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ヴァージル・トムソン室内楽全集CD発売 [現代音楽]

この辺りの作曲家の話を「現代音楽」カテゴリーにしていいのか、ちょっと困ったところもあるけど、ヴァイルなんぞよりもお年寄りの19世紀生まれとはいえ1989年までご存命だったということで、許していただきましょう。

なんでもかんでも録音がネット上に存在し、YouTubeやらNMLやらで出てこない音はないんじゃなか、と思える程になった21世紀20年代、当然あって良さそうなのにいまで無かったものが数週間前に出てきましたです。20世紀アメリカ合衆国で最も著名な作曲家のひとり、ヴァージル・トムソンの室内楽全集。数週間前にリリースされて、暇になったら聴こうと思ってたのを、やっと本日、聴けましたです。
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長い生涯の多作家という気がするのだけど、意外にも純粋に「室内楽」とされる作品はCD2枚で収まってしまうようで、2時間もあればこの長生きした作家の室内楽全容が把握出来ます。録音は2012年だそうで、今時の「昨日録音した奴がもう今はネットで拾える」という感覚からすれば随分時間が経ってるようにも感じるけど、充分に最新録音と言っていいでしょ。

こちらがオフィシャルなリリース。っても、レコード屋さんの、じゃなくて、トムソン協会の公式ホームページにアップされた嬉しそうな紹介文です。
https://www.virgilthomson.org/news/press-release-new-album-from-everbest-music/

主要な室内楽はブーランジェに習っていた頃だかの1930年代に生まれていて、良くも悪くもロマン主義が嫌になった新古典主義時代のパリの空気が流れてきそう。やっぱりまず聴いてしまうのはふたつの弦楽四重奏曲で、上のトムソン協会さんが代表作と宣言している第2番の方は、モルゴーアさんなんかが定期でやっても不思議はない作品ですね。アメリカ特集でバーバーの弦楽四重奏曲、それにアイヴスのどっちかやって、さてもう1曲どうしよう、なんてときには良い選曲になるかも。ちょっとテイストが揃い過ぎちゃうかな。

音楽史的にそこそこ知られてるのは、ブーランジェ時代にパリで初演されてる《ソナタ・ダ・キエザ》なのかな。なんせ、ヴィオラ、クラリネット、ホルン、トランペット、トロンボーンなんてトンデモな編成で、ヴィオラ・スペースで誰かがどーしてもやりたいとか叫ばないと、なかなか出来そうもない曲ですな。中身も、第1楽章コラール、第2楽章タンゴ、第3楽章フーガ、ですから、若きブリテンみたいなぶっ飛びっぷりですし。

お気楽にどんなもんかちょっと聴いてみたいなら、第1番の3楽章とか第2番の2楽章なんかのワルツ楽章がうってつけ(それにしても長い人生にフルサイズの弦楽四重奏を2作品しか遺さず、その舞踏楽章が両方ともワルツって、なんなんねん?)。後者などお正月のアンコールなんかでやって、実はヴィーンじゃありませんよ、って笑いを取るのに是非どうぞ。面白いのは《肖像画(ポートレート)》という小品集がいくつもあること。エルガーとはまた違った意味の、一筆書きみたいな音のスケッチ集です。厳ついオッサンみたいな写真ばかりが記憶にある作曲家さんだけど、こういう小洒落たセンスもあった人なんですねぇ。それにしても《肖像画とフーガ》なんて曲があるなんて、もうこの人にとって「ポートレート」ってのはひとつの楽曲ジャンルだったんかい。


何よりも才能のホンモノさを感じさせるのは、妙なことをやっても汚い音がしないこと。評論家としても大成したんだから、凄く耳が良い人だったんでしょう。年末の大掃除のBGMに、はたまた急に積もったドカ雪かき作業のヘッドフォンでのお供に、などといったら叱られそうだけど、充分に耳の楽しみになり、好奇心も満たしてくれる格好の年末アイテムじゃないでしょうかね。NMLにも入ってますから、ご関心の向きは直ぐにでもどうぞ。

ってなわけで、たまには珍しくも、真っ当なディスクご紹介でありましたとさ。

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