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アドリブ・ラウンドというもの [弦楽四重奏]

長かったバンフ国際弦楽四重奏コンクールも残すところあと2日。土曜日の朝9時で、クロノスQのダヴィット・ハリントン氏のレクチャーが始まるというのに、まだ朝飯も行かずに部屋にいる抜け作状態です。なんせ昨日の現代曲新作委嘱10連発を真面目に聴いてしまい、すっかりエネルギーを吸い取られてしまってへなへな状態。この大会最大の山場の本日の「アドリブ・ラウンド」にへばらないために、体力温存を決意した次第。毎度ながら、歳は取りたくないぞ。

予選ラウンド最終日の本日、要は、「10団体にそれぞれ30分づつやるから、好き勝手な演目を弾け」という無差別級試合です。他のラウンドで弾いている曲以外なら、なにを弾いても良い。これはもう、団体のキャラや考え方、キャリアの違い、がプログラミングからモロに出てしまう、もっとも興味深い試合ですな。

もう朝飯にいかないと食堂が閉まっちゃうので、以下、慌ててデータのみ。とっておきの大曲一発勝負、団体のキャラを見せるアラカルトショーケース、それどころか、なんと自分達が委嘱した作品を含む現代曲のみ、なんて猛者まで。自分のメモのために、終わった瞬間にFacebookにコメントしているひとこと感想を転載しておきましょうか。なーんの客観性も無い妄言ですから、悪しからず。

◆Quartet Arpa
Ludwig van Beethoven: String Quartet No.10, Op. 74
みんな鳴らない会場で一生懸命弾いてくる中で、「一服の清涼剤」という綺麗に徹した音楽はなかなか好かれています。遇う人遇う人に、「あのチェリストはいくつなんだ」と訊ねられるのが困るぞ…

◆Castalian String Quartet
Thomas Adès: The Four Quarters Op. 28 (mvt. 1)
Johannes Brahms: String Quartet No. 3, Op. 67 (mvt. 3)
Thomas Adès: The Four Quarters Op. 28 (mvt. 2)
Robert Schumann: String Quartet No. 1 Op. 41 (mvt. 3)
Thomas Adès: The Four Quarters Op. 28 (mvt. 4)
クスQのオリー君の弟子らしく、「バンフ秋のセレクション」という猛烈に凝ったプログラム。全曲をほぼアタッカで、ひとつの30分の曲のように繋いでいきます。おぬしやるな、という感じ。

◆Verona Quartet
Anton Webern: Six Bagatelles for String Quartet, Op. 9
György Ligeti: String Quartet No. 1, "Métamorphoses nocturnes"
ロマン派ラウンドはファーストおんちゃんデーに徹し、今日は「他のみんなもいろいろ出来るもん」って日でしたぁ。

◆Ulysses Quartet
Leoš Janáček: String Quartet No. 2, “Intimate Letters”
真面目なとっても上手な学生さんの団体みたいで、なんかセミナーのマスタークラスにバリバリに練習して持ってきました、さあレッスンしてちょ、って感じなんだよなぁ。

◆Argus Quartet
Eric Guinivan: String Quartet No. 1
Garth Knox: Satellites
チェンバー・ミュージック・アメリカ経由の委嘱という最初の曲は、大真面目で21世紀に「歌」をテーマにしてる曲。後半の元アルディッティQのヴィオラ奏者ガースの作品は、もっとヴィオラに無茶するかと思ったけど、どの楽器も対等に無茶させる曲でした。ゲンダイオンガクの弦奏法練習に最高の曲で、それだけじゃなく、第3楽章はきっちり弾ければ小学校なんか弾くと大受けになるでしょう。ダウンロード、著作権フリーだそうなんで、みなさん、挑戦して下さいっ!

◆Tesla Quartet
Hugo Wolf: Serenade in G major, "Italian Serenade"
Joaquin Turina: La oración del torero (Prayer of the Bullfighter), Op. 34
Marcus Goddard: Allaqi
もう、思いっきりの娯楽の30分!ここまで開き直って娯楽されちゃうと、もうなにもいえませんっ。最後の曲の真ん中の楽章なんて、「今ドヴォルザーク」でんがな。

◆Aeolus Quartet
Felix Mendelssohn: String Quartet No. 2, Op. 13 (mvt. 1)
Christopher Theofanidis: Ariel Ascending (mvt. 1)
Claude Debussy: String Quartet, Op. 10 (mvt. 3)
Ludwig van Beethoven: String Quartet Op. 59, No. 3 (mvt. 4)
「さあ、みんな、これから楽しい音楽の世界旅行だ、いぇい!」って、バリバリのアメリカン・クァルテットがクィーンズの公立学校かなんかにアウトリーチに行ってるみたいなプログラムじゃのぉ。

◆Quartet Berlin-Tokyo
Ludwig van Beethoven: String Quartet Op. 95
Jörg Widmann: Third String Quartet (Hunting Quartet)
《セリオーソ》は大真面目に、飾り無く処理し、後半のヴィドマンは指定通りの大暴れ。カナダではヴィドマンは余り知られていないようで、隣の評論家さんはもう途中から声をあげて大笑い、会場の空気が一気にかわっちゃいました。この曲、弾いてる連中は可能な限り真剣でなければならないわけだし、この組み合わせは実はとっても効果的だなぁ。無論、大受け。コンクールとしてはどうなのか、判断不可能。

◆Omer Quartet
Béla Bartók: String Quartet No. 1, Sz. 40
ヴィドマンで空気がすっかり引っかき回されちゃって、ちょっと可哀想だったけど、ちゃんと端正に纏めてました。お疲れ様。

◆Rolston String Quartet
Franz Schubert: Quartettsatz in C minor, D. 703
Béla Bartók: String Quartet No. 3, Sz. 85
いろいろ言いたいことはあるが、ボルドーで聴いたときの好印象とはちょっと違った感じがあったのだけど、このステージはきっちりバルトークで決めてきました。若いのに、自分らのやるべき仕事は判ってる。

てなわけで、いろんな意味でもう、おそろしーラウンドでありましたです。結論から言えば、既にキャリアのある連中ほど、この30分をどう使うかいろいろ考えすぎちゃったかな、という感がありました。若い参加団体ほどストレートに「あたしらが出来るのはこれ」ってやってた。それがどういう結果に結びつくのか、ぜーんぜんわからんです。

ちなみに、来年の大阪大会は、これまでになかった「3次予選」というものを設定し、そこがこれと同じアドリブ・ラウンドになります。もうワクワクでしょ。

ストリーミングはいつものようにここからどうぞ。
https://www.banffcentre.ca/bisqc

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