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たびの終わりは自由席 [たびの空]

昨日、無事に東京湾岸に戻ってきて、山のような校正作業や連絡に明け暮れ、嫁が戻ってきたら引っ越し騒動の打ち合わせもせねばならず、電子壁新聞どころではありませんでした。ともかく、生きてます。時差で朝5時前に起きちゃうぞ。

さても、今度のツアー、見事なほど「トラベルはトラブル」という伝統的諦念の箴言が当て嵌まるものでありました。ここには記さなかったけれど、掃除さんが部屋に鍵を置き忘れ合い鍵が見つからず騒ぎになり別室に泊まるはめになったとか、ネットで予約した筈の部屋がなぜか某フランス系ビジネスホテルチェーンの管理センターのミスでキャンセルになってたとか、部屋で接続中のネットがいきなりサーバーに繋がらなくなるとか、まあ、そんな細かいことは山積みでありました。良くも悪くも、オッサンになるとは物事に動じなくなるということで、何があっても舌打ちひとつせずに淡々とフロントと喧嘩をし、「どっかのパーティでの笑い話ネタにしてやろう」と考えてるわけです。ある意味、安ホテルなどはそういう客を前提に出来てるわけで、ま、そんなもの。

とはいえ、このところのたびの空での事故は、その殆どがコンピューターがらみだなぁ。昨日も、最後の最後にやらかしてくれた。

月曜朝、ロンドンの大河端新興開発地区ドックランドにあるロンドン・シティ・エアポートからアムステルダム乗り継ぎで戻ってきたわけですけど、フライト30時間前の日曜朝、大雨の中ジェイソン・バトンがクアラルンプール空港隣のサーキットでミズスマシ状態になってるのを見物しながら、ネットでチェックインしようとしたら、できない。おいおいおい、と思ってファイナルに出かけ、戻ってきてまたやったら、またできない。

あ、こりゃ、なんか起きてるぞ。

てなわけで、月曜は11時半の便なので、チェックインさえしてあれば10時半にシティ・エアポートに行けば良く、9時半過ぎに出ればいいや、ラッシュを避けられる、と思ってたのも水の泡。なんかあぶなそうだから早めに行くべきだなぁ、月曜ラッシュアワーにシティのど真ん中を荷物引きずってズルズル歩くの嫌だけどそうも言ってられん。で、サークルライン乗って、会社が新開地に移転してムッとしてるんだろうサラリーマンと、天王洲アイルに務める人々と羽田に行く人々の冷たい関係と同じ状況を醸し出しつつ、ドックランド・ラインに乗車。瞬く間にサラリーマンの姿は消え、ガラガラの新交通システムは「ロンドンの豊洲」地区にあるイギリスで最高と評価が高いちっちゃな短距離離着陸機専用空港に向かうです。ほれ、アブロジェットが降りていく。
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ズルズルと荷物を引きずりホームから降りてくると、空港ロビーの外にまで人が溢れてら。ちっちゃな、山形駅とかくらいの規模のこじんまりしたチェックイン・フロアが大混乱。昨日からシティ・エアポートのコンピューター回線が物理的に切れる事故があって、この空港、世界からスタンド・アロンになっちゃってるらしいと噂が飛び交う!

どうも、全ての航空券の処理を、カウンターでの手作業でやらねばならぬ。当然、その先の乗り継ぎ作業など出来ず、ともかく乗り継ぎ空港まで行ってからなんとかしてくれ状態。
もっとオソロシイのは、シティ・エアポートで起きていることが、情報としてそれぞれの乗り継ぎ先には行っていない、という事態。つまり、乗り継ぎ便に関して、先の空港では、「この乗客はチェックインしてきていない」と見なされているのでありますよ。おおおおおおお…

ライン全体が物理的に落ちているのだから、セルフチェックインマシンも使えない。ビジネスマン御用達のシティ・エアポートというのは直行でどっかに行く奴は余りおらず、多くの人々がアムステルダムとかフランクフルトとかチューリッヒで乗り換え、遠くまで行きます。列であたしの前にいたいかにも営業マンさんも、先月は東京にいて、これからカザフスタンなんだが、アムステルダムでの乗り換えがそもそも45分しかないんでこりゃダメだ、って。なんせ、そのときにもう9時20分、フライトの定時は9時半、でもまだボーディングパスがないどころか、チェックインも出来てない。もー、わーっはっはっは、ですね。
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ともかくやくぺん先生がご搭乗になる11時半の便の前の9時半の便の列を必至に処理し終えたのが10時前。ああ、カザフスタンは+24時間の向こうになってしまった。結局、この便が飛んだのが11時20分くらいでした。

こんなことが各カウンターで起きている。ビジネスマンが多いとはいえ、ネパールのストンとした男性用ワンピースにサンダルの2人組とか、ルイ・ヴィトンのスカーフ(!)を着用したお金持ちそうなイスラム美女とか、ものすごい訛りで「この空港は我が国最高の筈なのになぁ、ばあさんや」と3分ごとに繰り返してはため息をついているおじーちゃんとか、多種多様な人間模様が繰り広げられております。ま、これを1時間も見物しているのは、少なくとも若きヴァーグナーの「妖精」を見物するのよりも一万倍くらい面白いけどね。

てなわけで、やっと巡ってきたやくぺん先生のチェックイン。2人がかりで手書きの荷物タッグをくっつけたり、なにやら一生懸命やってるおねーさんからやっと何が起きているかの公式な確認をし、たいへんだねぇ、幸いにも飛行機がテームズ川に突っ込んだりしたわけじゃないから良かったと思わないとね、って軽口を叩いたりしてさ。

かくて、ハイお待たせしました、と渡されたボーディングパスだけど、ゲートどころか、席が入ってない。席は、って訊くと、”Free seating, sir!”

