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ライターへの企業からの個人訴訟 [音楽業界]

なんやかんや狂ったように忙しい今日この頃、とはいえ今この瞬間に記しておかねばならぬ事も次々起きるわけで、10分で書いて取材に出ます。

昨日19日、同業者(っても、あたしよりも遙かに売れっ子!)の林田氏のブログ「Linden日記」に上がった記事内容について。トラックバックってやり方がわかんないので、まんまアドレスを貼り付けさせていただきます。お許しを。http://blog.livedoor.jp/naoh123/

中身についてはそっちをご覧になって下さい。で、そこからあちこち飛んで、いろいろ眺めてください。恐らく、大メディアには報道されていないことでしょうから。

さて、このオリコンさんからフリーの音楽ジャーナリスト烏賀陽弘道氏個人になされた告訴でありますが、小生なりに思うに、対応は以下の2つだと思います。
先に言っておきますけど、小生はこの方は個人的には存じ上げません。同業者とはいえ、クラシック、それも涙が出るほど金がない室内楽とか音楽環境とかを専門にしてる小生と、それなりに商売になって金も動いているポピュラーの方とは、まるで別の世界に住んでるようなものですから。それでも同業者として、当然、烏賀陽氏を無条件に支持します。
それから、幸か不幸か、個人的にはあたしゃ「オリコン」さんとは商売上の付き合いはありません(Music in Museumというウェブ連載についてフジテレビの一室で東京湾眺めながら取材された、という取材される側の立場でしか関係したことはない)。
ついでながら、どうやら御本人のウェブサイトなどから想像するに、烏賀陽氏は同じご町内の住人のようですね。おお、これは重要だぞっ。もっとも、我ら地べた人ではなく、天上人の御一員のようなんですけど。

もとい。で、対応、というか、どうすりゃいいか。

①ミュージック・ペンクラブ・ジャパンに支援を求めるべし
世間の皆様は殆どご存じないと思いますが、フリーの音楽ライターや研究者、ジャーナリストにも職業組合があります。ミュージック・ペンクラブ・ジャパン、というもんです。こちらをご覧あれ。http://www.musicpenclub.com/
小生は入ってません。理由は今は説明してるときではないので、どーでもいい。なんであれ、こういう組織がある。まずはそこに支援を求めて、告訴費用の負担、弁護士の世話などを頼む。最終的には国際的な音楽ジャーナリストのネットワークの中での支援連携を探る。アメリカでは、このような訴訟に対するノウハウは山のように積み上がってる。なんせ、戦いが基本ですからね、あっちは。
単純に計算して、ペンクラブが音頭を取って告訴費用をひとり頭1万円くらいでカンパを求めれば、なんとでもなるでしょう。ともかく、相手が資本の力で来るわけですから、こっちは伝統の同業者組合で束になるのが、まずは戦いの基本。

②「事実」で争うべし
今回のオリコン側の言い分の最大のポイントは、「こいつの書いていることは事実と異なる」という部分でしょう。
ところが、小学生でも判るはずですけど、事実を事実として認めさせたいならば、客観的な検証可能性が万人に与えられていなければならないわけです。
よーするに、オリコン側がプレスリリースで言ってることが「事実」かどうかは、オリコンのプレスリリース以外のソースに拠ってだれもが検証できるのでなければ、「事実」かどうかの判断のしようがない。「オリコンさんが勝手に事実と主張している」に過ぎない。
こんなこと、サルにだって判るわなぁ。
繰り返します。オリコンさんは「あたしたちの出しているデータはこういうもので、こういう風に処理していて、これがその生データで…」というのを、全て一般に常時開示し、ジャーナリストなり別の機関なりが正しさを再検証できるようになっていない限り、プレスリリースで出された内容は「客観的な事実」にはなり得ません。あくまでも、「オリコンさんの物言い」に過ぎません。
そんな程度の内容を巡って「事実」で争うおうというのは、まあなんというか、良い度胸というか、負けるの覚悟か、さもなければ、自分のところで集めてるデータを完全に開示する覚悟があるからなんでしょうね。常識的に考えれば。
ところで、オリコンさんのデータを全部生で出し、再検証可能なようにすることを、オリコンさんのクライアントが許すでしょうか。
オリコンさんも相手あっての商売です。「事実」のデータが開示されることを喜ばないクライアントも多いでしょう。そうなると、そのクライアントからは、「うちはオリコンさんのデータ集計からは下ろさせていただきます、だって、そちらの訴訟のお陰でうちのデータの機密性が保持できなってますから」と言われるでしょうね。つまり、商売できなくなる。
結論から言えば、オリコンさんは、「事実」を巡っての訴訟は構造的に不可能なんですわ。だからこれまで、誰に対してもそんなことをやってこなかった。

