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年越しに2023年新作ピカイチを [現代音楽]

客観的に眺めれば、この地球上の「国家システム」とか「秩序」とか「合法的暴力体系」とかがじんわりと崩壊に向け行方定めぬ地滑りが起きる直前のような2023年も終わろうとする(グレゴリオ歴で、だけどね)朝、今年、やくぺん先生の周囲で鳴ったいくつもの「新作」の中にあって、もしかしたら凄く意味のあるピースになるんじゃないかと感じられる作品の全曲がYouTubeに公式にアップされたようです。皆様、なにやら歌合戦やら著名放送局オーナーオーケストラのダイクなんぞはもう結構という方も少なからずいらっしゃるでしょうから、こちらをご覧になって年の終わりを過ごしてはいかがかな。

打楽器奏者としても大活躍の會田瑞樹氏が、去る秋の終わりにティアラこうとうで初演した《北原白秋のまざあ・ぐうす》、全曲の初演ライヴ映像です。

この作品、初演に接した素直な感想を言えば、「あ、これは使えるかも」というものでした。

ストラヴィンスキー記念年だった一昨年だか、コロナ禍という時節柄もあってか、作品再発見のルネッサンスと言っても過言がないくらい盛んに、それも様々なやり方で演奏されたのが、《兵士の物語》でした。ああいう「ポータブルなミニシアター」みたいな舞台作品って、ある意味、センス一発みたいなところもあるわけで、単に作曲技巧がどうだというだけでは済まない。

「北原白秋の些か古い日本語をベースに、打楽器のキラキラした響きにいろんなものを纏わせるように言葉やら弦楽器やらがまき散らされる」というアンソロジーは、正に子どもだけでなく大人も楽しい(ってか、大人のが楽しい)歌や踊りの一座の1時間、という内容になっている。小型トラックに楽器詰め込んで、みんなで学校まわる一座なんてやるのには最も相応しいパッケージではないかいな、と思うですよ。

いかがです、地方主催者、はたまた小学校、幼稚園、病院、なんぞの皆様、これ、うちに来てくれたらみんな喜ぶだろうなぁ、なんて思いませんかね。

ガチョウおばさんで年が往っても、どうやら、まだもう少しは世界はあるようじゃしのぉ…

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亡きシュトックハウゼンの亡霊未だ舞台を支配せんとす [現代音楽]

年も押し詰まったニッポン国文化圏仕事納めの翌日午後、帰省ラッシュに「のぞみ」全車指定席化騒動、はたまた人気の雪世界ホッカイドー程ではないにせよ年末年始インバウンド観光客襲来で混乱するトーキョー中央駅東口シンカンセン改札口周辺をすり抜け、長大なホーム下自由連絡通路を丸ノ内北口へとやっと出て、昔は編集者さんとの打ち合わせなんぞに屡々使った駅前ビルなんぞが立派でオシャレな再開発地区へと変貌した上層階に収まる素敵なレストランに至り
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華の都巴里から帰国中の爺はもう赤面するほどキュートで素敵なソプラノさんと、楽しいお喋りをするという光栄な午後を過ごして参ったのでありましたです。こちら、パリ在住の高橋美千子さんでありまする。爺ったらドキドキじゃわいだっく。
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高橋さんといえば、去る11月のシテ・ド・ラ・ムジークでのル・バルコン&フィルハーモニー・ド・パリ&パリの秋フェスティバル制作によるシュトックハウゼン《光の日曜日》舞台上演で、第1部の実質上の主役たるエヴァ(声役パート、っても、このチクルス最後の作品では、初期の《木曜日》や《金曜日》などような「ひとりの役を人声、器楽、舞踏の3人が同時に演じる、というコンセプトは薄れてしまってますけど)を演じられた重要人物。その際にご挨拶させていただき、本来ならば表のメディアで華々しく取り上げさせていただかねばならぬわけでありまするが、何の業界内影響力もないしがない隠居爺のやくぺん先生ったら、何もすること能わず、ここに至ってしまった。スイマセン。当電子壁新聞記事はこちら。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2023-11-17
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2023-11-21
この普通の意味での「粗筋」やら「ストーリー」やらが存在しない巨大な空想の結婚式ページェントに延々と参列するみたいな総合創作物の「挨拶」に相当する部分で、ケルンでの失敗としか言いようがなかった世界初演のときにはシュトックハウゼン・ファミリーにみっちり仕込まれたというミカエル役のテノール、ヒューバート・メイヤーと共に、客席と一体化した空間をシュトックハウゼンが無駄に細かく指定した通りに走りながら、太陽系の星々についての猛烈に歌唱困難なパートをお歌いになり、舞台を成功に導いた功労者さんのおひとりでございます。

なお、高橋さんは昨年のリールとパリでの《金曜日》にも参加なさっておられ、トーキョー五輪予算使いすぎで東京都側の予算が付かず幻となった池袋での日本公演にも、当然、参加なさっていたでありましょうねぇ。ちなみに、これが昨年のフィルハーモニー・ド・パリでの《金曜日》当日配布プログラム、ご覧あれ。
https://deneb.philharmoniedeparis.fr/uploads/documents/NPGS-14-11-19h30-Freitag-aus-licht.pdf?_ga=2.239807043.170982891.1703900097-1267429779.1699709854
ついでに、去る11月の《日曜日》はこちら。あれ、当日プログラムのPDFはないのかしら、こっちは。
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/opera/26250-karlheinz-stockhausen-sonntag-aus-licht-scenes-1-et-2

眼下のホーム大混乱なんぞとは無縁の空間で、暮れなずむ新帝都の午後から夕方、どーでもいい業界話から深刻な欧州情勢までなんのかんのお話させていただいたわけですがぁ、当然ながらこの前の《光》チクルスについても話題になるわけでありました。

てなわけで、以下、当無責任私設電子壁新聞に記しても問題ないだろうと思われる興味深い《光の日曜日》上演裏話。

★昨年の《金曜日》で主役のエヴァを演じたジェニー・ディヴァイが、当初は《日曜日》第1部の同役(とはいえ、ロマン派オペラ的な意味で同じキャラクターの登場人物なのかはなんとも言えんですけど)だったが、本番の数週間前に高橋さんに交代になった。当初は高橋さんは第4部の「各曜日サインの紹介」でのエヴァ役にキャスティングされていたとのことで、そっちをジェニーさんが歌った。こちらとすれば、高橋さんの大活躍が観られたので結果オーライ、でんな。過去にないほど難しい役で大変だったけど、本番はきっちり上手くいったとのことです。

★その高橋さんが当初乗る予定だった第4場、全7作に付されたシンボルマークの説明というなんとも不思議な、「脚注ページ」みたいな場面でありますが、そこにマーク毎の香りが付けられていて、去る11月のフィルハーモニー・ド・パリでの上演ではラーメン丼みたいなものにお香セッティングし、それを何人ものスタッフが抱えてホール客席内を歩く、ということをした。なんとなんと、そのお香担当で高橋さんも参加していたそうな。直前に総合指揮(としか言い様がない)のパスカル氏から「ボランティアでやってくれる奴求む」という緊急連絡があったそうな。いやはや、全く気づきませんでした。

★これはちょっと微妙な発言になるのですが、昨年の《金曜日》は当初DVDにするという予定があったのだけど、結果的にフィルハーモニー・ド・パリのアルヒーフに映像が遺されているだけになった。その理由は、シュトックハウゼンの遺産管理をしているところが映像を細かくチェックして、猛烈なダメ出しなどがあって、なんのかんなんのかんの…ということだったとのこと。この辺りはあくまでも未確認のネットに書いてあった話として聞き流してくださらんと困るところなんですけどぉ、生前のシュトックハウゼンと近しく、実質上の知的所有権の管理のようなことをなさっている某氏(お判りの方なら「ああ、あの人ね」と想像なさっているであろう某フルート奏者さんです)が、今もしっかりそういうところに目を配っているとのこと。このル・バルコンのチクルスはそういう影響力が実質なくなったところから始まった、と勝手に思い込んでいただけに、へええええええええ、とビックリ。まだまだ亡きカールハインツ教祖様の亡霊、君臨してるんだなぁ。

