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シンガポール室内楽フェシティバル2024折り返しへ [音楽業界]

なんのかんのバタバタしていてい当電子壁新聞も放置状態、ともかく、外は30度室内は20度の無茶苦茶な寒暖差の南の島で、生き延びてはいますです。嫁さんは昨日から酷いアレルギーにやられていてスーパーで買ってきたカップお粥しか食えん状態なんだけど、うううむ…

ヨン・シュ・トウ音楽院ホールを会場とする本公演は4つあり、うち、去る土曜日の葵トリオ、週末には参加28団体へのコーチング・セッションと、フェスティバルたけなわでありまする。昨日はヨン・シュ・トウ音楽院の各セクションのチーフ系ファカリティによる室内楽があり、本日水曜日は葵トリオさんは音楽院学生へのコーチングと、オンちゃん以下参加演奏家をバラバラにしてセッションするいかにもフェスティバル的な一晩。で、明日以降は土曜日のフィナーレに向けた練習などになりまする。ま、葵さんとすれば、その間にもシンガポールの日本商工会議所みたいなところでのクローズな演奏会があったりで大忙しなんですけど。若き日本の「音楽大使」っぷり、立派なものであります。

表のメディアに何か書く可能性もなくもないので、中身に関してはあれこれ言えないんで、ここで本日シンガポールの讀賣朝日毎日全部合わせたみたいなスーパー独占メディア「ストレーツ・タイムズ」に批評が出たのでそれを引用して…と思ったら、なんと有料記事しか見られなくなってるわい。残念ながらヘッドラインの写真は昨日のアンコールのものですが、ま、雰囲気だけ判っていただくために貼り付けておきましょか。
https://www.straitstimes.com/life/arts/concert-review-chamber-music-festival-s-successful-return-with-aoi-trio-and-pianist-ning-an

ちなみに「ストレーツ・タイムズ」の音楽批評は担当の評論家が2人で、そのうちのひとりがなんと音楽祭のディレクターさんご本人。「まさか私が書くわけにいかないけど、彼は悪いことは書かない奴だから」と苦笑しております。葵さん本番の写真などは、こちらの公式Facebookページからご覧あれ。
https://www.facebook.com/sgchamberfest
せっかくだから大盛り上がりの初日葵トリオ演奏会後、舞台裏にいらしたシンガポール日本大使夫妻と歓談する葵トリオさんの様子。
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ちなみにこのフェスティバル、当日プロはダウンロードのみで、ここからでも問題なく拾えちゃうんじゃないかな。本日は元マレーシア・フィルの首席オーボエだったヨン・シュ・トウ音楽院の先生にオンちゃんや元タンQの創設チェロのレスリー・タン氏らが加わるモーツァルトと、コンコーディアQという今のシンガポールでいちばん若い世代でアメリカに勉強に行ったりもしている奴ら(日本ならタンQがエクで、コンコーディアQがQアマービレとかQインテグラとか、って感じの位置付けかな)、それに葵さんが絡んでくる、いかにも「フェスティバル」ってプログラミングですな。
https://www.hopp.bio/scmf2024?fbclid=IwAR0EjzmtQT6CWoh5VfLjvycqiL7-Rs3ToFKX3cedvdZF-vvp9uEWbCAggsc

とはいえ、どんなもんか最低限のことくらい記しておけば、終わった二つの演奏会は「室内楽」のあり方として両極端にあるものでありました。

なんせ我らが葵トリオは、1曲を仕上げるのに数ヶ月、年間レパートリーを作ってそれを組み合わせて活動していく、という典型的な「常設」団体。それに対し、昨日は全員が中国大陸出身の音楽院の先生のアンサンブル(無論、いつも一緒にやってるようで、録音なんぞもいろいろあるようです)、ピアノのアン・ニン氏は北米でキャリアを作りピアノ科准教授に新任となってのお披露目でもあり、ヴァイオリンのチェン・ジュウは音楽院創設以来の弦楽器科主任で「世界一優勝賞金が高額」で話題になったシンガポール国際ヴァイオリン・コンクールの芸術監督兼審査委員長、ヴィオラのゾン・マンチェンはデトロイト響ヴィオラ副主席からシンガポール響首席、チェロのリーウェイ・キンはチャイコフスキーの入賞者でリンカーンセンター室内楽協会でも弾き日本でも知られている名前。要は、今のこの島で「室内楽やるぞ」と言ったらもうこれ以上のメンツはない、という人達ですわ。さしずめ日本なら…ううむ、堀米ゆず子、店 眞積、山崎伸子、江口玲、って感じのメンツかしらね。

で、その経歴からも想像が付くように、葵さんの作り込んだ精密な音楽に対し、パワーをフルにぶつけ合うアメリカンな熱い室内楽が展開されましたです。シューマンの詩情はどこに、なんて言っても仕方ない、そういうもんじゃないものをやってるんだからさ。

この二つの演奏会を聴いた「弾く」という意味では滅茶苦茶達者な世界から集まった学生たちは、どんな風に感じたのでかしら。今日の葵トリオの学生セッション、お嫁ちゃまの体調不良で覗きに行けるかわからんのじゃが、どれくらいのギャラリーが押し寄せるやら。

かくて20年ぶりのシンガポール室内楽の祭り、広く、とはいえないけど、深く盛り上がっておりまする。今日は流石にムリながら、土曜日の夜は日本からもまだ全然間に合いますよ。スコールが連日続く先週の荒れた陽気も収まった、ニッポン列島の初夏くらいの南の島にいらっしゃいな。

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16年バンフ組のリユニオン~シンガポール室内楽フェスティバル初日 [弦楽四重奏]

ディレクター氏に拠れば実質上20年ぶり、敢えて言えば第3回目開催となる「シンガポール室内楽音楽祭2024」の公開イベントが、昨晩のヨン・シュ・トウ音楽院ホールでのジョナサン・オン氏がふたつの若い弦楽四重奏団を指導するワークショップで始まりましたです。
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https://www.sgchamberfest.org/academy-series/quartet-demonstration-jon-ong

