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ゆふいん音楽祭2019は来る日曜日です [ゆふいん音楽祭]

ぼーっとしているうちに連絡を忘れてしまった。ゆふいん音楽祭、今年もやります。今週末の日曜日、1日だけです。例年は7月最後の週末で、隅田川花火大会とバッティングしているんで、今年はどうなったのかとご心配の声もあったのですが、大丈夫、まだですから。演目はこちらをご覧あれ。
http://www.yufuin.gr.jp/assets/2019%E3%82%86%E3%81%B5%E3%81%84%E3%82%93%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E7%A5%AD-%E3%83%81%E3%83%A9%E3%82%B7%E8%A1%A8.pdf

ぱっと見、ホントにいつもと同じ、という感じですが、数ヶ月前に当電子壁新聞でお伝えしましたように、今年は公民館が例年のような使い方が出来ず
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
その結果、例年のような音楽祭の開催も不可能となりました。ともかく今年と、やるとすれば来年も、基本的には「仮開催」みたいな感じになると思います。

ま、それはそれ。今年はともかく、日曜日に朝から晩まで、漆原啓子さん監修の演目に、なんと意外にもゆふいんは始めてという向山佳絵子女史(山の向こうの別府ではお馴染みなのかな)、それにピアノは松本和将氏の無敵トリオが、ガッツリ聴かせて下さいます。九州北部の皆様、お暇でも、お暇じゃなくても、いらっしゃいませ。なお、やくぺん先生は、今年は諸処の事情で遙か新帝都から遠い眼をしておりまする。

さあ、この週末はゆふいんへ行きましょうっ!

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「政治とは無縁」を装い続ける息苦しさについて [演奏家]

「音楽業界」よりも「演奏家」カテゴリーなのだろうなぁ、という判断。

当電子壁新聞ひとつ前の御題の後半でも記しましたように、昨晩、溜池はサントリーホールで公益財団法人ソニー音楽財団さんが主催し、外務省、スペイン大使館、港区&教育委員会が後援に入る「10代のためのプレミアム・コンサート:大野和士 バルセロナ交響楽団」なるものが開催されました。精神年齢は14歳と言われても否定のしようがないやくぺん先生なれど、一応、世を忍ぶ仮の姿のニンゲン体は爺初心者なんで、この演奏会のターゲットとする聴衆ではなく、あくまでも見物人として拝聴させていただいたわけでありまする。

6時というなんとも不思議な開演時間の1時間も前から、溜池の今や高層ビルの谷底化しつつあるホール前広場にはセレブなお嬢様坊ちゃま親子連れ、ここは灼熱のマドリッドの街角かという感じのラテンぽい気楽な格好の皆様、それに妙にいっぱいの中華系お子ちゃまやら「中国の笛」なんぞ持った中国雑技団衣装の方なんぞのお姿も。なんなんねん、と思ったら、どうやら小ホールでこんなよーわからんイベントがあったらしい。
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すごおおおい気になるなぁ、これ。ま、それはそれ。

大ホールの本編は、こんなもの。
http://www.smf.or.jp/concert/spkids_12/
サントリーホールの客席は無理にギュウ詰めにしないゆったりした感じで、Pブロックは使っておらず、2階最前列はこんな風に封鎖されてます。
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親子でいらしてた某同業者氏によれば、珍しいことだそうな。お子様たちに落っこちられて事故でもあったら、財団の事業停止、ホールは廃館、なんてことだってあり得るわけだから、慎重にならざるを得ないんでしょうねぇ。

演奏会の中身は、「前半はオーケストラという楽器の音色、後半はリズムがテーマの、大野和士による贅沢なレクチャーコンサート」でありました。ぶっちゃけ、内容はそれほどガッツリぎりぎりまで詰めたわけではなく、オーケストラからピアノ、歌手、ギター、はたまたバレエ団までドカンドカン動員してテーマになってることを見せた、聴かせた、という感じ。流石に頭の良いマエストロ、現在大流行の「参加型ワークショップ」も取り込んでおり、江東区でのシティフィルとのコラボで馴れたバレエの先生をアシスタントに、客席の大人も子どももみんな立たせて、「はいファルーカのリズム、はいこんどはホタ」って体を動かし手拍子させる。「花見にならないよーに」なんてさりげなく結構本質的なギャグかましたりして(ギャグとしては殆どスルーされてたたけどさ)。