おおおお、我が生涯、飛行機の自由席って始めてだぁあああ!

かくて、セキュリティを突破し、ディレイで真っ赤になったモニターを大混乱の待合室で眺めること1時間以上。ああ、9時半のフレンドシップがやっとプルプル飛んだ、と思ったりするうち、11時半を過ぎてゲート案内が出る。みんな我先にとどおおおおっと向かう。なんせ自由席ですから。サウスウエスト航空などではやってるというけど、中国奥地でもなければ南米のアンデス越えでもない、天下の和蘭陀王立航空のドーバー海峡越えフライトでありますよ。いやはや。
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てなわけて、1時間も遅れ、みんながそっちと思ってたフレンドシップじゃなくて隣のちびの4発パワフルSTOLアブロジェットまで歩き、搭乗(自分の荷物が積まれているのを眺めながら)、皆々様席を確保する。一列目に座った若いイギリス人たちは、ファーストクラスみたいだぁ、と喜んでいるのもつかのま、やがて機内には「お客様の中に3名、ビジネスクラスの方がいらっしゃいます、ご連絡下さい」とのアナウンスがあり、いかにもな紳士たちに席を譲るために、若者達は生涯初めての1列目の席を哀れ追い出されたのでありましたとさ。
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さらば英都大川、来月また来るまでしばしの別れ。海峡を越え曇り空のアムステルダムに着陸してから、成田に向けコンビ・ジャンボが離陸するまでの40数分に起きた騒ぎは、もう記しません。当然、乗り継ぎカウンターにダッシュ!交渉!え、席がないことになってる、おおお、ゲートまでダッシュ!乗せろお、とまた交渉!お客様の席は2時間前にチェックインがなかったんで、なるほど、このお客様たちはシティ・エアポートでチェックインできなかったわけですね…

なんのことはない、全ての情報をコンピューターが管理する昨今、「どこそこ空港でトラブルで客が遅れる」とかいう細かい情報は現場はまるで持っていない、ということ。なるほどねぇ、やっぱり今は、本気で社会を混乱させるなら火炎瓶でもミサイルでもなくサイバーテロが一番じゃ、とあらためて思った次第でありました。

奇蹟的に荷物も到着し(ダメだろうと諦めていた)、辿り着いた成田は春の朝。フェデックスの残骸の向こうに咲き誇る桜が迎えてくれる。京成上野行きから眺める千葉は、満開の淡い桜と、まだ土色の畑の一角に黄色の絨毯を敷き詰める菜の花たち。でも、車内の人々はもうすっかり桜には飽きたのかしら、みわたすかぎりみんな携帯電話を弄ってなんかやってら。入谷から京成が地下に突っ込んでいく直前にある見事な桜の大木が、やくぺん先生の帝都帰国を祝ってくれて。
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かくて世は、こともなし。日本海にミサイルが飛ぼうが、ローマの向こうで地震があろうが、上野は巨大な馬鹿山。まだしっかり春やってら。

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ボーや

やくぺん先生、ご苦労様です。

随分前の話です。
LHを利用してフィレンツェ往復した時、帰りに空港に着いたら何となく変な雰囲気で、いやな予感がしたんです。で、カウンターで、空港労働者のストで、コンピュータは動かないと言われた事があります。

手書きのボーディングパスを渡され、席は自由席。
チェックインする荷物は、飛行機の傍まで、自分で持っていってね!と言われ、地面(舗装されています)を引き摺って行きました。全員搭乗したのは出発予定時刻より前だったのに、結局飛んだのは40分位遅れた時刻で、日本便への乗り継ぎは、半分位諦め状態でした。

しかし、MUCとFRAで2回乗り継ぐ旅程だったのが幸いしたのか、運が良かったのか、各空港のLH職員間での連絡もできている様で、空港で乗り継ぐ度に、当初の予定時刻に近付いて行き、結局日本便に間に合いましたので、それ以来LHは信頼しています。

でも、「イタリアの馬鹿野郎!」という印象は、私の脳みそ中に固定されてしまいました。

旅行者には、乗り継ぎ空港で長距離ダッシュができる体力が必要です。

by ボーや (2009-04-08 19:31) 

Yakupen

大阪も桜満開でしょうか…府庁前の他は。

さて、どうやら飛行機自由席のネタは盛り上がるようで、本日もサントリーホールのロビーで出会った某主催者さんから、「ザルツブルクからのチロリアン航空は自由席だぞ」と教わりました。結構あるんですかねぇ。でも、アルプス越えのちっちゃなターボプロップ機がマッターホルンが見える、なんて理由で一方ばかりに客が座っちゃったら、相当にきゃーな乗り物になるような気がするんですけど。わお。
by Yakupen (2009-04-09 02:45) 

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