★《日曜日》の映像は現在もまだ処理仕事などもあるそうで、一般公開やDVD化になるかはともかく、少なくともフィルハーモニー・ド・パリのアルヒーフには保存されることになるだろう、とのこと。

他にもいろいろあるんだけど、あの歴史的な舞台を眺めた方に興味がありそうなことはこんなものでしょうか。

多彩な活動をなさる高橋さんの公式YouTubeページはこちら。お正月らしいモンテヴェルディなんかもありますです。
https://www.youtube.com/@michikotakahashi3038
どんなことをなさる方か端的に知りたいなら、こちらをご覧あれ。当電子壁新聞を立ち読みなさってるような方なら、驚いちゃったりはしないでしょ。


上野の杜の歌の世界からも、こんな才能が出現するんですねぇ。ちょっと安心。

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速報:エクがグラス初期5作品一挙演奏 [現代音楽]

恐らくはここで告知しても問題ないのだろうから、フライング気味に宣伝してしまいます。ってか、わーいわーい、って喜んでるだけのことなんだけどさ。

来る2024年はクァルテット・エクセルシオの結成30年の記念年。今年はモルゴアQ「演奏活動開始30年」という記念年だったわけで、若い者ばかりに日が当たるこの業界なれど、この辺りの今や「中堅」という最も営業的には難しいところに差し掛かりながらも心技体共に最も充実したタイミングの連中が頑張ってるのを眺めるのは嬉しいことなのじゃわい、うん。

んで、そのエクの30周年でありまするが、認定NPO法人の定款に挙げられた活動の三本柱、「アウトリーチ」、「定期演奏会」、「現代音楽」を再確認する作業が基本になるのは言うまでもないでありましょう。「アウトリーチ」に関してはコロナ禍で実質根絶やしになった数年を挟みつつ、今や千葉の新浦安を拠点に継続されている。思えば、今世紀初めに富山は入善で始めた「滞在型レジデンシィ」は今やあらゆる若い団体や自治体文化財団がやって当たり前になったパイオニア的な活動だったわけで、その意味でもNPO定款はきちんと実践しているわけでありますな。

2つ目の「定期演奏会」は東京、京都、札幌で開催、なんせ認定NPOと言いながら企業の大手スポンサーシップなど皆無な零細会社、ともかくちゃんと続けている。

んで、問題は最後の「現代音楽」であります。これに関しましては、ともかく集客面からもお金面からも難題が山積み。なんせ、お客さんが入らないのにお金はいっぱいかかるわけで(楽譜使用料、著作権料、場合によっては初演料、等々)、世界の常識からすれば「新作初演をすれば補助金が出る」などの国家や助成財団などからの積極的な資金援助がないと難しく、とても貧乏NPOなんぞにはおいそれとやれるものではない。てなわけで、可能な限りやりたいとは思いますがなかなかねぇ…という状況であることも致し方ないでありましょう。

かくて結成30年記念年にあたり、あらためて定款をきっちり見直し初心に返る意味からも、エクは記念年にいくつかの「現代音楽」イベントを行うことになりましたです。

まだ全てを発表するわけにいきませんけど、目玉企画が決まりましたので、当無責任私設電子壁新聞で一足早く発表させていただきます。それ即ち、「フィリップ・グラス番号付きクァルテット初期作品一挙上演」。

10月7日月曜日、午後7時から、エクが現在は鶴見サルビアホールを会場に開催しております「ラボ・エクセルシオ」の30年企画として開催いたします。演奏するのは、第1番から第5番まで、要は20世紀に書かれた作品群でありまする。作品としては、どれも所謂「ミニマル音楽」の原型がまんま示されている作品群で、未だ実験としての色彩も濃かった第1番から、初期の偉人三部作オペラを経て舞台音楽や映画音楽にこの作風を展開していく中から生まれてきた作品群を一挙に演奏する、という試みですね。

なんでこんなものをやるかといえば、実は何を隠そう、日本で上演されたグラスのオペラ作品のうち、昨年にバタバタと横浜や大阪で演奏された《浜辺のアインシュタイン》を除けば唯一日本団体が舞台にかけた作品たる《流刑地にて》で、オーケストラというか、ちゃんと楽譜の指定通りにピット担当をしたクァルテットとして演奏したのがエクだったわけですわ。正に「現代音楽を振興する」という定款を忠実に守った仕事だったわけでありまして、あれ以来、何度かやってみたいと話題には上がっていたプロジェクトなのであります。それが、やっと苦節十数年、この結成30年という記念年にいよいよやってみるか、ということになった次第。

まだまだ鬼が笑うくらい先の話ですが、なんせ100席しかない会場で、所謂「現代音楽」の世界だけに限らない関心の広がりがある作曲家ですから、アッという間に切符なんぞなくなってしまう可能性もある。ことによるとまあああったく売れないかもしれない。全然わからんのですわ。とにもかくにもご関心の向きは、真新しい来年の手帳の秋のページに日程だけでも書き込んでおいてくださいませ。

なお、10月には「現代音楽」とはいえグラスとは全く方向性の異なる、これまたエクに縁のある企画も控えております。そちらもお楽しみに。

いやぁ、来年は巴里五輪で秋のル・バルコンによるシュトックハウゼン《光》チクルスがお休み、なんだかつまらんなぁ、と思っておりましたが、これでちょっとは喉の渇きも、かな。とにもかくにも、請うご期待。

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何故年末に現代音楽&弦楽四重奏公演が集中するのか? [音楽業界]

ロシア正教やらスラブ系宗派の皆様を除けばクリスマス休暇も恙なく終わり、今日から旧正月若しくはイースターまでさあ頑張って働くぞぉ、と爽やかな師走の朝を迎えた皆々様におきましてはいかがお過ごしでありましょうか。やっと昨日夕方にニッポンのタイムラインで年末までの〆切原稿を全て入れ、とはいえ正月明けの〆切がテープ起こし必要なもん含めさりげなく3本あり、来月半ばからの香港シンガポール実質3週間ツアーを前に案外とボーッとしてられる時間がないのに焦っているやくぺん先生なのであったぁ。今年は旧正月の間は日本フィル第49回九州ツアーにモロに重なっているので、キューシュー島内移動がインバウンド需要とぶつかりそうで、ちょっと不安なんじゃが…

かくて、そこそこ長そうに思えるが隠居爺なりにそこそこパツパツになっているニッポン列島日本語文化圏の年末年始、ここで溜まりに溜まった電子壁新聞書きかけ放り出し記事をアップせにゃとも思うのだが、ともかくまずは生存証明の雑談でありまする。

ええ、先週の火曜日に雪しんしんと降り積もる温泉県盆地標高500メートルの作業場から新帝都は大川端の寝床しかないスペース蟄居に戻りはや1週間。塒には作業スペースが存在しないために縦長屋内シン・ゴジラ視点勉強部屋に陣取って作文仕事をこなしつつ、何故か知らぬが年末に向けてやたらといっぱいある演奏会に通うわけで、嗚呼凄いなぁ新帝都は、なんせその前に盆地に3週間だか居てもお仕事絡み含め足を運んだ音楽関連イベントったら、オーケストラ公演3つ(フルオーケストラ1&室内管2)+地方都市小規模オペラひとつ+映画館オペラひとつ、無論、室内楽は室内管の開演前ロビコンのみで弦楽四重奏なんぞ一切無し、という有様。ま、キューシュー島北部三県、こんなもんなんでしょーね。

ところがところが、新帝都に戻ってから年末までの状況を列挙すればぁ…

19日:サントリー小 ほのQ
21日:オペラシティ小 日本現代音楽協会コンクール&近藤左手作品
22日:文化小 東京シンフォニエッタ西村追悼
23日:ドイツ文化会館 欧州弦楽四重奏の現状
24日:千葉市美術館さや堂ホール 弦楽三重奏版《ゴルドベルク変奏曲》など
25日:オペラシティ小 OTO新作の会 Qインテグラ
27日:東京コンサーツラボ 丹羽&杉田らQ
31日:文化小 ベートーヴェン中後期撰集 Qエク&古典Q&Qインテグラ

この他にも日程が重なり涙を呑んだものは幾つもあって、列挙すればぁ…
何故か現代音楽界隈ではなくロマン派オペラ愛好家さん達が大盛り上がりの東劇メトライヴ《Dead Man Walking》、全く聴衆層が重なる現代音楽村の狭い世界で同時に開催されてしまったこれまた西村追悼全音現代音楽室内楽コンサート、年末恒例でここから見えるティアラこうとうでやってて2公演もあるのに何故かいちども聴けずにマズいなぁと毎年思う元ゼフィルスQの山口さん率いるさくらQのベートーヴェン、某NPO年末打ち合わせとぶつかってる池辺晋一郎室内楽大会…嗚呼。

てなわけで、世間では《ダイク》か《メサイア》か、はたまた舞台なら《くるみ割り人形》か《ヘンゼルとグレーテル》か、と思われるであろうこの季節の新帝都、なんのことはないいつも以上に「ゲンダイオンガク」と「弦楽四重奏」で埋め尽くされる日々なのであったぁ。

なんでこーなるのぉ?

