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ともかく巴里行き準備 [売文稼業]

先週、温泉県にちょっとだけ居た頃には「年が明ければ帰国後隔離も3日くらいになってるんじゃね」ってコロナ終わった終わった感が漂ってたのから一転、昨日来のキシダそーりニッポン鎖国宣言(除く治外法権の占領軍関係者及び家族)のお陰で、我が業界は上を下への大混乱。先程も縦長屋シン・ゴジラ視点の勉強部屋で、某大手音楽事務所元幹部ご隠居さんと深刻なヒソヒソ話しをしてしまいましたわ。来週から公演予定されていたフォーレQはダメだし(後述:来日しており、公演はあるそうです。こちら参照https://www.philiahall.com/html/series/201003.html)、年末第九に来る予定のルイージやらシモーネおばさまやら、どうなることやら。練習期間を考えればノット様は列島に既に入っているんだろうし、以前から滞在期間がやたらと長いツィメルマンは問題ないものの、いろいろと影響があるだろうなぁ。新年おめでとーのヴィーン・フォルクスオパーだって、そーりが大見得切っちゃった手前、いくらS社さんでも無理筋を通せないだろーし…

世間では大絶賛らしいそーりの鎖国宣言、やくぺん先生のお宅では大騒動であります。なんせ、2022年1月12日から23日まで、遙かシベリアの向こう華の都ぱりぃで開催されるクァルテット・ビエンナーレに顔を出す予定で準備が進んでおったのでありまする。これ。
https://philharmoniedeparis.fr/en/calendar?weekend_i=784&startDate=2022-01-12T00%3A00%3A00%2B01%3A00

今を去ることもうまる2年も前の12月、アムステルダムで開催されたヴァインベルク生誕100年記念ダネルQ弦楽四重奏全曲演奏会からブリュッセル経由で戻って以降、その直後の前回のパリのビエンナーレは諸事情で(ってか、引退表明をした手前、己に向けた決意という意味もあって)参加をパスしたため、やくぺん先生のパスポートったら、それから延々23ヶ月の間、全く本来の目的で使われていない。使ったのは、葛飾から温泉県へのオフィス移転で必要となった「写真付き身分証明」としてくらいじゃないかしら。

その間の世界の変化ったら、まるでやくぺん先生の「世界のメイジャー室内楽コンクールは基本的に全て眺めて歩く」生活からの引退宣言を、天の神様だか守護天使様だかがお耳に入れて下さったかのようなタイミング。とはいえ、人生最期のステージを細々と生きていくために必要最低限の稼ぎは確保せねばならず、そのためにも必要最低限の商売上の仕込みはしなけりゃならぬ。

となれば、2週間弱の間にプロ団体14、それにこのイベントの最大の売りたる、朝から晩まで30分くらいづつ次々とコンクールファイナリスト級の連中が登場する一種の国際オーディションたるショーケースで20団体ほど
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/23042-audition-internationale-de-quatuors-cordes?itemId=116789
欧州フランス系のメイジャー団体とヨーロッパのマーケットに最初に出てくるクラスの若手が一気にこれだけ聴けるのだから、まあ、隠居はしたといえ状況はある程度は押さえてますよ、と世間様に言えるくらいのことにはなる。これまでならば、この直後にハイデルベルクに移動して「ハイデルベルクの春音楽祭弦楽四重奏シリーズ」でマダム弦楽四重奏のオーディション(前回のロンドンで勝ったエスメが最初に出てきたのがここ)、そのままDBからオランダ国鉄に乗り継いでアムステルダムに向かい、2010年代にムジークヘボウで始まったアムステルダム弦楽四重奏ビエンナーレへと雪崩れ込み
https://sqba.nl/
来年だったら1月11日から2月5日まで3週間ちょいの欧州滞在で、若手から長老までなんのかんの50団体以上が聴ける、って2年に一度の大仕込み市みたいな期間だったわけでありまする。あとは、年に2、3回くらい世界のあちこちで開催されるメイジャー&準メイジャー級の国際コンクールを眺めておけば、ほぼ世界の弦楽四重奏業界の流れは俯瞰出来、商売としてこのジャンルの現役を保てたのでありました。

パリ→ハイデルベルク→アムステルダムと移動し、その間に出くわす副専攻(としか言い様がない)の「戦後のオペラ」を拾って歩けば、連日のコンサート・ヴェニュ通いで頭はパンパン、もー聴きたくない、なんて状態になる。いやいや、流石に体力的にも精神力的にもそりゃ無理。お嫁ちゃまがショーケースの審査員に名前が出ちゃってることもあり、それなら巴里だけはくっついていって、「おおインテグラくん、巴里はいかがじゃね、シンプリーくんたちもすっかり上海Q後続路線じゃのぉ、ぐぁんばりたまぇ」なんて隠居顔してノンビリ気分でえらそーにふんぞり返っててやろーじゃないかい。ま、引退オヤジなりの、ギリギリ最低限のネタ仕込みですな。

まかり間違って2週間の隔離が続いていれば、既に変更不可能なLCC激安チケットを取ってある成田温泉県往復と温泉県からの片道との総計3フライト約100USドル弱をドブに捨てることになってしまうが、隠居とはいえ商売の仕込みのためなら諦めるしかない、と腹を据えていたところに、昨日来の国境封鎖騒動が勃発。またまたわけがわからぬ状況に戻ってしまった。

現時点でパリ側の動きは全く読みようがない(無論、フィルハーモニー・ド・パリからはなんも言って来ません、「なんくるないさ」さもなきゃ「革命だぁ」のラテン系のお国でありますから)。とはいえ、ニッポン政府の今の動きを眺めていると、国を出られて仏蘭西国が受け入れてくれても、ヘタすりゃ帰国時の入国人数制限が厳しくなっていて予定日に戻れない可能性も考えねばならぬ。ここまで来たらもうギャンブル。あれやこれやの条件を考えると、さっさと東京パリ往復直行便、それもニッポン国大使館などに連絡が付きやすい日系キャリア、貧乏人のやくぺん先生が電動自転車を諦めれば買える最安値のキャンセル可能チケットを取ってしまうべきであろー。

かくて、先程、JALの羽田発巴里往復を押さえた次第でありまする。

自民党航空部局と呼ばれ今や日本国際線のトップレーベルたるいつものスタアラANAではなく、かつてのニッポンのフラッグキャリア、空飛ぶ運輸省航空事業部、親方鶴丸での渡欧って、我が人生でこれで3度目…かな。

