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劇場法対応最強コンテンツ「いずみシンフォニエッタ」 [現代音楽]

まるでヴェトナムの雨期のような、もの凄く蒸し暑い大阪です。いずみホールでいずみシンフォニエッタが明日の定期演奏会のGPを終え、ホールの外に出て並びの某ビルにある室内楽振興財団に向かう頃から、とうとう雨が落ちてきました。うううん、シンフォニーホールまでは傘無しは辛いぞ。

それにしてもこの大阪の蒸し暑さ、確かに「人類の未来がどーなっていいから、今の俺を涼しくしてくれるためなら原発を動かしてくれ」という声があがりかねないですわ。こういうの、東京湾岸にいちゃ判らんなぁ。

さても、いずみシンフォニエッタ、なかなか興味深かったです。
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このような20数人くらいの基本的に固定された先鋭メンバーによる現代音楽専門の演奏グループというのは、まあ、ある程度以上の数の音楽家がいる都市にはだいたいひとつくらいはある。東京にも目出度く15周年を祝ったアンサンブル・ノマドとか、もっと古そうなアール・レスピランとか、老舗団体がいくつかありますね。世界で有名なのは、ロンドン・シンフォニエッタとか、ケルンのアンサンブル・モデルンとか。アンサンブル・アンテルコンテンポランもまあ、そうなんだろうし。NYにもザックス先生率いるジュリアード・アンサンブルやら、いろいろある。その都市の音楽文化の水準をはかるみたいなところもありますな。

そんななかにあって、このいずみシンフォニエッタ大阪という団体は、際立った特徴がある。東京の団体はリーダー格の現代音楽作曲家とか専門奏者がいて、その人がとりまとめる。ロンドン腕っこきのフリーランスの集まりの自由な集団だし(ベルチャQのセカンドを長く勤めたヴァイオリンちゃんが、今はここにいます)、NYは学校の連中が名物先生の下に集まっている。パリはIRCAMという組織に所属している。で、この大阪の団体は、なんとなんと、その名が示すとおり、「いずみホール」というヴェニュの制作部が組織し運営している。つまり、紛うことなき「ホール座付き」の現代音楽アンサンブルなんですね。

いずみホールというと、あの豪奢な内装やら、立派なオルガンやらから、「ディズニーランドのヴィーンの素敵な音楽ランド」みたいなイメージがあって、音響的にもちょっと深めながらそれなりにとっても細部まで聞こえる、夢のような空間です。「ゲンダイオンガク」なんて硬派で汗臭いもんとは遠いイメージなんだけど…ここがレジデントに抱えている演奏家はこの団体のみ。ちょっとビックリ。

ホールの方によれば、「見栄やカッコでは切符を買ってくれない大阪の聴衆相手に現代音楽やるなんて、正気の沙汰じゃないわ」ってことになるんだが、そういって笑いながらも石の上に10数年、今やサポーター会員が100人ほどで、定期演奏会はデニソフをやろうがケージをやろうが、500人くらいは聴衆が来るそうな。「出血大サービス」でプレコンサートとかアフターパーティとか付けて、なんとかここなで持ってきた。たいしたもんです。

劇場法が成立し、ホールがヴェニュであるだけではなく自らのコンテンツを持たねばならなくなった。そうなってくると、最も効果があるのはふたつ。ひとつは教育、もうひとつが創作(=現代音楽)です。

民間ホールの東の横綱サントリーホールさんはこの4月に運営を財団化し、昨年来始めた教育部門を「劇場」としての大きな柱にしつつある。それに対し、西の横綱いずみホール(なんせ、このまえまでの横綱のシンフォニーホールが廃業の危機だし、フェスティバルホールは今はないわけですから、規模はどうであれ、いずみが横綱を張るしかない)は意外にも「劇場」としてのあり方の基礎に現代音楽を選んだ。なんとも賢い選択であることよ。

明日の演奏会、いずみシンフォニエッタとすれば最高に砕けた、過去最もポピュラープロっぽい演奏会だそうな。まあ、確かにフランセやドビュッシーは耳に優しく楽しい一方だし、案外とやられないプーランクのオルガン協奏曲も娯楽色いっぱい。関西出身の話題の作曲家酒井健治君へのホールからの依嘱新作は、2週間前にNYで聴いた「グルッペン」を思い出される空間にまるくバンダのトランペット、トロンボーン、クラリネット、打楽器などを配置した音楽。無論今風の響きですが、でもやっぱり、今の男の子は優しいのよね、ってな綺麗な音がします。

来年2月はいよいよ西村作品大特集だそうな。いずみシンフォニエッタ、明日の午後、お暇ならどうぞ。

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