どうして今、こんなことをしたのか、なにやら計り知れぬ戦略的な意味があるからなんでしょうねぇ。まさかオリコンさんの担当者が自分とこの弁護士に騙されて…なんてことはないと思いますけど。だってこの告訴、受けて立たれたらオリコンの信用がた落ちですもの。企業フィクションならば、オリコン側の弁護士は、さしずめオリコンのライバル企業がオリコン潰しのために送り込んだ刺客ですね。いやはや。
悪いことは言いません、オリコンさん、この訴訟、直ぐに下ろした方が良いですよ。そして、この訴訟をやろうと社内で言い立てた社員と、やるべきだと判断した弁護士の身辺調査をした方が良いんじゃないですか。これ、冗談で言ってるんじゃないよ。

というわけで、この訴訟、された側とすれば、一番良いのは淡々と受けて立つことでしょう。同じ町内の者として、支援はいくらでもいたしますぞ。


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コメント 3

林田直樹

拙ブログへのコメントありがとうございました。反応が早いのはさすがです。他人事じゃないですからね。それにしてもこの問題、大マスコミの反応は驚くほど鈍い…。企業・組織から個人へのこんな恫喝訴訟がまかり通るようだと、自分よりも大きい相手に対しては誰も何も言えない世の中になってしまいますよ、本当に!
by 林田直樹 (2006-12-20 16:03) 

よしじゅん

うむ~。これはマジでやばいですね。私のような業界人でなくても、HP・掲示板・ブログで書いた文章を元に、ン千万円は大げさにしても損害賠償請求を求められるかもしれないということですね。極言すれば、それらのネット表現媒体を主宰していなくても、例えばアマゾンとかオンラインHMVに評価コメントをつけた相手にも訴訟ができる。CD輸入盤規制問題では、大騒ぎになって連帯バナーなどが作成されましたが(拙HPでも貼りました)、そういった一般人でも参加できるような何かがあればぜひ参加したいですね。
by よしじゅん (2006-12-21 02:09) 

Yakupen

小生がこの告訴騒ぎを知って最初に思ったのは、「これはいくらなんでもミュージック・ペンクラブが許さないだろう」というものでした。正直、それでオシマイでした。
つまり、一応プロとしてやってる連中には、例えどんな一匹狼でその方本人は加わっていなくても、何らかの形で同業者の集まりがあるものだからです。「風来坊のトラック野郎がトラブルに巻き込まれれば、最後の最後は、普段は対立している別のトラック野郎たちが集まってきて、みんなで助ける」とかって、大衆娯楽フィクションの基本ですよね。そういうアホみたいなレベルの同業者のまとまりというのは、どの世界にもあるはずです。それは最後の最期には動くだろう、というのが小生のようなノーテンキな楽観主義者の考えちゃうことなんですな。そーじゃなきゃ、フリーなんてやってらんない。

ですが、よしじゅんさんが仰るように、今のネットでの言論状況などは、そのような「最後には自分らの利益のために団結もじさないプロとしての強い自己意識」みたいなものとは別のところで存在してるんですよねぇ。どういうわけか20世紀後半からの人類文明のテクノロジーは、「個人がプロフェッショナルに匹敵する能力を身に付けられる」という不思議な方向に向かったわけです。それこそジョー90の世界ですわ(ううう、比喩としてマイナーすぎるかな)。


さても、そうなったときに、「プロであること」で働いたセーフガードが利かない。こりゃ困ったねぇ。社会で意識的に構造化していくしかない、ということでしょうねぇ。一種のメディアリタラシーの問題として。

なんか、わけのわからん妄想的コメントですが、いろいろ考えさせていただきました。ただ、小生はよしじゅんさんに何かあったら、出来る限りのことはしますよ。だって、あなたは既に仕事の価値としては「プロ」ですから。
なんせ、研究対象は100人の相手がいれば100の真実を語り、それを相手に納得させられた、というとてつもない怪物お公家さんですからねぇ。「真実」を巡って、それはちがう、と言ってくる人はいくらでもいることでしょう。いやはや。
by Yakupen (2006-12-21 10:13) 

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