SSブログ

アタッカもベートーヴェン・サイクル! [弦楽四重奏]

タイミングは逸してしまったのだけど、ま、当電子壁新聞を眺めて「おおし、じゃ、バッファローまで行くかぁ」とお考えになる方は最大でも2人くらいしかいないだろうから、ま、その辺りはお許しを。

2020年のベートーヴェン生誕200年祭、新暦も旧暦も年が明けいよいよ来年に迫ったこともあり、あちこちで噂としてはあったいろいろな動きが具体的な情報として上がるようになってきました。1月末から旧正月くらいまでというのは、9月がシーズン始めの文化圏では次シーズンの内容が発表され始めるとき、というのもあるのでしょうし。

そんな中、一足早くお祭りを始める連中も次々と出て来ております。上海Qは「結成35年」ということで昨年から大陸各地でベートーヴェン全曲演奏を行っており、過去に開催されたことのない都市でもベートーヴェンの弦楽四重奏全曲が鳴り響きつつある。近々では、4月の頭には彼らが頻繁に訪れているポーランドのクラカウでもサイクルの一部がまたあるみたいだし。
https://shanghaiquartet.com/performances/

そんな「これまでベートーヴェンの弦楽四重奏が響いたことがないところに届けよう」という意味での記念年もありなわけだが、それとは反対に、「ベートーヴェン弦楽四重奏の聖地で新世代が響かせよう」という試みもある。その典型例が、我らがアタッカQがアメリカ合衆国はニューヨーク州の北の隅っこ、ナイアガラの滝観光の拠点、バッファローで始めた全曲演奏会でありまする。
http://www.attaccaquartet.com/concerts-1/2019/2/15/university-at-buffalo
http://www.buffalo.edu/pss/news-home/gen_news.host.html/content/shared/university/news/ub-reporter-articles/stories/2019/02/attacca-beethoven-cycle.detail.html

去る週末に、まずは2つのコンサートで始まったサイクル、会場はBPOのモダンな本拠地の大ホールではないようだけど、この場所も伝統なのかしら。

おっと、話が前後してしまった。何故バッファローでのベートーヴェン弦楽四重奏演奏会が「伝統」なのか、という話でんな。

このバッファローという街、今でこそナイアガラの滝のアメリカ側観光の入口以外の何があるんじゃ、という感じでしょうけど、20世紀前半から半ばにかけては、アメリカ産業のひとつの中心地でした。なんせ雪は酷いけど、水運で大西洋につながり、なにより水力発電で電気が豊富。要は、20世紀半ば過ぎまでは、今のITで栄える都市みたいな景気の良いところだった。バッファローフィルも世界有数の「現代音楽」の担い手として知られ、今でも高橋悠治氏の録音がバッファローフィルとあったりするのでご存知の方はご存知でしょう。ホールもベルリンのBPOに先駆けてモダンなカッコ良い奴だしさ。

で、そんなバッファローは、ブダペストQのチェロ奏者、ミッシャ・シュナイダー氏がお住まいになり、隠居なさっていたのであります。で、ミッシャ氏の存在をコアとして、極めて水準の高い室内楽文化が広がっていた。ブダペストQはここで何度もベートーヴェン全曲演奏会を行い(ううん、探してもデータが出てこないなぁ、ホントにネット以前の情報というのは「存在しない歴史」になりつつある今日この頃)、音楽協会は盛んに弦楽四重奏演奏会を主催してきた。グァルネリQなんぞもここで弾いてるし、その系列の上海Qも、勿論、弾いている。

日本の室内楽文化でいえば、齋藤秀雄氏の片腕として子供のための音楽教室が設立されたときにヴァイオリン教育現場で手伝い、創設された日本フィルにはヴィオラ首席として参加、コンマスのブロダス・アール氏が帰国すると一緒に北米に移り、次々と北米にやってくる日本の若い奏者たち(サイトウキネン管創設メンバーの皆さん達でんな)を精神的に支えることになった河野俊達先生が現役奏者を引退なされる前までいらした街でもあります。なんせ、北米に移ることなければ、巌本真理Qのヴィオラ奏者は当然、俊達先生だったでしょうからねぇ。

もとい、つまり、この街には「栄光のブダペストQの聖地」という知る人ぞ知る伝統があるのですわ。

今回のアタッカのサイクル、第1回が作品127から始まります。これもまた、ブダペストQ以来の北米拠点の団体の伝統なんですね。まず、あの「エロイカの和音」が華々しく鳴り響くことで、サイクルのスタートが宣言される。どうしてなのか、という質問に、「作品127はいちばんやりにくい曲なんで、さっさと終えたいからさ」と応えてくれたのは、上海Qの誰かだったか、はたまたソイヤー翁だったか、記憶がはっきりしないなぁ。ゴメン。

マンハッタンではジュリアード系の異端児という感じの扱いの我らがアタッカQ、しっかりと北米弦楽四重奏演奏の伝統を踏まえ、聖地でのサイクルでベートーヴェン記念のシーズンをスタートさせる。これぞ王道!そして、中身が変化してしていくのは、それは必然!

さあ、行ける方はバッファローに行こー!次回は3月の半ばに予定されてます。まだ雪深そうだけど、飛行機代、安そうですよ。
http://www.attaccaquartet.com/concerts-1/2018/11/18/university-at-buffalo-concert-iii

nice!(3)  コメント(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 3

コメント 1

タッチ

やくぺん先生、ご無沙汰しています。失礼、まだお会いしたことがありません。Q州F市のタッチです。残念ながらバッファローには行けませんが、「グァルネリQの第1ヴァイオリンを務めるスタインハートなど、「ベートーヴェン全曲演奏をするときは、かならず変ホ長調から始めるようにしている。あの曲を終えないと、どうも落ち着かないんだ」と正直に漏らしていた。」(「クァルテットの名曲名演奏」p.98)との記載あり、以前から興味深く拝読させていただいておりました。
by タッチ (2019-02-20 09:06) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。