当電子壁新聞を立ち読みの酔狂な方ならご存じかも知れませんが、ヴェローナQ第1ヴァイオリンを務めるジョナサン・オン氏
http://www.veronaquartet.com/
通称「我らがオンちゃん」はシンガポール出身。前々回のアルカディアQが勝った大阪国際室内楽コンクール&フェスタの弦楽四重奏部門で旧名称ヴァスムスQとして参加し第3位となり、その後のロンドン・ウィグモアホール・コンクールでは第2位
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2015-03-29
そのまた後のメルボルンでは第3位
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2015-07-18
ってな調子でじっくりと成長を重ね、翌年のバンフを最後にコンクール時代を終えて「北米のレジデンシィを求めて彷徨う若人」になった。ちなみに彼らが最後にコンクール参加したバンフ大会には、日本ではエク以来の参加を許されたQアルパもいたわけでしてぇ、そー、正にこのアルパの第1ヴァイオリンとチェロが核となって葵トリオとなり、「弦楽四重奏を本気でやってて弦楽器ではないと不可能なレベルの室内アンサンブル」をウリにミュンヘンARDコンクールのピアノ三重奏部門で優勝を果たしたわけですから、なんのことはない、このフェスティバルのメインゲストって、みんなバンフ2016年組とも言えるわけじゃな。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2016-09-03
ちなみに、今となったからハッキリ言うけど「ロルストンQを勝たせるための大会」だったとしか思えぬこの年のバンフ、全く一緒の時期にミュンヘンARDの弦楽四重奏部門をやっており、北米大会VS欧州大会という様相となってしまい、北米にはアルパ、欧州にはアマービレが参加して…という興味深い年だったわけですな。

で、あれから8年、ヴェローナQにとっての最大の転機は2019-20年のシーズンからオハイオ州のオバーリン音楽院のアーティスト・イン・レジデンスのポジションを得たこと。正にコロナ禍が勃発する直前に大学レジデンシィという安定した場所を獲得出来ていたために、コロナ禍でも生活と練習が出来、問題なく活動が継続出来た。オンちゃん自身、この状況はもの凄く幸運だった、と申しております。コロナ禍で北米でのキャリアのスタートが奪われてしまい、現在の中途半端な状況に陥ってしまったアマービレを思うに、正に大学レジデンシィ制度こそが持続可能性が極めて低い「常設弦楽四重奏団」が21世紀に存続可能なほぼ唯一のあり方なんだわなぁ、と遙か地球の反対側を眺めてしまうシンガポールの空なのであったとさ。

ついでに言えば、オンちゃんたちや葵トリオの弦楽器ふたりが参加した些か特殊な回だったバンフの前の回に優勝しているドーヴァーQは、なんだか知らんけど今や英語圏では「若手のトップ」として不思議な程に評価が高く、ヴェローナQや過激派野党系アタッカQなんぞらと共に20年代の北米拠点最若年世代となりつつあるわけじゃが…まあ、もうここから先がどうなるかは、この業界最前線を退いた爺とすれば遠くから微笑ましく眺めているしかないわのぉ、歳は取りたくないもんじゃ…

おっと、爺の昔話になってしもーたわい。こう考えると、やくぺん先生第一線現役時代に眺めて来たいろんな若者達が、いよいよ本格的に中心になって業界が動き始めているわけで、コロナ禍で一度は隠居を宣言した爺にも爺なりに、残された余生に前を向いて現役時代のパワー半分くらいで眺めていかにゃならんもんもまだあるようじゃて。となれば、無節操無分別無謀な覚悟も勇ましく、もっと若い人たちの話をしよーではないかっ!

なんせ昨晩、音楽院学生、受講者、元SSOやらのご隠居奏者、フェスティバル参加演奏家、そしてこの島にも数少ないもののいらっしゃるらしい純粋な室内楽好き等々、60名ほどのギャラリーが一緒に舞台に上がって
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マイクもない距離で眺める中に登場したふたつの団体ってば、ひとつはヨン・シュ・トウ音楽院の学生ら、もうひとつはひとつくらい学年が下くらいのシンガポール芸術学校の高校生(だと思いますが…アジア系は歳が判らず困る!)。前者は世界から奨学金全額給付のエリート国立大学に集まった楽器はよく弾ける若い子達とはいえ、モーツァルト《不協和音》第1楽章という楽譜を前に弦楽四重奏をやったのはたった1週間前から、後者も同じく若い頃のミラノセットからハ長調の第1楽章を所見して2週間だそうであります。

どうもこれには些か意地悪なディレクター氏の秘策があったらしく、「楽器をちゃんと弾ける子達が初めてアンサンブルをやってみて、さあああ大変となったところに、おもむろに先輩のオンちゃんが颯爽と登場し…」って企画だったようです。芸高の子達は、どうもやくぺん先生の前に同じ書き込みがされたタブレットを抱えた女性が座って演奏の様子を食い入るように眺めていたので、学校の先生に指導されてはいたみたい。ヨン・シュ・トウ音楽院の連中はファカリティのタンQ(なのかな、まだ?)にも習わず、全くの手探りだったみたいです。

20年ぶりの室内楽音楽祭の最初に置かれたイベントは、そんな「弾けるけど、アンサンブルとしてはなーんにもない」という状況から「アンサンブル」をどうしていくかを示そうとするものでありました。

で、我らが講師オンちゃんのしたことを一言で纏めてしまえば、「アンサンブルの基礎とは何か?」を示すことだったのであります。

偉い先生の室内楽マスターコースで(恐らくは偉くない先生でもそうなでしょうけど)、最初に言われることといえば、「お互いをよく聴き合いなさい」「お互いのコミュニケーションを取り合って」ってな類いの言葉であることは皆様もよーくご存じでありましょう。で、オンちゃんは、「でも、実際のところ、聴き合うってどういうことなの、コミュニケーションってどうやって取るの?」ってな、基本的過ぎて上級マスタークラスでは誰も言わないことを、具体的にどうすれば良いかを暗示(明示?)してくれた。

ヨン・シュ・トウ音楽院の学生達には「ジェスチャーで示すとはどういうことか」を具体的に見せていく。舞台上にいる人全員に向かって、隣の人と同じジェスチャーで動いてみてくれ、なぁんて巻き込みをやったり。ステージの上では、動きに全ての意味がある、という当たり前過ぎることをあらためてハッキリと教えてくれる。
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高校生たちにはもっと過激で、アイコンタクトとはどういうものかを示す為に4人をウンと遠くに座らせて弾かせたり、更には楽器をおろさせ全てのパートを声を出して歌って、どのようにアンサンブルのやりとりがされているかを体験させる。実際に合唱部の練習かいなぁ、って命令にちゃんと従って、最初はおどおどながらガッツリ歌ってたお嬢さん方、立派じゃわい!

