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指揮のコンクールというもの [音楽業界]

昨日から、某専門誌の依頼で民音の指揮者コンクール取材に張り付いております。
http://www.conductingtokyo.org/

得意ジャンルではないどころか、そもそも独奏コンクールは殆ど取材などしたことなく、指揮なんぞに至ってはなんでコンクールなんぞあるのか理解してないとーしろー、某音楽雑誌新編集長とすれば、隠居宣言して暇そうにしていると思ったかのかなぁ。なんせコンクール取材というのは猛烈なタイム・コンシューミングJobで、時間対効果でいえばブラックもブラック、暗黒の墓穴のようなお仕事ですから。東京都の最低賃金の100分の1くらいになるんじゃいか、冗談じゃなく。

ま、とにもかくにも昨日午後からオペラシティのコンサートホールに座って、9人の若者が依田くんコンマスを務める東フィルの弦楽器たっぷり入ったでっかい2管編成の前に次々と立ち、ハイドンの《熊》ベーレンライター版スコアを手に、何故か第2楽章101小節から先を20分程の時間で「練習」する姿を眺めております。本日もこれから出かけて、また午後1時から5時前まで、もう9人が同じ事をするのを延々と見物する。指揮者さんはマイクを仕込まれていて、オケに出している指示はホール中に聞こえるようになってます。客席にテレビ画面も置いてあって、正面からの姿も見える。
IMG_6318.JPG
審査員の先生は、外山雄三審査委員長以下、尾高忠明、スダーン、ラザレフ御大、なぜかヴェルナー・ヒンク様やらドンスク・カン氏、それに舞台上管楽器の後ろに陣取る髙関&広上。業界からはザリン・メータ氏がアナウンスされていたのだけど、元サンフランシスコ響事務局長さんに交代になった。

驚くなかれ、昨日は1次予選初日頭から200人を越える聴衆がおり、なんのかんのハクジュなら満員じゃないか、というくらいにはなった。うううん、室内楽のコンクール初日頭なんて両手の数だけ聴衆がいれば万々歳なことを考えれば、やっぱり指揮という花形商売は関心も高いのかなぁ。いいなぁ、凄いなぁ。

中身に関しましては、一応は商売もんなんで書くわけにはいきませんけど、思ったよりも面白いです。昨日はロシアとかベラルーシとか、なぜか東欧系の奴らが何人もいて、ニッポンの音大でちゃんと指揮習って、「もう、あたし、体の全て使ってきっちりキュー出ししちゃいますからっ」って子なんかとはまるで「指揮」という作業でやろうとしていることが違うなぁ、これをどう比べろというのよ、としろーとには頭を抱えるような状況でありますが、ま、審査員の皆さんには慣れたもんなんでしょね、そんなこと。

ただ、ベルリンで学んでるなんて奴は明らかに今時のヨーロッパの「歴史的なバックグラウンドを前提にした再現」が体に入っちゃってて、響きを出来るだけ短くさせて響きが濁らないようにとさかんに指示したりしてるんだけど……これってさぁ、「じゃあ、弦楽器のプルト半分にしますから、後ろの人達、ご苦労様でしたぁ」ってなる筈だわなぁ、プロのお仕事なら。そういうことは許して貰えないみたいだし、ピッチも変えろとも言えないみたいだし。「時代楽器によるショパン・コンクール」なんてものまで始まってる昨今、どういうオケにでも対応出来ねばプロの指揮者としては困るという考えは納得しますけど、どうなんだろうなぁ、難しいこってす。

ま、日曜日の本選は自由曲なんで、ここでいきなりピッチ落として楽器減らしてヴィブラート減らさせてハイドンやったりする奴がいれば、それはそれで面白いんですけど…

なお、やくぺん先生の個人的な最大の関心は、本日の午後2時過ぎに登場するスンウォン・リー君でありますっ。韓国から23名の応募があったなか、唯一初台まで招聘された半島代表若手であります。だれじゃそいつ、とお思いでしょーが、そおおおお、なんのことはない、ノブスQの創設メンバーのヴィオラ君でありまするよっ!
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2017-12-13
昨年12月、涙涙のドヴォルザーク作品106で、韓国から出現した最初のメイジャーに行くかもしれない弦楽四重奏創設ヴィオラメンバーのポジションを去ることになったリー君、そのときから「奴は指揮者になるんだ」とは聞いていたんですが、まさかもうこんなに直ぐに、こんな場所で出会うとはねぇ。

コンクール取材でこういう勝手な思い入れのある参加者がいるのは良いことかどうか、なんとも言えないところなんですけど、個人的には「ぐぁんばれぇ!」としか言いようがない。本日、深夜過ぎに台中に出かける前のボロボロの頭をひっぱって初台まで行く気力も沸いてくるというものでありまする。

民音あらため東京国際指揮者コンクール、やくぺん先生が台中に弾丸《ジークフリート》見物に行ってる明日明後日は《弦楽のためのレクイエム》が課題曲となる2次予選。そして2日間、新日本フィルを前にファイナリストが練習を行い、日曜日が本選でありまする。お暇な方はどうぞ。

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