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亡きシュトックハウゼンの亡霊未だ舞台を支配せんとす [現代音楽]

年も押し詰まったニッポン国文化圏仕事納めの翌日午後、帰省ラッシュに「のぞみ」全車指定席化騒動、はたまた人気の雪世界ホッカイドー程ではないにせよ年末年始インバウンド観光客襲来で混乱するトーキョー中央駅東口シンカンセン改札口周辺をすり抜け、長大なホーム下自由連絡通路を丸ノ内北口へとやっと出て、昔は編集者さんとの打ち合わせなんぞに屡々使った駅前ビルなんぞが立派でオシャレな再開発地区へと変貌した上層階に収まる素敵なレストランに至り
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華の都巴里から帰国中の爺はもう赤面するほどキュートで素敵なソプラノさんと、楽しいお喋りをするという光栄な午後を過ごして参ったのでありましたです。こちら、パリ在住の高橋美千子さんでありまする。爺ったらドキドキじゃわいだっく。
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高橋さんといえば、去る11月のシテ・ド・ラ・ムジークでのル・バルコン&フィルハーモニー・ド・パリ&パリの秋フェスティバル制作によるシュトックハウゼン《光の日曜日》舞台上演で、第1部の実質上の主役たるエヴァ(声役パート、っても、このチクルス最後の作品では、初期の《木曜日》や《金曜日》などような「ひとりの役を人声、器楽、舞踏の3人が同時に演じる、というコンセプトは薄れてしまってますけど)を演じられた重要人物。その際にご挨拶させていただき、本来ならば表のメディアで華々しく取り上げさせていただかねばならぬわけでありまするが、何の業界内影響力もないしがない隠居爺のやくぺん先生ったら、何もすること能わず、ここに至ってしまった。スイマセン。当電子壁新聞記事はこちら。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2023-11-17
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2023-11-21
この普通の意味での「粗筋」やら「ストーリー」やらが存在しない巨大な空想の結婚式ページェントに延々と参列するみたいな総合創作物の「挨拶」に相当する部分で、ケルンでの失敗としか言いようがなかった世界初演のときにはシュトックハウゼン・ファミリーにみっちり仕込まれたというミカエル役のテノール、ヒューバート・メイヤーと共に、客席と一体化した空間をシュトックハウゼンが無駄に細かく指定した通りに走りながら、太陽系の星々についての猛烈に歌唱困難なパートをお歌いになり、舞台を成功に導いた功労者さんのおひとりでございます。

なお、高橋さんは昨年のリールとパリでの《金曜日》にも参加なさっておられ、トーキョー五輪予算使いすぎで東京都側の予算が付かず幻となった池袋での日本公演にも、当然、参加なさっていたでありましょうねぇ。ちなみに、これが昨年のフィルハーモニー・ド・パリでの《金曜日》当日配布プログラム、ご覧あれ。
https://deneb.philharmoniedeparis.fr/uploads/documents/NPGS-14-11-19h30-Freitag-aus-licht.pdf?_ga=2.239807043.170982891.1703900097-1267429779.1699709854
ついでに、去る11月の《日曜日》はこちら。あれ、当日プログラムのPDFはないのかしら、こっちは。
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/opera/26250-karlheinz-stockhausen-sonntag-aus-licht-scenes-1-et-2

眼下のホーム大混乱なんぞとは無縁の空間で、暮れなずむ新帝都の午後から夕方、どーでもいい業界話から深刻な欧州情勢までなんのかんのお話させていただいたわけですがぁ、当然ながらこの前の《光》チクルスについても話題になるわけでありました。

てなわけで、以下、当無責任私設電子壁新聞に記しても問題ないだろうと思われる興味深い《光の日曜日》上演裏話。

★昨年の《金曜日》で主役のエヴァを演じたジェニー・ディヴァイが、当初は《日曜日》第1部の同役(とはいえ、ロマン派オペラ的な意味で同じキャラクターの登場人物なのかはなんとも言えんですけど)だったが、本番の数週間前に高橋さんに交代になった。当初は高橋さんは第4部の「各曜日サインの紹介」でのエヴァ役にキャスティングされていたとのことで、そっちをジェニーさんが歌った。こちらとすれば、高橋さんの大活躍が観られたので結果オーライ、でんな。過去にないほど難しい役で大変だったけど、本番はきっちり上手くいったとのことです。

★その高橋さんが当初乗る予定だった第4場、全7作に付されたシンボルマークの説明というなんとも不思議な、「脚注ページ」みたいな場面でありますが、そこにマーク毎の香りが付けられていて、去る11月のフィルハーモニー・ド・パリでの上演ではラーメン丼みたいなものにお香セッティングし、それを何人ものスタッフが抱えてホール客席内を歩く、ということをした。なんとなんと、そのお香担当で高橋さんも参加していたそうな。直前に総合指揮(としか言い様がない)のパスカル氏から「ボランティアでやってくれる奴求む」という緊急連絡があったそうな。いやはや、全く気づきませんでした。

★これはちょっと微妙な発言になるのですが、昨年の《金曜日》は当初DVDにするという予定があったのだけど、結果的にフィルハーモニー・ド・パリのアルヒーフに映像が遺されているだけになった。その理由は、シュトックハウゼンの遺産管理をしているところが映像を細かくチェックして、猛烈なダメ出しなどがあって、なんのかんなんのかんの…ということだったとのこと。この辺りはあくまでも未確認のネットに書いてあった話として聞き流してくださらんと困るところなんですけどぉ、生前のシュトックハウゼンと近しく、実質上の知的所有権の管理のようなことをなさっている某氏(お判りの方なら「ああ、あの人ね」と想像なさっているであろう某フルート奏者さんです)が、今もしっかりそういうところに目を配っているとのこと。このル・バルコンのチクルスはそういう影響力が実質なくなったところから始まった、と勝手に思い込んでいただけに、へええええええええ、とビックリ。まだまだ亡きカールハインツ教祖様の亡霊、君臨してるんだなぁ。

★《日曜日》の映像は現在もまだ処理仕事などもあるそうで、一般公開やDVD化になるかはともかく、少なくともフィルハーモニー・ド・パリのアルヒーフには保存されることになるだろう、とのこと。

他にもいろいろあるんだけど、あの歴史的な舞台を眺めた方に興味がありそうなことはこんなものでしょうか。

多彩な活動をなさる高橋さんの公式YouTubeページはこちら。お正月らしいモンテヴェルディなんかもありますです。
https://www.youtube.com/@michikotakahashi3038
どんなことをなさる方か端的に知りたいなら、こちらをご覧あれ。当電子壁新聞を立ち読みなさってるような方なら、驚いちゃったりはしないでしょ。


上野の杜の歌の世界からも、こんな才能が出現するんですねぇ。ちょっと安心。

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