我が盆地庵に聳える巨木から茨の棘で指先切りながら収穫してきた冬至お土産見栄えのしない柚子の実を配りつつ
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新帝都の知恵ある人々に尋ねてみたところ、前者「ゲンダイオンガク」がラッシュになる理由に関しては、成る程と思われる見識が示されたです。あるそっち方面の専門マネージメント会社の現場で走り回っている方が仰るに、「年内に使わねばならない助成金があるのでしょう」って。

なるほどぉ、年内に演奏会をやってしまわないと出てこないお金があるならなんとしても大晦日までにやらにゃ、ということなのね。真偽の程は判らぬけど、大いに納得はいくところではありますな。なんせ、この数日、ここシン・ゴジラ視点縦長屋勉強部屋から新帝都中枢を眺めるに、年内にノルマを達成せねばならぬ総務省屋上ヘリポートでの離発着訓練で埼玉消防やら東京消防庁が新宿高層ビル街が遙か奥秩山塊を背景に薄暮のマジックアワーを離発着する光景が眺められるのでありますがぁ、それと同じでありまするか。なるほどねぇ。

もうひとつの「弦楽四重奏公演が多い」というのとも重なるのだけど、やくぺん先生が直感的に感じるに…この時期のニッポン列島って、国を出ている演奏者がクリスマス休暇で帰国している、というのが理由なんじゃないかしら。

例えば冬至の翌日に高橋是清公園隣で開催された「ゲンダイオンガク」の「弦楽四重奏」という両者がバッチリ重なっている演奏会など、奏者は首都圏で普段から活動している固定メンバーの団体ではなく、アンサンブル・アンテルコンタンポランにトラで入ってるヴァイオリンさんとか、ドイツ拠点の現代音楽アンサンブルやってるヴィオラさんとか、アンサンブル・モデルンのアカデミー生だったチェロさんとか、いかにもこの類いに手慣れた方がチャチャっとやって下さった、というものでした。
https://note.com/yukikocomposer/n/n9b9413b28dfd

一昨日の故末吉保雄門下生が集まって子どものための作品から20世紀後前衛系まで幅広い作風の作品をQインテグラが披露した会も、発足の頃はエクがやっていたように若手の弾ける団体が前提で、インテグラがコルバーンからクリスマス帰国している最中にやるしかないわけで。ちなみにチェロは、クライヴのところの韓国の天才少女がまだ間に合わないようで、サントリー室内楽アカデミーの同期生(なのかな?)さんの代演でありました。
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https://otonokai.jimdofree.com/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E3%81%A8%E9%9F%B3/%E3%82%AF%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%88-%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%B0%E3%83%A9-oto%E3%81%AE%E4%BC%9Avol-3%E3%83%81%E3%83%A9%E3%82%B7/

そしてそして、本日早稲田の天井の狭いゲンダイオンガク小屋で弦楽四重奏を披露して下さるのも、若くしてジャスパーQとかQベルリン東京なんぞ常設のプロ四重奏団として外国で喰ってた経歴のある方達が。帰国してるんで久しぶりに集まってやってみるか、ってものだし。
https://tocon-lab.com/event/20231227
そういえば、沖縄のヴェリタスQも結成初期は「ニューヨークフィルやらフィルハーモニア管がクリスマス休暇の時に年に一度集まる」という趣旨の団体だったわけですしねぇ。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2015-11-13
こういうアンサンブルって、案外、あるんじゃないかしら。そういえば、温泉県盆地でオンラインでやったレオンコロQインタビューも、休暇で日本帰国時にセッティングされたものだったわけだし。

ま、他人様はどうあれ、明日だかの仕事納めに向け、ニッポンの皆様、頑張って働きましょーっ!

てなわけで、まーったくどーでも良い年末雑談でありましたとさ。何を隠そう、やくぺん先生とお嫁ちゃまも、明後日だかにはパリから一時帰国なさっている「ゲンダイオンガク」系の方とアフタヌーンティでもしましょか、ってことになってるわけだし、世は正に年末年始ホリデーシーズン真っ盛りのニッポン文化圏なのでありました。

さて、マジでテープ起こししないとなぁ。

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クレディア30年 [音楽業界]

何故か知らないけど全部ハングルながら定期的に情報が送られてくるブチョン・アーツセンターのディレクターさんからの毎度ながらの案内で知ったこと。来る2024年はクレディア(Credia)の創設30年になるそうな。こちらがクレディアさんの公式ページ、あたしゃ勝手に英語翻訳になるようにセッティングしてますが、無責任私設電子壁新聞立ち読みでどう見えるか、そんなん知らんわい。
http://www.credia.co.kr/

この画面見る限り、特別2024年が30周年という盛り上がりはあまり感じないけど、ま、せっかくだからご紹介しておきましょうかね。なんせ今やキューシュー島北部が半分拠点のやくぺん先生、福岡がベースの所謂メイジャー音楽事務所がないニッポン国の現状からすれば、東京よりも大阪よりも距離としては近いソウルを本拠地とする最大の音楽事務所ってのは、なんのことはない、盆地オフィスから最も近い最大手クラシック音楽マネージャー、ってことですからねぇ。

いちおう、頭にはこう書いてある。

Since its establishment in 1994, Credia has been planning and producing Korean performances by world-class performers, focusing on classical music.

In addition, we actively support Korean performers with international competitiveness in advancing into domestic and overseas stages through management. CREDIA International's stage is the world.
We will do our best as Korea's leading classic management company by adding analog sensibility and digital accessibility.

アーティストラインナップを眺めるに、日本語文化圏の音楽ファンの皆々様が反応するような演奏家とすれば、アルゲリッチ、キーシン、ペライア、チョン姉弟、サラ・チャン、ジョシュア・ベル、クレメル、ヴェンゲーロフ、ムター、パールマン、リチャード・オニール、マイスキー、ヨー・ヨー・マ、スミ・ヨー、ハンナ・チャン…もうこれは完全にニッポンなら梶本&ジャパンアーツ&AMATIって会社であることは、皆様にもお判りで御座いましょうぞ。

ちなみに、所属アーティストとして来年度のロースターに乗っているクァルテットは…唯一、エスメQでありまする。うううむ。ちなみにちなみに、ニッポン人アーティストは内田光子でも鈴木雅明でもなく、韓国ピアノ界のビッグネーム蔵本裕基ただひとりのみであります!うううむうううむ。

こういう表現をすると「まだ朝鮮戦争は終わってないぞ」と怒る人もいるでしょうが、軍事政権が終わり戒厳令が明けて直接民主選挙が行われるようになりソウル五輪が開催された1988年くらい(ソウル・アーツセンターも五輪レガシーでの竣工ですし)、というのが感覚的には実質上の韓国の「戦後」の始まりで、クレディアの創設は90年代半ばというのはとても理解が出来ます。その後に奇跡の成長が始まり、今や本来ならG7に東アジアから参加するのは斜陽国日本ではなく韓国だろうと(日本を除く)世界中が思う状況になっている。チョン姉弟を突破口にクラシック音楽業界の席巻が始まったのも、やはりそれくらいから。まだ五輪やらが経済発展に意味があった、懐かしい20世紀の話に思えてしまうなぁ。

