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ファンクラブ…ではない集まり2題 [音楽業界]

どうもこのところ、商売なのかそうではないのかギリギリの話が多く、ネタが少なくなっていてスイマセン。なんで第一線引退、隠居初心者の身、お許しあれ。

さても、暦の上でもしっかり春が来て、春節のお休みタイムもそろそろ終わりの週末、ふたつの「ファンクラブ」というか、「ファンクラブを出発点に…」という団体の集まりを眺めることになりましたです。無論、所謂クラシック音楽の世界ですから、東京ドームにファンを集めて、なんて話ではありません。小さな集まりだけど、なるほどねぇ、とか、大変だなぁ、とか、いろいろ考えさせれることが多い今日この頃でありました。

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ひとつは、昨日の夕方に開催された「マエストロ・チョン・ミョンフン・ファミリークラブ」の懇親会であります。午後にマエストロが東京医科歯科大学付属病院にアウトリーチに行き、その後に都内某所で行われ、病院アウトリーチ取材の後、意志薄弱なやくぺん先生ったらスタッフの皆さんに誘われるままフラフラ、麦酒一杯くらい煽ってトンズラしよう、と顔を出した次第だったんですけど…

この集まり、言うまでもなく指揮者のチョン・ミョンフン氏の「ファンクラブ」なわけで、この日もメンバーの方がマエストロと食事会をして、お話をして、というものではありますがぁ…ただそれだけではないっ。なんと、この懇親会の前に開催された病院へのアウトリーチを運営しているのが、この会なのであります。

マエストロ・チョンの病院アウトリーチは、完全なボランティア活動です。聴衆には無料で行われるこういう活動、演奏家には支援財団や助成財団、ことによると公共機関などからきちんとそれなりのギャラが払われ、場合によっては活動スタッフにも実費やら足代やらくらいは提供されることもあります。ですが、殆どの場合はみんな持ち出し。このチョンさんの病院訪問もそう。

となると、チョンさんのマネージャーやらオーケストラやらは、むやみに人材を提供するわけに行きません(ブラック企業になっちゃいますからね)。無理に付き合ってくれることがあるとしても、あくまでも無理してやってくれてるだけ。ですが、アウトリーチ先との様々な打ち合わせやら、準備やら、当日の裏方やら、膨大な作業とスタッフが必要になる。無論、アウトリーチ先の医療機関などもそちらの予算やら人脈で人を出す訳ですが、演奏家側にも専門のスタッフが必要なのは言うまでもない。このチョンさんの「ファミリー・クラブ」は、そんな演奏家側の裏方部分の実務を行っている。それも、全くの手弁当で。見返りと言えば…そう、こうやってマエストロとお食事が出来る(会費制です)、そして、昨日最大のプレゼントは、アッと驚く、「マエストロのお宅の庭で栽培されたオリーブから手作りでつくられた完全オーガニックのオリーブオイル」でありましたっ!うぉー、これは欲しい人はどんな大金を積んでも欲しいぞおおおお!

マエストロが「日本の子どもの病院にアウトリーチしたい」と思っても、正直、誰にそれを言った良いのか判らない。数年前にファンクラブに向けてそういう事をマエストロが言ってみたときだって、ホントに実現出来るか判らなかったでしょう。ま、言ってみただけ、だったのかもしれない。だけど、どういう風にしてか、この人達はそんな無茶を実現してしまった。なんともはや、皮肉でもなんでもなく、単に「開いた口が塞がらない」であります。ホント。では、記念撮影。
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あくまでも商売もんには使えない、こんなんですよ、というファミリーな雰囲気をお伝えするだけなので、写ってない方はゴメンナサイ。あ、勿論、この全員がアウトリーチのスタッフ、というわけではありませんが、「ファミリークラブ」のメンバーとしてそういう活動を支えている支援者、ということ。

ファンクラブ事務局をボランティアのアウトリーチ活動の事務局にしてしまうなんて、口で言うのは簡単ですけど、考えただけで頭がクラクラしてしまうようなとんでもない難事業です。てか、ファンクラブの顔ぶれを眺めて、この人達ならそういうことを出来るかもしれないと考えられるマエストロは、やっぱり只者ではない、と驚嘆するばかり。これが「カリスマ」というものなのであるなぁ。

※※※

もうひとつ、本日これまた都内某所で開催されたのは、「NPO法人エク・プロジェクト」の年次総会でありました。こちらはもう、当電子壁新聞では今更説明も不要でありましょう。クァルテット・エクセルシオという団体が、オーケストラやオペラ団体と同じように法人格を有したNPOが運営する弦楽四重奏団として活動していこう、という無茶と言えば無茶な企てであります。

このNPO法人も、スタートは一種の「ファンクラブ」だったわけです。今世紀になる前くらいから、当時は「政府に頼らない社会の新しい在り方」のひとつの流れとしてNPO法人が注目され、そんな流れの中で演奏団体も非営利特定活動法人でやれないか、というこれまた無謀な試みであります。なんと今回が総会10回目、つまり、NPOになって10年というわけです。よくまあ、東京都からNPOを取り消されずに続けてこられたものだわい。

日本では、弦楽四重奏団は「弦楽四重奏をやりたい演奏家が4人集まってやる」もので、組織も何もない。「基本は手弁当、別の所で稼いで来て弦楽四重奏は持ち出し」が常識だった。現在でも、「常設」とは「年に数回の演奏会を特定の決まったメンバーでやる団体」という程度の意味でしかないのが実体で、一年の少なくとも3分の1くらいはこのメンバーで練習したりツアーしたり、はたまた自分らのマネージメント仕事をしたりする、という意味ではないのがホントのところでしょう。それを、なんとか弦楽四重奏で喰おうという見果てぬ夢に、いろいろ協力してくれる人を巻き込み、その母体に「ファンクラブ」的なものを準備した。NPOだから、年間予算や報告書を社員が審議する総会はやらなきゃいけないのだけど、それはそれで後の懇親会がお楽しみ、という部分があるのは母体を考えれば当然と言えば当然。

本日も、前任者から託されたような形で自然と新たなメンバーに加わったサントリー室内楽アカデミーのエク弟子でもある北見さんがプレお目見えで演奏し、皆から激励の言葉を受けている様子は、ま、有り体に言って「ファクラブ」の集まりでありました。
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それはそれでOK、なんだろうし、健全なことでありましょうぞ。

「ファンの集まり」を、演奏家が資本主義の理屈の中ではやれないことをやるためにどう使えるのか、ファンは自分らが大事にする音楽家の才能を広く世間に伝えるためにどんな手伝いが出来るのか。「ファンクラブ」ベースの非営利活動って、もっと本気で議論されていいネタでしょう。

…って、論じられれば参考にはなるけど、自分らでやるのはまた別の話、なんだろーなー。

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