最初は90年代初め、ベルリン統一直後にJALがなにを血迷ったかフランクフルト経由でベルリン・シェーネフェルトにジャンボを突っ込んだときに取材タイアップでいただいた、人生初のビジネス・クラス空の旅。その後はずっとノースウェストKLMの縛りがあり、青いジャンボで渡欧の入口はスキポールばかり。KLMがミネソタのヤンキーと離婚し仏蘭西のオシャレな奴と政略結婚、その混乱で何故かKLMで買った便がエールフランスと提携していたJALにされてしまい、マイルが付かずに怒りまくった、ってことがあったくらい。お嫁ちゃまに至っては、チューリッヒからアムステルダム経由で戻る筈が飛行機が離陸直後に機材故障で引き返し、一緒に乗っていたハンドボール日本ナショナルチーム一行のマネージャーと一緒になってクローテン空港でわいのわいの談判し振り替えのチケットを出させたら何故かJALだった、という騒動のときしか鶴丸さんには乗ったことないそうな。

さても、やくぺん先生2年と1ヶ月ぶりのシベリア越え渡航、果たしてホントに実現するや。続きは、多分、数週間後。

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紅葉終わりの音楽祭 [ゆふいん音楽祭]

新暦霜月最後の土曜日午後4時から、ゆふいんラックホールで「秋のゆふいん音楽祭2021」が開催されます。
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出演者は、2009年まで35回の夏にレギュラー開催されてた頃に何度も訪れて下さってたチェロの山崎伸子さんと、最後の頃に若き「ゴールドベルク三勇士」のピアニストとして見参し今や押しも押されぬ中堅トップとなった津田裕也さんでありまする。

演目も堂々たるもので、まずは町民音楽祭関係者の半世紀の悲願だった「まともなホール」を祝うに相応しいバッハの無伴奏チェロ組曲第1番で幕を開け、津田さんが公民館にあった困りもののピアノがこんなに立派に音が出るようになりましたとショパンの《舟歌》などを披露。後半は晩秋とはいえ辛気くさいもんではなく、敢えてメンデルスゾーンの若い率直なアホっぽさに誰も文句言えない習作期最後の変奏曲と、成熟した作曲家となっても歌心を忘れないソナタ第2番という元気溌剌、でも重厚になりすぎない、土曜日の夕方のプログラムでありまする。

先程、最初のステージ練習が終わったんですが
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半年前の梅雨のムシムシする盆地で「初夏のゆふいん音楽祭2021」で実質的なオープンとなった新公民館内ラックホール
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2021-06-27
あのときはもう、みんなホールが出来たことで嬉しくて舞い上がってて、演奏する町民の小林先生ひとりが冷静にこの時期に盆地で演奏会をやる難しさをひしひしと実感なさってたんだけど、流石に半年が経ち、コロナ禍でコンサート使用実績などは殆ど皆無とはいえ、先週末には夏から延期になった映画祭があったりとそれなりに使われ、いろいろ現実的な問題点も分かってきた。

今回は、床の材質の立派さが些か裏目に出て、チェロをホール全体に響かせるには相当なテクニックと体力が必要である、という現実が指摘されました。理想的には明日までに適切なチェロ台でもあればいいんだけどねー、ということになって、S新実行委員長やK前実行委員長が走りまわることになる…のかな。ま、今回は、演奏者の老獪なアンサンブル・テクニックにひたすら頭を上げる、ってことになりそうだなぁ。

あ、誤解なさぬよーに。まだ取り壊しは始まっていない向かいの懐かしい旧公民館だったら、そもそも問題にならないような話です。「床の材質とホールの構造のために、チェロの響きが全体に伝わり難い」なんて、ちゃんとしたまともな音楽ホール竣工後にほんまもんの口煩いプロ中のプロから指摘されるような問題点。要は、「超一流のプロの調理人に新しい包丁を使って貰ったら、これこれこういう改善点があると指摘された」ってことです。なんせ、これまでの35回のレギュラー音楽祭とその後の不定期開催音楽祭ったら、「包丁がないんで、ともかくそこにある万能ナイフで料理しましょうか」なーんて情けなぁい状況が続いていたわけですからねぇ。

ああああ「ホールの響き」の話が出来るなんてまるでゆふいん音楽祭じゃないみたいだ、なんてトホホな感動がこみ上げてくる、白熱の舞台練習でありましたとさ。

秋も深まり、もう朝夕はすっかり冬の寒さの由布院盆地、やくぺん先生のオフィスったら、当初の予定ならこの音楽祭前にはリフォームが終わり、演奏会後も暫く長逗留してそれなりに溜まった作文仕事、お嫁ちゃまはオンラインで授業の予定だったんだけど、コロナで世界の製造業と流通が滅茶苦茶で水まわりの部品製造がアジア各地で滞っており、トイレがやっと数日前に到着、縁側に部品として積み上がっており、配管工事も終わっておりませぬぅ。

で、仕方なく昨日夕方に盆地に入ったあと、本日はリフォーム工事に立ち会い、ガス屋さんとの契約やら水道関係の書類を役所に貰いに行くやらの細かい作業。水が出ないわトイレがないわでは滞在出来ないため、盆地には希少な駅近くの泊まるだけ庶民宿に宿泊しておりまする。で、明日の音楽祭が終わったらその足で別府に下り、日曜朝一のジェット★で成田に戻ってるんるん京成でこれまた晩秋の色染まる上野の杜に直行、奏楽堂で前音楽監督らのチェロ合奏を拝聴することになっております。

工事が終わっていようがいまいが、やくぺん先生がいようがいまいが、石武オフィスの庭はすっかり秋。
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もうコロナなんてなかったかのように、JR九州さんも頑張ってこんな臨時列車走らせたりしておりまする。
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ゆふいん音楽祭秋のコンサート、個人的にはやっぱりこの季節、かのブラームスの♪あーきのゆーひーにぃ、てるやまもーみぃじぃ、変奏曲をクラリネットと弦楽四重奏の妙なる響き聴きたかったけど…ま、それはいずれまたいずれ。秋夕日の由布岳。
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ゆふいん音楽祭秋、諸方面リクエストに応え少数ながら当日券を出すとのこと。最後の紅葉に染まる温泉県盆地へ、皆様、いらっしゃいませ。

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貴志康一のヴァイオリン二重奏特集 [現代音楽]

