SSブログ

オペラハウスがない島にて [音楽業界]

昨晩、福岡アクロスで九州交響楽団定期演奏会として演奏会形式で上演された《サロメ》を天井桟敷から拝聴、博多駅至近の2900円弱のカプセルホテルで夜を明かし、今、博多駅バスターミナル発温泉県盆地行きバスで福岡空港国際線ターミナルを出たところ。朝方に筑紫野インター近くで車両炎上事故があり都市交に入れず、大渋滞の下道を南下してます。国際線ターミナルのバス停を出てから10分も経つのに、まだ空自チヌークくんの塒横辺りじゃわい。昨日夕方はスコールで空港閉鎖、着陸したもののスポットに入れない到着機が誘導路に数珠つなぎになって渋滞しているのを都市高から眺めたんだけど、今日はその反対じゃわい。

さても、月末金曜日朝のキューシュー島大動脈の事故とあって、温泉県盆地にはいつ到着するやらまるで見えぬも、この状況ではテープ起こしもやれず、昨晩のこの島唯一のプロフェッショナル大オーケストラ定期演奏会を巡る雑談でもするべーかい。

ええ、昨晩の《サロメ》でありますが、つらつら冷静に考えるに、やくぺん先生ったらキューシュー島で眺めたことあるフルサイズのステージ形式オペラ上演って、毎年池袋の芸劇なんぞが制作してコンサートオペラ形式をちょっと発展させたような形でやってるプロダクションで九響ピットの《夕鶴》しかない。大分といえば県民オペラが有名だけど、一度も眺めたことありません…ってか、県民オペラみたいなものは、大昔に藤沢でなんか観たかなぁ、って曖昧な記憶があるくらい。そもそも「オペラ」、ぶっちゃけ「イタリア・ベルカントオペラ」には全く興味も関心もなく、ニッポン列島の外で眺めたことあるものといえば…メトでアルフレッド・クラウスが最後の舞台になるというので一度くらい眺めておかねばならんじゃろなぁと当日ラッシュチケット並んで$10くらいで眺めた《ルチア》とか、取材で訪れたウクライナ国立歌劇場でたまたまその日にやってた《ノルマ》とか、せっかくこの劇場に来たんだから少しでも数観ておくべぇと当日券で入ったシドニー歌劇場の《椿姫》とか…ホントに呆れるばかりの無知蒙昧さなのでありまする。

とはいえ、ここキューシュー島はどうやらフルサイズのステージ形式オペラをレギュラーで上演する施設とスタッフが整ったハコは、そもそも存在していない。ま、日本列島全体にそういう意味でのホントの「オペラ劇場」がどれだけあるかといえばぁ…それはまた、別の話。

んで、九州交響楽団さんが定期演奏会でノーカット楽器編成もほぼ総譜指示通りで上演する《サロメ》というのは、この島の音楽ファンにすれば極めて貴重な機会なのでありましょう。次にこの類いの演目をフルステージで観たければ、九州北部から時間空間最も近いチャンスったら、10月の大邱オペラ祭で上演される予定のミハエル・シュティルミンガー演出《サロメ》とソフィア歌劇場プロダクションの《エレクトラ》でしょうからねぇ。
https://www.globalinterpark.com/detail/edetail?prdNo=23007232&dispNo=undefined
https://www.globalinterpark.com/detail/edetail?prdNo=23007456&dispNo=undefined

蛇足ながらシュティルミンガーは《サロメ》を持っていて、自身のサイトにこういう絵を出してますね。
https://www.globalinterpark.com/detail/edetail?prdNo=23007456&dispNo=undefined
これは日本列島から沢山の悪い人達が眺めに行くんじゃないかなぁ。《エレクトラ》は引っ越し公演みたいなんですけど、どんなもんなんじゃろか、想像もつかん。

もといもとい、半島じゃ無くてキューシュー島の話。ぶっちゃけ、キューシュー島には「大邱のオペラ祭ではこういう奴がこういう演出で出すようだ」などという議論と同じことをやれる環境の場所はない。んでもて、昨日のステージにオケいっぱいに上げて、既に横浜や名古屋で別のオケでマエストロ沼尻がやってきたチームが乗り込み、九響でちょっと演技なども入れながらやってみた、というもの。衣装は、コンサート形式だと誰が誰やら判らなくなっちゃう可能性も高いので、スカーフで「ヘロデの家族」「ユダヤ人たち」「ヘロデの兵士や侍従たち」とか、一応、なんとか判るようにしたりして。なかなか苦労してますな。

そんな風にして演奏された全曲、結論から言えば、久しぶりにこの楽譜、楽しませていただいたです。カナフィル公演ではキャンセルだったという福井さんがもの凄い存在感で、まるで《ヘロデ王悪夢の夜》とか《ヘロデの悲劇》とまでは言わないにしても、この作品でのヘロデという些か微妙な立場の役回りがしっかり舞台の中心にありました。無論、サロメは圧倒的にお仕事するのは言うまでもないながら、嫁や嫁の連れ子含めたアヤシげな奴らばかりが跋扈する世界で、唯一案外まともなのはこの人なんじゃない、可哀想にねぇヘロデ王、って思わされちゃったりして。

オーケストラは、この曲がちゃんと演奏されると感じる「七つのヴェールの踊りって、音楽的にはそれほど重要じゃないんじゃね」とあらためて感じたのだから、これはもう立派だった証拠でありましょうぞ。細かく分割された弦をしっかり聴かせるとか、音楽的にはいちばんゾクゾクする分割されたコントラバスがヨカナーンの首を切り落とすところの各パートの醸し出す空気とか、天井桟敷からオケ眺めてお腹いっぱいにさせていただいたです。ああ、そういえばこのオケ、最近《アルプス交響曲》やってるんだよねぇ、とかニヤニヤしたり。いじましいことに、首都圏のすれっからしどもを大熱狂させた昨年のノット東響なんかはどうだったんだろーなー、なんてちょっと頭をかすめたりしたけどさ。

オペラハウスが無いキューシュー島の首都で、この作品がこれだけちゃんと聴けたんだから、ありがとう御座いました、皆様お疲れ様、というしかない。正直、この作品、これにポンチ絵みたいな演出付けたところで、ここで感じた以上の何かが出てくるかわかんないしね。

終の棲家になるだろう隠居場から100キロちょっと、問題は、ソワレで上演されると公共交通機関で戻るのが不可能だ、って現実なんだけど、これはもうしょーがないわなぁ。唯一残念なのは、このプロダクションを立派な響きの福岡アクロスで堪能なさった聴衆が、些か寂しい限りだったこと。
IMG_6841.jpg
うううむ、もったいないなぁ。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。