そんなこんな、休憩含めたっぷり2時間の楽しい夏休みの時間が過ごされたわけでありまする。以上、「へえ、良かったじゃないですか」でオシマイのお話なんですけど…

偏屈爺初心者のやくぺん先生としては、この演奏会、ある瞬間から、ものすごおおおおおい違和感を感じてたんですわ。違和感、というか、居心地の悪さ、かな。痛々しいものを眺めさせられている感じ、とまでは言わないけどさ。

子どものコンサートである、マエストロ大野が無理に子ども向けやってる、オケがオペラとの間で大変そうだ…そんなことではありません。それはまあ、大変そうだけどお仕事だからしょーがないだろ、と思える程度のもんです。

違和感とは、「これって、Orquestra Symphoica de Barcelona I National de Catalunyaの演奏会なんだよねぇ…」ってこと。

今回のツアーの公式日本語表記では「バルセロナ交響楽団」となっており、もうその段階で薄められちゃってるけど、要は「カタロニアの国立バルセロナの交響楽団」でんな。少なくとも、表記のどこにも「スペイン」という国名は入ってない。

いやぁ、ビミョーだなぁ…って思うでしょ。

舞台の上で「教育プログラム」の素材として使われたのは、最初はセビリアが舞台のビゼー《カルメン》で、次はフランスっても「スペイン北部」みたいなバスク地方出身のラヴェルがペロー童話をネタにした《マ・メール・ロア》。そこまでは、ああそうですか、でよかろーが、後半はアラルコン原作でアンダルシアが舞台のファリャ《三角帽子》で盛り上がる。うううん、こうなるとアンコールに《鳥の歌》をしっとりやるしかないのかぁ、と思ってたら、アンコールも《カルメン》第1幕への前奏曲で大盛り上がりで終わった次第。

もの凄く危険な、表のメディアだったら絶対に口にしてはならないことを敢えて記させていただけば、これって、「1929年のバルセロナ万博に招聘された京城交響楽団が、スペイン人の指揮者で《蝶々夫人》やら《ミカド》抜粋、はたまた《さくらさくら》を演奏し大いに盛り上がった」って感じ、かしらね。

これは子どものための演奏会であり、更にはあくまでも純粋に芸術的な話をする場所なんだから、そんなことに違和感を感じるお前がおかしいのだ、と言われれば、返す言葉もありません。仰る通り、その通りで御座いまする。だから、あたしだって、人前ではこんなこと言いません。

だけどさ、やっぱり、もの凄い居心地の悪さを感じてたのは事実なんだから、それはそれでしょーがない。

まあ、半世紀も昔のちゅーぼーの頃に『動物農場』を読んだ勢いでオーウェル全作品制覇などと無謀なことを考えて丸善でペリカン版『カタロニア讃歌』なんぞ購入し必死に読む振りをした、なんて紀元前の話はともかく、なんせ「カザルスホール」という今はもう40代以下の方々には知る人もない場所の月間会報誌でこの商売の基本を学び、その頃からカタロニアやらエル・ヴェンドレィに足を運んでいた。今世紀になってからも、なぜか関わった「カサド・コンクール」の資料調査で、未発表のカザルスの手紙を掘り出すなんてオソロシ-幸運に巡り会ったり。バルセロナのオケにしても、今は誰も触れない前任者の大植えーちゃん時代にオルフェオ・カタランというカザルスを知る人なら涙が出そうな合唱団と第九をやるのを見物にいったり。
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2009-05-31
全く偶然ながら先頃のカタロニア独立騒動の際にはゼネストの真っ最中にバルセロナの街を彷徨かねばならず
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2017-10-02
当然ながらそこでやったインタビューには、表には出せなかった「政治的」状況に関する話もあったり。
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2017-10-04

ま、そんなわけで、目の前にいた70人くらいの演奏家さんのうちのどれくらいが「カタロニア人」なんだか知らないけど、この楽師さん達はどう感じながら演奏しているのかなぁ、と思わざるを得ないのであった。

実際、耳にする話では、ホール裏のスペイン大使館とは、あまり簡単ではない出来事もあったそうな。あくまでも伝聞です、「書いてあることはみんな嘘、信じるなぁ」の当電子壁新聞であることはお忘れなくっ!