いやぁ、「現代音楽」カテゴリーじゃなかろーに、と言われそうだけど、じゃあ他になんなんねんってことになるんで、ともかくここに入れますぅ。

現役バリバリの作曲家さんに言わせれば、「日本の演奏会は自国作曲家を取り上げなさすぎる」とお怒りまくりなのは今に始まったことではない。とはいえ、正直、昨年春からのコロナ禍にあって、やくぺん先生の個人的な印象を言うに、いちばん影響を受けてないのは現代作曲家の皆さん。ましてや、外国からの演奏家が実質舞台上から消えてしまったこともあり、その演奏家が背負ってくる自分の文化圏の作曲家作品を耳にする機会は激減。結果として「現代作品」で耳にするのは、国際作曲コンクールとかを除けば、我らが祖国たるニッポンの作曲家の作品ばかりになってる。あくまでも印象なんだけど、昨年6月のコロナ下での演奏会再開後今に至るまで、ニッポン国のあちこちでニッポン国在住現役作曲家さんの作品が演奏される頻度ってば、ことによると1947年頭から44年暮れの頃にも匹敵してるんじゃないかしら。来年早々にも、誰かきちんと調べてみてくれないかなぁ。大学院修士論文くらいで何をやっていいか判らないそこの貴方、マジ、やってみませんか?大東亜戦争大政翼賛体制下の演奏会のデータって、案外、調べやすいと思うし。

もといもとい。実際、この数日のやくぺん先生ったら、前半がベートーヴェンで後半が権代作品ばかりのピアノ演奏会とか、伊福部昭バレエ曲大会とか、ふたつにひとつはその類い。んで、これから勝手連的に紹介しようというのも、そんなもん。こちらでありまする。
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どうやらこれが公式の告知ページみたいなんですけど…
https://gramoclub78.hatenablog.com/

所謂「クラシック音楽」系の主催者さんではなく、SPだとか昭和歌謡なんかをテーマにしている方みたいで、うううむ、流れとしては伊福部大会をやってくれた主催者さんなんかと似たテイスト、時代がひとつ昔の大戦間時代に遡ってる、って感じだなぁ。こりゃ、クラシック系音楽ファンが見落としてしまうのも仕方なかろーに。

演奏なさるのは皆様お馴染みのヴァイオリニストさんで、演目は貴志康一のヴァイオリン・ソナタをメインに、有名な《竹取物語》以下、実質上これで貴志のヴァイオリンとピアノの二重奏はほぼ全部なんじゃないかしら。10月頭のオペラシティで、貴志のヴァイオリン協奏曲をお聴きになって、ああああ素晴らしいぃい、とお感じになられた方は、もう絶対に来ないとダメでしょ、これ。

なお、やくぺん先生も最初完全に誤解してたんですけど、この演奏会、紀尾井ホールじゃありませんからね。お間違いなく。

…以上、勝手連な演奏会宣伝をした最後に、何を隠そう、というか、当電子壁新聞を貼り付けたホントの理由を記すとぉ…

皆々様、この演奏会の告知チラシに使われている貴志康一が指揮台に立っている有名な写真、このヴァイオリンのコンマス隣に座ってる、半分くらいしか見えてない若いヴァイオリニストさんって…シモン・ゴールドベルク氏じゃないかなぁ。どなたか確たる情報をお持ちの方、ご教授下さいませんかね。

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伊福部バレエ冊子売ります [現代音楽]

昨日、こんな演奏会がありました。このサイトなら、まだ生きてるのかな。
https://spice.eplus.jp/articles/294292

オーケストラ・トリプティークをコアに、20世紀以降、特に1950年代から80年代くらいの日本の管弦楽作品、あまり使いたい時代区分ではないけど「昭和中後期のニッポン音楽」、それも20世紀末まで世界を支配した音楽史パラダイムからは落ちていたような作品を掘り返している団体があります。この公式サイトがいちばん判りやすいですね、やっぱり。
https://3s-ca.jimdofree.com/

20世紀後半には芥川也寸志さんが率いる(と、言っていいのかしら)新交響楽団が「前衛音楽主流から落ちた作品」を取り上げる代表選手だったわけですが
http://www.shinkyo.com/concert/i232-2.html
アマオケとしての新交響楽団の性格が変わってきている今(善し悪し、好き嫌い、の問題ではなく)、21世紀20年代の今、かつての「芥川&新交響楽団&フォンテック」の役割を担っているのが、この団体であることは衆目の一致するところでありましょうぞ。この団体、コロナ禍の中でも比較的活発な活動をなんとか続けており、それもそれでまた凄いところなんだが、ま、それはそれ。

そんな団体が昨日やったのが、いちばん上のURLで前パブ記事が出ている「伊福部バレエ作品大会」だったわけありまする。どんな演奏会だったか、多分、「トリプティーク 伊福部」でググればいくらでも感想が出てくるでしょうから、そっちをご覧あれ。オケの皆様、裏方の皆様、お疲れ様でした。

で、本題はここから。昨日、ミューザ川崎でコロナ禍の演奏会スタンダードとなった「自分でチケット半券もぎって入場し、その向こうに置いてある当日配布物を自分で拾う」というプロセスを経て指定されたオーディトリアムの席に向かうわけでありまするが、そのピックアップする配布物が、なんとも凄いものだった。こちらが表紙で
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総計40数ページのオールカラー写真満載の「伊福部昭のバレエ作品論」小冊子なんであります。曲目解説にはこんなページとかも。
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こういう団体の演奏会は、演奏そのものもそうですが、配布物に猛烈に力が入っているのは皆様ご存じの通り。今時、なによりも真っ先にコストカットの対象となる曲目解説なんぞが、猛烈に充実し、力が入りまくったものになる。なんせ、言葉の最良の意味でコスト考えずに書き手も冊子作り手も全力投球してきますからねぇ。

いやぁ、これは凄い、充分にこれだけで売り物になる冊子ではないかぁ。考えてみれば、21世紀の紙からSNSへの情報媒体の変化、グーテンベルクの印刷革命以来の大革命を目の前にしてただ狼狽えているわしら旧世代とすれば、20世紀にはこういう冊子タイプのピンポイント情報媒体って、大手から弱小に至るまで出版社さんが出してたよねぇ、と懐かしく思うほど。字数やページの制限がなく映像資料のレイアウトも簡単なウェブとなって、定価数百円でB5より小さいくらいの判型の冊子、という媒体は絶滅していたのであるなぁ、とあらためて気付かされた次第。だってさ、今は「Webに上がってますから、必要ならご自分でプリントアウトして下さい」だもんね。

これは冊子として書棚に並べるに値する資料である、と主催者さんに感謝しつつ、積み上がってたのをもっと貰ってくれば良かったなぁ、欲しい人は日本語文化圏にそれなりの数はいるだろーに、なーんて思ってたら、先程、主催者さんから、「冊子をネットで販売します」というアナウンスがありました。ほれ。
https://3scdjrl.shopselect.net/items/55738062