恐らくは、聴衆として座っていた殆ど全ての人は、何らかの形で「アンサンブル」というものに関わっていた経験があったんだろう。そんな人達に向けても、「室内楽フェスティバル」の一番最初に「アンサンブルの基礎とは何か」を思い出させることとなって、会場はマスタークラス見物とは思えぬ盛りあがりを見せたのでありました。

若い世代が講師やメインゲストとなって、もっと若い世代に室内楽を見せていく若い室内楽フェスティバル、始まった。さて、明日以降は…

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シンガポール室内楽フェスティバル2024開幕! [音楽業界]

遙かニッポン列島は雪に埋もれているらしい(のか?)春節前の厳冬期、皆々様におきましてはいかがお過ごしでありましょうか。やくぺん先生とお嫁ちゃまったら、先週は一年でいちばん気候の良い文字通りの新春の香港で旧交を温め、諸処雑用でいちど列島に戻り、一昨日に再び同じ道を(って、全然違う台湾より南の道だったんだけど)ほぼ倍のたびの空、連日30度で朝の7時に夜が明けて夜の7時に夜になる常夏の島、今や貧乏ニッポンを遙かに凌駕し韓国台湾と競いつつアジアでトップを走る先進国、シンガポールにやってまいりましたです。

ぶっちゃけ、1940年代半ばに日帝支配が終わり、国共内戦から朝鮮戦争、インドシナ独立戦争、越中戦争終結までの激動の30年が終わってから後の半世紀弱は、戦争を煽って商売したり政権維持したりしないといけん方々の思惑はどうあれ、ミヤンマー以東のアジア地域は歴史的にも珍しい「戦争のない半世紀」を過ごしているわけで、19世紀半ばから20世紀初頭の欧州で近代市民国家を育んだ半世紀の平和にも匹敵する発展の時期になっている。ましてやここシンガポール島ったら、世界最後の分断国民国家が南北共に極めて歪な形でのスーパー成長っぷりを見せてしまった朝鮮半島というこの地域で唯一の地勢的に面倒なところからは遙か遠く、イーグルくんやらファルコンくん、はたまた買ったばかりの空中給油A330なんぞが轟音立てて高層ビルやスーパー観光ホテルのスカイラインを縫うように行き来しようが、「うちの軍隊が戦争する相手っても海賊くらいしかいないし…」ってノンビリした場所。地震はないし津波もない、台風もまず直撃はないそうで、滅茶苦茶暑くて湿ってるくらいはしょーがないわね。

かくて、朝鮮戦争の後方基地になって稼げたとかいろんな偶然が重なりこの地域で一足早く突っ走っちゃったニッポンで、80年代後半に起きた経済バブルと同じような状況が、朝鮮半島南、フォルモサ島、大陸湾岸部大都市、そしてここ赤道直下の島と、微妙なズレはあるものの、次々と到来しておる21世紀20年代なのじゃ。最初にバブルったニッポンの90年代以降の大失敗を冷静に見つめ、分析するだけの賢い御上を持てたラッキーな地域は、今や世界経済を牽引する大繁栄の中にあるわけでありまするな。

さてもさても、そんなシンガポールという場所で、いよいよ本日から「シンガポール室内楽フェスティバル2024」が開催されます。回数がないのは、ディレクターさんに拠れば「20年前にやったが上手くいかなかった、まだ時が至らなかった」とのことで、仕切り直しで今回からまた頑張るぞ、といういことのようです。

一般公開のイベントは以下。ご覧あれ。なお、コンサート告知チラシというものが日本ほどは定着していない文化なので、こんなものしかありません。
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Webサイトはこちら。
https://www.sgchamberfest.org/
日程が24日からになっているのは、もう昨日からセミナーが始まっているからですな。

ええ、話は前後しますけど、このフェスティバル、普通の意味での「世界から室内楽の名人を集めて鑑賞する」というのではありません。先週の香港は、正にそういうものでしたけど、ここはちょっと軸足が違う。無論、室内楽コンサートはあり、メインゲストは我らが葵トリオ、もうすぐチャンギ空港に到着するところです。明後日の夜に最初のメイン演奏会としての公演があります。
https://www.sgchamberfest.org/concert-series/festival-concert-i-aoi-trio

で、このフェスティバルのもうひとつの柱が、アカデミーと題されたコーチング・セッション。シンガポールやその周辺、マレーシアやらインドネシアからのプロアマ年齢問わぬアンサンブル28団体が会場のヨン・シュ・トウ音楽院に集まり、葵トリオを筆頭に、シンガポールが誇る我らがヴェローナQの第1ヴァイオリン「オンちゃん」以下、フェスティバル・ゲストがコーチングをする教育セッション。
https://www.sgchamberfest.org/academy-series
実は隠れたテーマは、タンQの次の世代としてフェスティバル・ディレクターさんが育てている地元のコンコーディアQにこれら外国からのコーチからみっちり学んで貰おう、というものなのでありますわ。

ニッポン、特に東京にいると、次から次へと世界の主要弦楽四重奏団がやってきて、学校やらアカデミーやら、はたまたプロジェクトQみたいな民間のコーチング・セッションやら、なんのかんの若いプロ連中が教えて貰う機会が山のようにある。敢えて言えば、溢れていて些か消化仕切れなくなっている、と言っても過言ではないでしょう。

ところが、ソロならともかくグループのセッションとなると、サンフランシスコから直行便で17時間という地球の反対側の南の島やその周辺の室内楽志望音楽家にすれば、なかなか経験があって若く力のある先輩達に習う機会は少ないのであります。それをなんとかしたい、というのがディレクターさんの悲願。それ故に、こんな突拍子もない数のコーチングの枠が準備されたのでありました。

シンガポールの室内楽状況、正に80年代バブル頃の日本の状況に近いのかも。最初のホントのプロの団体としての巖本真理Qの活動が終焉し、初めて室内楽で世界に出た東京Qの第1世代が国に戻ってきて、本気で教え始めた頃。アマデウスQのセミナーが室内楽志望者を爆発的に増やしたあの頃のニッポンの空気が、ここ南の島に流れている…のか。

仕切り直しで再び始まったシンガポールの室内楽音楽祭、来週土曜日まで、お暇な方はどうぞ。ニッポン列島からなら、せいぜい5時間ちょっとで来られますよ。

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パリの若手弦楽四重奏オーディション [弦楽四重奏]

香港の室内楽音楽祭、先週来の公開リハーサルや子ども向け演奏会に続き始まったメインコンサートも順調にふたつ終わり、あとは今日と明日を残すのみ。連日、演奏会そのものの内容がデッカくてヘビーで、終わると演奏家も聴衆もヘトヘトだけど、この大陸の端っこに浮かぶ南洋の島とすれば一年で最も過ごしやすい時期とあって老爺ふーふにとってもそれほど肉体的な負担は厳しいわけではなく、ま、なんとか過ごしておりまする。演奏会本編についてはいろいろ言いたいこともあるが、ニュースとして急いでアップしておかにゃならんことも広大なユーラシア大陸跨いで一万㎞の反対の隅っこで起きているので、情報として記しておきましょうかね。

