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香港文化中心と香港藝術中心は違うのじゃ [たびの空]

コロナ禍を経て4年ぶりのフル再開となった、今や香港で唯一の西洋型クラシック室内楽音楽祭「飛翔演奏音楽節2024」、無事に始まっております。

この音楽祭がどんなもんなのか、過去の当電子壁新聞記事を眺めていただくとして、今、これだけめっかったわい。なんかもうちょっとあったような気がするけどなぁ。
第8回 https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-01-23
第6回 https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2015-01-21
第5回 https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2014-01-15
第2回 https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2011-11-27

なんせこの音楽祭、時期がパリのクァルテット・ビエンナーレと完全にバッティングするので、これまではそっちがある年はパリのシテ・ド・ラ・ムジークに通い詰めるため泣く泣くパスでありました。ところがコロナ禍に拠点を温泉県盆地に移し、世界の最前線を追いかける作業は若い方々に任せて収入激減の年寄り仕事へと転身する決意をし(パリのディレクターだった方がボルドーに移ってパリのビエンナーレの中心人物が代替わりしたこともあり)、ってことは「昔からやってきた仕事を最後まで見届ける」のが本業になったわけじゃのぉ、ってなわけで今年は遙か遠くお高いパリやアムステルダムはさっさと諦め、いろいろと面倒な状況にある香港という街にやってきた次第。なんせ福岡板付空港からなら偏西風に逆らっても3時間くらいのフライトなんで、ま、近いっちゃちかいわいな。

さてもさても、既に音楽祭としての大きな枠組みは先週から動いていて、ヴィクトリア湾挟んでオープンリハーサルやら子ども向け演奏会などが行われているようであります。これまではチョコチョコっと主要公演を眺めたりしていただけなんだけど、今年はメイン会場となるシティホールからトラムでガタガタ20分くらい東に向けて揺られた庶民街、日本語ガイドブックでは掲載されている香港島内いちばん東の外れの辺りギリギリの安宿に陣取り、ノンビリだらだら眺めましょか、というお気楽気分でありまする。

昨晩のオープニング・コンサートで始まった本公演についてはまた別に記すとして、まずはアホな「たびの空」話でお茶を濁すじゃわい。存在証明。

さてもさても、まずは朝からリハーサル見物じゃわい。ゲイリー・ホフマン氏、お嫁ちゃまに拠れば2005年の神戸チェロ・コングレス以来じゃないか、って久しぶり。すっかり好々爺になってるのか、シュターカー先生みたいな怖い爺さんになってるのか、眺めにいこうじゃありませんかっ。

で、出かけようとしたら、リハーサル見物にはレジスターが必要だったことが判り、慌てて完了。おおおお、ちこくじゃぁ、とトラムに飛び乗り、香港警察前まで到着したらもう開始5分前。慌ててヘネシー路から渡るのが大変なデカい道を2本飛び越え、なんとか香港藝術中心の1階ロビーに到着するともう10時過ぎ。まだブラームスの弦楽五重奏の練習が始まったばかりじゃろとエレベーターを眺めるに、指定の部屋など判らぬ。そこにいるおねーさんにお尋ねするや
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こっちじゃなくて、対岸の文化中心だとのこと。
おおおお、なんせ今回のフェスティバルの本公演は全部シティホールなもので、全然九龍側に行くこと無いなぁ、と思い込んでおったじゃ!焦って湾仔のフェリー乗り場まで歩くも、なにやら拍子抜けでパワーも入らない爺婆、フェリー乗り場眺めるカフェで座りこんでしまったじゃ。ま、後半のシューマンのピアノ五重奏には元パシフィカのマスミさんが出るから、挨拶出来れば良いじゃろ、とノンビリ構えてしまったのであーる。

とはいえ、対岸のフェリー乗り場横に聳える巨大な文化中心
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所謂室内楽向け小ホールはなくて、その類いは隣の小劇場みたいなところとかでやるくらい。練習を「藝術中心」と信じ込んでいたのも、まさかあっちでやる理由はないだろうという勝手な思い込みなのであった。どーやって入るんじゃ、などと思いながらぼーっとスターフェリーに揺られ、辿り着くは文化中心前。香港観光に訪れる全ての人がやってくる大観光地ながら、定番写真スポット側には背を向け北西角の楽屋口に走り、受付のおねーさんに「リハーサル見物なんですけど…」と携帯に送られてきている見物チケットを示すと、そっちだ、と楽屋奥のエレベーターを指さす。なんのことない、香港フィルの練習などもやる小規模なアンサンブル練習場がオープンリハーサル会場なのであったとさ。

シューマンの五重奏、第2楽章練習の真っ最中で、50人弱くらいの香港の善男善女が熱心に座ってる。最初はすっかりホフマン社長が仕切っており、マーチとしてのテンポの問題とかみんなにいろいろ言っていたが、コーダの部分の音符がヘンレとペータースで違う、って話からすっかり盛り上がり、第3楽章の最初のトリオ前でのボウイングでニン・フェン氏が突っ込み始め、第4楽章では「それぞれしっかり意見持った連中がお互い言いたいことを言い合う」って状況を見物することになり、久々に痛快なリハーサル風景を眺めさせていただきましたです。
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ホフマン翁、全然元気で、全部通してもういちど最初から始めた第1楽章のチェロ独奏なんて、しっかり持ってきます。元気で何よりでありまする。面白いのは、自分が独奏の部分になると何にも言わなくなること。ホフマン御大をどう支えるかは、フェン氏とマスミさんがガーガーやってました。

いよいよ始まった4年ぶりの香港の室内楽音楽祭、春節明けの香港藝術節がすっかり大陸色が強まり、所「西洋クラシック音楽」はバイエルン国立歌劇場の《ナクソス島のアリアドネ》くらいしか大物はなく、来訪メイジャーオケもなく、とうとうひとつだけ確保されてきていた室内楽枠はなくなってしまった。今や貴重な香港の室内楽祭り、金曜日まで4公演がありまする。お暇な方はどうぞ。
https://www.pphk.org/festival/bpmf2024/

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