これ、近代現代日本の管弦楽作品に関心のある方は、絶対に基本資料として揃えておかねばならぬ冊子です。いろいろ面倒なこともあるけど、ちゃんと国会図書館やら上野の東京文化会館音楽資料室に納めて貰わないと困る類いのものでありまする。恐らく、昨日の演奏会はライヴCD化されるでしょうが、流石にこの冊子をまんまジャケットに納めるのは物理的に無理でしょう。このような形で公式に分売するのは、極めて賢く、よろしいことでありまするな。

紙媒体とはなんなのか、とあらためて考えされられるところもあるが、ま、それはまあ、それとしておきましょ。欲しい人は慌ててポチットして下さいな。当然ながら、在庫のみ限定品ですから。

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室内楽ネットワークというもの [演奏家]

こんな演奏会に行って参りましたです。
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Qアルモニコと「びみょーに澤Q」によるメンデルスゾーン弦楽八重奏曲がメインで、前半にハイドンの《ラルゴ》が付いている。主催は、また別の項目を立てて議論せにゃならん公益財団さんの無料コンサート。演目からお判りのように、午後6時に開演して正味一時間、要は「ラッシュアワー・コンサート」ですな。新浦安でやるかぁ、と湘南やら多摩地区の方々から突っ込まれればそれまでだが、それなりの人口と独自のコミュニティが存在する浦安新住民やら、蘇我方面にお帰りになろうという千葉都民、はたまた武蔵野線で帰れる沿線住民からすれば、案外と良い立地なのかも。

ま、そういう議論はそれとして、ともかく久しぶりのアルモニコでありまする。チェロが安定してからもう10年、とはいわないまでも、ずいぶんになるような。やくぺん先生ったら、どういう訳かこの連中が演奏会をやる日はいつも日本にいなかったりなんか先に入っていたりで、きっちりハイドンを聴いたのはこのメンツになってから初めて…かな、ヘタすると。んで、アルモニコの必殺技とも言えるさやちゃん(などというともう失礼なレディでありまするが)のお茶目さ炸裂、あああああ、久しぶりのアルモニコだなぁ、と感慨深かったものでありました。

今となればもう時効でしょうから記してもかまわんだろーけど、今世紀の頭くらい、山岡先生の大プッシュでマイスル御大のところに預けられるように「藝大初の弦楽四重奏として大学院に入った4人」がヴィーンに渡り、グラーツで優勝し、なんのかんのなんのかんの。あのときに、ヴィーンで出会った日本人ではないチェロを迎え、音楽の都に骨を埋める決意をし、なんのかんのなんのかんのなんのかんの、とかするなんてことになっていれば…そうねぇ、今のシンプリーQみたいなポジションには付けられた可能性もあった。アマデウスの爺ちゃん達を魅了した、上手いだけと揶揄されていた日本の団体にはなかった独特のキュートなセンスの良さは、正に90年代アマデウスの子供たちの最後の末裔として、大流行の「HIP」なんぞ何処吹く風のスタイルで、同じ頃にやってくるクスやらベルチャやらエベーネやらの新世代との世界覇権の闘いの中に独自の地位を占められたかもなぁ…なああああんて、失礼と言えば猛烈に失礼な妄想をかき立てられながら、ホントに懐かしく、そして、それなりに経験もお歳も召した音楽に浸っていたわけでありまする。

あああ、こういうことを考えるようになったら、ホントに隠居老人じゃのぉ。

んで、問題は後半じゃわい。なんと、こんなん!
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いちやんが都合でキャンセル、代打は我らが吉田様ではあーりませんかぁあああ!

うううん、エクは今年になって、少なくとも2回はこの曲をやってるし、夏の甲斐路で共演した方が本日もいらっしゃったりする。舞台上からアルモニコ・シン・チェロ氏がお話になるに、かなり急な話だったみたい。ともかく、話があって時間が合えば、はい行きましょ、ってちゃんとアンサンブルがやれる。音楽としてはもう林さんノリノリで引っ張り、曲のキャラとして第1ヴァイオリンはどんどん行ってくれ、あとはみんななんとかするから、というアンサンブルがほいやっ、とやれてしまう。

正に、ニッポン首都圏(林さんが東京かはともかく)の室内楽ネットワークはそれなりにきちんと機能しておるなぁ、と感深いものがありました。

室内楽には、はっきり「業界」があります。そこで商売が成立するフィールド、お金の動き方という意味ではなく、要は「〇〇弦楽四重奏団のヴィオラ奏者が急病だ、じゃああいつに連絡しよう」というネットワークのことです。こういうネットワークの中に入ってくる、そういうことが出来る奴と認識される、それがホントの意味での「室内楽業界に入る」ということ。こういう広がりがどれくらいあるかが、その都市の音楽的実力になる。

無論、そんなネットワークがきちんと出来れば国境を越えた対応も出来、例えば最近ではモディリアーニQのアメリカ公演が、ヴィオラがコロナ絡みだったのかな、ともかく渡米出来ず、さあどうする。で、声がかかったのが、前アタッカQのルークくんだったそうな。無事にツアーが全部出来たかは知らないけど、ともかく、代打には入れたらしい。ニッポンでもいつだったか、イェルサレムQだかがチェロがダメになって、たまたま日本にいたボロメオQのイーサンに声がかかった、ってのがあったような。そういうのは全然珍しくなく、「業界」としては当たり前。そうそう、最近ではプラジャークQのカニュカ氏がヴィーハンQの日本ツアーに入ってたっけ。

こういうことが出来るネットワークが、ちゃんとニッポンにもある。分母の規模がどれくらいなのか、ってのはまた別の問題だけどさ。トーキョーも、なかなか捨てたもんじゃないじゃんか。

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石橋メモリアルホール存続? [音楽業界]

先週の「石橋メモリアルホールがブシロードに売却される」というニュースの衝撃が未だに業界に波紋を巻き起こし続けているところへ、本日11月16日、新たな情報が提供されました。

石橋メモリアルホールを会場のひとつとして使っていたイースター前のトーキョー音楽の桜祭り、「東京・春・音楽祭」2022年の概要が発表されました。広報資料をまんま貼り付けるわけにはいけないでしょうが、公式ページの更新もあるようなので、ご覧あれ。
https://www.tokyo-harusai.com/news_jp/20211116/

っても、まだこちらはホントに概要のようですねぇ。会場についてはまるで触れてませんので、これじゃなにも判らんなぁ。

リリースが来ているのだから記しても良いのでしょう。なにが驚いたかというに、本日発表された演奏会予定リストの中に、石橋メモリアルホールが会場となる演奏会がしっかり並んでいるのですよ。具体的に言えば…