現在、パリはシテ・ド・ラ・ムジークで開催されるクァルテット・ビエンナーレ、今回でなんともう11回だそうな。
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https://philharmoniedeparis.fr/en/calendar?startDate=2024-01-12&weekend_i=835
メインゲストに今シーズン結成半世紀を迎えるクロノスQを迎えた本公演とか、彼らがカーネギー財団委嘱で行った「短い弦楽四重奏の新作楽譜を全部無料でオンライン上に公開し、若い団体にドンドン新作の弦楽四重奏を弾いて貰おうじゃないか」というオソロシー、でも猛烈に意味のあるプロジェクト《クロノスの50曲》を若い連中集めて全部弾かせちゃうとか
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/26399-kronos-quartet-marathon-50-future-1?itemId=129607
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/26456-kronos-quartet-marathon-50-future-2?itemId=129878
先週から賑々しく開催されているようでありまする。日曜日の隣のフィルハーモニー・ド・パリを会場に借りるQモディリアーニとレオンコロQのオクテットなどのファイナル・コンサートは、会場がデカいだけに流石にまだ切符はあるようですけど
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/26145-concert-de-cloture?itemId=129194
いつも席の取り合いになる売店奥のアンフィシアターでのレオンコロQやら
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/26330-quatuor-leonkoro?itemId=129449
ミニマル作品ばかりやるQタナなんぞはガッツリ売り切れになってるようですし、ハーゲンQやらベルチャQやらはシテ・ド・ラ・ムジークの音楽ホールがそこそこちゃんと売れているようで、周辺には毎度ながらの聴衆が会場を移動し狭く酷い導線を右往左往するざわざわワラワラ感じが漂っているんでしょうねぇ。

さても、そんな中で、弦楽四重奏業界的に最も重要なイベントが、こちらじゃ。
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/master-classe/26331-audition-internationale-de-quatuors-cordes?itemId=129450
来る土曜日、狭いアンフィシアターの席を埋める欧州各地の音楽祭ディレクターやらホール主催者やらやら、はたまた勝手に来ている各地の主催者や音楽事務所関係者、演奏家やコアな室内楽ファンらが見守る前で、午前10時から午後5時過ぎまで若い団体が次々に登場し、サンプル紹介みたいな短い演奏をし、質疑応答をする、というもの。

ぶっちゃけ、所謂「コンクール」や「オーディション」のような「その結果、直接何かの賞が与えられたり出演契約が出来たりする」ものではないけれど、終わった後のパーティというか、ざわざわしたお疲れ会では欧州の弦楽四重奏の「価値を決める」力を持った人達と演奏家が直接話をする可能性があるわけで、自分らの売り込み、あるいは自分らの音楽祭やホールへの若手枠演奏会への招聘、ことによると音楽事務所の室内楽担当者から声がかかる可能性がある。〇〇コンクール優勝、なんてのよりもよっぽど意味のあるチャンスなんですわ。

なお、リストには上がってませんけど(ディレクターが交代し、うまく引き継ぎがされてなかったみたいで)、大阪の日本室内楽振興財団プロデューサー氏が招聘されて既に現地入りしてますから、一応、日本も蚊帳の外ではないのは良かった。台湾の奴の名前がなくなっているのが、単なる引き継ぎミスなら良いんですけどねぇ。

まあ、前のディレクター時代に比べると「欧州内イベント」という感は強くなったのは否めないし、カーギーホールやバンフセンターなどから人が来ていないのも気になる。なんせ、大西洋跨いだ反対側でのチェンバーミュージック・アメリカの年次総会がガッツリとバッテイングしてるんで
https://conference.chambermusicamerica.org/
来られないのか、もうコロナ後の世界では室内楽を「持続可能性」のあるものとしていくためにはマーケットを無闇に広げる必要はない、という割り切った考え方なのか。

《クロノスの50曲》プロジェクトという形で、バービカンQとかケイオスQとか、Qインテグラと同じ土俵くらいに並んでた奴らが顔を出しているし、未だコロナ禍の中で強行された前回のビエンナーレではこのオーディションに出ていたレオンコロQが2年後の今回はしっかりと本公演で演奏しているし、いくら最前線は退いた爺とはいえ、何が起きてるかくらいは知っておかないとねぇ。

ちなみに本公演に今や世界一の弦楽四重奏と誰もが認めるQエベーネの名前がないのは、エベーネがフランス国立放送のレジデンシィだかをやっているため、パリではフランス放送主催の演奏会の他には出演出来ないからだそーな。要は「大人の事情」ってやつでんな。

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キャロライン・ショウの新作《マイクロフィクション第1巻》 [現代音楽]

一昨日夜、香港シティホールで、ミロQが演奏するキャロライン・ショウの新作《Microfictions, Vol.1》のアジア初演が行われました。この香港の音楽祭も委嘱に名を連ねており、当初は2021年に当地で世界初演が予定されておりましたが、皆様よくご存じの理由で延期になり、既に北米などで初演され、やっと本来の場所でのご披露に至った次第であります。

結果として、2022年8月24日の世界初演の映像全曲が既にYouTubeにアップされておりますので、なんのかんの言うより、まずは聴いて下さいませ、と貼り付けてしまいましょう。ほれ。


今や北米作曲界で最大の売れっ子のひとりとなっているキャロライン・ショウ、当電子壁新聞を立ち読みなさっているような酔狂な御仁であれば、我らがアタッカQがこの作曲家の弦楽四重奏作品を演奏してアカデミー賞まで獲っているのはご存じでありましょう。作曲家の紹介はこちらをご覧あれ。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2020-01-05

当初の予定ではご本人も香港にいらっしゃるという話もあり、大いに期待していたのですけど、流石に世界初演ではなくなったのでそれはならず。で、もう上の映像を眺めちゃった方にはお判りだとおもうんですけど、この作品、「コロナ時代にtwitterの字数範囲でマイクロSF作品を発表していた作家さんがいて、その作品にインスパイアーされて作曲された」というもので、各曲の前に作品がまんま朗読される、という趣旨のもの。んで、上の映像では作曲家さんご本人が朗読しているわけだけど、香港には要らしてなかったんで、一昨日はミロQのメンバーが交代に朗読をしました。

で、台本は以下。まんまコピペ。

I. Under the hot sun, the road signs melted until they were the color of an unrhymed
couplet, pointing to cadences left or north.

II. The photographs smeared into focus one by one, like organ pipes being tuned. Some of
edges and corners were torn, but the tune was still visible.

III. The summer storm laughed and lilted and shouted until it found a shady spot, beneath an
oak's dappled counterpoint.

III & 1/2. Between the third and fourth movements, the second violinist stood up and said
hello to the audience. Everyone was grateful to know which movement they were on.

IV. The complete taxonomy of verse forms is buried in a cardboard box beneath a chord that fell
from grace.

V. Waking up on the early side that Tuesday, Miró noticed a bird repeating its solitary
caption. The clouds nodded to the tempo of an undiscovered Mendelssohn song.

VI. The mountains folded in among themselves, as the day grew on. Their songs could only
be heard in heavy fragments, obliquely, from years and miles below.