もといもとい。そんな時代をしっかり支えたクレディアが、この先の急激な少子化やら、日本以上に「高級なブランド品」としてリッチな贅沢品として定着している「クラシック音楽」のあり方をどうしていくのか。ポップス業界では「猛烈に訓練された普遍的な達者さ」のグループ売り出しで世界を支配したやり方が、そんなレベルの訓練はユニヴァーサルに当たり前な過剰な程の技術的高スペックが要求されるクラシック業界で世界制覇の手法として使えるのか、同じではやれんでしょうし。

ま、なんであれ、やくぺん先生としては関心があるのは「全く国内マーケットがないのに、ノブスQの成功で、若手が次々と雪崩を打って常設弦楽四重奏団を目指し参入してきている状況をどうするんじゃ?」だけですので、気楽に玄界灘は対馬海峡の彼方を面白がって眺めているわけじゃがのぉ。

別に宣伝ではないけど、我らがQインテグラよりも一足先に「韓国の団体」ではない道を選んだエスメQ、来年1月にはカナダ人イケメン加わる新メンバーでの来日公演がありますので、ご関心の向きはどうぞ。まだチケット争奪戦が恒常化しつつある鶴見も大丈夫なようですよ。
https://salvia.hall-info.jp/concert/20240122_3h_quartet_series_s55/

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統営国際音楽祭やっと全容判明 [現代音楽]

霜月の実質3週間のツアーから帰国、ちょっと新帝都に寄って用事を済ませ月末に温泉県盆地オフィスに戻り、師走に入って約3週間の実質お籠もりで大小6本ちょっとの商売原稿とオンラインインタビューひとつ、その間に長崎へのプチ取材ツアーを済ませたら、年内最後の〆切原稿が雪は積もらない盆地としては意外な程の降雪なんぞで進行が遅れ未完成で新帝都に持ち帰ることになり、やっと昨日初稿納入。某出版者編集長さんから「なかなか正月らしい内容で結構でございます」とOKを貰ったら、緊張感プツン都切れちゃって、年内〆切の短い原稿がひとつあるものの、気分は「終わった終わった」状態になってもーたわい。

晴れてるとはいえ春先みたいな中途半端な視界の悪さの昨日の新帝都から一転、つくばは眺められるも白河の関や榛名山は見えない程度で完璧な真冬の空気ではないものの、それなりに冬らしい晴天が広がっている大川端シン・ゴジラ視線の縦長屋の昼前なのであーる。年末らしく飛行時間消化のためか、朝から霞ヶ関官庁街では消防庁ヘリが総務省屋上ヘリポートで離着陸訓練、その横を青山ヘリポートで用事を済ませた厚木の第7艦隊艦載部隊海鷹14号機くんが銀座日本橋上空を真っ直ぐ天樹まで行ってぐるっとまわる遊覧飛行をしてから戻っていったと思ったら、海軍VIP輸送キングエア様が一応遵法高度ながらいつもの多摩の壁を越えて都心まで突っ込んできて、天樹周辺ぐるりとまわり北に向かうという、これまた遊覧飛行してら。明日からクリスマス休暇のヤンキーさん、もうすっかりお休み気分なんじゃろかね。

てなわけで、このところ書き始めた日にはまずアップされず「壁新聞」としてすら本来機能を失いつつある当無責任私設電子壁新聞、年末に向けぽつりぽつりと旧稿アップしていくつもりですので、ま、お暇ならどうぞ。まずはパワレス年寄りで前頭葉がまともに動かずこの先の日程整理くらいしか出来ん爺の、己のための備忘メモでありまする。数日前にやっと判明した桜花咲く海峡の彼方、統営の音楽祭の日程について。
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開催時期が完全にバッティングする「東京・春・音楽祭」の日程がもう何週間も前に出ているので、お待ちになられていた方も多い…のかなぁ。

ともかく、まずは日程です。3月29日のフェスティバル管に始まり、ヴァンクーバー・インターカルチャー・オーケストラとか、香港シンフォニエッタとか、ディオティマQとか、クラングフォーラム・ヴィーンとか、光州響とか、フライブルク・バロック管とか、4月7日のシュタンツ様指揮フェスティバル管でオシマイ、というラインナップ。フェスティバルとしての纏まった日程表が見つからないんで、主催公演一覧からどうぞ。
https://www.timf.org/en/sub/ticket/reserve.asp

まあねぇ、日本から音楽ファンが行きたいなぁと思うのは、フルートのパユとヴィオラのタメスティがレジデント・アーティストであることくらいかな。あとは、フライブルク・バロック管の《マタイ受難曲》は関心ある方も多いでしょうかね。

正直、今年はイサン・ユンの作品が案外少なく、それに監督のはずのウンスク・チンの色もあんまり見えない(辞めた?)。このフェスティバルの本来業務の「現代音楽」に関しては、メイジャー作曲家としてはエトヴェシュ作品が取り上げられ、あとはハースの大作。それに、大ホールの反対側の小劇場で上演(演奏?)される音楽祭委嘱作品のシモン・ジェイムス・フィリップス作曲のコントラバスとヴィジュアルアートのコラボ作品、こちら。
https://www.timf.org/en/sub/ticket/view.asp?idx=1533&s_date=2024-03-30&s_time=5:00%20PM
それから、この良く判らん作品ですな。
https://www.timf.org/en/sub/ticket/view.asp?idx=1541&s_date=2024-03-30&s_time=9:30%20PM
この音楽祭の最大のウリだったブラックボックスという小劇場で隣の大ホール終演後の深夜に上演する小規模総合芸術作品、当初は所謂「現代の室内オペラの古典」の上演が中心だったんだけど、いかにも21世紀っぽいインスタレーションの音楽より拡大みたいな作品が増えてきてますねぇ。こういうのって、根性据えないと上演出来ないものが多いから、貴重な音楽祭になってきているかな。どのくらいの需要があるのか、よくわからん。韓国は現代美術を商売にした文化だから、案外、こういうのは抵抗なく受け入れられるのかもなぁ…

ちなみに当電子壁新聞を眺めているような方に少しは関心がありそうなディオティマQは4月2日、上野でシェーンベルク全曲をやる前に統営なわけですな。で、上野ではやらない初期の小品がある、ってのが困るなぁ。ちなみに上野はこちら。
https://www.timf.org/en/sub/ticket/view.asp?idx=1541&s_date=2024-03-30&s_time=9:30%20PM
統営はこれ。
https://www.timf.org/en/sub/ticket/view.asp?idx=1551&s_date=2024-04-02&s_time=9:30%20PM
なんじゃ、この「シェーンベルク《プレスト ハ長調》」ってのは?このためだけに海峡越えにゃならんじゃないかぁ!

