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ザール河畔で遺伝子情報争奪戦リング開始 [演奏家]

ザールブリュッケンの朝です。あと20分で中央駅へ向かい、指定無しのICで3時間、ノンビリとフランクフルト国際空港駅に向かい、10日間のユーロパス乗り納めです。ICEは中央駅に行っちゃうんで。

昨晩、音聴いているだけであとは寝ちゃおー、というつもりでやってきたこの町の市立劇場の《ラインの黄金》、これがまあ、トンデモなもので、個人的にはヴァーグナーの全作品の中で唯一「好き」というか「面白い」と思えるこの作品の面白さ炸裂で、まさかまさかの最後の大ホームラン、気持ちよくシンガポール経由福岡に向かえます。

話し始めればもう甘いラインのワインが何本空くやら、というほどの情報量の多さ。ブダペスト出身で恐らくはサイバーパンクオタク娘やってたんだろーなあー、という若い(多分)女性二人チームの創り出す世界は、一言で言えば…うううむ、あの評判最悪のリドリー・スコット御大大暴走「エイリアン・プロメテウス」から「エイリアン・コヴェナント」の暗ぁあああくいやぁな世界。情報争奪謀略戦という意味では神山攻殻機動隊SACの厚生労働省もの、みたいかな。ともかく、「感動」や「涙」を期待している人には、そんなもの欠片もありませんから。

以下、ひとことでネタバレしてしまうと、この舞台では「ラインの黄金」とはエルダから取り出された特別な遺伝子情報(のコードネーム?)なのです。で、「ニーベルングの指話」とはその特殊な遺伝子のサンプルみたいなもので赤く輝く小さな試験管みたいなもんに入っている。で、地下で働くミーメ博士が創り出した「指輪」のパワーとは、このエルダの遺伝子情報を使ったクローン作成技術なんですわ。

もう、頭クラクラでしょ。無論、そんなこと、演出家は当日プロでも喋ってないし、解説があるわけでもない。ただ、最初はなんじゃこりゃ、とビックリしても、2時間半後にはそんな世界や起きていることはちゃんと判る。凄く高い舞台技術であり、演技であり、総合的な舞台制作力。そして、コロナを生き延びた客席を埋める地元じいちゃんばーちゃんの殆どは、歌手がちゃんと歌えれてれば「ああ、いまはこういうのなのかい」で納得し、大拍手を送っている。

かつてマデルナが過ごし、若きブーレーズが暴れた街の底力、おそるるべし、でありまする。

さて、もうチェックアウトして中央駅に行かねば、ともかくホントに感想以前の感想でしたぁ。なお、最後の神々のヴァルハラへの入場の音楽の真っ最中に美少年美少女のジークムントとジークリンデがラボから引っ張り出され、泣き叫ぶのに強引にバラバラに違うラボへと連れて行かれてしまう。神々ラボ職員達と一緒に、ステージ真ん中に立ってる二人。
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ニーベルハイム研究所には、どうもヴァルキューレの初期型試作タイプらしき連中もうち捨てられてたみたい。なにより、ラインの遺伝子操作研究本部からコードネーム「ラインの黄金」を盗み出すためにアルベリヒ博士の手助けをしていた奴が誰なのか?なんせ、こんなめんどーくさい話とまだ思わずにボーッとみていたので、ずっとローゲだと思っていたが、どうも違うようにも思えるぞ。傭兵会社社長ファーフナーに連れてかれちゃったクローンのフライア2号は《ジークフリート》に向けてどうなるのやら、…ってな具合で、明らかに伏線はばらまかれ。

でも、先、あるかなぁ、この演出。とてもまとめられるとは思えんぞ。

ちなみに音楽は、明らかに大劇場で上演するとバランスに問題が起きるこの作品、ハープ2台の縮小編成ながら、ここまでちゃんと最後のラインの乙女達の嘆きが聴こえたのも珍しいかな。

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