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パリの若手弦楽四重奏オーディション [弦楽四重奏]

香港の室内楽音楽祭、先週来の公開リハーサルや子ども向け演奏会に続き始まったメインコンサートも順調にふたつ終わり、あとは今日と明日を残すのみ。連日、演奏会そのものの内容がデッカくてヘビーで、終わると演奏家も聴衆もヘトヘトだけど、この大陸の端っこに浮かぶ南洋の島とすれば一年で最も過ごしやすい時期とあって老爺ふーふにとってもそれほど肉体的な負担は厳しいわけではなく、ま、なんとか過ごしておりまする。演奏会本編についてはいろいろ言いたいこともあるが、ニュースとして急いでアップしておかにゃならんことも広大なユーラシア大陸跨いで一万㎞の反対の隅っこで起きているので、情報として記しておきましょうかね。

現在、パリはシテ・ド・ラ・ムジークで開催されるクァルテット・ビエンナーレ、今回でなんともう11回だそうな。
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https://philharmoniedeparis.fr/en/calendar?startDate=2024-01-12&weekend_i=835
メインゲストに今シーズン結成半世紀を迎えるクロノスQを迎えた本公演とか、彼らがカーネギー財団委嘱で行った「短い弦楽四重奏の新作楽譜を全部無料でオンライン上に公開し、若い団体にドンドン新作の弦楽四重奏を弾いて貰おうじゃないか」というオソロシー、でも猛烈に意味のあるプロジェクト《クロノスの50曲》を若い連中集めて全部弾かせちゃうとか
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/26399-kronos-quartet-marathon-50-future-1?itemId=129607
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/26456-kronos-quartet-marathon-50-future-2?itemId=129878
先週から賑々しく開催されているようでありまする。日曜日の隣のフィルハーモニー・ド・パリを会場に借りるQモディリアーニとレオンコロQのオクテットなどのファイナル・コンサートは、会場がデカいだけに流石にまだ切符はあるようですけど
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/26145-concert-de-cloture?itemId=129194
いつも席の取り合いになる売店奥のアンフィシアターでのレオンコロQやら
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/26330-quatuor-leonkoro?itemId=129449
ミニマル作品ばかりやるQタナなんぞはガッツリ売り切れになってるようですし、ハーゲンQやらベルチャQやらはシテ・ド・ラ・ムジークの音楽ホールがそこそこちゃんと売れているようで、周辺には毎度ながらの聴衆が会場を移動し狭く酷い導線を右往左往するざわざわワラワラ感じが漂っているんでしょうねぇ。

さても、そんな中で、弦楽四重奏業界的に最も重要なイベントが、こちらじゃ。
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/master-classe/26331-audition-internationale-de-quatuors-cordes?itemId=129450
来る土曜日、狭いアンフィシアターの席を埋める欧州各地の音楽祭ディレクターやらホール主催者やらやら、はたまた勝手に来ている各地の主催者や音楽事務所関係者、演奏家やコアな室内楽ファンらが見守る前で、午前10時から午後5時過ぎまで若い団体が次々に登場し、サンプル紹介みたいな短い演奏をし、質疑応答をする、というもの。

ぶっちゃけ、所謂「コンクール」や「オーディション」のような「その結果、直接何かの賞が与えられたり出演契約が出来たりする」ものではないけれど、終わった後のパーティというか、ざわざわしたお疲れ会では欧州の弦楽四重奏の「価値を決める」力を持った人達と演奏家が直接話をする可能性があるわけで、自分らの売り込み、あるいは自分らの音楽祭やホールへの若手枠演奏会への招聘、ことによると音楽事務所の室内楽担当者から声がかかる可能性がある。〇〇コンクール優勝、なんてのよりもよっぽど意味のあるチャンスなんですわ。

なお、リストには上がってませんけど(ディレクターが交代し、うまく引き継ぎがされてなかったみたいで)、大阪の日本室内楽振興財団プロデューサー氏が招聘されて既に現地入りしてますから、一応、日本も蚊帳の外ではないのは良かった。台湾の奴の名前がなくなっているのが、単なる引き継ぎミスなら良いんですけどねぇ。

まあ、前のディレクター時代に比べると「欧州内イベント」という感は強くなったのは否めないし、カーギーホールやバンフセンターなどから人が来ていないのも気になる。なんせ、大西洋跨いだ反対側でのチェンバーミュージック・アメリカの年次総会がガッツリとバッテイングしてるんで
https://conference.chambermusicamerica.org/
来られないのか、もうコロナ後の世界では室内楽を「持続可能性」のあるものとしていくためにはマーケットを無闇に広げる必要はない、という割り切った考え方なのか。

《クロノスの50曲》プロジェクトという形で、バービカンQとかケイオスQとか、Qインテグラと同じ土俵くらいに並んでた奴らが顔を出しているし、未だコロナ禍の中で強行された前回のビエンナーレではこのオーディションに出ていたレオンコロQが2年後の今回はしっかりと本公演で演奏しているし、いくら最前線は退いた爺とはいえ、何が起きてるかくらいは知っておかないとねぇ。

ちなみに本公演に今や世界一の弦楽四重奏と誰もが認めるQエベーネの名前がないのは、エベーネがフランス国立放送のレジデンシィだかをやっているため、パリではフランス放送主催の演奏会の他には出演出来ないからだそーな。要は「大人の事情」ってやつでんな。

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