昨年までのコロナ禍でキャンセルになった年にやるはずだった演目や演奏家総浚え、って感じは流石になくなったものの、リーム監督時代とはちょっと違う路線になって来てるのは否めない統営国際音楽祭。武生と並ぶ「最も極東でやってるドイツ語圏の現代音楽祭」という路線は揺るいでいないとはいえ、どこに向かうのやら。

2020年に上演の筈だったタン・ドゥン《仏陀受難曲》、はたまた21年予定だったマデルナ《サテュリコン》など、どうなっちゃったんだろうなぁ。なんせ、我が温泉県盆地オフィスからいちばん近いホンマモンの国際音楽祭なんだから……別府アルゲリッチは置いといて。

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シンカンセンでシーハットおおむらに向かうのじゃ! [たびの空]

ニッポン列島津々浦々、はたまた電脳世界上に広がる日本語文化圏の皆々様とすれば猛烈にローカルな話であろーがぁ、昨年秋以降、キューシュー島では「シンカンセン」の話題で持ちきりなのであーる。ってのも、佐賀の隅っこ武雄温泉駅からどんぶらこっこ船に乗れば上海やら遠く南蛮の地まで至れる港長崎に向け、たった30分弱ながらニッポン旧国鉄グループが誇る新幹線フル規格路線、西九州新幹線通称長崎新幹線なる長崎本線若しくは大村線のバイパス路線が完成。不動産と観光がメインでついでに旅客運送事業もやってる株式会社JR九州とすれば、在来線乗客の都合なんぞかなぐり捨てて大キャンペーンを繰り広げておるのであーる。
https://www.jrkyushu.co.jp/train/nishikyushu/

正直、鳥栖から吉野ヶ里遺跡横通って佐賀、バルーンの聖地抜けてまあああっすぐに武雄温泉に至る区間、新幹線のメリットがまるでなく、不便になった上にJRから切り捨てられた三セク押しつけられる佐賀県とすればそんな工事に膨大な予算を支出したいはずもないわい。いかな長崎が祈ろうが叫ぼうが御上と一緒になって恫喝しようが、そんなことわしゃ知らん、を貫いておるわい。んで、この「在来線から新幹線への反対ホーム上へのリレー乗換え」というやり方が解消する見通しはまるで立っていないものの、とにもかくにも長崎本線バイパス新線はシンカンセンなのじゃ。速いし、これまでのJR九州優等列車には一切存在していない電源もネットもあるぞよ、わーいわーい…

ってなわけで、賛否両論というよりも、どうするんじゃこれ、って意見が9割のシンカンセンつばめ号にあって、この新線バイパス線開設で唯一恩恵を被っていると言われるのが長崎県は大村市なのであーる。新設の新大村駅から西にまあああっっすぐ大村湾に向かえば、今は海自海鷹の塒たる旧長崎空港。ぐるっと迂回したら、もう沖には世界初の海上埋め立て空港たる現長崎空港が浮かぶのじゃ。長崎市内までシンカンセン通勤する気になれば15分、今日も雨だった坂の街ではないし、土地もあるし、なんせ陸自駐屯地やら海自航空基地がひしめき財政も豊か。もうこれは発展しない筈がない、と言われている場所なのじゃよ、皆の衆。

んで、そんな大村市には、20年前から認定NPO法人長崎OMURA室内合奏団、通称大村室内管が活動しておる。創設の経緯とか、その後の活動状況とか、表のメディアに記すようなことはまー、どーでもよかろー。そんなもん、知りたい方はあちこちググっておくれなもし。公式はこちら。
https://omurace.or.jp/

やくぺん先生とすれば、起ち上げをやったのがこの業界で商売を始めた最初期にいろいろお世話になった方、ぶっちゃけ、お嫁ちゃまの仕事の先輩だった方で、その繋がりで関わってるスタッフやら演奏家は、もう右を見ても左を見ても知り合いばかり。これまでは遙かなナガサキだからねぇ、だったんだけど、温泉県盆地に終の棲家と当面の仕事場を移してからは知らんぷりも出来んわいな。とはいえ、土曜のマチネに間に合うには朝9時過ぎの最初の博多行き特急に乗らんと間に合わんほどキューシュー島横断は大事なんじゃが…ま、それはそれ。

以下、ニンゲンの移動は個人所有の自動車が基本のキューシュー島にあって、なんとか公共交通機関で大村室内管土曜マチネを聴きにいこうというほぼ障害者扱いのやくぺん先生、いかに会場たる本拠地「シーハットおおむらさくらホール」に至るかの記録なのであーる。ちなみにこのルート、シーハットおおむら公式ホームページのアクセス欄にも出ておりませんっ。なんてこったぁ!
http://www.seahat.jp/access/

さても、実はこの会場、いちばん簡単なアプローチ方法は「最寄り空港から飛行機で長崎空港に至り、タクシー若しくは長崎県営バスに乗る」というもの。これなら、空路+10分で到着であります。だから、羽田空港なら2時間ちょいで到着する、ってことじゃわい。

ところがぁ、陸路公共交通機関、それも福岡大分鹿児島などから至ろうとすると、そりゃあ大変なのじゃよ。ともかく皆の衆、文句言わずに鹿児島本線鳥栖駅若しくは九州新幹線新鳥栖駅まで来て下さいませ。そこから、「リレーかもめ」で佐賀平野をぶっ飛ばし、武雄温泉駅ホームに滑り込めば、反対側にはシンカンセンかもめ号が待っておりまする。
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乗車駅から大村若しくは新大村駅までスルーの特急券を奮発なさっているなら、リレーかもめ号の自分の席を立って下りたホーム反対側で待っている車両の最寄り入口近辺に、貴方のシンカンセンかもめ号の座席が用意されている筈で御座います。自由席の場合は知らんがな。ま、リレーかもめ自由席を下りた目の前はシンカンセンかもめ自由席になってる筈。

さても、無事にシンカンセンに乗り込み、おおすごい、電源だぁ、Wi-Fiだぁ、と喜んでセッティングしているうちに、なんとまぁ、もう新大村駅に到着でありまする。途中の嬉野温泉に停まらない速達タイプだと、ホントにアッという間です。なんせ全線乗っても気分は東京新横浜くらいですから。

んで、パラパラと下車する人に混じって何処も同じシンカンセンローカル駅の立派で綺麗なエスカレーターを下れば、そこはもうみどりの窓口と改札もないローカル単線大村線ホームがちょこんとあるわけじゃが、その反対には不釣り合いに立派な観光案内所があるじゃ。なんと、シーハットおおむらは市役所の近く、ちょっと歩いて行ける距離ではなさそうじゃのぉ。
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ひまそーにしているおねーさんに「あのぉ、シーハットおおむらって、直行バスとかあるじゃろか?」と尋ねる心細そうな爺に、おねーさん微笑みをいっぱいに浮かべて、ございます、と差し出してくれたのがこの時刻表。
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おおすごいぞ、直行バスがあるじゃないかいっ…って、1日3本ですかぁああああ!

なんとも幸運なことに、シンカンセンを下車し半時間も待たないうちにバスの便があるではないかぁ。これに乗らずなんとしょー。再開発真っ最中の駅東口にポツンと聳えるバス停を眺めれば、新大村東口ロータリー始発の長崎県営バス、シンカンセンと大村線が複線降下と在来線単線が並走する踏切を跨ぎ、我が陸軍駐屯地の横を抜けて大村駅近くの市街に入り、在来線大村駅前から大村駅前バスセンターを経由し、市内アーケード街の横を大村湾に向けて西に走り、長崎から諫早を経て大村湾の向こうは佐世保へと至る幹線国道をちょっと諫早側に向かい
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国道沿いの今時の巨大ショッピング施設が並ぶ新繁華街の入りっ端、市役所隣にあるシーハットおおむらに居たるのであったぁ。
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ちなみにまだ開演まで半端に時間があるので、お昼はシーハットおおむら文化施設棟とスポーツ施設棟の間のバス停から数百メートル向こう、巨大な大村イオンショッピングセンターで下車し、フードコートで長崎ちゃんぽん喰らうことにしましょか。轟音が響いたと思ったら、直ぐ横の海の沖には長崎空港が浮かんでら。

以上、公式ページが記さない陸路でのシーハットおおむらへの最も楽なルート、「長崎新幹線新大村駅から長崎県営バスで20分250円也PASMO使用可能」という行き方のご紹介でありましたとさ。

ちなみに帰路じゃが、シーハットおおむら前の国道を大村駅方向に向かったところのバス停を眺めるに、どうも上手い具合の時間のバスがないわい。大村駅まで駅前アーケード街を20分くらいノンビリ行くか、と思って歩き始めたら、長崎方向から空港行きバスがやって来る。眺めると大村駅経由とあるので飛び乗り、アッという間の3駅150円也PASMO払い。マリンライナー佐世保行きに乗り一駅、新大村から新幹線、リレーかもめ、鳥栖で乗り換え久大線湯布院行き最終特急ゆふ号という豪華リレーで夜の9時前には温泉県盆地オフィスに戻れましたでありまする。

さあ、みんなシンカンセンでシーハットおおむらに行こーっ!

