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邦画の楽しみ [演奏家]

8月13日土曜日昼過ぎ、東京湾地区は、先程から日が差しています。大川と運河の向こうは、深川のお祭りが始まっているはずです。この分ならば、夜の東京湾大華火大会は決行されるでしょうね。月島駅は、我が家の側に上がる出口も夕方には封鎖される予定。今、駅に用事で出かけた嫁さんの報告によれば、既に浴衣姿の若者ともんじゃの臭いで、妙な雰囲気になっているとのこと。

以上、本日の新佃町会情報でした。我が家は花火の頃はお通夜に行ってて家におりませんから、来てもビールなんか出ないよ。

閑話休題(←って、ブログはみんな閑話だろーに)。昨晩は銀座に出た。映画見物であーる。
そー、えーがの話。ブログ世界で最も人気の話題、誰でも意見が言えるアーツの代表格、シネマでございます。

とはいうものの、我が家の映画見物は、かなりの部分が「個人による文化支援」。ハッキリ言えば、「ひとりでも多く有料入場者を増やして、○○さんを助けてあげよう!」という、もーれつに不純な動機が先行しているのですな。

昨日も、「ひとりでも多くの有料入場者を増やし、我らが敬愛する実相寺昭雄監督を支えよー!」という気持ちで、「姑獲鳥の夏」なる映画を見物にいったわけであります。なんせ、もう昨晩で銀座教会の隣の一等地を追われ、あの王子ホールの裏辺りの晴海通り下に国替えされちゃうというのですから。

理由はまたそのうちネタがあったときに書くかもしれないけど、よーするに実相寺昭雄監督とは年賀状のやりとりがあり、そればかりか、芸大にいらっしゃった頃はなぜか『藝大通信』という大層な予算を使っている学内誌の「明日を奏でる奏楽堂」などという特集記事の書き手にいきなり小生を推薦して下さったり、いろいろお世話いただいております(東京芸大ホームページに現物がPDFでアップしてあった。実相寺監督が加わる座談会も掲載されている。殆どの実相寺ファンは知らない文献だろうから、アドレスを貼っておく。http://www.geidai.ac.jp/geidai-tuusin/05/05-mokuji.html)。久しぶりの本編撮影、非力ながら、一観衆として売り上げに協力いたしまする。頑張ってくださいな。

ま、ここで映画の出来についてどうこう話すつもりはない。原作もまるで知らぬ(所謂、陰陽師系は全然ダメなんです)。ただ、「これはおそらく、殆ど破綻や掟破りに近い内容を、強引に力業で纏めちゃってる原作なんだろうなぁ。よくまあこんなメチャクチャ一歩手前のプロットを2時間に纏めたものよ」とあんぐり口をあけていたですよ。

やっと本論。実は、我が家にとっての邦画の最大の楽しみは、本編上映が終わった後に流れるスタッフ一覧表にある。特にワクワクして待っているのは、音楽関係。

で、この映画でも…きたきたきたぁ。作曲はやっぱり池辺せんせーじゃないか(こんなものパンフレット買えばすぐに判るのだろうが、あの類は引っ越し時に困るので、基本的に買わない)。オンドマルトノがひゅーひゅー鳴ってたけど、あれはやっぱりハラダさんだわなぁ。そろそろ誰か新人が出てきてもいいのになぁ。おおおお、来たぞおおお、ヴァイオリンは我らが松原勝也じゃあないかぁ。確かにかっちゃん好みな音楽かもねぇ。へえ、ヴィオラは百武さんか。おっと、チェロは誰だ、2人いたみたいだが見落としちゃったぞ。コントラバスは吉田のしゅーさん! それにしてもいつ録音してるんだ、これだけ集めるなんて。

以上、我が家にとって映画館で最も盛り上がる瞬間は、たった15秒ほどでお終い。

日本のクラシック音楽界にとって、映画音楽というのは意外にもかなり大きな比重を占めているのである。もう10数年前、某地方出版社で『黒沼俊夫と日本の弦楽四重奏団』という、共著ながら小生にとって初めての単行本をやらせてもらったとき、巖本真理弦楽四重奏団のチェロ奏者黒沼俊夫氏の演奏活動の記録を出来る限り調べたのだが、どうしても手が出なかった分野があった。
映画音楽、である。
未亡人によれば、マリカルの活動前、日本フィル初代首席チェロ奏者時代や、シベリアからの復員直後のゴタゴタした頃に、黒沼家の家計を支えたかなり大きな部分は、まだ輝いていた日本映画の音楽スタジオ録音だったという。
今ならば、画面で独奏が流れたりする目立った仕事ならば、特別な契約の問題でもない限り、演奏者の名前は最後にテロップで流れるものだ。例えば、映画「お引っ越し」で、ちょっと舌足らずなチェロが独特の味わいを出しているのが山本ゆーのすけ氏だと教えてくれたり。
でも、映画が娯楽として本当に機能していた頃は、映画のスタッフや音楽演奏者など、文字通りの裏方。ちゃんとギャラさえ貰えば、誰がどこでなにをしているかなどどーでも良かったのである。

どうやら、「くろちゃん」のチェロが鳴り響いている映画もずいぶんとあるそうなのだが、未亡人にもそのあたりの詳しい事情はまるで判らない、とのことだった。

このところ、日本の戦前から戦中、戦後にかけての音楽が一部での関心を集めるようになっている。この頃に作曲された作品がCD業界でちょっとしたミニブームになったり、近衛秀麿の活動やらアーニーパイル管弦楽団の歴史やら、演奏史の掘り起こしをしようという研究者が出てきたり。
でも、まださすがに、戦中から戦後の邦画を「演奏史」という視点から本気で調べようという猛者の姿は、業界学会にも見えないようだ。

さあ、誰かやりませんか。今ならまだ、片山杜秀さんもやってませんよ。小生もいくつかネタは持っておりますので、本気でやりたい方は、ご連絡下さいな。とても金にはなりそうになく、あくまでも「邦画の楽しみ」方の一種にしかならないだろうから、逆に、最も在野研究者に向いたジャンルのひとつだと思うんですけどねぇ。


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