SSブログ

静かな盆地の音楽の日々が終わった [ゆふいん音楽祭]

昨日午後、35回までの夏だったら「フィナーレ・コンサート」と題されていた出演者総出演のガラコンサートで、「ゆふいん音楽祭2023」が幕を閉じました。出演者、関係者の皆様、お疲れ様でした。
DSC_4096.jpg
今回はメディアに関しましては、過去の夏開催中は必ず大分市内からやってきたローカルテレビ局や地方紙の記者さんは全く訪れず(お陰で「90歳のピアニスト驚異のモーツァルト」なんて煽りっぽい記事が紙面に踊る最悪の事態は避けられましたけど)、東京から当日プロ執筆をなさった音楽評論家T.A.氏と「サラサーテ」編集者様、それに現在中谷賢太郎さんに聴き取りをやっていらっしゃるという谷根千で名高いエッセイスト森まゆみさんがいらしただけで、恐らくはメディア露出は極めて限られたものになると思います。

やくぺん先生の世を忍ぶ外の人も、「サラサーテ」は記者さんに来ていただいたので執筆することはなく、あくまでも「相談役」=「公式写真を撮っている地元のアマチュアカメラマンのオッサン」としての役回りに徹しておりますです。もう、専門誌に売り込むパワーもないし、そういう必要があるのか判らない商業性とはますます無縁のイベントとなってきてますものでして…

とはいえ、中身がどうだったか、一応、商売作文がある可能性に抵触しない範囲でちょっとだけ記しておきましょうぞ。
配信でもあれば関心のある方が注目なさっただろう水谷・山崎・小林トリオのモーツァルトK.502ですが、水谷氏のコメントに拠れば「道夫先生はこういう風にすると仰るのかと思ったら、さあどうしますか、でした」とのこと。究極のベテランは「俺が俺が」ではなく、「貴方はどうしたいんですか、それをモーツァルトのあるべき姿に収めるのが私の仕事ですから、なんとでもどうぞ」なんだなぁ。そして、21世紀の今や遙かなレコード時代を感じさせる木造建築のような、とはいえ「古楽ってこういう音です」みたいな今時の才気煥発な鍵盤奏者のこれ見よがしな響きとはまるで異なる音が、制約と限界のあるピアノから引き出される。聴衆がこうあって欲しいと思ってるのを提供してくれる「おいしさ」やらサービス精神とは無縁ながら、こういうものなんだよなぁ、とあらためて納得させてくれる音楽。ゆふいん町内のあちこちの高級お宿で大流行のレトロっぽさとも微妙に違うけど、今や貴重な懐かしい楽興の時が流れる。

そしてなにより、初日の午後と夜に披露された、21世紀のシンゆふいん音楽祭を担う松本&水谷の独奏であります。かつての旧公民館時代にはやりたくてもハードウェアとして不可能だった、極めて雄弁なピアニッシモがありました。昼間の世界各地からの若い観光客さんたちの賑わいはどうあれ、夜ともなれば蛙の声と水の音、それに田圃を抜けて行く風のざわめきしか聞こえないここ温泉県盆地に座って、じっと耳を澄ませ、静寂の雄弁さを体験するに相応しい響きたち。バッハのハ長調ソナタの第2楽章の長大なフーガとそれに続く深い歌は、まるでベートーヴェン《大フーガ》の複雑なストーリーと《カヴァティーナ》の諦観を、ヴァイオリンひとつで再現するような。

新生ゆふいん音楽祭、新たな舞台で奏でられた音楽も、2日間を支えた人々も、文字通りの世代を跨ぐ小さな盆地の夏祭りでした。この静かさ、このこじんまりさこそが、この盆地の空気…なんだろうなぁ。

なにはともあれ、お疲れ様でしたの集合写真、はいポーズ!
362795963_3592056367696301_9167503745336618928_n.jpg
客席で撮影している面々も、大事なスタッフですぅ。はいシャッターポン!
IMG_6632.jpg

1975年の夕立の中の「星空の音楽祭」から数えれば49年目となる「ゆふいん音楽祭2024」、日程は7月27,28日の2日間。35回目までと同様に、7月最後の週末に戻ります。恐らく、来年も配信やらはないでしょう。聴きたければ、盆地にいらっしゃいな。新帝都は大川端住民とすれば、また隅田川花火大会にバッティングなんだけどさ。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。