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レトロ映画館で《ラインの黄金》を眺める [たびの空]

もうこれは事実なんだから仕方ないけど、キューシュー島は「オペラ」は不毛の地なのであーる。

恐らく、20世紀初頭の白系ロシア人のカンパニーの帝劇公演に始まる「外国オペラ団日本公演」の歴史にあって、「大分県民オペラ」など老舗の市民オペラのカンパニーは長く活動している地域だし、昭和音大のオペラデータベースを眺めてもキューシュー島では福岡県396回、大分県176回、熊本県173回、鹿児島県166回、長崎133回、宮崎103回、佐賀50回、というオペラ舞台上演の記録はあり、《カルメン》なり《魔笛》なり《ボエーム》なり《蝶々さん》なり《夕鶴》なり《吉四六昇天》などはそれなりに上演されているようですがぁ、シュトラウスは《薔薇の騎士》と《サロメ》のみ、ヴァーグナーは福岡と大分で《オランダ人》と83年のまだ東のリンデン・オパー福岡公演で《タンホイザー》(スィトナー御大じゃなく、ジークフリート・クルツじゃないかな、指揮は)が演奏されているだけ。失礼ながら、福岡で《ポギーとベス》舞台上演が行われているのはちょっとビックリでしたけど。

以上、昭和音大さんのデータベースを信用する限り、やはりキューシュー島はヴァーグナー不毛の地であることは否定出来ないようでございまする。ましてや《リング》となれば、いちばん近くで見物出来たのは昨年秋、福岡板付空港からヒョイっと海峡跨ぐこと45分くらいのフライト、大阪よりも遙かに近い大邱の空港から路線バス乗って15分、大邱オペラハウスでのマンハイム歌劇場のプロダクション全曲上演だったわけでありますな。その前も、ソウルでゲルギーがやってたりとか、未完ながらいくつかプロダクションがあった。上海では万博のときのシュタンツ様指揮ケルンのプロダクション、ついこの前には西側で稼げなくなったゲルギーとその仲間達がソウルや東京でやったプロダクションの映像強化改定版を上海大劇院やらでやったばかり。ま、考えてみればニッポン列島でも《リング》全曲舞台上演って、あちこちでやってそうなんだけど実は首都圏は上野と初台、それに最後はコロナで一般公開がなかったびわ湖沼尻くらいしかないんですよねぇ。

というわけで、キューシュー島にだって生息して居るであろーヴァーグナー重症患者の方とすれば、中州の映画館でコヴェントガーデンの最新演出《リング》第1弾として《ラインの黄金》がかかるとなれば、これはもうボーッとしているわけにはいかんのでありましょうぞ。やくぺん先生程度の耐ヴァーグナー根性無しの甘っちょろい輩としても、せめてシーズンにひとつくらいはヴォータンの悪巧みと失敗の喜劇(ファーゾルとが殺されるから、悲劇なのかな?)を眺めないとカンが鈍ってしまうなぁ、と思っていたんで、どうせ夜に長崎に行かにゃならんので、朝10時に福岡は中州の上映館に向かい、初日を眺めてみるべぇか、と夜明けまでまだ数時間もある温泉県盆地JR駅朝5時半過ぎの大分行き久大線始発に乗り込んだのであったぁ。なんせ、久留米方面に向かう始発では福岡地下鉄中洲川端駅到着が上映開始3分前ということなんで、冒頭コントラバスが鳴り始める前に席に着くにはこれしか方法がない田舎なのじゃよ、うううむ。

※※※

とにもかくにも9時過ぎに朝の活気溢れる、はたまたインバウンド溢れる博多駅に到着、名物1,2番線の駅ラーメンではなく、3,4番線の駅立ち食い饂飩に向かいキューシュー島ローカルフードの頂点に立つ牛蒡天饂飩を食し、地下鉄で中洲川端に向かうのじゃ。
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1番出口を出れば目の前は福岡に残る最後の老舗名画座「大洋映画劇場」のチケット売り場、橋を渡った向こうには福岡アクロスが聳えておるではないかぁ。

この一部福岡映画愛好家さんには最後の聖域だったらしい名画座、時の流れに抗することも能わず、この年度末には建て替えのために閉館とのこと。
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嘆き悲しむ声はあちこちにあがっているようじゃが
https://rkb.jp/contents/202309/202309017699/
博多駅にも立派な今時のシネコンがあるみたいだし、福岡麻生帝国中枢たる大都会のくせに車利用に関しては妙に田舎な感覚で、首都圏では「コンビニに駐車場が付帯するようになるとトーキョーの皮を被った田舎」という定義もあるわけじゃが、その物差しを当てれば福岡博多はみんな田舎じゃわい。映画館にまともな駐車場がなくては、家族連れなど誰も気や選者路。ましてやこの規模
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100人以下の小規模な箱ふたつと、都会とすればギリギリのメイン劇場という大きさでは、今やシネコンの隅っこに間借りさせて貰ってるマニア専門特殊アニメ上演スペース程度じゃわのぉ。

この劇場、新帝都都心部では別フランチャイズで上映されているメト・ライヴとコヴェントガーデンのライヴが同じ箱でかかっているらしく、どうやら昨日までは一部ロマン派オペラ愛好家さん中心に異常な程の盛りあがりを見せていたメトの《Dead Man Walking》がかかっていたようで
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失礼ながらアメリカ20世紀オペラの本格ステージ上演は後にも先にも《ポギーとベス》一度きり、ヴァーグナー大作は《タンホイザー》のみというキューシュー島のファンとすれば、もう文字通りの聖地としか言い様がない場所。4月以降、どーするんでしょーねぇ…

で、ともかくこのホールじゃな、と確認し
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上映ルームに入ると、こんなん。今時のSNSの風潮に従って敢えてピンボケじゃわい。
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昨晩、ネットで切符を購入した時点ではやくぺん先生含め2席しか売れておらんじゃったが、まあ、両手ほどの客はおるようじゃの。一安心、なんじゃか…

かくて10時にヴァーグナー眺めたい熱心な善男善女(老、ばかりじゃが)の前で、まずは元気なおねーさんが舞台裏でなんのかんの作品解説をし、パッパーノ御大と演出家さんが対談する様子が延々と15分以上流される。なんと、演出家さん、壮大なネタバレをなさってるんじゃが、ええんかいなぁ。ま、この発言がないと、「最初から最後まで出ずっぱりの全裸の老女はなんなんだ?」と頭に疑問符飛ばしっぱなしで気になって仕方ない方もおるじゃろうから、こういうもんなんかのぉ。

舞台は良くも悪くもかなり細かい演技が要求されるもので、特にローゲなんぞは歌って踊ってとは言わぬが、アクティング・シンガーとし極めて高いものが必要。代役全く無理、って今時の舞台ですわ。昨今の映像多様のハッタリこけおどしおとぎ話視角化ではなく、がっつり「演劇」で、果たしてこれ、コヴェントガーデンの天井桟敷で眺めて判るんじゃろか、と心配になるくらいの細かさ。

とはいえ、演出家が細かく作り込んでいけば行くほど、いろんなところのポッカリガッツリ空いた穴が目立ってしまうのがヴァーグナーの困ったところでもあるわけでぇ…ひとつの方向に向けてしっかり筋を通したが故の突っ込み所も満載ではありました。ま、それが《ラインの黄金》を眺める楽しさでもあるんだけどね。

映画館で眺める際の最も困るところは、果たしてこのオケと声のバランスとか、ほとにそうなのかなぁ、という気持ちが抜けない事です。特にヴォータンが出たとこ勝負でしか者を考えてない困った社長から、なにやら妙に諦観した重厚なご隠居になっていくエルダ(問題の全裸の老夫人)との絡みから指輪を諦める辺り、ホントにこのバランスでヴォータンの声が聴こえるのかね、と心配になるなぁ。ま、この作品の舞台ライヴ上演で最大の問題になる最後のラインの乙女達の訴えの部分、舞台上ではお気楽神様たちがバタバタと虹の橋を渡っていく騒々しい音がしているのに、オーケストラは何故かスカスカで無駄なほど並ぶハープがパラパラ頑張っているだけ、というあらゆるメイジャー舞台作品中でも最もバランスが難しい、というか、ぶっ壊れている箇所の処理など、映画で見せてくれた方が気にならんでいいかもなぁ、なーんて思ったりして。

正直、この演出で《ヴァルキューレ》以降を絶対に観たいぞ、とは余り思わない、《ラインの黄金》としてはなかなかまともで頑張ってるじゃないか、というものでありました。

終わるとも昼過ぎ、名画座から出るなら、小さなエレベーターに並ぶよりも、ぐるりぐるりとレトロな階段を歩いて下りましょ。
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チケット売り場で「10回眺めると1回タダ」という会員カードを「3月までなんですけど、要りますか」と尋ねられたのをハイハイといただいたこともあり、たまたま翌日に福岡板付からシンガポールに向かう便が盆地からでは始発でも間に合わんので福岡カプセルホテル前泊にしてあるから、丁度上映しているらしいメトの《マルコムX》くらいは眺めに参りましょうかね。

それにしても福岡のヴァーグナーマニアさんたち、《ヴァルキューレ》以降はどこで観られるんじゃろかね?