なんか、もうどうこう言うこともないので、ともかくご覧あれ。ただ、日本の団体がやるのは…なかなかハードルが高そうですなぁ。テキストもほぼ翻訳が出来ないようなものだし。それから、残響が強いヨーロッパ系の会場では、ちょっと難しい作品かも。ヴィブラートそのものになんか指示があるんじゃないか、って感じの楽章がありますし。

とはいえ、作品そのものは絶対にアピールするから、いずれ演奏がオープンになったらどこかがやるでしょう。いっそ、メトの委嘱作品で盛り上がって、オペラシティやらサントリーの夏祭りやらにでも作曲家ご本人が招待されて…ってのを期待しちゃいますけど。

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香港文化中心と香港藝術中心は違うのじゃ [たびの空]

コロナ禍を経て4年ぶりのフル再開となった、今や香港で唯一の西洋型クラシック室内楽音楽祭「飛翔演奏音楽節2024」、無事に始まっております。

この音楽祭がどんなもんなのか、過去の当電子壁新聞記事を眺めていただくとして、今、これだけめっかったわい。なんかもうちょっとあったような気がするけどなぁ。
第8回 https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-01-23
第6回 https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2015-01-21
第5回 https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2014-01-15
第2回 https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2011-11-27

なんせこの音楽祭、時期がパリのクァルテット・ビエンナーレと完全にバッティングするので、これまではそっちがある年はパリのシテ・ド・ラ・ムジークに通い詰めるため泣く泣くパスでありました。ところがコロナ禍に拠点を温泉県盆地に移し、世界の最前線を追いかける作業は若い方々に任せて収入激減の年寄り仕事へと転身する決意をし(パリのディレクターだった方がボルドーに移ってパリのビエンナーレの中心人物が代替わりしたこともあり)、ってことは「昔からやってきた仕事を最後まで見届ける」のが本業になったわけじゃのぉ、ってなわけで今年は遙か遠くお高いパリやアムステルダムはさっさと諦め、いろいろと面倒な状況にある香港という街にやってきた次第。なんせ福岡板付空港からなら偏西風に逆らっても3時間くらいのフライトなんで、ま、近いっちゃちかいわいな。

さてもさても、既に音楽祭としての大きな枠組みは先週から動いていて、ヴィクトリア湾挟んでオープンリハーサルやら子ども向け演奏会などが行われているようであります。これまではチョコチョコっと主要公演を眺めたりしていただけなんだけど、今年はメイン会場となるシティホールからトラムでガタガタ20分くらい東に向けて揺られた庶民街、日本語ガイドブックでは掲載されている香港島内いちばん東の外れの辺りギリギリの安宿に陣取り、ノンビリだらだら眺めましょか、というお気楽気分でありまする。

昨晩のオープニング・コンサートで始まった本公演についてはまた別に記すとして、まずはアホな「たびの空」話でお茶を濁すじゃわい。存在証明。

さてもさても、まずは朝からリハーサル見物じゃわい。ゲイリー・ホフマン氏、お嫁ちゃまに拠れば2005年の神戸チェロ・コングレス以来じゃないか、って久しぶり。すっかり好々爺になってるのか、シュターカー先生みたいな怖い爺さんになってるのか、眺めにいこうじゃありませんかっ。

で、出かけようとしたら、リハーサル見物にはレジスターが必要だったことが判り、慌てて完了。おおおお、ちこくじゃぁ、とトラムに飛び乗り、香港警察前まで到着したらもう開始5分前。慌ててヘネシー路から渡るのが大変なデカい道を2本飛び越え、なんとか香港藝術中心の1階ロビーに到着するともう10時過ぎ。まだブラームスの弦楽五重奏の練習が始まったばかりじゃろとエレベーターを眺めるに、指定の部屋など判らぬ。そこにいるおねーさんにお尋ねするや
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こっちじゃなくて、対岸の文化中心だとのこと。
おおおお、なんせ今回のフェスティバルの本公演は全部シティホールなもので、全然九龍側に行くこと無いなぁ、と思い込んでおったじゃ!焦って湾仔のフェリー乗り場まで歩くも、なにやら拍子抜けでパワーも入らない爺婆、フェリー乗り場眺めるカフェで座りこんでしまったじゃ。ま、後半のシューマンのピアノ五重奏には元パシフィカのマスミさんが出るから、挨拶出来れば良いじゃろ、とノンビリ構えてしまったのであーる。

とはいえ、対岸のフェリー乗り場横に聳える巨大な文化中心
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所謂室内楽向け小ホールはなくて、その類いは隣の小劇場みたいなところとかでやるくらい。練習を「藝術中心」と信じ込んでいたのも、まさかあっちでやる理由はないだろうという勝手な思い込みなのであった。どーやって入るんじゃ、などと思いながらぼーっとスターフェリーに揺られ、辿り着くは文化中心前。香港観光に訪れる全ての人がやってくる大観光地ながら、定番写真スポット側には背を向け北西角の楽屋口に走り、受付のおねーさんに「リハーサル見物なんですけど…」と携帯に送られてきている見物チケットを示すと、そっちだ、と楽屋奥のエレベーターを指さす。なんのことない、香港フィルの練習などもやる小規模なアンサンブル練習場がオープンリハーサル会場なのであったとさ。

シューマンの五重奏、第2楽章練習の真っ最中で、50人弱くらいの香港の善男善女が熱心に座ってる。最初はすっかりホフマン社長が仕切っており、マーチとしてのテンポの問題とかみんなにいろいろ言っていたが、コーダの部分の音符がヘンレとペータースで違う、って話からすっかり盛り上がり、第3楽章の最初のトリオ前でのボウイングでニン・フェン氏が突っ込み始め、第4楽章では「それぞれしっかり意見持った連中がお互い言いたいことを言い合う」って状況を見物することになり、久々に痛快なリハーサル風景を眺めさせていただきましたです。
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ホフマン翁、全然元気で、全部通してもういちど最初から始めた第1楽章のチェロ独奏なんて、しっかり持ってきます。元気で何よりでありまする。面白いのは、自分が独奏の部分になると何にも言わなくなること。ホフマン御大をどう支えるかは、フェン氏とマスミさんがガーガーやってました。

いよいよ始まった4年ぶりの香港の室内楽音楽祭、春節明けの香港藝術節がすっかり大陸色が強まり、所「西洋クラシック音楽」はバイエルン国立歌劇場の《ナクソス島のアリアドネ》くらいしか大物はなく、来訪メイジャーオケもなく、とうとうひとつだけ確保されてきていた室内楽枠はなくなってしまった。今や貴重な香港の室内楽祭り、金曜日まで4公演がありまする。お暇な方はどうぞ。
https://www.pphk.org/festival/bpmf2024/

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春節前の亜細亜たびの空 [たびの空]

