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カルテットという名の中年 [弦楽四重奏]

一昨日の夜、BSで「カルテットという名の青春」というドキュメンタリーをやってました。
http://www.bs-asahi.co.jp/quartet/
テレビマンユニオンというテレビ番組制作会社が、自分のところの音楽事業部が面倒見てたジュピターQトウキョウという団体を、結成のときから追いかけていて、団体そのものが解散(番組内では「一時活動休止」という言い方をしていましたけど、常設として常に時間を取って練習してツアリングをしているわけではなくなったのだから、普通に言えば解散ですわな)したのであの追いかけはどーなったのか、と思っていたら、こういう形で出してきたようです。視聴率が取れるわけない内容なので、時期的に芸術祭参加かなんかなにして強引に企画としてねじ込んだのかとも思ったが、どうもそういうわけでもないようだ。

ま、内容そのものは、なんの奇を衒ったところもない真っ正面な「ドキュメンタリー」で、それほどやらせというか、無理なストーリー作りや盛り上げがあったわけでもない。淡々と、ってもんでした。偶然なんだろうけど、メインになったのがベートーヴェンの作品127ってのはなかなか渋い、良い選曲でしたね。

このジュピターQトウキョウという団体、小生は情けないことにライブでは1度、遙かトウキョウの西の彼方の南大沢だかなんかまで行って聴いたことがあるだけで、マスタークラスも眺めたことはないし、個人的にどうこう付き合いがあったわけでもありません。なんせもうマネージャーが付いてたし(実際はどうかよーわからんけど、テレビが長期で追いかけているとは聞いていたので、その辺の繋がりがあったんでしょうねぇ)、いろいろと世話してくれる人もいるようだし、周囲の先生たちの趣味からすればミュンヘン辺りに出て来そうなんで、いずれイヤでもお付き合いはあるでしょ、と思ってた。ただ、名前はマズイよなぁ、ボストンのジュピターQはバンフ優勝でもうしっかりキャリアを始めてるんで、わざわざ混乱させるような団体名を名乗る必要はなかんべー。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2008-02-23
ま、ヨーロッパで活動を初めて、こりゃマズイと思ったのか、「トウキョウ」って付けたんで良かったけど、もう一段キャリアをステップアップさせるにはいずれ改名は必至。どっかの大会でファイナリストくらいになったら、改称問題が出てくるだろうなぁ、と思ってた。

テレビ・ドキュメンタリーの結末のような状況になったのは、いろんな意味で「ああ、そーだったんね」としか言いようがない。ひとつの選択としては極めて普通のことで、周囲に無茶させられないで良かったなぁ、よく決断したもんだ、と感心したです。

蛇足ながら、ボストンのジュピターQの青春はまだ続いていて、ファースト君が祖国韓国での兵役を無事に終えて、昨年くらいからまた活動を再開してます。この12月には、おおお、すっかり忘れてた、数日前にオープンしたソウル・アーツセンターの室内楽ホールのオープニングシリーズ最後を飾るニューヨーク系団体3連発に登場。エマーソンQ、フィンケル&ウーハン二重奏と共に故郷に錦を飾ります。恐らく、小生も見物に行くでしょう…単行本の進展次第なんだけど。

閑話休題。一昨日の映像作品、ドキュメンタリーとしてみればいろいろ言いたいことがある中身でした。今、自分も10年ぶりに200枚クラスの長編を前にしていろいろ考えている問題が出てましたね。ぶっちゃけ、「ドキュメンタリーを制作するときに、語り手の一人称をどうするか」という永遠の課題。ユニオンの若い(多分)ディレクターさんは、比較的あっさりと一人称単数をあちこちに鏤めて、素材を繋いでいた。良い度胸だなぁ、あたしにゃあれはやれんなぁ。

