SSブログ

毛利さんのコントラバス [演奏家]

毛利さんというコントラバス奏者さんがいらっしゃいました。

小澤征爾氏がNJPで「アッシジの聖フランチェスコ」やら「戦争レクイエム」やらマーラーの3番やらをやってた、最も充実してた頃にコントラバスの重鎮を務め、どういう理由か知らないけど小澤氏と何度も中国に行き、中国語を勉強なさり、80年代半ば頃に文化大革命の傷跡から立ち直った最初の世代の中国の若い演奏家の日本留学を個人的に世話をなさったりしていた。正に、民間の日中国際交流をなさってたわけです。オケ引退前から相模原の方の公共ホールで室内楽シリーズを地道に始め、コンマスだったせとうさんとかむろやさんなんかもシリーズに出てらっしゃった。

んで、そのシリーズが今も続いていて、なぜか師走の寒い平日の昼間、相模原からは随分と離れた初台の近江楽堂で、本日で第168回目の演奏会が開かれたわけです。毛利さんご本人はもうお亡くなりになっていて、奥様が遺志を継いで、この個人運営の室内楽シリーズを続けていらっしゃいます。

今日は後輩のNJPコントラバス奏者、渡辺玲雄氏がメインの登場人物で、そこにカントゥス・クァルテットが加わって、ボッテジーニとか、もうコントラバス入りと言えばこれっきゃないドヴォルザークの五重奏を披露したりしたわけです。個人的にはあんまり得意な曲じゃあないけど、ホントにこれっきゃないもんなぁ。

木曜日の午後2時開演でお客さんがいるんかね、と思ったら、まあ所謂プロの聴き手はいなかったけど、ご隠居やらその奥様やら、はたまた八王子カサド・コンクールの理事様やら、総計80人くらいの聴衆はいたんじゃないかしら。それにしてもあの近江楽堂という場所、意図的に響き過ぎるヨーロッパの教会みたいな空間をわざと作ってるわけだが、まあ本日のモダン楽器の弦楽五重奏となると、まるでマーラーのように響き渡ります。アンコールでは珍しくもあのドヴォルザークの曲の楽譜によっては付いている「インテルメッツォ」が演奏されたのだけど(この楽章が入った5楽章版だと、全体がセレナードみたいになって、曲としてうんと座りが良くなるのに、なかなかやってくれない。ま、とっても音程が取り難そうな楽章ではあるけどさ)、コントラバスのピチカートがドンドンと杭打ちマシンの轟音のように響き渡り、まあスゴイスゴイ。これを聴くだけでも来た甲斐はありました。
それにしても鶴見のセルビアホールといえここといえ、最近はどんどんと客席数を少なくして猛烈に良い条件で豪華に室内楽を聴かせる傾向がはっきりしてきて、もう王子やハクジュだってデカイ、って感じになってきてる。これ、無論、悪いことじゃないんだが…経済的にどこまでやれるんやら。ちょっと心配だなぁ。

ところで、本日の目玉のひとつは、アンサンブル系と独奏系で異なるコントラバスを使っていたところにありました。
008.jpg
正直、小生には響きが締まるようにしてるみたいとか、音程をちょっと微妙に違えたりとか、そんなアホでも判ることしか判らず、技術的に両者にどのような違いがあったのかはなーんにも判らんです。アホじゃ。ただ、合奏系で使った楽器は、毛利さんがお使いになっていたものだったそうな。そう言われると、なんだか懐かしい音に聴こえてしまうのは…ま、今の自分が置かれている環境もあるんだろうけどさ。

御上や公共自治体がお金を出してくれなくても、こういう地道な室内楽協会があり、ちゃんとした音楽が弾かれ、聴かれている。人生のある時期をこんな風に過ごす、こんな風な平日の午後があるなんて、大阪市長さんには想像もつかないんだろうなぁ。

nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 1

tak

コントラバスはソロ用と合奏用で調弦を変えるらしいですね。弦もそれぞれ専用のがあるとか。楽器を一本しか持ってない友人は、そのたびごとに弦を張り替えるので大変だとこぼしてました。
by tak (2011-12-12 08:47) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0