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追っかけパワーがペップを襲うのじゃ [ゆふいんだより]

当温泉県盆地の田圃の中、感覚的には線路向こうの高級旅館の敷地の中に何故か蟄居してる、って風なオフィスのリフォームが完成し、年間の半分ほどを暮らすようになってまる2年の記念日であります。それにしても、昨年はもうこの頃には田圃に雪が積もる日もあったのに、なんなんじゃ、この陽気は!

そんなおかしな年の暮れ、例年ならば雪になって、盆地から由布岳登山口を通り険しい山道を一気に別府湾に向けて下っていく開設から1世紀を超える盆地へのアクセス道を通う路線バスなんぞ、乗り込むのもちょっと勇気がいる頃なのにぃ、頑張ってバスで別府に下るのでーる。普通の路線バス車両なんで、観光客さんが持ち込むデカいスーツケースを収める場所などあるはずもない。通路に溢れるオソロシー状況にはすっかり慣れ、昨日から運賃が一割近く値上げになったと知るも、廃線にされないだけ有り難いと思ってしまう交通弱者也。バスったら、今日もお高くなったぶんだけ頑張って走りますと、暮れなずむ盆地を眺めながら分水嶺へと登っていく。


かくて到着したのは、ベップの女帝アルゲリッチ様が「限りなくルガーノに近い街」と愛する別府でのホームベース、ビーコンプラザでありまする。
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夕方なんでちょっと横地に入って小中学校の前に寄るためにいつもより時間がかかったバスで1時間弱。富士見通り側のバス停はもう入口とは道を挟んだ反対側で、小雨なら傘を差す必要もなく青になった信号をダッシュで渡れば、フィルハーモニアホール6時半開演の広島交響楽団別府公演に向け、聴衆は次々と吸い込まれてる。
http://hirokyo.or.jp/hirokyowp2/wp-content/uploads/20231211_beppu.pdf
この会場、反対側がスポーツ会場にもなる多目的コンヴェンションセンターで、大きな四角い箱の東側にホールをトンと置いたような造りになっている。フィラデルフィアのキンメルセンターみたい、っても、殆ど例にならんかのぉ。

どういう都合やら、学生服も多く見受けられる会場に入ると、まあ、平土間はそこそこ埋まっているかしら、という感じ。上層階は売っていないのか、なんであれ文化庁のオーケストラキャラバンとして開催されるこの演奏会、広島は別府港から直行の船が出ているわけでもなく(あれば直ぐなんですけどねぇ)、《展覧会の絵》をやれるオーケストラを引っ張って来てるんだから、それなりにお金もかかってるんだろうけど、なんとなんと全席一律4500円、高校生以下は1500円也、というどんぶり勘定なもんで、わざわざ上の方の席を購入する人もあるまい、ってことなのかしら。

ちなみにこの演奏会、上のPDFチラシにも記されるように「別府ビーコンプラザ、トキハ会館プレイガイド、トキハ別府店、ヱトウ南海堂でのご購入に限り、特別価格 3,500円とさせていただきます。」って太っ腹な切符が用意されておりましたです。貧乏老人のやくぺん先生ったら、今回の温泉県盆地滞在で大分空港に到着したその足で、いつもの盆地行き直行バス(なんとおおお昨日から3割以上の大幅値上げじゃあああ!)ではなく別府行き到着便接続バスに乗り込み、温泉県民御用達ローカルデパートの勇たるトキワの別府店前で下車、「広島交響楽団のチケット下さい」と叫んだら、嗚呼、うちに割り当てられたチケットは売り切れました、と無慈悲な宣告。哀れに思ったか、おねーさんがビーコンプラザに問い合わせてくださり、まだ10枚くらいあるということ。しょーがない、割引きチケットを購入するためにわざわざバスやらタクシーに乗ったら本末転倒と、そこから欧州も旅したデカい荷物引っ張ってダラダラと登ること半時間余り、ビーコンプラザの事務所に行って、「さっきトキワから連絡したものですが…」と息絶え絶えとなりつつ、3500円也の割引き切符を購入したのであったのじゃ。
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ちなみにこの割引きチケット、主催者であり会場でもあるびーこンプラザの事務所で1000円引きというのはなんとなく納得するものの、別府と隣町で実質上のツィン・シティたる大分のメインデパート、それに大分駅前アーケード街のレコード屋さんで扱うって、どーゆーことなんじゃろかね?南海堂さんではどれくらい売れたんじゃろか?

もといもとい、そんなこんな、ペラペラの実券をもぎってもらい、1階平土間上手の席に着き、オケがやってきて、「ああああ、誰ひとり知った顔がない日本のオーケストラって、案外珍しい経験だなぁ」と思いながらマエストロ沼尻を待ち、《カルメン》前奏曲がなり始めるや…あれぇ、ここってこんなデッドな空間だっけぇ、とちょっとビックリ。思えばこの空間、アルゲリッチ様の独奏や室内楽以外で聴いたことがなく、今回訪れたのも、来年2月に日本フィル九州公演が今年はここが会場となるため、その前にフルオーケストラを聴いておきたいと思ったからでありまする。

今時珍しい、打ちっぱなしの巨大空間に後から慌ててあれこれ反響板なんぞ吊したりしたんかぁ、と思ってしまうような、よく言えば舞台上の音が何にも遮られず、あちこちからの過剰な反射音などなく、真っ直ぐ伝わってくる。指揮者さんがオケにやってくれと仰ってることがまんまミエミエになるような場所でありまする。ま、これはこれで面白いという考えもあろうが、さりげないその辺の市民会館なのに何故か猛烈に音が良い佐賀市文化会館大ホールやら、そこそこ広い空間なれどあちこちからの反響などがそれなりに聞こえてくる大分市内で今シーズンは休館中のイイチコ総合文化センターホール(多分、この公演も休館中じゃなかったらこっちでやったんじゃないのかしら)なんぞとは、相当に違う空間であります。磯崎新の建築で、アルゲリッチ音楽祭が始まった頃に竣工したわけだからそんなに古いわけじゃないのに、なんだか一昔前の空間みたいだなぁ。室内楽だと、そんなに気にならなかったんだけどさ。

続いて、恐らくはアルゲリッチ様がいつもご愛用であろうピアノが引っ張り出され、21世紀生まれの若きスター亀井聖矢が登場。演奏するのも、女帝様に挑戦状を叩きつけるか、この会場では(恐らく)何度も響いたであろうラヴェルのト長調協奏曲でありまする。なまっちい響きで、意外にも高い音の綺麗さとかよりも低音の響きのしっかりした重厚さが印象的なソロで、へえええ、と思ったらぁ、演奏が終わるや会場の真ん中正面から嬌声が挙がったかのように大拍手、なんと次々と人が立ちあがり、スタンディングオーヴェーションでありまするっ!ここは韓国かぁ、って熱狂的な風景が広がるぞ!