ま、それは「売文家業」テクニックの問題なんで、それはそれ。このような映像が残ったことは良かったか、はたまた残して欲しくはなかったのか――それは、4人の主人公たちが「青春」を遙か遠くに客観的に眺められるようになったときに思うことでしょう。

ちなみに、どうもクァルテットの4人の人間関係をドキュメンタリーやら物語にしたいというのは誰もが感じる欲求らしく、当電子壁新聞を立ち読みなさっている方はよーくご存じでありましょう、かの久石譲監督「カルテット」なんてまるっきり今回と同じテーマの作品もあった。
http://www.amazon.co.jp/Quartet-%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%88-DVD-%E4%B9%85%E7%9F%B3%E8%AD%B2/dp/B00005Y0ZP

それよりもなによりも、小生の目の前では、それこそ2ダースくらいの数の若者たちの物語が終始動いているわけでありまして…フィクションであれノンフィクションであれ、あらためて映像にされてパッケージで見物なんてしたくもないわけだが、ま、興味深く判り易い人生のある断面ではありますから、やりたい人は後を絶たないんでしょう。

昨日の映像に興味を持たれた方は、こちらもどうぞ。フィクションですけど、「カルテットという名の中年」ですわ。
http://www.westendfilms.com/films/current/late-quartet
個人的には、こっちは観ても良いかな、と思います。日本では話題になったことあるのかな。小生がもう年寄りになってきたからか、若い連中がどうのこうのやるのはもー勝手にしてくれ、って感じ。ま、これはこれで、毎度あちこちで聞かされる話なんだけどさ。

クァルテットを眺めるのは人間ドラマとして興味深い、と思われる若い書き手の方、そろそろ若い連中を宜しくお願いします。それにしても、テレビマンユニオンさんのドキュメンタリー、最後のクレジットに記されていたのが相変わらず大原さんだったのは、ちょっと心配。彼女の後続者としてユニオンさんの音楽ドキュメンタリー路線を大真面目に継承する人が出てこないと、ホントに業界的にはマズイいんだけどなぁ。だって、今や視聴率にならない音楽系の地味なドキュメンタリーを撮る枠を持っている制作会社なんて、NHK系とユニオンさんくらいしかないんだから。

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ガーター亭亭主

ご無沙汰しております。
「持ち重りする薔薇の花」は読まれましたか?
http://www.shinchosha.co.jp/book/320609/
by ガーター亭亭主 (2011-10-14 08:06) 

Yakupen

ガーター亭亭主様

ご無沙汰です。目の前に、ずっとモーツァルトの弦楽トリオのディスク、あります。なんとかせねば。

情報有り難うございました。全く盲点でした。丸谷才一、まだ小説書く体力あるんですねぇ。朝比奈隆クラスじゃないですか。どうも紹介文を眺めた瞬間に、第一生命社長で知る人ぞ知る音楽好きで演奏家との交流も深かった矢野一郎さんと、その前の第一生命社長で経団連会長石坂泰三と、某日本では最も有名な弦楽四重奏団とがぐちゃぐちゃに頭に浮かんでしまいました。いかにも、だなぁ。

どうも他にもこの類のフィクションは沢山あるようで、なんせ「のだめ」人気の頃は小生の周囲でも弦楽四重奏をマンガの原作に出来ないか、なんて話もあったくらいです。

だけど、小生は読みません。なんせ、目の前で小説どころではない人間関係が蠢いていて、いろんなことに巻き込まれそうになってるのに、わざわざフィクションで経験する必要ない、ってのが本音です。なお、某超有名団体の公式伝記という話は常にあるんですけど、正直、ノンフィクションではやれないだろうなぁ、と思ってます。実際はそんなもんです。フィクションでやったら、大変なことになります。

ただ、どうも、やっぱりこの20数年くらい、地味に撒かれていた種が次第に芽を出してる感じですね。聴衆が増えた、ということだけはないんだけどねぇ。ううううううん…

by Yakupen (2011-10-14 10:27) 

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