以下、業務連絡みたいなもんです。

明日14日日曜日から春節休暇明け後のグレゴリオ歴2月21日までの5週間と少し、まだまだひよっこ隠居のやくぺん先生とすれば、恐らく2024年最大のツアーの季節となります。なんせ秋のル・バルコンによるシュトックハウゼン《光》チクルスが終結まであと2作のところまで迫ったのに一年休み(巴里五輪の為に文化関連イベントがグチャグチャという話があるんだかないんだか…)のため、大陸を跨ぐ長距離移動は現時点で確定しているものはなし。

この週末から始まってるパリのクァルテット・ビエンナーレ
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/26455-kronos-quartet
それに続くアムステルダムのクァルテット・ビエンナーレ
https://sqba.nl/en/
パリはポール・ビアンコがチェロに座るクロノスまんせー大会みたいだし、アムステルダムは大阪のアンバサダー団体も出るんで、現役時代なら当然ずっと欧州だったじゃろが、なんせ隠居となって収入激減で庵の維持で精一杯の貧乏爺、3週間の渡欧などとても無理じゃ。かくて、この二つのクァルテット業界大イベントからはサッパリ身を引き、もっと近いところの、もっと未来のある類似イベントに向かう爺と婆なのであーる。

正直言うと、大きいのは費用の問題じゃの。今や、情報を仕込んでも使ったり売ったりするところがない隠居の身、もの凄い贅沢と言われかねない渡欧なんぞ出来ても年に一度がやっとという状況には変化がない。ほのQがテープ審査通って招聘される10団体になると確定した時点で、久しぶりのレッジョ行きを考えている程度。あちらも、ご隠居とはいえ影響力ないとは周囲の誰ひとりとして思ってはいないジメナウアーおばさまが審査委員長、ってトンデモ人事なんで、本気で売れたい欧州の猛者共は目の色変えている可能性があり、初回のカルミナQ大スキャンダルがあった特別大会だったときくらいの勢いで、既にキャリアのある実力派団体がこぞって押しかけるやもしれぬわい。要は、「ジメナウアー音楽事務所の公開オーディション」ってことじゃの。そうなると、冗談じゃなく、気楽に考えてるとほのQだってテープ審査落ちの可能性がなくはないわけで…

ま、それはそれ、数週間後に考えましょ。ともかく現時点では、この初夏くらいまでにやくぺん先生が羽田なり成田なり福岡板付なりから飛行機に乗って、高度10キロで3時間以上のたびの空をする予定としては、明日から如月頭までの亜細亜ツアーしかありませんです。はい。静かな年になるんじゃろかのぉ、婆さんや。

んで、まずは明日の朝5時過ぎに起き出し、ろくにモノは詰まってないけど無駄にデカい荷物ゴロゴロ引っ張って盆地駅まで歩き、夜明けはまだまだ先な午前6時20分発久大線大分行きに倒れ込んで1時間も下っていくのじゃ。なんせ午前7時55分大分駅前要町バス停から福岡空港国際線ターミナルまでの直行便バスに乗らにゃならん。

なんでこんなアホなことになっとるかといえば、午前8時盆地バスターミナル発福岡空港国際線ターミナル行きバスが、一席もないからじゃわい。1ヶ月前の予約の日、年末のバタバタで日付を1日間違えていて12月15日に慌ててネット予約しようとしたけど、一席も無し。以降、バスセンター近くを通る度に「キャンセル出た?」と無愛想なおねーさんに尋ね続け、ネット画面もチェックし続けたんじゃが、結局、出てこず。次の10時のバスは数日前に一席出たけど、それじゃチェックイン時間に間に合わず。で、しょーがないからこんなアホな時間に大分までおりにゃならん。

何が起きているかって、よーは今や全国津々浦々の観光地で起きている「インバウンド問題」です。発売日の日が変わった瞬間に外国観光客さんや旅行会社さんがネットで予約を入れ、バスセンター窓口が開く時間になるともう一席も無くなっている…なんて状況が続いてます。午前中のバスはもうずっとその状態で、地元民が思い立って福岡に行くのに利用しようとしても、午後遅くの便までほぼベッタリ売り切れなんですわ。

困ったことに、このバス予約はキャンセル料が実質設定されていないので、ともかく予約してしまう輩がいっぱいいるらしく、実際には利用したい人がいるのにバスは空いた席をいくつか残しながら発車せざるを得ない。無論、予約時点で払ってませんから、亀の井バスさんや大分交通さんにとっても、乗りたい客がいながら売れてない空席のままで行かざるを得ない。ううううむ、これ、困るんだよねぇ…。実は、あの無愛想なバスセンターのおねーさんによれば裏技があるそうなんだけど、明日14日日曜日まではお正月期間ということでその裏技設定はしていないそうな。ええええええん…

ま、インバウンドの皆様と我が軍駐屯地のお陰で喰えている貧乏な田舎盆地ですから、文句は言えませんな。はい。京都や鎌倉の住民のように「観光公害」なんて、口が裂けても言えぬ何もない貧乏な田舎なのであーる。

もといもとい。そんなこんなで盆地発直行バスが福岡空港国際線4階出発ターミナルに到着するより15分程遅く出発ロビーに到着。ちなみにJRで行くと、久大線久留米行きが6時半過ぎだかで、なんのかんの福岡空港国内線ターミナル地下に到着するのが直行バスとほぼ同じ。ただ、国際線ターミナルはあの猛烈に混雑した無料ターミナル連絡バスを待ち、インバウンドの森を掻き分け掻き分けで15分以上余計にかかるので、国際線出発ターミナルに直接乗り付けてくれるバスが圧倒的に楽なのじゃわい。ここ。
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んで、昼過ぎのすっかりお馴染みLCC香港急行さんで夕方前にランタオ空港に到着。明日は着くだけだから延々と路線バスでも良いんじゃが、羽田からANAさんで既に到着しておるお嫁ちゃまがお腹を減らしているかもしれのぉ、とにもかくにも香港島の安宿に到着。今回は夜の公式パーティやらが多いのでアパートタイプではなく、普通のツーリスト用安宿に1週間の滞在じゃわい。んで、目的はこちら。
https://www.pphk.org/festival/bpmf2024/

10年代には当電子壁新聞でもレギュラーで報じておった旧香港国際室内楽音楽祭、今は「飛翔演奏香港」なる名称に代わったフェスティバルなのであーる。春節明けに大々的に行われている香港芸術節とは異なり、あくまでも民間が主催する室内楽フェスティバルで、初期はチョーリャン・リンなんぞが中心に動いておりました。今は…よー知らんです。ま、お伝えすることがあれば、当電子壁新聞になんか貼り付けましょ。なんせニッポン語は紙メディアもWebメディアも関心を示してくれない地味なイベントですから。で、同時期に完全に重なっているパリのビエンナーレではなくこっちに来るのは、ひとえに出演者の顔ぶれ。なんせ、ミロQと元パシフィカQのマスミさんとなれば、これはもう2時間半飛べば到着するところにいて行かないとなると、何を言われるかわかりゃせぬ!
https://www.pphk.org/festival_event/festival-opening2024/

今や北米でいちばん売れっ子の作曲家キャロライン・ショウが来るという話もあったんですけど、現時点では判らず。明後日辺りの当電子壁新聞を請うご期待!