★3月21日:對馬哲男(ヴァイオリン)、日橋辰朗(ホルン)、加藤洋之(ピアノ)

★3月29日:トリオ・アコード

★4月10日:東京春祭 歌曲シリーズ vol.34  リカルダ・メルベート(ソプラノ)&三ッ石潤司(ピアノ)

★4月17日:東京春祭ディスカヴァリー・シリーズ vol.8  パウル・ヒンデミット

以上の4公演の会場が石橋メモリアルホールとなっています。うち、トリオ・アコード以外は全て同じ時間に他の会場で公演が行われています。

現時点では、12月に入るや改装作業に着手、2022年3月頃に「飛行船シアター」として再オープン、と読めるリリースがブシロード側から出ていたわけで、先の具体的な予定についてはなにもなかった。所謂「クラシック」系のコンサートがあるのか、全く判らなかった。そんな中に、来年の3月以降も「石橋メモリアルホール」という名称で何事もなかったかのように使います、という情報がいきなり出てきたわけですから、なんなんねん、としか思えんわ。

なんにせよ、3月の公演は12月19日からチケット発売となっていますので、その時点ではもう少し確たる情報が出るでしょう。「飛行船シアター」という名前にはなっていないし、3月末まで学内でも使えないという悲鳴が上がっているのに演奏会があると記されていたり、頭を捻りたくなるような情報ではありますが、少なくとも会場を借りるなり提供されるなりの当事者として関わっている音楽祭事務局が状況を把握していないとは思えませんので…なにか理由があっての発表なのでしょうねぇ。クラシック系では旧来の名称を維持する、ということなのかしら?

うううむ、なにがなんだか…

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大阪の近代産業遺産にアヒルが浮かぶのダック! [たびの空]

なんのかんので、スカイマーク最終便羽田行き最終便への搭乗を、寂しい神戸空港で待ってます。ANAさんの最終便は先程出発し、今、多分、本日最終の到着便から人々が降機してるところ。

なんでこんなことになってるかといえば、こいつのお陰ダック!
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言わずと知れたオランダのアーティスト、フロレンティン・ホフマンの代表作「ラバー・ダック」が、かつての大阪の造船業を牽引した湾岸地区の工場跡地にポッカリと浮かぶのじゃ。

モダンアートの定番のひとつに、「見慣れたどーでもいいものを巨大化させ、日常の中に配置することで、世界を異化する」というやり方があるのは、当電子壁新聞を立ち読みしようなんぞ暇で酔狂な奴には説明不要な常識でありましょう。所謂パブリックアートの何割かは、こういう「デッカい〇〇」ですな。デッカくするものは、怪獣やら宇宙人やらな映画館NETFLIX画面で見慣れたものではダメで、可能な限り当たり前で、人畜無害なものであればあるほど良い。んで、ホフマン先生ったら、お風呂にポッカリ浮かんだアヒルを運河に浮かべてみたいと思ったんでしょうな。運河が縦横にあって、ラバーダック文化圏のオランダに住んでいるアーティストなら、ま、極めて自然な異常な発想(?)でありまする。

かくて出現したら9メートルのデッカいアヒル、まるでかつてちょっと流行した世界を旅するペンギン写真集みたいに世界中の港やら海やら池やらに姿を現す大人気パブリックアートとなった。今回のイベントの冊子には「実はこのアヒルちゃん、北加賀屋生まれなんです!」って詳細な説明無しにビックリマークが付けられてるんだけど、ホフマン博士(かどーか知らんが、こういう巨大〇〇というのは「博士」が誕生させるものなのじゃ)の設計図があって現地で制作する複製アートでもあり、どうやらアジア地区ではこの辺りの工房(だか、工場だか)で製作しているということですかな。

ま、どういう経緯か知らんが、「大阪近代化遺産・名村造船所大阪工場跡」なる大阪湾岸地区のアヤシげな辺りの地元関係者が立ち上げた地域活性化ローカル・イベントの人寄せパンダ、じゃなくぅ、人寄せアヒルとして、「ラバーダック」がプカプカ浮くことになったようじゃわい。
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やくぺん先生とすれば、ラバーダック文化圏ではないニッポンでは極めて困難なアヒル部隊新兵リクルートが可能な貴重なイベント、これは足を運ばねばなりませぬダックダック!

かくて、コロナがなければ華の都ぱりぃで「シュトックハウゼン・ウィーク」を見物していた筈の日曜日、冬でも日の出が早い東経135度住民とはいえまだまだ夜明けは遙かな午前4時過ぎに新帝都大川端を出て、朝5時東京ハウプトバーンホフ発のバスで成田空港に向かい、朝7時台出発ラッシュのジェット★に乗りこみ、一昨年夏にミュンヘンだかから戻って以来の関空島に到着。南海電車と大阪市営地下鉄(じゃないのかな、維新の世界になってからは)乗り継いで大阪湾岸は北加賀屋って駅まで届くと、もうお昼前。なるほど、20世紀初頭に大規模再開発が始まる前の豊洲みたいな場所ね、って(とはいえ、あまり軍関係の匂いがしないのは商都大阪でんな)、湾岸住民とすれば妙に懐かしい空気も漂う場所で、ぞろぞろと地下鉄駅からイベント会場に向かう人の流れに乗るのであったぁ。

正式には「すみのえアート・ビート2021」なる名称のアート・フェス、イベントとしてみればあちこちがゆるゆるで、正直、警備会社手配含めうん千万円で引き受けました、って広告代理店がっつり入ってる空気バンバン漂う首都圏っぽいテキパキきっちりイベント、はたまた「なんかあったら大変」で全てが発想されるお役所系のイベント、なんぞではあり得ないいーかげんさというか、ノンビリさというか、緩さというか、ちょっとマズいんじゃね感満載というか…ま、我らが温泉県盆地の音楽祭と似たり寄ったりの田舎祭り。コロナ対策の入場者連絡先書かせる列の横に張られてた会場案内がこれ。
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んで、メイン会場とも言えぬ工場跡地から眺めた全体風景が、こちら。
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一応、全宇宙に遍く存在する数十万人のアヒル愛好家諸氏のために、あくまでもアヒルっぽいところを拾って紹介すれば、これとか
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おお、参列者に混じるカッパアヒルは、初めて現物を見たぞ。んで、これとか
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これ、展示なのか、子どもがアヒルで遊ぶところなのか、よーわからんなぁ。展示っぽいといえば、これとか
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後ろにはアヒルトヨタ車があるのだけど、流石に痛々しく、どんなもんかは皆様のご想像に任せまするダック!んで、メインの巨大ダックをも凌ぐ人気は、こちら。
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おおおお、運河に浮かび自由に空を駆ける、ドローンダックなのダックっ!