立ちあがっているのは殆どがOLさんとかおねーさんという感じの方々。おお、これが世に言う「追っかけ」さんであるかっ。
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その数、なんのかんの数十人という感じ。熱狂的な拍手が続き、亀井氏、客席に向けて指1本立てて「1曲だけね」と客席を沈め、《ラ・カンパネッラ》をお弾きになり、終わるやまた拍手喝采は続く。

かくて後半の《展覧会の絵》も恙なく終わり、アンコールに《マ・メール・ロア》の終曲をこのデカい編成でやって盛りあがり、別府の夜は更けていく。

ま、知らない会場で楽屋に行こうとしてトラブルのもめんどーなんで、マエストロにはご挨拶もせず、西側の巨大な公園抜けて、上野公園噴水前や富山市美術館前公園内と並び「日本3大おされなスタバ」と呼ばれるスターバックス別府店の前を抜けて、別府駅に向かったのでありました。なんせ盆地行き終バスは6時半前で、もうぐるりと大分駅経由するしか公共交通機関で戻る方法がないのでありまする。

先程、来てたんですか、という連絡をマエストロからいただいた中に、「ラヴェルが終わったらお客さんが帰っちゃうんじゃないか心配だった」ってさ。

本日の会場を埋めていた中の数十人は、亀井くんが登場せねば遙々温泉県までいらっしゃることもなかったでありましょう。翌日は小倉だから、今晩は別府で温泉浸かって、関アジ関鯖喰、はたまた鶏天喰らって、イイチコの焼酎飲んで、しっかりお休みくださいませ。温泉県によーこそ…って、観光大使アルゲリッチ様みたいじゃのぉ。

別府駅前でいちばん遅くまでやってる居酒屋で海鮮丼とビールを喰らい、別府駅から大分駅まで佐伯行き各駅停車で10分ちょっと。大分市内での演奏会から戻るときはいつもこれしかない9時50分発由布院駅行きの終電からひとつ前、途中からはガラガラなロングシートに座って一気に標高450メートルまで登り、駅前で自転車を拾って灯に集まる蛾のようにフラフラと引っ張られていったコンビニには、昼間の標準語たるインバウンド半島言葉が飛び交うこともないノンビリした空間が広がる。盆地を見晴らすお寺の横には、何故か篤志家の方が寂しすぎる夜を紛らわすために設置したというアドヴェント電飾が光り輝き
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目の前の線路は明日朝までもう列車は通わない。

この週末は雪予報。ホントかしらね。

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なぜ出版社が「クラウドファンディング」なのか? [売文稼業]

まず最初に申しておきますがぁ、今や老体のやくぺん先生ったら、新帝都は王宮を見晴るかす神楽坂の頂上から離れること直線距離で800㎞に蟄居しているわけで、思えばコロナ禍以降編集部にまともに足を踏み入れたこともない営利企業、社長が知り合いなわけでもなく、日常的に接している現場もみんな半分引退で内部事情などは全く知らない出版社の話題であります。ですから、「トップや現場の内部事情を知ってる奴が、社内の情報漏洩を無責任電子壁新聞にやらせている」などという大仰な話はまるでありません。全くの野次馬としての感想です。

そもそも、やくぺん先生の世を忍ぶ外の人とすれば、80年代終わりにこの業界で生計立てるようになってから、『レコード芸術』って媒体に記事を書いたのは…恐らく数回。それも「書き手の先生が持ち込むボランティアページ」として業界内では『音楽現代』にも匹敵する同人誌コーナーとして知られていた「海外盤新譜批評」だけだと思うなぁ。だって、恥ずかしながら遙か多摩県の東の隅、首都圏は帝都中枢から最も近いチベットと呼ばれた深大寺に庵を結んでいた頃から、帝都中枢を転転、ここ温泉県盆地に終の棲家を得るに至る迄、「家」と呼べる場所にちゃんとしたオーディオ装置があったことない!とてもじゃないけど、こんな媒体にお金貰って書けないでしょ。レコードって、別業種だからねぇ。

もとい。昨年の「レコ芸廃刊」は、日本よりも世界中の所謂クラシック音楽業界の衝撃を与え、特に「日本で売れて、評価を作る」というビジネスモデルがはっきり存在していたドイツフランスなどの業界では、「中国韓国と共に最後に残されたCD販売がキャリア形成に有効なマーケット」たる日本の貴重な媒体がなくなるなんてあり得ないだろう、なにか裏がある筈だ、という空気が流れていた。こういう異言語文化圏での空気、恐らくは神楽坂上層部やら大手株主さんたちには伝わってなかっただろうし、経営判断に影響を与えているとは思えませんが…

さても、そんな中で数ヶ月前にはこういう人事もあり(有料記事じゃないかぁ)
https://www.bunkanews.jp/article/342243/
こういう情報の常として、判る人がみれば何が起きているか判る、という状況になっていたのでありましょうねぇ。

そんなこんな、旧『レコ芸』編集部は跡形もなく解体され、編集長以下出版部やらに散っていき(結果として、今、神楽坂出版部、やたらと前のめりな感じですな)、アーカイヴ担当がいるのかもよーわからん状況になっており、「レコード録音」で権威や価値を作る他の媒体などでの新しい方策があれこれ模索され始めていた年の瀬、本来ならば『レコ芸』の存在が世界の音楽業界でも貴重とされていた最も大きな理由だった「日本レコード・アカデミー賞」が賑々しく発表され、レコード屋さんの広報さんなどが喜んだり嘆いたり、師走年末進行前の忙しいときに慌ててリリース作ったりしていた恒例行事もなくなった頃になって、こんなニュースが流れたわけです。
https://www.ongakunotomo.co.jp/information/detail.php?id=3202

なんせ、竹箒や納豆から先端工業製品に至る迄どんなニッチな分野であれ「業界紙」というものが存在する日本語文化圏にあって、何故か業界紙が存在しない日本のクラシック音楽業界(山のように存在する批評や広報のための媒体ではありません)、その事実を以て「日本語文化圏には真のクラシック音楽業界が存在しない」という情けない現実の証明とされていた極東の島国、本来ならば業界紙が事前に情報を流し様子を窺い…というのが常識な状況のにそれもなく、いきなり出版社自身が自分の公式媒体で発表するなんてオソロシーことになったわけですな。いやはや…

ぶっちゃけ、ビックリしました。「え、レコ芸分離して別社団法人だかNPOだかにして、そこで始めるのか」と、最初は思ったです。まともな大人(の振りしてる大きなお子ちゃま含め)なら、誰だってそう思うでしょ。だって、一応大手に入っている出版社が、自分のところの看板媒体を再興するのに「クラウドファンディング」なんて、常識的に考えればあり得ないでしょーに。

普通に考えれば、「Webでの再開を告知しサブスクライバーを募り、その際にオンラインでのドーネーションを行う」のが筋。まあ、有り体に言えば、一種の「相互会社」みたいなものにして運営する、ってことですね。

相互会社という企業のあり方は、20世紀前半に営利企業の限界が判ったところで生まれながら、結局、少なくとも日本では20世紀末までに絶滅してしまった。社会主義との関係はあるだろうが、高度資本主義の限界を乗り越える「ボランティア経済」のひとつのモデルだった筈が、あっさりと消滅させられた。「第一相互」で始まり、初期には「相互新聞」などという相互会社でのメディア運営までやっていた第一生命グループが株式会社になったとき、嗚呼ついに相互会社は終わった、とショックを受けたものでしたっけ。

ま、なんであれ、SNSが最も得意とする「微分係数値の大きな瞬発的な盛り上げ」のためには有効な手段である「クラウドファンディング」を、継続とデータの蓄積が最も重要な出版社に拠る月間雑誌の立ち上げに利用するって、どういうことなのかしら?艦隊戦するのに最新鋭の戦車ならべたぞ、ってくらいの違和感を感じるんですけど。

もう世の中には付いていけなくなった隠居爺である我が身である事実を、またまたひしひしと感じてしまうニュースであるなぁ。

言うまでもありませんけど、我が温泉権盆地の田舎町、かつてなら温泉地滞在中の客の暇つぶしのために必須だった「本屋」や「古本屋」は存在しません。その代わり、実質上の個人図書館なら、膨大なものがいくつもあるのじゃ。田舎あるある、じゃのぅ…

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