で、1週間後の土曜日に同じ道を戻り、日暮れ過ぎに盆地に戻って翌日は洗濯や荷物の詰め替え。22日月曜日の夕方にはバスで再び福岡に向かいます。一晩をカプセルホテルで小さくなって過ごし、翌23日朝に天下のシンガポール航空さんで同じ道をひとっ飛び、恐らくは台湾からフィリピン上空を抜けて戦艦武蔵眠るブルネイ沖を跨ぎ、午後遅くない頃にシンガポールに到着。この日はまたまた東京羽田から到着するお嫁ちゃまとほぼ同じ時間なんで、一緒に市内に向かい、春節前の南の島祭り第2弾、「シンガポール室内楽フェスティバル」周辺をウロウロしますです。
https://www.sgchamberfest.org/

正直、こっちもまだ内容を把握しきってないのだけど、所謂「世界から著名な演奏家を呼んできて聴衆に聴かせる」という普通の国際音楽祭としての側面もあるものの、仕掛けているプロデューサーさんのホントの目的は「シンガポールに於けるプロフェッショナルな室内楽の育成」であることはハッキリしてる。その意味では、非常に興味深い「教育イベント」ですな。

あれよあれよという間に日本を追い抜きアジアのトップ先進国となったシンガポール、演奏家も10年代くらいから次々と出てきていて、カーチュン・ウォンなんて日本のオーケストラ愛好家がみんな知ってるスターも出現している。感じとしては90年代終わりから世紀初め頃の半島みたいな勢いで、いよいよ室内楽にも手が付けられ始めたその萌芽期を眺める(お嫁ちゃまとすれば、現役時代に晴海や溜池でやってきた嘗て取った杵柄、今や立派なプロデューサーとなったかつての若い同僚と、遙か南の島でお手伝いする)という、とても面白い状況なのであります。そこでメインゲストになっているのが、我らがヴェローナQのオンちゃんと、我らが葵トリオというのだから、もうこれはアムステルダムのビエンナーレなんて行ってる場合じゃないでしょ。

思えば今や世界一物価が高いと言われるシンガポールに10日もの長逗留、宿はキッチン付きのアパートとはいえ、どんなことになるやら。厳冬期のキューシュー島は温泉県盆地から避寒できる事実をラッキーと思いましょか。

で、欧州への道にも盛んに使う深夜過ぎのチャンギ空港発福岡板付行きで如月4日に戻り数日を盆地でぶっ倒れ、やっとフラフラ立ちあがれば、春節休暇の到来とともに日本フィルの九州ツアーが始まるわい。

なお、明日以降、メールやらFacebookメッセージ欄でのインターネット経由の連絡は問題なく可能です。生活せにゃならんので、通常業務もやりまする。皆々様、よろしくお願いいたしますぅ。

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BBCミュージックマガジンが選ぶ歴代トップ10弦楽四重奏団は… [弦楽四重奏]

あるフランスというかスイスというかの弦楽四重奏関係者さんが、こんな興味深いというか、抱腹絶倒というか、言語道断というか、まあなんともコメントのし辛い記事があるよと教えて下さいました。こちら。
https://www.classical-music.com/features/artists/best-string-quartet-ensembles-ever?fbclid=IwAR1oojFo6bb4nwiWu_NZW-zlPOWVOBQt1oURrUX__Qi98QygBuB58F_SBrc

このライターのシャーロット・スミスという方がどういう経歴で、どういう辺りをメインにしているのか知らないし、少なくともやくぺん先生はあちこちの弦楽四重奏コンクールの現場で出会っていた良く知った顔、という方ではありません。どうやらBBC4の「プレゼンター」だそうで、世代的には還暦くらいだから、ウィグモアホールやらロイヤル・アカデミーのホールで姿くらい見かけたことはあってもおかしくない人じゃのぉ。どうやら室内楽の専門記者というのではないみたい。

ま、ということは、逆に「イギリスの普通の音楽好きが選ぶ歴代ベストテン」ってことで、そういう風に思えば極めて興味深いですな。意外と言っては失礼なのは、パヴェル・ハースQが入っていること。いや、連中が悪いというのではなく、いっぱいいるこの世代の中からエベーネQが選ばれるのは当然としても、へええパヴェル・ハースかああああ…って嬉しいんだかなんだか。

若手トップがドーヴァーQってのも、恐らくニッポンでは「ドーヴァーって誰じゃ?」でしょうねぇ。

もうひとつ、もっと意外なのは、リンゼイQが入ってないことですな。あの「うのこーほー氏とイギリス人以外は誰も褒めない」なんて酷いこと言われてた団体、英国人の選ぶ歴代ベストテンなら当然入ってくると思ったんだけど。

ま、新春とは言えまだ長い冬の晩、このリスト片手にああだこぅだ盛り上がって下さいませ。

[追記]

この記事、いつ出たんだろうなぁ、と思いつつも、まあ「永遠のベストテン」だから問題ないじゃろ、とアップしたところ、ある方から「2年くらい前の記事ですね」というご指摘をいただきました。へえ、今だったらドーヴァーじゃなくてレオンコロじゃないかな、若手一押しは。

ちなみに、この記事を教えてくれた奴、実は自分もこのベストテンに入ってるんだけど、今は指揮者が本業。来るアムステルダムのビエンナーレで久しぶりに(なのか?)チェロ弾くようで、嬉しくなって引っ張り出してきたのかしら。やっぱり、弦楽四重奏やりたいんだろーなー…

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半島人事情勢あれこれ [音楽業界]

先週金曜日に福岡日帰り取材に行ってから、やっかいなテープ起こしが必要な(ってか、ひとつは英語インタビュー翻訳そのものなんじゃが)原稿が二つ入っていて、これをやっつけないと来る日曜日からミロQとマスミさんに遇いに行く香港ご隠居旧交温めツアーに行けんわい。ってなわけで、優先度最下位の当無責任電子壁新聞はすっかりほったらかしで、これじゃいくら何でもマズかろーという生存証明じゃわい。ま、雑談じゃ