会場に至る道にはマンホールの蓋にアヒル描いたり、洋食屋の看板には「本日限定ラバーダック・オムライス」などと宣伝が出ていたり、それなりに盛り上がっていた…んだろーなぁ。

「世界のアヒル展示即売」とか「造船所跡地の運河にアヒルごまんと浮かべて大アヒルレース」とか、アヒル関係なら当然あり得るだろうと期待していたイベントはなく、アヒルアヒルと集まった人々は、たこ焼き食ったり地ビール飲んだり、ローカルアーティストの作品を買ったりしてる都市型秋祭りでありましたとさ。

ま、おーさか市民がアヒルみたさにこれだけ集まった、という状況を眺めるだけでも、新帝都から出張っただけの価値はあったであろーと、リクルートした総計3匹の新兵アヒルを背負子に詰め、これ以上ここにいるとコロナになるぞ、さもなきゃ維新ウィルスがうつるぞ、ってさっさと会場を跡にし、新帝都に日帰りで戻るシンカンセンよりもLCCよりも安かった公共交通機関たるスカイマーク最終便が待つ神戸へと遁走したダックダック!

ちなみに、ラバーダック・オムライス、案の定twitter上を検索するといくつか紹介している写真が発見されますが、うううむ、「インスタ映え」から遠い散々な出来だったよーで、敢えて紹介いたしませぬ。どーしても眺めたいという方は、「ラバーダック オムライス」で過去1週間の映像検索でおしてみてください。ハラホロヒレハレ、って情けなさに崩れ落ちること必至。

なお、我らが巨大アヒル、次にこの鎖国列島に浮かぶのは大阪の中之島とのこと。なんでオーサカ人、アヒル隊長好きなんねん?なら、アムステルダムみたいな専門店を作ってくれダック!
https://www.hikari-kyoen.com/area/nakanoshima/

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衝撃:石橋メモリアルホールが着ぐるみ劇場に [音楽業界]

諸事情で当電子壁新聞では殆ど取り上げられていなかった上野学園問題ですが、昨日になって大きな、というか、学校関係者ではない音楽ファンや業界とすれば実質上の最終決着とも言えるニュースが公式に報じられました。既にもう業界内外で大いに話題になってる旧聞ですが、当電子壁新聞のアルヒーフとしては不可欠なので、記して起きます。こちら。
https://www.uenogakuen.ac.jp/university/news/2021/post_297.html
重要な部分をコピペします。

学校法人上野学園は、株式会社ブシロード(代表取締役社長:橋本義賢、上場市場:東証マザーズ)の連結子会社である株式会社ブシロードミュージック(代表取締役社長:森川浩)と、上野学園 石橋メモリアルホール(本ホール)の譲渡に関する契約を2021年10月29日に締結いたしました。本ホールは、今後、ブシロードグループ企業である株式会社劇団飛行船(代表取締役社長:大場隆志)が運営いたします。上野学園は、本ホールを引き続き講堂として、教育関連の行事、演奏会等で使用していきます。また、上野学園はブシロードミュージック、劇団飛行船と産学連携で芸術文化を通じた新しい教育の開発に取り組む予定です。

本ホールは2010年に開館し、約11年にわたり音楽ホールとして親しまれてきました。しかしながら、クラシック音楽専用のコンサートホール運営は容易でないことに加えて、昨年来のコロナ禍においてますます厳しい状況となりました。上野学園は中長期的な視点にたち、施設の有効利用、恒常的な運営費用等の低減、財務体質の強化等の経営効率化のため、ホールの譲渡を決定いたしました。

2024年に創立120周年を迎える上野学園は、建学の精神「自覚」のもと、時代の節目において社会の在り方とその先を見据えた教育を行って参りました。急速に進む社会の変化のなかにおいて、人間力と教養をもって、力強く生きる学生生徒を育てることを使命とし、学園は新たな時代に向かって進んでまいります。

本ホールを愛し、今日までご支援くださいました皆さまに心より感謝申し上げますとともに、引き続き新しいホールへもご支援を賜りますようお願い申し上げます。

学校法人 上野学園

なにしろ2017年以降、上野学園の経営問題はスター演奏家含め業界関係者数百人を巻き込む大騒動になっておりました。ぶっちゃけ、やくぺん先生的には個人的に当事者として関わりがある者が家庭内にいる事情もあり、こんな「書いてあることはみんな嘘、信じるなぁ」をモットーとするへっぽこ電子壁新聞に詳細を記すなど不可能。音楽ファンの皆様に広く関心がありそうな部分のみを、オブラートに包んだ最低限の情報をメモとして置いておくに留まっておりました。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-01-04
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-03-11
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-03-15
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2020-07-24

コロナ勃発前の時点で、学校としての上野学園の存続という問題はひとつの峠を越え、生徒やファカリティをいかに脱出させるか、という難問も上手い具合に世間の話題にされることなく処理(し切れなかったことも山のようにあるのでしょうけど)、音楽学校がひとつなくなるけど付属の小中学校は生き残る、という文部省的な処理は見えていた。

とはいえ、カザルスホール、津田ホールとバブル期に竣工され20世紀末まで華々しく活動していた500席規模の民間室内楽専用ホールが、経営的には最も難しい規模ということもあり、次々と「騒動」を起こしながら消えていき、バブル期ニッポン永田音響タイプの響きの深い500席規模ホールとしては最後にやってきたシン石橋メモリアルホールというハードウェアの処理の問題が最後に残った。で、何故かニッポンの大手メディアさんは、「組織」の解体や存続に関してはそんなものがどーなろーが殆ど興味を示さないのだけど、「ホール」などのハードウェアというか、不動産というか、株価に関わる資産価値として数字化し得る目の見えるものの存続問題となると急に関心を示してくれる不思議な特性があり、昨日来「石橋メモリアルホールの売却」という切り口で話題になり始めている、というのが今の状況であります。

つまり、組織としての上野学園問題ではなく、あくまでもホールという不動産の所有権移転という議論として世間に可視化された、ということ。学校の整理問題としては、最終局面に入ったわけですな。

