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民間音楽ホールの責任と公共性 [音楽業界]

名古屋方面の音楽関係者の皆様には大事件になっているのかもしれませんが、決して全国区ニュースにはなっていない話があります。「名古屋しらかわホール閉館」騒動です。こちら。名古屋圏の表媒体には先月末に一斉に報道が出ています。
https://mainichi.jp/articles/20240228/ddl/k23/040/106000c#:~:text=%E3%81%97%E3%82%89%E3%81%8B%E3%82%8F%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AF1994%E5%B9%B4,%E3%81%AE%E9%96%89%E9%A4%A8%E3%82%92%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
中日新聞では流石、社説扱いですね。
https://www.chunichi.co.jp/article/858828

ここまでの事態の推移を追ったサイトは、こちらかな。
https://yumetarou-kaikan.net/kancho/page-2121/page-2526/#:~:text=%E3%81%97%E3%82%89%E3%81%8B%E3%82%8F%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AF2024%E5%B9%B4,%E3%82%92%E8%BF%91%E3%81%8F%E5%A7%8B%E3%82%81%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82
これが保存を求める動きのページ。
https://note.com/nagoyaclassicca/n/n8884ecf504e1

というわけで、もう当電子壁新聞を立ち読みなさっている方はお察しのように、これって正に四半世紀前のお茶の水駿河台で起きたことと同じじゃないの。勿論、カザルスホール騒動の場合は結果として「ホールはオーナーが変わってハードウェアとして維持され、ホールを運営していたソフトウェアの企画室アウフタクトが解散」という結果に終わった。解雇される旧アウフタクトのスタッフを下請け某放送系企画会社と直接雇用者とに分裂させ、ある意味でお互いに内部でいがみ合わせ、一緒になって戦えないようにする、という経営側とすれば60年代以降の組合潰しで確立された定番の戦略を採ったため(ああ、日本フィル分裂のときと同じやり口だなぁ…)、端から見ればホールは維持されたみたいになり、騒動はうやむやになった(=解決した)。そしてハードウェアは、今もしぶとく駿河台に残ってるわけですな。

この類いの問題で話が混乱するのは、資本主義社会では「私企業の不良不動産処理」に過ぎない問題なのに、違う視点からすればその不動産は「(たまたま私企業が所有し運営しているに過ぎない)公共性の高い施設」になってしまっていること。カザルスホール騒動の時、「音楽ホールの公共性」という議論にちょっと行きそうになったけど、結局はそっちの方面での議論にはならなかった。恐らく、現在の資本主義経済では扱いにくい問題なのでしょう。で、いろいろとアートマネージメントとかの議論の中で話が進むのかと思ったら、今世紀の末期資本主義の動きの中でアートマネージメントそのものが「アートでどう稼ぐか」になってしまう四半世紀となり…

以上、ともかく、この瞬間の自分の為のメモでありました。せめてこれを期に、今世紀になって閉館になった民間音楽ホールリストくらいは作りたかったんだけど、ゴメン、誰かやってちょ。

それにしてもお茶の水スクエアは、正にメディア的にも数年毎にドロンドロンと出現する幽霊ビルになりつつあるなぁ。

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新生エベーネQパリからのライヴ [弦楽四重奏]

世間はベースボールのスーパースター結婚だ、脱税議員の国会での釈明だ、あれやこれや、上を下への大騒ぎになっている新暦弥生はじめ、皆々様におきましてはいかがお過ごしでありましょーか。引退宣言なし崩し撤回のやくぺん先生爺におきましては…かなりヤバい3月上旬状態になってます。税金、まだ手が付いてません。もの凄く面倒なボランティア顧問仕事、納税〆切と重なってます…うううむ。

ってなバタバタの新帝都春のどんよりした曇り空を吹き飛ばす、素晴らしいライヴ録音が華の都から届きましたです。こちら。
https://www.radiofrance.fr/francemusique/podcasts/le-concert-du-soir/quatuor-ebene-mozart-schnittke-grieg-maison-de-la-radio-et-de-la-musique-de-paris-4997090?fbclid=IwAR0Z3K7-QerIqqDeq0knTSv6hQ_rafQIGQbmsusQqr7hxMABx2PQr73cc-M

コロナ後の混乱する世界の室内楽、なかでも第2次大戦以降というか、ナチス政権把握以来80年ぶりの未曾有の大混乱に陥っていた弦楽四重奏界でありまするが、やっと日常が戻りつつあることの象徴のような、エベーネQの新メンバーによる現在の本拠地、パリはラジオ・フランスでの演奏会でありまする。

コロナの非常時は終わったとは言え、コロナ下の特殊経済状態の反動とウクライナ戦争での世界各国各自治体の経済システムの建て直しは全く出来ておらず、というか、2010年代と同じに戻ることはもうまずあり得ず、当然のことながら公的支援がなければ成り立たない弦楽四重奏などという今流行の言葉を使えば「レジリアンス」が最脆弱ジャンルにおきましては、恐らくは多くの音楽ファンがイメージする「常設弦楽四重奏団」の存続そのものが経済的に不可能になっていくでありましょう。そんな中で、中国のローカル性に特化する選択をした上海Qとは異なる道を選んだエベーネQ、新しい世界にどのような音楽を奏でてくれるか。初夏に予定される大規模な北米ツアーも、この団体だけではないとはいえ、なかなか厳しい情勢のようですし…

ま、そんなことはどーあれ、去る秋のヴィーンで聴かせてくれたようなピエール氏のキレキレの天才性散りばめられた世界一のアンサンブルが戻って来たのは、率直に嬉しいものであります。

全く個人的な勝手なことを言えば、やくぺん先生とすればノーバート・ブレイニン翁という天才との出会いで引っ張り込まれ以降30余年ずっと関わることになったこのジャンル、いろんな人々に会いながら、今世紀に入ってピェール・コロンベというブレイニンに匹敵する天才としか呼べない才能に出会うことになった。ぶっちゃけこの黒檀四重奏団、最初はジャズやらポップスやらに弦楽四重奏の世界を開いていく方向で仕事をしていく奴らなのかと思ってたら、どうやらそれはあくまでもある時期の彼らの世間に対する見せ方のひとつであり、本質はそこではないぞ、要はエベーヌQって21世紀のアマデウスQじゃないの、と感じるようになった。

そしたら、あのブレイニン翁の天才を我関せずという顔で支えていたロヴェット爺さんの役回りを、なんのかんので我らが岡本くんがしっかりすることになった。あああ、世の中ってこういう風になるんだなぁ、と不思議に感じつつ、この商売をやってきて良かった、と珍しくも素直に喜ばしく感じる春なのであったとさ。ピエールの弓の運びが、最晩年のブレイニン翁の自由奔放さを通り越した誰にも真似できないキレキレっぷりに至る迄、呆れながら、はたまた驚きながら、チームとして支えていって欲しいものでありまする。そんな頃には、俺はもうとっくにこの世にはおらんじゃろがのぉ。

今回、本拠地のお披露目で最初に取り上げてくれたのがチェロK.575というのも、岡本くんいらっしゃい感溢れて微笑ましいことでありまする。この録音がいつまで聴けるのか知らないけど、恐らくは早く聴いた方が良いでしょう。直ぐにでもお聴きあれ。忙しい方は、ともかく22分辺りからのチェロが歌い始める終楽章だけでもお聴き下さいな。

ニッポン列島へのお目見えは約一年後、ベルチャとのオクテットというスーパーなイベントなのは、嬉しさ半分残念半分だなぁ。

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