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衝撃:石橋メモリアルホールが着ぐるみ劇場に [音楽業界]

諸事情で当電子壁新聞では殆ど取り上げられていなかった上野学園問題ですが、昨日になって大きな、というか、学校関係者ではない音楽ファンや業界とすれば実質上の最終決着とも言えるニュースが公式に報じられました。既にもう業界内外で大いに話題になってる旧聞ですが、当電子壁新聞のアルヒーフとしては不可欠なので、記して起きます。こちら。
https://www.uenogakuen.ac.jp/university/news/2021/post_297.html
重要な部分をコピペします。

学校法人上野学園は、株式会社ブシロード(代表取締役社長:橋本義賢、上場市場:東証マザーズ)の連結子会社である株式会社ブシロードミュージック(代表取締役社長:森川浩)と、上野学園 石橋メモリアルホール(本ホール)の譲渡に関する契約を2021年10月29日に締結いたしました。本ホールは、今後、ブシロードグループ企業である株式会社劇団飛行船(代表取締役社長:大場隆志)が運営いたします。上野学園は、本ホールを引き続き講堂として、教育関連の行事、演奏会等で使用していきます。また、上野学園はブシロードミュージック、劇団飛行船と産学連携で芸術文化を通じた新しい教育の開発に取り組む予定です。

本ホールは2010年に開館し、約11年にわたり音楽ホールとして親しまれてきました。しかしながら、クラシック音楽専用のコンサートホール運営は容易でないことに加えて、昨年来のコロナ禍においてますます厳しい状況となりました。上野学園は中長期的な視点にたち、施設の有効利用、恒常的な運営費用等の低減、財務体質の強化等の経営効率化のため、ホールの譲渡を決定いたしました。

2024年に創立120周年を迎える上野学園は、建学の精神「自覚」のもと、時代の節目において社会の在り方とその先を見据えた教育を行って参りました。急速に進む社会の変化のなかにおいて、人間力と教養をもって、力強く生きる学生生徒を育てることを使命とし、学園は新たな時代に向かって進んでまいります。

本ホールを愛し、今日までご支援くださいました皆さまに心より感謝申し上げますとともに、引き続き新しいホールへもご支援を賜りますようお願い申し上げます。

学校法人 上野学園

なにしろ2017年以降、上野学園の経営問題はスター演奏家含め業界関係者数百人を巻き込む大騒動になっておりました。ぶっちゃけ、やくぺん先生的には個人的に当事者として関わりがある者が家庭内にいる事情もあり、こんな「書いてあることはみんな嘘、信じるなぁ」をモットーとするへっぽこ電子壁新聞に詳細を記すなど不可能。音楽ファンの皆様に広く関心がありそうな部分のみを、オブラートに包んだ最低限の情報をメモとして置いておくに留まっておりました。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-01-04
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-03-11
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-03-15
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2020-07-24

コロナ勃発前の時点で、学校としての上野学園の存続という問題はひとつの峠を越え、生徒やファカリティをいかに脱出させるか、という難問も上手い具合に世間の話題にされることなく処理(し切れなかったことも山のようにあるのでしょうけど)、音楽学校がひとつなくなるけど付属の小中学校は生き残る、という文部省的な処理は見えていた。

とはいえ、カザルスホール、津田ホールとバブル期に竣工され20世紀末まで華々しく活動していた500席規模の民間室内楽専用ホールが、経営的には最も難しい規模ということもあり、次々と「騒動」を起こしながら消えていき、バブル期ニッポン永田音響タイプの響きの深い500席規模ホールとしては最後にやってきたシン石橋メモリアルホールというハードウェアの処理の問題が最後に残った。で、何故かニッポンの大手メディアさんは、「組織」の解体や存続に関してはそんなものがどーなろーが殆ど興味を示さないのだけど、「ホール」などのハードウェアというか、不動産というか、株価に関わる資産価値として数字化し得る目の見えるものの存続問題となると急に関心を示してくれる不思議な特性があり、昨日来「石橋メモリアルホールの売却」という切り口で話題になり始めている、というのが今の状況であります。

