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第49回日本フィル九州ツアー記者会見 [音楽業界]

本日、福岡アクロス上層階の会議室で、冬恒例の日本フィル九州演奏旅行記者会見が行われましたです。
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今やすっかり「ヴィオラ奏者」じゃなくて「常務理事」も板に付いた後藤氏以下、3度目の九州ツアー指揮の鹿児島出身下野竜也マエストロ、ソリストでメンコンで直球勝負する「東京ブギウギ」リバイバル真っ盛り服部家四代目の百音嬢が登壇、それぞれに篤い思いを語りました。

マエストロは鹿児島出身で、プロオケがない地域とあって、毎年冬にやってくる日本フィルはプロオケに接する貴重な機会。九州ツアーで演奏された《ボレロ》とか、渡邊暁雄のシベリウス2番とか、音楽の原点となっているそうな。ライヴを体験するスペシャルさを強調なさってました。自分は日本フィルではゲテモノ担当と思われているかも知れないけど、《幻想》とかドヴォルザークの8番とか王道レパートリーを良く知っているオケとやるのは勉強になる、とのこと。「カレーライスを置いてない洋食屋はないでしょうから、その食べ比べをするのはクラシック音楽の楽しみ」と、巧みな比喩で会見場を盛り上げます。

服部さんは、14歳で読響でデビューしたときに下野氏とメンコンをやったそうで、それから10年、敢えて王道作品で真価を問う勢い。弦楽器ファンには、コロナの頃から日本ヴァイオリンさんから貸与され使っているというデル・ジェスが、真っ向勝負のメンデルスゾーンでどんな響きを奏でるか無関心ではいられないかも。
https://ontomo-mag.com/column2/classic-trend-10-4/?segment=107392

そんなこんな、壇上の音楽家諸氏が雄弁にお喋りになってくださる記者会見は延々と1時間以上続いたわけでありますが、このイベント、なによりも印象的だったのは会場の後ろに控えた九州各地の主催者の皆さんでありました。

なにせ、日本フィルの九州ツアー最大の特徴は、主催が今時のオーケストラ地方公演の常識たる地方公共文化財団やら公共ホールではないこと。コロナ以降でも、小倉のホールがゲルギエフ指揮ヴィーンフィルやらラトル指揮ロンドン響でエルガーの交響曲やったり、姫路の新しいホールがペトレンコ指揮ベルリンフィルやったり、とんでもないことが起きるわけでありますが、そういうのは基本、民間の音楽事務所が営利活動としてやるわけではなく、ぶっちゃけ、地方公共団体が税金を投入して市民のために行っているわけでありますな。千万単位のお金がかかるオーケストラ公演ですから、民間がおいそれとやれるものではない。ところがこの日本フィル公演、無論、昨今の潮流を反映して地方公共財団が共催やら協力しているところもありますが、基本、各地の民間任意団体である「日本フィルを聴く会」とか「友の会」とかが、日本フィルと共催という形でやっている。本日の記者会見も、正直、かなりの部分、マエストロやソリストさんの主催者さんとの顔合わせ、お互いに来月のツアーに向けて頑張ろう、というエールの交換のようなところが感じられたのでありまする。

まあ、東京の海千山千の専門記者やライター、評論家諸氏が雁首揃えるピリピリした記者会見と同じである筈もないでしょうけど、やくぺん先生的にはとっても新鮮で、気持ちの良いものでありました。「誰のために音楽をするか」というのがハッキリしているコンサートって、案外、ありそうでない。ましてやそれがツアーなんだからねぇ。

49回目(2021年はコロナ禍で欠番ですが)の日本フィル九州ツアー、2月の10日から21日まで九州9都市をまわります。お近くでご関心の方は、是非どうぞ。
https://japanphil.or.jp/blog/kyushu
個人的には、冒頭のご挨拶で奏される序曲が《ティトゥス》と《イドメネオ》というのがなかなか興味深い、ってか、とってもマエストロ下野っぽいでんな。で、小山実稚恵さんがこういうツアーではありそうでないK.466、というんだから。なんせキューシューの記者会見デビューのやくぺん先生ですので、ホントはこの辺り突っ込みたかったんだけど、借りてきた猫のようにしてましたわ。だって、この場にいる記者さん達の媒体には、全く使いようのない話だもん。

半世紀、人が変わり、街も変わり、敢えて言えばコンサートの意味も変わってきているのだろうけど、最後に残された地元有志主催による日本フィル地方演奏旅行、今年も九州をぐるりと周遊じゃ。

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