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いまさらながらに「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」 [音楽業界]

というわけで、我が東京湾岸元祖埋め立て地も震度4以上は確実に揺れた地震の直前、無事にフジテレビ・アートネットの原稿を入れ、写真とそのキャプションも入れ、この取材は当面はお終い。
無論、この後に編集者さんから連絡があり、細かい直しやら、場合によっては書き換えやらの指示があり、更には校正チェックがあり(ウェブ原稿なのにちゃんと校正チェックがあって、完全に雑誌原稿と同じ進行なのだ)、月末にはウェブ上にアップに至るわけです。
ま、ひとつが終わると、もう次の内容を考えなきゃならない。このMuisc in Museumは、あと2回分の取材は済んでいる。とはいえ、そろそろ秋以降の中身を用意しないとなぁ。なにせ、これだけのために取材に行く予算はない原稿なので、なにかのついでに乗っけねばならないのがシンドイところ。

で、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」の資料をしまい込む前に、原稿には出来なかったポイントを総ざらえしちゃいましょう。同業者の皆様、アートマネージメント系研究者の皆様、以下がこの瞬間に頭に浮かぶ、現場で拾ったけれども展開出来ていないネタです。なんとかしてくださいな。

Ⅰ:ルネ・マルタン氏がヨーロッパで展開しているフォーマットと、有楽町のフォーマットでは、どこが同じでどこが違うのか。
→これについては、何人か同業者諸氏がナントを訪れているようだけど、どうも国際フォーラムが差配した接待系前パブ取材みたいで、「国際フォーラムという商業施設のやり方は、ナントやビルバオなど地方自治体主催のやり方とどこが本質的に違うのか」という一番重要な問題に答えているレポートを目にしたことがありません。有楽町の音楽祭の本質をきちんと見極めるためには、ここは押さえないとまずいはず。ルネ・マルタン氏がナントでしたことは、果たしてフランスの文化行政全体の中でどのような位置づけになり、どう評価されているのか、ちゃんと判ってフォーラムが彼を採用したのかしら(日本の企業が広告代理店抜きで外部プロデューサーを雇うときのあり方を考えれば、そこまできっちり考えがあってやっているとはとても思えない)。誰かやらんかぁ。フランス語の能力と、ポンピドー以降のフランス地方文化行政の歴史についての基礎知識が必要になる。アートマネージメントでフランス系でやっていこうという奴が、関西の方にいたなぁ。彼女辺りがやらんかしら。この秋から留学する、と言ってたけど。

Ⅱ:30万人以上という総動員数をどう評価するか。
→正直、この数はよくわからぬ。なんせ現場で数字を黒板に書いていたフォーラム職員自身も、「わたなべさんも何度もカウントされてると思いますよ」などと苦笑していたんだから。こういうイベント動員数って、どう読んだら良いのか。その筋の専門家、ご教授下さいな(この数字が誰に向けて発表されているのか、というのが一番知りたいなぁ)。なお、某巨大広告代理店で億単位以下の予算のプロジェクトは手がけないと仰る専門家氏によれば、「その程度の数字は、自動車ショーやらの巨大イベントに比べれば全然小規模」とのこと。へええ。6億円のイベントで広報費は5千万円くらい(うろおぼえ、信用しないで、ちゃんと調べてね)というのも、なんかアンバランスだし。

Ⅲ:㈱東京国際フォーラムは今後丸の内地区でどういうポジションを占めたいのか。
→この「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」というイベント、どうもインターネットの掲示板やブログなどを拝見していると、一私企業の営利イベントではなく、東京都が支援している地域イベントのように誤解していらっしゃる方が少なくないみたい。まあ、そのように世間を誤解させるのは広報戦略のひとつなんだろうからそれはそれで良いとして…民営化後初の巨大イベントを「成功」させたことで、都が株を所有しているこの株式会社は、丸の内・有楽町地域の地域活性化の主導権を握る野望を持つのだろうか?音楽とは関係ないけど、週刊誌的な意味で興味はありますね。つまり、そもそもがスペースレンタルを本業とする会社が、イベント業的方向に本気で乗り出すのか、ということです。既に、去年で幕を閉じた年末の東京ミレナリオに替わるイベントを率先して展開する、などという勇ましい発言も記者会見の席ではあったんだけど。三菱、天下り軍団に対して、どう動くかっつ!丸の内のイベントをやるNPOの中で、どんな策動があるのかっ? まるで企業小説だぞ。