ちょっと所用があってソウル・アーツセンターとロッテホールの初夏くらいまでの日程表を眺めたら、半島でも色々と人事が動いておるようじゃわい。

やはりいちばんの話題は、チョンさん騒動以降、その活動方針を巡ってもバタバタしていた感があるソウルフィル、繋ぎ人事みたいにシュタンツ御大が来たりしてたけど、やっときっちり音楽監督が決まったようですな。こちら。
https://www.seoulphil.or.kr/?langCd=en&menuFlag=MFLG0001
ご関心の向きは、香港フィルを世界に引き上げるnaxosへの《リング》演奏会形式録音なんぞやったヤープ様、香港のポジションは23-24年シーズンで終わり、ソウルに引っ越す顔見せ兼勝負曲として《ヴァルキューレ》1幕を2月1日にやりますな。思えば、チョンさん騒動が始まって、結局《ヴァルキューレ》は代役が指揮することになり、ソウルまで行ったものの気が抜けてしまって某編集者さんと南部バスターミナル駅近くのチキン屋でビール飲んでチキン喰らって1幕ガッツリ遅刻した、という呆れたことをしており、時間が合えばそのゴメンナサイをしたいところなんじゃがのぉ。

で、ソウルの都響たるソウルフィルに対抗するソウルのN響、KBS響ですけど、こちらは一昨年からの我らがインキネン様の大活躍は相変わらずで、なんだか2ヶ月に一度は定期振ってるんじゃないの、という勢い。
https://www.kbssymphony.org/eng/m/main/main.php
そればかりか、チョンさんがソウルフィルではなくこちらを振るようになっていて、なんか凄いなぁ、KBS響!

チョンさんと言えば、やはりこちら。
https://www.sac.or.kr/site/eng/show/show_view?SN=62021
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20231205002600882
ニッポンの連休直後の5月7日、ソウル・アーツセンターでチョンさん指揮東フィルの公演がありまする。演目はまだ出てないようだけど、常識的に考えれば同月の定期と同じなんでしょうが…判らんなぁ。

なお、ソウルの春のお祭り、韓国の「地方都市オーケストラ・フェスティバル」たるソウル・オーケストラ・フェスティバルですが、アーツセンターの日程表を眺めるに4月の大ホールの日程が全く出ていませんから、恐らくここにドカンと入ってくるんでしょう。ご関心の向きは、このページをちょくちょく眺めに行って下さいな。
https://www.sac.or.kr/site/eng/program/schedule

なお、4月末の「ソウルの春室内楽音楽祭」は、アーツセンターの中ホールと世宗文化会館小ホールで開催されるようですが、毎度ながらまだ詳細は不明。この辺り、もうちょっと早く教えてくれんかのぉ。

半島への道、ANAさんの子会社も飛び始めるようだし、ドンドン広くなっていくのかしら。我が国東半島先っぽ空港も、大韓航空が戻って来て水曜日と日曜日以外は仁川便が飛ぶようになってるし。

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第49回日本フィル九州ツアー記者会見 [音楽業界]

本日、福岡アクロス上層階の会議室で、冬恒例の日本フィル九州演奏旅行記者会見が行われましたです。
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今やすっかり「ヴィオラ奏者」じゃなくて「常務理事」も板に付いた後藤氏以下、3度目の九州ツアー指揮の鹿児島出身下野竜也マエストロ、ソリストでメンコンで直球勝負する「東京ブギウギ」リバイバル真っ盛り服部家四代目の百音嬢が登壇、それぞれに篤い思いを語りました。

マエストロは鹿児島出身で、プロオケがない地域とあって、毎年冬にやってくる日本フィルはプロオケに接する貴重な機会。九州ツアーで演奏された《ボレロ》とか、渡邊暁雄のシベリウス2番とか、音楽の原点となっているそうな。ライヴを体験するスペシャルさを強調なさってました。自分は日本フィルではゲテモノ担当と思われているかも知れないけど、《幻想》とかドヴォルザークの8番とか王道レパートリーを良く知っているオケとやるのは勉強になる、とのこと。「カレーライスを置いてない洋食屋はないでしょうから、その食べ比べをするのはクラシック音楽の楽しみ」と、巧みな比喩で会見場を盛り上げます。

服部さんは、14歳で読響でデビューしたときに下野氏とメンコンをやったそうで、それから10年、敢えて王道作品で真価を問う勢い。弦楽器ファンには、コロナの頃から日本ヴァイオリンさんから貸与され使っているというデル・ジェスが、真っ向勝負のメンデルスゾーンでどんな響きを奏でるか無関心ではいられないかも。
https://ontomo-mag.com/column2/classic-trend-10-4/?segment=107392

そんなこんな、壇上の音楽家諸氏が雄弁にお喋りになってくださる記者会見は延々と1時間以上続いたわけでありますが、このイベント、なによりも印象的だったのは会場の後ろに控えた九州各地の主催者の皆さんでありました。

なにせ、日本フィルの九州ツアー最大の特徴は、主催が今時のオーケストラ地方公演の常識たる地方公共文化財団やら公共ホールではないこと。コロナ以降でも、小倉のホールがゲルギエフ指揮ヴィーンフィルやらラトル指揮ロンドン響でエルガーの交響曲やったり、姫路の新しいホールがペトレンコ指揮ベルリンフィルやったり、とんでもないことが起きるわけでありますが、そういうのは基本、民間の音楽事務所が営利活動としてやるわけではなく、ぶっちゃけ、地方公共団体が税金を投入して市民のために行っているわけでありますな。千万単位のお金がかかるオーケストラ公演ですから、民間がおいそれとやれるものではない。ところがこの日本フィル公演、無論、昨今の潮流を反映して地方公共財団が共催やら協力しているところもありますが、基本、各地の民間任意団体である「日本フィルを聴く会」とか「友の会」とかが、日本フィルと共催という形でやっている。本日の記者会見も、正直、かなりの部分、マエストロやソリストさんの主催者さんとの顔合わせ、お互いに来月のツアーに向けて頑張ろう、というエールの交換のようなところが感じられたのでありまする。

まあ、東京の海千山千の専門記者やライター、評論家諸氏が雁首揃えるピリピリした記者会見と同じである筈もないでしょうけど、やくぺん先生的にはとっても新鮮で、気持ちの良いものでありました。「誰のために音楽をするか」というのがハッキリしているコンサートって、案外、ありそうでない。ましてやそれがツアーなんだからねぇ。

49回目(2021年はコロナ禍で欠番ですが)の日本フィル九州ツアー、2月の10日から21日まで九州9都市をまわります。お近くでご関心の方は、是非どうぞ。
https://japanphil.or.jp/blog/kyushu
個人的には、冒頭のご挨拶で奏される序曲が《ティトゥス》と《イドメネオ》というのがなかなか興味深い、ってか、とってもマエストロ下野っぽいでんな。で、小山実稚恵さんがこういうツアーではありそうでないK.466、というんだから。なんせキューシューの記者会見デビューのやくぺん先生ですので、ホントはこの辺り突っ込みたかったんだけど、借りてきた猫のようにしてましたわ。だって、この場にいる記者さん達の媒体には、全く使いようのない話だもん。

半世紀、人が変わり、街も変わり、敢えて言えばコンサートの意味も変わってきているのだろうけど、最後に残された地元有志主催による日本フィル地方演奏旅行、今年も九州をぐるりと周遊じゃ。

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