェルQが日本ツアーをしています。ことによると、「えっ、知らない」と仰る方もいらっしゃるんじゃないかしら。以下が日程。

Tue. 7 Nov: Airef Hall, Fukuoka
Wed. 8 Nov: Figaro Hall Tsu
Thu. 9 : Munetsugu Hall, Nagoya
Fri. 10 Salvia Hall, Yokohama
Sat. 11 Materclasses at Geidai, Tokyo
Sun. 12 private reception
Mon. 13 master class Quartet Q
Tue. 14 Toppann Hall, Tokyo, Kiko piece

本日はいよいよ、帝都首都圏での最メイジャー公演たるサルビアホールでありまする。いつもながらの午後7時開演ですので、お暇な方も、お暇じゃない方も、こぞっていらっしゃいませな。

この公演、ご存じないかも知れない方が多いかも、と敢えて記すのは、理由があります。ヘンシェルQは1992年10月のまだ学生だった頃、精進湖で開催された最初のアマデウス・コースの特別ゲストとしてやって来たときから今に至る四半世紀、このクラスの実績と実力のある団体(なんせ、天下のドイツグラモフォンにも録音がある団体ですからねぇ)すれば、極めて特殊な来日を繰り返している。今は他のジャンルに先駆けてすっかり「インディーズ」化した弦楽四重奏という業種の、ひとつの最先端のやり方とも言えなくもない「来日公演」を繰り返してる。今回も然り。

ええ、敢えてうろ覚えのままで彼らの招聘元をだああっと記せば…

90年代前半:クァルテット・フォーラム(澤先生主催)、神原音楽事務所(元アマデウスQのアンサンブルのメンバーとして)
90年代半ば:日本室内楽振興財団(大阪国際室内楽コンクール&フェスタ第2回優勝団体として)
0年代:アスペン(旧神原音楽事務所関係者の起ち上げた会社として。その後にアスペンの担当者が移った武蔵野紙文化財団が招聘したこともあったかも)、クァルテット・フォーラム、東京藝大
10年代:サントリーホール(チェンバー・ミュージック・ガーデンでのベートーヴェン全曲演奏会)、藝大

という感じ。日本公演を法的にきちんと行おうとすれば商業VISAが必要ですから、招聘団体がないとちゃんとした公演は無理(脱法ギリギリのゲリラ公演の方法はそれなりにあり、そういうやり方も結構、行われてはいますけど)。その招聘業務を担当をしているのが誰か、というのが上記の一覧でありまする。要は、「スメタナQならジャパンアーツ、アルバン・ベルクQなら梶本」みたいなやり方じゃない、ということ。

ご覧になって判るように、ある時期は神原からアスペンという日本のメイジャー系音楽事務所も関わっていた頃があるものの、基本的にヘンシェルQの来日公演は「彼らをホントに聴きたいと思うお友達や関係者が、実質的に個人的に呼んで、その人達が自分らで演奏会を作る」というやり方をしています。20世紀後半型の「著名メイジャーレーベルがレコードを出し世界中に名前を知らしめ、世界各国の主要音楽事務所がマネージャーになり、各国の国内ツアーを作る」というメイジャー系アーティストの売り方をしていない。ぶっちゃけ、澤先生なりが今度呼ぶらしいので、各地のヘンシェルQを聴きたい人がうちもやりましょうか、と集まって、演奏会を作ってるわけですわ。

一昨日の滋賀県は大津から京阪で数駅のところ、琵琶湖畔の住宅地にある老舗コンサートスペース「フィガロ・ホール」公演を終え、ホールオーナーにして主催者の歯医者さんご夫妻と記念撮影に収まるヘンシェルの面々。
047.JPG
この絵に描いたような典型的なコンサート・スペース、20年前だかのオープニングの頃にもヘンシェルQは来ているそうな。先頃の共著本では、極めて特徴的な小規模サロンが大津にあってそっちを取り上げため、余りに近く、ここは残念ながら取り上げられませんでした。スイマセン。

ま、なんであれ、このような形態の招聘なんで、当然、事前に全国ツアーのチラシが作られて演奏会場で撒かれることもないし、全国紙・全国誌で前パブ記事が出ることもない。あるとすれば、ローカル新聞の告知くらい。それに、主催する人がいない地域には、全く登場することがない。日本では、博多とか関西地区にはヘンシェルQの知り合い・お友達の小規模主催者さんがいるので公演があるけど、東京や北陸圏、北海道などは全く訪れたことがない、なんてことも起きている。

まあ、率直に言えば、室内楽の演奏会を定期的にやっている地方楽友協会が各地にしっかり存在し、音楽事務所がそこに売り込めば良い状況ではない日本では、このやり方の方が本来は最も堅実であることは確かでありましょう(数少ない地方鑑賞団体やローカル主催者にきっちり弦楽四重奏を売り込む、という仕事が上手く出来ている事務所は、日本では大阪のKさんくらいしか存在しません)。一昨日、滋賀公演の後に飯食いながら、チェロのマティアス曰く、「年間に…そうねぇ、最近も50回以上は弦楽四重奏の演奏会はあるよ。でも、弦楽四重奏は喰えないからなぁ」と、苦笑でもなく、これはこういうものなんだ、という顔で仰ってました。

メイジャーレーベルからCDが出て、大手音楽事務所が招聘し各地の市民会館やらに売り、「ぶらあぼ」や「音楽の友」に前パブ記事が掲載されて来日を待つ…そんなビジネスモデルは、少なくとも弦楽四重奏の世界ではすっかり崩壊してる。じゃあ、どうするのか?そんな問いに結果としてひとつの解答を示してきてしまったヘンシェルQ、音楽そのものもかつての打っても叩いても崩れないガチガチの硬派から、随分と自在になってきた(とはいえ、やっぱりヘンシェルはヘンシェルだけどさ)。

こういう在り方もある。是非とも、今晩のサルビア、お聴きあれ。ドイツ唯一のメイジャーオケのコンマスとの掛け持ちを6シーズンも続けていたダニエルが流石に無理で、ルーマニアのプチ熊ちゃんみたいな若者に交代した昨年来、マルクス時代のヘンシェルだったら考えられないような柔軟さ(寛容さ、自由さ…)も見せるようになりましたから。サントリーの鉄壁なサイクルから次に進んだベートーヴェン作品131を請うご期待。

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