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豊後竹田のアンサンブル一周年 [演奏家]

昨日、《荒城の月》の舞台として知られる豊後竹田で1年前に旗揚げした室内アンサンブル「TAKETA室内オーケストラ九州」が、活動開始1年を記念する第3回定期を開催しました。
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https://teket.jp/3162/14578

この団体、竹田市が豊後竹田駅から阿蘇方向に向かう豊肥本線沿いに造った新たな文化施設「竹田市総合文化ホールグランツたけた」を拠点に活動する一般社団法人で、市が直接運営していたり、ホールがレジデントとしての予算で主催公演を行っているわけではありません。あくまでも、竹田市を拠点とする民間団体です。九州でこの規模の団体というと、長崎県は大村の長崎OMURA室内合奏団が頭に浮かぶでしょうが、あちらは認定NPOになっていてメンバー表にも弦管合わせて35名程の団員が挙がり、知る人ぞ知る村嶋寿深子さん芸術監督としてドカンと重みを与えてる、ま、普通の意味での「地方拠点の室内管」ですな。
https://omurace.or.jp/

それに対し、竹田の新団体は規模も公式ホームページでは11名、要は「室内アンサンブル」ですね。オーケストラ、という表現は、ま、一種の比喩なんでしょう。ご覧のように大分や福岡出身者を集め、中にはヴィオラ首席生野氏など、東京の室内楽業界では知れた名前もありまする。なんのことない、昴21Qのヴィオラさんですわ。

竹田という場所、滝廉太郎が住んだところで有名とは言え、空港を抱え今や新幹線停車駅まである人口10万弱の大村と比べても人口2万ちょっとと圧倒的に小さい、なんと我が田舎町由布院町の倍程度という場所。大分県とはいえ大分市からは車でも熊本に抜ける横断道で1時間弱、豊肥本線に至っては久大本線真っ青の阿蘇観光路線でしかない今日この頃、隣町とはいえ由布市側からも宮崎の延岡側からも直接のアプローチはなく、ホントに山の中のトンネルだらけの古都でありまする。普通に考えれば小編成アンサンブルを支えるバックがあるとは思えない。吹奏楽やら合唱やらが滅茶苦茶盛ん、とかいう場所は日本各地どこにでもあり、山陰某所では吹奏楽に特化した「アーティストに住んで貰う町作り」なんてのもやっていて一部から動向を注目されているけど、そういう感じで何か今時の「アーティスト地方環流」みたいな戦略が全面的に打ち出されたプロジェクトというわけでもなさそう。ま、この辺りを議論し始めれば長くなるわけで、それはそれ。とにもかくにも1年間、いろんな風な活動をしてみました、というご報告の演奏会でもあったわけです。

やくぺん先生は直線距離にすれば50キロないくらいの山1つ越えた北の盆地から来るわけだが、なんせいちど大分市に出ないと公共交通はないので、昼間の演奏会じゃないと行けない。先頃あった古澤巌氏がアンプリファイされてない生のヴァイオリンで弾きまくる演奏会は夜の開演だったんで、戻ってこられる終電が8時半くらいで行きたくても行けないのであった。今回はマチネだったんで、行きは台風で走るのか心配な豊肥本線、帰りは熊本空港経由でやってくる大分行きバスで往来した次第。

さてもさても、そんなこんなで開催された演奏会でありますが、今回は「オケのメンバーだけでやる」という1年目にして初の原点回帰的なステージとなり、団の地力が問われる真剣勝負となったわけであります。日頃の営業広報努力の結果か、それなりに地元の中学生なりも会場に姿を見せ、完全車社会らしく開演前の広い駐車場もそれなりに埋まってら。
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冒頭はSQ+コントラバス編曲の《荒城の月》でご挨拶し、まずはブルッフの秘曲、ヴィオラとクラリネットの為の二重協奏曲が披露されます。うううむ、この規模のホールとはいえ、ロマン派ベッタリの響きを指揮者無し弦楽器パートひとりで担当するとなると、やはりもっとボリュームが欲しくなるのは否めないなぁ。ま、そんなの判ってやってるのだろうし、作品としてはこれ余程バランス頑張らないとヴィオラ聴こえないんじゃないかい、って楽譜っぽいので、このやり方は意味はあるのだろうとは思わせてくれました。こんな曲ですわ。ほれ、今は簡単に楽譜まで見られるんだよなぁ。
https://www.youtube.com/watch?v=Qepj2m6F01Q

この演奏会、やはり白眉は団員のみで演奏されたラインベルガーのノネットでした。なんでこの曲、と思うでしょうが、理由はあるらしい。無論、団員だけで演奏出来るメインピースになる4楽章の大曲であること。それから、どうやらこの団体が顕彰する滝廉太郎がラインベルガーのピアノ曲を日本で最初に紹介していて、その関連の演奏会をやったときに団長のコントラバスさんがラインベルガーに興味を持ち調べたらこんな格好の曲があった、ということらしいです。

自分のメンバーだけでやれるし、滝廉太郎を顕彰するという団の基本姿勢にも合致してる曲で、余り「クラシック音楽」の演奏会との付き合いがない(首都圏のマニア聴衆のようなすれっからしではない、ということ)方々を前にロマン派の知られざる名曲を自分らのレパートリーにしていく方針なら、決して間違ってはいない。そんな意欲をしっかり感じさせてくれる、大いにお腹がいっぱいになる再現でありましたとさ。お疲れ様。
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竹田という市の規模を考えれば、維持出来るギリギリの規模のプロ団体でしょう。ひとつの県とはいえ山を越えればまるで別の文化圏で交流は殆どなし、孤島の集まりみたいなキューシューという不思議な島で、これからどのように活動していくか。ま、山の向こうからノンビリ眺めさせていただきましょか。

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