つまり、組織としての上野学園問題ではなく、あくまでもホールという不動産の所有権移転という議論として世間に可視化された、ということ。学校の整理問題としては、最終局面に入ったわけですな。

そんなこんなで話題になっていることを眺めてみると、現在出ている情報だけでは、本当にうううううむと腕を組んで考え込むか、なんなんねんと頭抱えてしまうしかない。

だってさ、オルガンが設置され猛烈に残響が深く台詞は全然聞き取れないうえに祈祷室みたいな何に使うか判らぬ空間まで備えた「音楽専用ホール」を、どーして着ぐるみ子ども向け演劇をメインとする劇団が拠点とするんねん?ジャニーズが東京グローブ座を買い取った、予備校チェーンがザ・シンフォニーホールを買い取った、どころの違和感では済まない。普通に考えて、なんでこんなの買っちゃったの、他になにもなかったの、としか言い様がない。特殊な用途では最高の物件を、まるで違う用途に使うためにハードウェアとしての美点を全てリフォームで無くしちゃわないとダメじゃんけぇ!っどうして誰も止めなかったんだ、としか言いようがない。

ジャニーズは自前の劇場を新宿近くに欲しかったのだろうから、ま、あれはあれであり。滋慶学園グループはポピュラー系のコンセルバトワールをやってるし、プロデューサーにはジュリアード出身の打楽器奏者さんを置いたから、まあやり方はともかく、やってることは判ってる。だけど、このブシロードさんからのリリースを眺めるに、おいおいおい、石橋メモリアルホールってどういう空間か、ホントに判って買ったんですかぁ、と音楽ファンやら古楽ファンの全員が突っ込みたくなるでしょ。
https://www.gamer.ne.jp/news/202111080038/

なんせ、

・音楽ホールから音楽文化ホールに変更し、舞台公演にも対応します
・吸音設備を充実させることにより、音の残響時間をコントロールできるようにします
・270度プロジェクションマッピングを導入し、没入感を楽しむことができます

ですから、もうこれは永田音響タイプ音楽ホールの美点は全て捨てます、って宣言してるようなもんだもん。ううううむ…

深夜アニメのスポンサーやって頑張ってる中野の会社の着ぐるみ劇団が、東に進出して上野の山の下に劇場を持つのが悪いわけではない。秋葉原からも近いと言えば近いし、昨今のアメ横の動向など鑑みるに、あのアヤシげなかつてのバイク屋街裏、鉄オタの聖地地下鉄の踏切裏が、インバウンド熱狂のサブカルの聖地になるのは、あり得ないことではない。上野の山の上と下の対比という意味でも、下にこういうもんが広がるのはトポロジカルな感覚からもおかしくはありません。だけどねぇ、トヨタ・センチュリーの中古をイタ車にしちゃった、って「なんてことしてくれたんだぁ」感は否めないだろーにさ。

コロナ禍であちこちの建築施工が遅れてる中、たった3ヶ月でリフォームを終えて、次の東京春やってる頃には他人事みたい着ぐるみ役者さんが歌ったり踊ったりします、ってのも、ホントに大丈夫なタイムラインなのかと心配だが…ま、それはそれ。ちなみに、今時はこういう騒動の生の声はtwitterというメディアがいちばん状況の切り取りに適しているようで、瞬間の悲鳴みたいなものだという前提の元で、この辺りをご覧になるといろいろ見えたり見えなかったり。
https://twitter.com/search?q=%E4%B8%8A%E9%87%8E%E5%AD%A6%E5%9C%92&src=typed_query&f=top

足かけ5年を越えることになった上野学園存続問題、最後の最後にまさかのこんな展開になるなんて。個人的にはIIJ会長がええええいと買い取って、ベルリンのフィルハーモニーみたいなクラシック系音オンライン発信の最高級設備を備えさせ、東京春音楽祭の本拠地にしてくれないか…なんて妄想していたんですけど。

生きているといろんなことが起きる。ホント、奇々怪々都市トーキョー!

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