そんなこんなで話題になっていることを眺めてみると、現在出ている情報だけでは、本当にうううううむと腕を組んで考え込むか、なんなんねんと頭抱えてしまうしかない。

だってさ、オルガンが設置され猛烈に残響が深く台詞は全然聞き取れないうえに祈祷室みたいな何に使うか判らぬ空間まで備えた「音楽専用ホール」を、どーして着ぐるみ子ども向け演劇をメインとする劇団が拠点とするんねん?ジャニーズが東京グローブ座を買い取った、予備校チェーンがザ・シンフォニーホールを買い取った、どころの違和感では済まない。普通に考えて、なんでこんなの買っちゃったの、他になにもなかったの、としか言い様がない。特殊な用途では最高の物件を、まるで違う用途に使うためにハードウェアとしての美点を全てリフォームで無くしちゃわないとダメじゃんけぇ!っどうして誰も止めなかったんだ、としか言いようがない。

ジャニーズは自前の劇場を新宿近くに欲しかったのだろうから、ま、あれはあれであり。滋慶学園グループはポピュラー系のコンセルバトワールをやってるし、プロデューサーにはジュリアード出身の打楽器奏者さんを置いたから、まあやり方はともかく、やってることは判ってる。だけど、このブシロードさんからのリリースを眺めるに、おいおいおい、石橋メモリアルホールってどういう空間か、ホントに判って買ったんですかぁ、と音楽ファンやら古楽ファンの全員が突っ込みたくなるでしょ。
https://www.gamer.ne.jp/news/202111080038/

なんせ、

・音楽ホールから音楽文化ホールに変更し、舞台公演にも対応します
・吸音設備を充実させることにより、音の残響時間をコントロールできるようにします
・270度プロジェクションマッピングを導入し、没入感を楽しむことができます

ですから、もうこれは永田音響タイプ音楽ホールの美点は全て捨てます、って宣言してるようなもんだもん。ううううむ…

深夜アニメのスポンサーやって頑張ってる中野の会社の着ぐるみ劇団が、東に進出して上野の山の下に劇場を持つのが悪いわけではない。秋葉原からも近いと言えば近いし、昨今のアメ横の動向など鑑みるに、あのアヤシげなかつてのバイク屋街裏、鉄オタの聖地地下鉄の踏切裏が、インバウンド熱狂のサブカルの聖地になるのは、あり得ないことではない。上野の山の上と下の対比という意味でも、下にこういうもんが広がるのはトポロジカルな感覚からもおかしくはありません。だけどねぇ、トヨタ・センチュリーの中古をイタ車にしちゃった、って「なんてことしてくれたんだぁ」感は否めないだろーにさ。

コロナ禍であちこちの建築施工が遅れてる中、たった3ヶ月でリフォームを終えて、次の東京春やってる頃には他人事みたい着ぐるみ役者さんが歌ったり踊ったりします、ってのも、ホントに大丈夫なタイムラインなのかと心配だが…ま、それはそれ。ちなみに、今時はこういう騒動の生の声はtwitterというメディアがいちばん状況の切り取りに適しているようで、瞬間の悲鳴みたいなものだという前提の元で、この辺りをご覧になるといろいろ見えたり見えなかったり。
https://twitter.com/search?q=%E4%B8%8A%E9%87%8E%E5%AD%A6%E5%9C%92&src=typed_query&f=top

足かけ5年を越えることになった上野学園存続問題、最後の最後にまさかのこんな展開になるなんて。個人的にはIIJ会長がええええいと買い取って、ベルリンのフィルハーモニーみたいなクラシック系音オンライン発信の最高級設備を備えさせ、東京春音楽祭の本拠地にしてくれないか…なんて妄想していたんですけど。

生きているといろんなことが起きる。ホント、奇々怪々都市トーキョー!

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全ての書物は「限定品」なのじゃ [売文稼業]

なーんの意味も無い暇つぶしの雑談ですから、読んでも意味は無いよ、忙しい奴は返った返った。

田園都市線青葉台駅ホーム下のタリーズ・コーヒーで、フィリアホールでのタレイアQ&とこさんの開場を待っております。帰りはちゃんと東急が走るか心配な大雨、ましてや携帯不携帯。手持ちの金になる原稿のいちばん近い締め切りが20日過ぎなんて情けない貧民三文へっぽこ売分業者状態だから、問題ないといえば問題ないんだけどぉ、世間は一気にコロナなんてなかったような景気拡大イケイケになりつつあるのに、これを機会に構造改革リストラされてしまったのは明白な業種の従事者、「目指せ月収5万円」状況に変化の兆しは見えませんぬ。いやはや、冗談じゃなく、主食は裏の畑で取れる馬鈴薯と茄子、米は近くの農家でいただくしかない生活にせざるを得ないじゃないか、いやはや…

んで、まだ時間があるからとフィリアホール隣の東急デパートだかに入っている本屋さんを眺め、貧乏である事実鑑みず、フラフラと紙の書物を購入してしまったぞ。なんせ、アジアの生産国がコロナでラインが滅茶苦茶、水周り部品がニッポン列島はキューシュー島に到着せず、石武オフィスのリフォームが遅れに遅れとうとう今月末の音楽祭には間に合わず、温泉県盆地で人生最後の宿屋に泊まることになりそうな惨状とはいえ、とにもかくにも「本」という旧来型メディアの王様を納める空間は確保されたことにより、半年ぶりに書籍購入が解禁されたのじゃ!あら嬉しや、おお楽しや!

やくぺん先生、ぶっちゃけ本フェチの系列ではないものの、図書で埋め尽くされた空間ほど落ち着く場所はないと感じる人類に分類される方ではありまする。ある時期から「もうこれ以上本は買わないぞ」と決意し、圧倒的に購入量は減ったとはいえ、流石に葛飾オフィス破棄決定後の「当面は絶対に本は増やしちゃダメ」状態はなかなか心理的に苦しいものがあった。よく耐えたものだ、偉いぞ、あたしっ!

ちょっと真面目に言えば、そんな状況がマズい理由はしっかりあります。21世紀20年代の今、「本」という形であたしらが出会う情報媒体は、商品として見れば、全てが「1000程度の生産数しかない限定商品」と考えるべきだからであります。本というポータブル型不動産、全てが限定生産品で、目の前にある現物を逃したら二度と手に入らない、とても困った商品なのでありまする。

本なんてアマゾンで探せばいくらでも売ってるし、電子書籍で買えば場所も取らないでしょ、と反論されれば、あーそーですねぇ、としか言い様がない。だけど、まあ実感している皆様には言うまでもないことでしょうが、日本語文化圏の電子書籍は極めて偏ったジャンルしかなく、著作権が生きている戦後から今に至る文学作品とかって、電子化率が極めて低い。西脇順三郎とか内田百閒とか、はたまた吉田健一とか田村隆一とか、現代日本語のきちんとした作家の仕事が全然電子化されてません。所謂戦後文学以降の古典も、『死霊』はもちろん、大江健三郎から筒井康隆に至るまで、まるで電子化レスです。なんなんねん。つまり、電子出版や電脳画面の世界の日本語のレベルって、もうニッポン語のシロートが跋扈する滅茶苦茶低いレベルで推移しまくっている、ってことでありますわ。

