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常設弦楽四重奏団のメンバー交代というもの [弦楽四重奏]

「弦楽四重奏団」=「弦楽始終相談」であり、その相談の中身の殆ど(もっとかな)は、音楽的な中身よりも「メンバー交代」についてなのであーる。←極論!

てなわけで、結成5年目くらいだかでカリフォルニアはコルバーン音楽院の元東京Qチェロ奏者クライヴ・グリーンスミス氏のところで「常設弦楽四重奏団」を目指し2年間の修行に励んでいるQインテグラ、過去の日本出身の団体とすれば類例のない最高に恵まれた「プロの弦楽四重奏団として北米でやっていくための教室」に在籍するという幸運を得た、ホントに「もってる」奴らですな。そいつらの日本のレップから、こういうアナウンスが昨日ありました。ちなみに、「主要国際コンクールでファイナリストになった若い団体と日本の主要マネージメント会社の契約」って、いくらでもありあそうながら、過去に類例がありません。東京QはミュンヘンARD優勝時に日本の団体ではなかったし、その後も日本人が加わった団体の主要大会入賞はあっても日本での契約など全くなかったし、90年代の弦楽四重奏ルネサンスのときにボルチアーニという業界的にはミュンヘンARDよりも遙かに格上の大会で最高位になったエクや、同時期にロンドン入賞からグラーツでの優勝という経歴を経たアルモニコなど、今なら当然、騒がれて良い筈の結果にも、全く反応はありませんでした。風向きが多少変わったのは、ウェールズのミュンヘンARD3位くらいからでしょうかねぇ。つい最近の事じゃな。おお、老人の発言じゃ。

もといもとい、で、こういうリリース。
https://www.japanarts.co.jp/news/p8211/?fbclid=IwAR0oRzlM84pwyao77_-VGvTx4sm6AN5kQi-Q0cYGvlki6KX-eFYJUhSspvM
きっちりチェロ奏者さんの経歴まで出して来てますね。なるほど、クライヴのところにいる韓国人のお嬢さん、ってことですな。亜細亜人ばかり、と苦笑してたもんね、そこもまたラッキーだっかかな。
https://www.triton-arts.net/ja/concert/2024/01/27/3849/?fbclid=IwAR1EKaYV8VyOP-6m4GnmS6jAMHxEqMZdI84zi41UIbffU-8rxk1FXdcpLIA#parkyeun

「常設団体」を目指す若い弦楽四重奏団にとって、5年目の壁、10年目の壁、といわれるものがあります。最初は、弦楽四重奏団として人生で最も濃厚に同じ4人のメンバーが顔つき合わせている時期が数シーズン続き、そろそろ考えてることややりたいこと、指向の違いがハッキリ見えてくる頃。この頃に、まず最初のメンバー交代の時期がやってくる。今回は、そういうタイミングで、弦楽四重奏団というものを良く知っていて、更には世界の天才チェリストが集まってくる教室をやっている先生が横についていたわけで、もうこれ以上理想的な環境はない。ちょっと若いくらいの元天才少女が入ってくるのだから、いやぁ、ホントにコルバーンなんてトンデモなところの学生レジデンシィってのはスゴイ環境なんだなぁ、と驚嘆しますね。

ちなみに10年目の壁とは、ヨーロッパの主要オーケストラの就職オーディションの年齢制限です。このくらいのところで、社会的な保証のない自営零細企業である弦楽四重奏を続けるか、それとも人生や生活の安定を選ぶか、ある意味、究極の選択が迫られるんですね。ここで「解散」になる国際コンクール・ファイナリスト級団体は、沢山あります。てか、まあ、実質、殆どがここで「常設団体」としての生活を断念するわけですわ。

ちなみに結成から20年を過ぎると、もう「どうやってバラバラになっていくか」を考える時期なので、この頃に弦楽四重奏での実績を買われてオケの首席クラスに入る、なんて選択も珍しくないですね。ロータスなんかもそういう生活だし、ある意味で四半世紀過ぎたエクもそういうところに入ってきている。

ま、そんなこんな、インテグラは現時点で音楽的には最高の選択が出来る理想的な環境に居たわけで、ホントに「もってる」よねぇ、こいつら。このラッキーをしっかり利用して、先輩カリドールQを追いかけて欲しいもんですね。日本なんて帰ってこなくて良いわけで。

なお、ジャパンアーツさんのリリースを眺めるに、「臨時で代理が入ったのか、これで交代なのか」はぼかして書いてあるようにも見えますな。これはもう、何シーズンの契約、なんて法的なメンバー拘束なんて存在しない弦楽四重奏業界、「そんなのわからんもん」としか言いようないですから、マネージャーさんとすれば仕方ないでしょう。いろんな事情で一度国に戻って、また復帰、なんてウェールズみたいな例だってあるわけだし。特に日本のマーケットは、「同じ顔ぶれが年に数回あって練習して本番をやる」という団体も「常設弦楽四重奏団」と呼ぶ風習が定着しており(日本だけではなく、「常設」とファンが勝手に信じている団体の殆どはそういうやり方ですけど)、なかでもフリーランスの立場が弱くオケ以外に音楽家が安定して食う道がないニッポン(弦楽四重奏として教職を得るシステムがない、ということです)の場合は、聴衆の側がメンバー交代に極端に神経質なんで、その辺りも配慮しているんでしょうねぇ。エクの場合はそこをなんとかするためにNPOにしたんだが…その後、後を追おうという団体は出てこないしなぁ…

最初の危機を乗り越えた(んだろうなぁ)インテグラ、次の5年に向けて頑張って欲しいものであります。

なお、蛇足ながら、新チェロさんのところで触れられているエリザベート大会、前回2017年ファイナリストの岡本氏、やくぺん先生は来週の水曜日にヴィーンで拝聴するです。
https://www.berliner-philharmoniker.de/konzerte/kalender/details/55024/
https://konzerthaus.at/konzert/eventid/60678
音をしっかり保っている団体でやるって、まだまだ音を作っていく段階にあるのとはまるで違う仕事でしょうから、これはこれで大変だろうに。ぐぁんばってくれぇえ!

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