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浅間温泉の宿にて [たびの空]

おはようございます。松本郊外、浅間温泉の宿の朝です。

ええ、驚くなかれ還暦越えた爺さん初心者も、本日を以てまた一年を死なずに生き延び、危険思想で逮捕されることもなく、六本木で兵隊に不審尋問され銃撃されることもなく、乗ってた飛行機が落ちることもなく、深夜バスがバスジャックされることもなく、なんとか無事に日々を過ごしてくることが出来ました。これもすべて、愛するお嫁ちゃま、義母様、弟君、ふたつのブンチョウたち以下佃縦長屋の皆様、そして世間の皆々様の有り難いお目こぼし故でありまする。ありがとうございました。

昨晩からのこの宿、もうダメじゃないか、と思われそうな古い温泉街の奥の小さな10部屋もあるかないかの旅館で、温泉も今時のもんではなくなみなみとお湯があるだけ。朝ご飯は、「the うちの朝ご飯」みたいな極めて普通の、でもどれもちゃんとした
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そう、まるでベートーヴェンの作品18の6みたいな…って比喩が誰にわかろーかっ。

目の前には松本の街と北アルプスのいちばん南端が眺められ、松本空港に向けてちっちゃなジェットがたまに降りて行く。上空は燕さんの天下で、とはいえここから東はもう美ヶ原とか草津に向かう山並とかが始まるので、明らかに高い所で俺がいるぞと縄張りを主張する小さな飛ぶ方々の声も遠くに聞こえている。昨日までは2日間、大雨もあったそうで空気は湿っているけど、今朝はスッキリと晴れ上がり…

昨晩の松本のオーケストラ、いろいろ思うところがありました。なんせ、この温泉街に泊まったのは、思えばジェシー・ノーマンが部屋に入れずホテルを改装したという伝説が残る第1回の《オイディプス王》に来たとき以来じゃあないかい。この音楽祭、業界からは「またなんだかわけのわからんことを始めて…」みたいな目で見られていた初回がビックリするような成功で終わり、さてどうするんじゃろか、と人々が思っていた数回目から何回か、大学の同級生で目白に厄偏庵があった頃には会社兼自宅がお近くだったO氏がオーケストラマネージャーをやってて、引っ越し手伝って貰ったよしみ、当日プログラムに書いたり、チラシになんか書いたりしていた。あれよあれよとメイジャーになっていき、もうやくぺん先生のようなへっぽこ三文売文業者には関われないようなところになってからは、まあ、たまに観とかないといかんオペラなんぞに通うことがあるくらい。室内楽勉強会が始まってからまた来るようになった。今年は…何年ぶりかなぁ、《ベアトリーチェとベネディクトゥス》の指揮者交代騒動が原稿のメインになってしまった年以来でんな。だって、現役時代なら今はバンフにル筈だもんねん。

サイトウキネン管も、ザツルとかカーネギーで眺めたことはいろいろ記憶にあるが、本拠地ではいつ以来かしら。パーソネルマネージャーは相変わらずS女史のようで、基本的な顔ぶれは変わっていないけど、こういうフェスティバルオーケストラってのは指揮者と一緒に歳を取っていってオシマイになってしまうものだと思ってたら、なんとそうでもなく、今やコンマスのT氏やらY氏は中堅所か長老。ヴィオラのT氏やチェロのK氏、H氏なんぞに至っては最長老になってる。首席やってるのが、チェロはこの前カナフィル辞めたY氏だったり、ヴィオラがサンガ・サラスバティQなんて言っても本人だって忘れてそうなシカゴからロンドンに行ったレディだったり。うしろの方にはシモン・ゴールドベルク音楽祭セミナーでニックにガンガン言われてたお嬢さんがボンのオケを経由して大人オケのメンバーとして座ってたり、我らがエクのN様がすっかり中堅を固めてたり。だけど、今日のオペラには、やくぺん先生が「オペラを制作するとはどういうことか」を学ばせていただいたM氏はもう関わってないそうなんだよねぇ…

ひとりひとりの年の重ね方をぼーっと思って行くと、ルイージ御大が弄り倒したまらいちはどんどん進み、ホルンばかりかトロンボーンとラッパまで起立するフィナーレへと雪崩れ込み、大拍手!

そう、みんな歳を取っていく。それはそれで良い。いろんなことが起きた、とっても大事なものがなくなったり、スゴく嬉しいものが出て来たり、ま、ともかく、なんのかんので1年間、みんな生きていて、ここにいられて、良かったねぇ。

さても、撤収しましょうか、と宿の小さな机のお宿説明書きを眺めると、おや、隅っこにこんなことが書いてある。
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ごく当たり前の古い温泉宿にしか見えないこのお宿、周囲には廃墟モダン温泉ホテルも並ぶ中で、おばちゃんひとりでやってるのは、それなりに訳があるんだろうなぁ。

そう、生きているものには、それなりに訳がある。それがどんなに嫌なことでも、やな奴でも、はたまたいるだけで嬉しくなってくるくらい愛しいものでも、みんな、そこにいるには訳がある。

だから…「微笑みをもって 人生に対す。」文豪堀田には張り合えない小心者やくぺん先生は、「苦笑をもって 人生に対す。」のであーる。

皆々様、この一年、ありがとうございました。まだもうちょっとは生きていくつもりなんで、場所、貸してくださいませ。宜しく御願いします。

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