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ちいさなオペラあれこれ [音楽業界]

ちゃんとした音響で、室内楽やら合唱団の演奏会やってればなにも問題ないし、それが会場として最も適していることはスタッフだって百も千も承知な「音楽専用ホール」が、仕込みは面倒くさいしお金もいっぱいかかる、手間も滅茶苦茶かかりまくる「オペラ」なんてものをどうしてやりたがるの?…って、頭の悪い大学院生みたいにうちのお嫁ちゃまに真面目な顔で質問したら、「あのね、ホールの裏方って、そういうのやりたいのよ」とバッサリ一刀両断にされてしまったのであった。

あー、そーゆーもんなのかぁ。ま、大変さは本人達は判っていてやってるんならどうのこうの言うこともないのかしら、と思いつつ、秋の紅葉美しい…というわけにはいか桜木町駅から秋の冷たい雨が落ちそうな野毛山に登っていく紅葉坂へと向かったのは、去る日曜午後のことであった。そー、県立音楽堂スタッフが、コロナ禍勃発に巻き込まれて泣きの涙で葬ったバロックオペラの仇討ちか、一年と半年のコロナの時代につもりに積もったエネルギーを爆発させた、現代のポケット・オペラのステージでありまする。
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まあ、もう賛であれ否であれ、SNS上で散々に語られてしまっているようで、今更やくぺん先生なんぞがえらそーになんか言ってもしょーがないことではありまするが、正直な感想を記しておけば…器楽奏者を歌わせるってのは上手くいけばそれなりにやりようはあるんだなぁとか、終演後に「皆さん、選挙に行きましょう」という神奈川県選挙管理委員会の大きな垂れ幕が降りてくるんじゃないかとマジで思ってしまったりとか。

皮肉や冗談ではなく、そういう風に使われるべきストレート過ぎる作品なわけで、これはこれでありだと納得しましたです。演奏会としても、前半にきっちりと「この作品はブレヒトやらヴァイルやらアイスラーのやっていたことの現代版ですよ」と種明かしをしてくれたお陰で、逆にヴァイルなんぞの作品がどうして世間に媚びるギリギリまでのところを狙った音楽を散りばめねばならなかったのかも、今更ながらに納得させられた次第。見たくないこと、知りたくないことだからこそ、美味しい味で包み込んで出さないと多くの人には食べられない、ってことなんだわなぁ。

無論、作品の中身はとってもフランス社会を前提にしていて、ジワジワ締め上げるのだって世間の空気やら御上からの要請ではなくちゃんと法律なわけだし、自警団というどういう法的根拠があるのやらよーわからん公的な暴力装置をきっちり出してくるし、じゆーでへーわなニッポン社会では絶対に見せない「公的な暴力」の問題になっている。それ故にやっぱり他人事にしか感じられない人もいるだろー。ならばさ、いっそ、こんにゃく座と共同制作して…というわけにはいかないのだろーなぁ。

そんなこんな、やくたいないことをいろいろ考えつつ、摩訶不思議な結果となった衆議院選挙をぼーっと眺める日々も過ぎ、そういえばもうひとつ、小さなオペラがあったっけ、チケットを確保しなきゃ、とばかり、京浜東北線を港ヨコハマとは反対の方向に向かうのであった。こちら。もう随分とやっている、ちんちん電車が必死に登る丘の麓、王子は北とぴあ秋の名物、バロック・ヴァイオリンの寺門さんらが中心の秋の音楽祭、今年は目出度くも開催されるのでありまする。
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んでもて、今年はどういうわけか定番のバロック・オペラだけではなく、こんなもんがあります。そー、やくぺん先生的には、お目当てはこっち。
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チケット・センターのおねーさんもその名前をきちんと発音できず、なんでしたっけ、と繰り返すエルネスト・クシェネクのミニ・オペラの舞台上演でありまする。

クシェネクのオペラといえば、なんといっても《ジョニーは演奏する》でしょうし(小澤氏監督就任でヴィーンで出たプロダクション、今ならば絶対に映像化されているだろうに、あの頃はまだちゃんとした全曲収録がないんですよねぇ、NHKにはあると思うんだが)、音楽史教科書的には「世界で初の12音技法で書かれたオペラ」として名高く、数年前にはミュンヘンでガッツリ新演出が出ている《カール5世》という超大物があるのは皆様よーくご存じでありましょうぞ。猛烈な多作家だけに、どんな作品が出てきてもビックリしないけど、それにしてもこんな経歴の作品があったのは知らんかったぞ。こちらをご覧あれ。
https://twitter.com/tanukijijii0329/status/1456160680722132993/photo/1
っても、このサイトを眺めれば全てOK、って感じの広報がないですなぁ。しょーがないから、wikiさんでも眺めておきますか。なんと、今時、Youtubeにまともな映像の欠片すらないメイジャー作家のオペラなんて、あるんだなぁ。
https://en.wikipedia.org/wiki/What_Price_Confidence%3F

さあ切符を買いましょう、って勝手連にすらなってないけど、県立音楽堂でいろいろ思うところあった方には、こういうものもありますよ、って紹介でありました。勉強せにゃならんものはまだまだいっぱいありますな、この世界。

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