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荻窪の御隠居お招きアウトリーチの演目は… [音楽業界]

来月の日本フィル九州ツアーについてなんのなんの都内事務局で打ち合わせをする前に、こんな演奏会を覗いてまいりましたです。
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https://nishiogi-community.jp/center/2022/12/15/%e3%81%94%e8%bf%91%e6%89%80%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%b7%e3%83%83%e3%82%af%e2%99%aa%e3%80%80%ef%bd%9e%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%83%95%e3%82%a3%e3%83%ab%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%90%e3%83%bc%e3%83%97%e3%83%ad/

杉並区とフランチャイズ契約関係にある日本フィルさんが、コロナ禍2020年にリニューアルされ東急系グループが指定管理をやっている区内の今時モダンコミセンで、平日昼間の区民お招きアウトリーチをする、というものです。

会場は日本フィルさんのレギュラー練習場でもある杉並公会堂から、目の前の青梅街道をもうちょっと西へバスで数停留所。鉄道なら、JR中央線西荻窪駅北口から住宅街の中を真っ直ぐ徒歩10分くらい、善福寺川越えて青梅街道にぶつかったところにある、ま、そこそこ立派な公共施設でありまする。
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なんとなんと、杉並区民の某評論家先生も客席にいらして、「僕、自転車で来ました」と仰ってました。

このコミセン、リニューアルが終わったらコロナになっちゃって、こういう区民の為のコミュニティコンサーとしては新装後最初のイベントだそうで、客席には150人ほどの老若男女、ならぬ老男女がお座りになって、寒い冬の午後の時間を屋内で楽しく過ごしていらっしゃる。正に、「平日午後の御隠居の為のお近くのちゃんとした会場へのお招き」ですな。

長さにして1時間ほど。それほど遠くない場所にお住まいというヴィオラ奏者さんが最小限のMCを挟みながら小一時間、弦楽四重奏を鳴らしたのでありました。日本フィルスタッフさんとすれば、音響的には悪くはないけど「音楽専用ホール」ではないですからベストではなく、反響板などあればもうちょっといい音で聴いていただけるんだけど…とのこと。ま、旧湯布院町公民館なんかを考えれば、表の青梅街道のトラックやら頭の上の横田進駐軍の空を低空で舞うVIPヘリやら横田連絡機の轟音が入ってこないんだから、全然問題ないじゃん、って思っちゃうけどさ。

さても、このような聴衆層がハッキリしたアウトリーチの場合、難しいのは演目です。ぶっちゃけ、幼稚園から小学生、中学生くらいまでなら、どんな曲やろうが演奏する側がしっかりしていれば問題ない。こんな曲やって大丈夫、って周囲の大人が心配になるバルトークだろうがピアソラだろうが、そもそも先入観なんてなにもないし、特にリズムに関する関心や反応は大人よりも遙かにハッキリしてる相手です。ところが、長い年月を生きてきて、良くも悪くもいろんな情報を持っており、酷いいいかたをすれば先入観の固まりみたいなシニア世代というのは、「良い音楽だから聴いてごらんなさい」では済まない。

で、日本フィルチームが出してきた演目は、こういうもの。
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うううむ、なるほどねぇ、って感じですね。実際の演奏では、K.138(136じゃないのがなかなかハイセンス!)の第1楽章を終えたところでMCを入れ、それから2、3楽章を弾いて全曲。ハイドンは「戦争中はこれを学校でお習いになった方もいらっしゃるかも…」ってMC、流石にもう無理じゃないかなぁ。ここまでが「真面目なクラシック」ですね。

そこからが選曲の腕の見せ所で、まずは「日本の冬メドレー」。っても、「雪景色」と「たき火」だけだったんだけど(全体の長さの関係でしょう)、思えばかつては武蔵野の雑木林広がる善福寺川の谷沿いの青梅街道とはいえ、今や関東大震災を逃げ出した東京市民が移住してきて今年ではや1世紀、ベッタリと住宅が延々と続く場所ですから、落ち葉焚きなんて消防法違反な行為は前世紀高度成長期以降は出来ないわけで、冬の風物詩というよりもイメージ画ですな。そこから世代ドンピシャの昭和歌謡名曲がふたつ。「川の流れのように」って、天下の名曲なのは判るが、個人的にはどうにも秋元某の言葉の選びが陳腐かつ空疎すぎて聴いていて気持ち悪くなってくる曲なんで、歌詞なしの旋律をヴィオラでガッツリ歌ってくれた方が余程有り難いですわ。

意外にもと言うべきか、はたまた周到にもなのか、この演奏会のハイライトは「サウンド・オヴ・ミュージク・メドレー」でした。これ、ホントのメドレーで、壮大なテーマに始まり、ドレミの歌、私の好きなもの、エーデルワイスなどなど、で最後は「全ての山に登れ」で締め括られる、なんのかんの15分とまではいかないけど、いやぁ、たっぷり聴いたなぁ、というもの。この曲などは、この場所にいらしている方々には青春の想い出ど真ん中、今は亡き爺さんとデートで行った映画とかなんでしょうねぇ。最後は葉加瀬太郎名曲ふたつをサラッと弾き、オシマイ。

この演奏会、今時大流行の「終演後のアンコールをスマホで撮影してSNSでアップして下さい」を初めてやったそうな。これくらいの人数だと、なかなかタイミングも難しく、結果的に「終演後の撮影タイム」になってしまったのは仕方ないかな。ほれ。
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で、アンコールは「今の時節、皆さんに歌って下さいとは言えないのですけど…」とコメントして「故郷」を弾いてオシマイ。歌うな、と仰ってるのに、杉並の御隠居連、マスクの下で小さい声で皆さんお歌いになってしまい、会場は不思議なモワンとした響きで埋められたのであったぁ。

なるほどねぇ、これが御隠居向けお招きアウトリーチかぁ、といろいろ勉強になったです。弦楽四重奏編曲は旋律重視が基本で、ステキなみんなが好きなお馴染みの、あるいは懐かしいメロディを違う楽器のキャラで次々と歌い合う、ってやり方でした。旋律楽器の集まりという弦楽四重奏の特性を利用したといえばそれまでなんでしょうけど、子ども向けの音色やリズムを強調したおもちゃ箱ひっくり返し系とは違う、しっとりした時間でしたとさ。

さても、ここまでこんな無責任電子壁新聞記事を立ち読みになったすれっからしの皆々様の脳裏では、「おいおいおい、これってJASRACに面倒なもんばっかりじゃないかぁ」と主催者さんが心配になるかも。でもご安心あれ、無論、楽曲使用の書類提出などは必要なんでしょうが、この演奏会、無料招待だから著作権使用料はかからんのでありますよ。日本フィル担当者さんは「ホントはいくらか頂戴したいんですけどねぇ」と漏らしてましたが、有料になるとこういう演目は出来なくなりますしねぇ、とも仰ってました。

讃えるべきかな、無料演奏会!

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