もといもとい。ま、とにもかくにも、本を買って良いのだよ、やくぺん先生、ってか、必要と思った本はどんどん買っておかないとマズいのだよ…と貧乏である現実を突きつける冷静な己を強引に説得し、本を買うのじゃ。

思えば、去る日曜日に恐らくはやくぺん先生が聴いた最も高齢なヴァイオリン奏者さんの演奏会で、こんな著作を購入してしまったのが引き金であるのじゃ。
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コロナ禍で絶えていた物品販売がやっとコンサートホールのロビーに戻ってきて、売り子のオジサンに「もう先生の手元にあるこれしか在庫はありません」などと言われ、思わずフラフラと財布を開き、現金を出してしまったのであーる。

たいへんに良い買い物をした、えらいぞ、やくぺんくん、と己を褒めていたら、某ヴァイオリニストさん曰く、「これ、確か古賀書店にあったような…」。

うーむ、いやいや、それならそれで古賀書店さんがしっかりと本来のお仕事をなさっている、という喜ばしい事実であーる、と考えるべきじゃな。本書も、温泉県盆地の新オフィス図書室が完成した折には、しっかりとアレクサンダー・シュナイダー自伝の並びに配させていただきましょうぞ。

さて、そろそろフィリアホールに向かわねば。ちなみに本日購入したのは、岩波現代学術文庫に昨年入った佐藤卓巳『「キング」の時代』
https://www.iwanami.co.jp/book/b492289.html
それに、筑摩選書で昨年暮れに出た武田徹『ずばり東京2020』
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480017208/
でありまする。

前者は、岩波のこの文庫、よくまあこれくらいまで文庫に入れたなぁ、と驚くギリギリ感漂うもので、恐らくは2刷は難しい、あるだけでオシマイの類いだろうから、こりゃ買っておかないと。後者は、何を隠そう、やくぺん先生に人生で初めて「原稿を書いて金を貰う」というアルバイトをくれた研究室の同輩というか、先輩というかで、日本語文化圏最高の大文筆業者の著作に真っ向から挑戦する恐れを知らぬ題名といい、えええ今は大学の先生やってるのかぁ、でも相変わらずやなぁ、と苦笑しつつのお布施であります。これ、褒めてるんだからね。

そうそう、去る土曜日には、浅草橋の出版社さんの某音楽雑誌も、ホントに四半世紀ぶりくらいに銀座のヤマハでお金を出して買いましたっけ。ま、それはそれで別ネタなので、また暇つぶしに、いずれ。

なお、「目の前にあるものは全て限定品と思え」という商品は書物だけではなく、CDやらDVDもそうなのでありますが、それもそれでまた別の話。本日これから目の前にタレイアQのCDが売っていようが、買いませんっ!まだそっちはどう処理出来るか見えてないんじゃわ、ゴメン。

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晴海の落日 [新佃嶋界隈]

先週だかの曇り空の寒い午後、オリパラで軍隊警察が出てまるで軍事基地か原発か、って状況の現地人オフリミット空間だった我がノマド場のひとつ、晴海客船ターミナルに行ってまいりましたです。やっと都バスも走り始め、トリトン前から南に向けて真っ直ぐ、一応、一般人もアプローチ出来る道がひとつだけ開いている。
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で、辿り付いた埠頭は、こんなん。
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うーむ、いかな「帝都で最も寂しい観光スポット」として有名だったとはいえ、やはり秋の曇り空の下に鳴くは閑古鳥ばかり、って状況は相変わらず…どころか、無人のアパートが廃墟の様に並ぶ中、ますます寂しさは増すばかり。かつては各国軍隊がニッポン・エンペラー足下のオフィシャル・ポートに入港し一礼する場所だったとは思えぬ、知らん人がみたら海辺の廃墟アパート街施設のようになってしまってら。客船ターミナルには入港予定は一切掲げられず、ホントにやってるんか、という状況。

あああああ、と寂しく思っていたら、こんなニュースが。
https://funeco.jp/news/news-18012/
やったぁ、フランス海軍のフリゲートだか以来まるまる2年ぶりくらい、やっと晴海にマニアさんが詰めかけ殺気だった空気が漂う祭りの日が戻ってくる、と喜んだんだけどぉ、じっくり眺めると「お台場の国際ターミナル」とあるではないかい。

なんじゃそれ?

どうやら、コロナ騒動の最中、ホントにトーキョーでやってたのか判りゃしないインチキ五輪のドサクサに紛れ、かつての船の科学館は二式大艇が展示されてた辺りに、国際旅客ターミナルが移転してしまったらしいわい。なんなん。
https://www.tptc.co.jp/terminal/guide/cruise

うううむ、なんだかしらんが、これはともかく眺めておかねばならぬ。ってなわけで、朝からチャリチャリと晴海の横に出来た新しい橋を豊洲に渡り、2021ヴァーチャル・インチキオリンピック巨大仮設スタジオの解体作業が進み更地ばかりとなった有明を抜け、まあああっすぐお台場のサントリーやらフジテレビの前を過ぎ、羽田行く高速の上を跨いで、オレンジ色に輝く宗谷が見えてくる辺りまで銀輪こぎこぎ40分近く、新しいターミナルまで詣でたのじゃわい。手に独連邦共和国の旗を持ったマニアさんたちが歩いて行くのを追いかけるや、おおお、おったおった。
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ターミナルそのものは、晴海のようなバブル期の浮かれた感じはない妙に質実剛健の今風の合理的な(四角くて白いだけの)広い空間。要は、なにもない、ってこと。で、こんな様子。
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遙かお台場の観光スポットの間に、晴海トリトンが頭を出している。
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コロナ故か、一般公開のない帝都公式訪問艦、ぼーっとリンクスくんを眺めてると、偉い人が戻ってきたらしく、兵隊たちが出迎えてら。
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それにしても、目の前にゆりかもめの駅はあるといえ、ここからじゃあ晴海の頃のように水兵達が歩いて銀座まで行くなんて不可能だなぁ。そもそも今、自由行動って許されてるのかしら。

もうこれからは、虹橋の下をギリギリに潜って帝都表敬訪問の軍艦が晴海に接岸することもないのだろー。皇紀2600年からなんのかんの80年、栄光の晴海は国家的詐欺と歴史に記されるであろうインチキ五輪のあおりを喰らって、いつのまにやらその役割を終えることになった…のかしら。

虹橋を マストに臨み 日が落ちる

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