Ⅳ:メセナ的地域イベントにする気なのか。
→前の話の少し真面目な方向への発展。このイベント、無論、きっちり採算は取った営利イベントでないと困るんだけど、地域との関わりを持たせた企業市民としてのメセナ的な動きにしていくならば、「頭はルネ・マルタン、差配はK音楽事務所、チケットはPあ、そして現場はアルバイト」というやり方に、地域企業ボランティアやら、一般市民ボランティアを入れる必要が出てくるだろう(誤解している人も多いようだが、今回のイベントには普通の意味での市民ボランティアなどは関わっていない)。また、ルネ・マルタンも「フランスには教育プログラムの専門家も沢山いるので、ここでは地元の学校との連携も…」などと、地元現場をなにも知らないのーてんきな恐ろしいことを仰っていたんだけど、あれってどこまで本気なんだろうか。その辺りを突っつき出すと、ホントにたいへんなことになるぞぉおお。わかって言わせてるのかなぁ、フォーラムの方は。株式会社東京国際フォーラムには、広報の人はいても、社会貢献室みたいなセクションはないみたいだし。

ま、考え出せばいろいろある。中身に関しても、いろいろな問題があることは音楽ファンの皆様ならとっくにご察しの通り。それになにより、国際フォーラムは本気で音楽やるのか、という大問題がある。音楽家がなんといっていたか、本音ではどう評価していたか、そんな話を書くんじゃないかと期待してるかもしれないけど…書きませんよぉおお、だ。

というわけで、「熱狂の日々」について、当面はお終い。さて、次の仕事はなんじゃいな。


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etchaman

先日の原稿作成コストについての文章にショックを受け(分かっていたような気がするけど)、「ラ・フォル・ジュルネ」については、「コメントしないではいられんゾ~」という気持ちですが、これから富士山河口湖音楽祭へ出発し佐度氏の汗の洗礼を受けに行ってきますので、帰宅後改めて書きます。それにしても、「ラ・フォル・ジュルネ」によって、「国際フォーラム」の知名度は上がったみたいだけれど、それがスペースレンタルという本業の方にどのような影響を与えたのかしら。だって・・・ムニャムニャ。
by etchaman (2005-08-17 07:20) 

photographer_naoko

 クラシックファンではない母でさえ、国際フォーラムに行きたがったので、結局連れて行くハメに。(実家は神奈川です)
 当日待ち合わせに現れた母は、読○新聞のPR版を持参。行きたい公演をチェック済み。しかし母がチェックを入れていたのは「無料」の公演のみ!流石、photographer_naokoの母・・・。私はヨーゼフ2世の葬送カンタータ聴きたかったのですが。でも母の喜ぶ顔を見たいので、結局無料コンサート巡り&屋台前のスクリーンで過ごしました。
 このイヴェントには私自信は複雑な感想を持ちました。この先、音楽がビジネスの食い物にされ過ぎないよう祈ります。
 こんなコメントで申し訳ありません。でも又コメント入れに来ます。
by photographer_naoko (2005-08-17 11:52) 

Yakupen

次の仕事に入っていて、もう頭は別のことを考えているので、あまりちゃんとモノをいえないんですけど、なんにせよ、やはりこの音楽祭の話題には皆様コメント下さるようで、ありがとうございますです。

ええ、小生は本音を言えば、このイベントに興味を持って、持ち出しでも取材をせねばならないと思った理由はふたつ。

ひとつは、有楽町という街が自分の生活圏内であること。つまり、ローカルイベントなんですね、小生には。
もうひとつは、あの東京国際フォーラムの直ぐ裏、旧GHQビルにあったオーディトリアムの歴史を記述した「ホールに音が刻まれるとき」という単行本のために、日本で一番音楽が盛んな場所だった有楽町日比谷近辺の1930年代から上野文化会館が出来るまでの歴史を相当精密にリサーチするという作業をした。で、そのような歴史や背景をまるで背負わない落下傘イベントがそこで起きた、という興味深い事実だったから。東京国際フォーラムのスタッフも、ルネ・マルタンも、はたまたポピュラー音楽招聘会社で修業したK音楽事務所の若社長も、あの界隈が日本の西洋音楽演奏史にとってどれほど濃密に意味深い場所であるか、全く知らないでしょうねぇ。

以上の2点がなければ、まるで興味を持たなかったでしょう。渋谷や池袋であったイベントだったら、「へえ、日本での一生懸命な営業活動実って、マルタンのオッサン、やっと売り込み先を見つけたか、良かったねぇ」と思って、知り合いの演奏会の演奏会に行くだけだったはず。

以上が基本スタンス。これ以上は、またブログ本編で書くかもしれません。ではでは。
by Yakupen (2005-08-17 12:09) 

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