現代音楽を含め、世に知られたカタロニアの作曲家って、誰がいるのかしら?

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「こどものためのコンサート」あれこれ [音楽業界]

昨日は颱風が迫る中に周囲あげて花火大会モード一色の錦糸町に赴き、夏休み特別コンサートの取材でありましたです。

新日本フィルが上岡監督就任以来、「地域の若い人達とのコラボをしたい」ということでやってるサマーコンサート、今年はなんと、錦糸町の日大一高演劇部とのコラボであります。これが記者会見の時の当電子壁新聞ネタ。
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2019-03-25
なんじゃこりゃ、という訳の判らぬ話で、途中経過を眺めていたわけではありませんが、まあこういうことはちゃんと眺めねば、ということで取材にした次第。もう爺のやる仕事はこういうのばっかでんねん。終演後の学生役者諸氏、すみだトリフォニー舞台上で記念撮影。このあと上岡監督も加わるんだけど、そっちは表の記事でご覧あれ。
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このイベントがどういうもんかの説明は記者会見の時の記事を眺めて頂き、ともかく昨日の結果だけを申せば…ま、正直、上岡監督はこういう言い方は嫌がるだろうし、表のメディアにも書きませんが、「23人の若者のための考え得る最高の教育プログラム」でありました。この最後の1週間の上岡監督やオケとの絡みで、20歳のOBOGから14歳くらいまでのちゅーぼーまで、みんなそれぞれに「オケってすげぇえええ」「シェイクスピアって、案外いけてるかも」と思ったことでありましょう。舞台そのものとしては、すれっからしの爺には「へええ、高校演劇というこれまたスゴく深くひろおおおい世界が広がってるのだなぁ」と思わされるものでありました。演劇として感動したかといわれると…そーねー、古典をやることの意味を考えさせられた、という点では眺めた価値はあったです。やっぱり、古典って、恥ずかしいよねぇ、いろんな意味で。そこに若い「役者」さんたちがどう対するかは、面白かったですな。

どういうものだったかは、表の商売で書くので、申し訳ありませんが、「NJP 日大一高演劇部 ロメオとジュリエット」でググって下さいませ。いくらでも出て来る筈です。

さても、夏と言えば「こどものためのサマーコンサート」の季節で、連日いろんなオケがいろんなことをやってるのだけど、明日は明日で上野初台びわ湖と物議を醸してまわってる《トゥーランドット》のオケが、溜池で「子どものためのスペシャル演奏会」をやりますですな。
http://www.smf.or.jp/concert/spkids_12/
毒皿というわけで、こいつも見物に参る予定ですが、ま、特に感想をどうこういう予定はありませんです。日本フィルさんがやってるみたいなバレエ付き演奏会の豪華版、なのかしらね。

そんなこんな、この季節はお子様向けファミリーコンサートはいろんなもんがあります。お子様も忙しくて大変だなぁ。

[追記]

今、29日月曜日夕方、サントリーホールの前。梅雨も明け、すっかり夏空…って感じじゃないけど、すっかり夏休みの空気。まだ開演1時間も前というのに、普段とは随分と違った世界のセレブおぼっちゃまおじょーちゃまのような方々が走りまわっていらっしゃるでありまする。
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あ、オルガンが鳴り出したら、みんな携帯かまえてら。

考えてみたら、ここはスペイン大使館から徒歩3分だっけ。カタロニア旗を振り回す輩はおりませぬ。

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1944年に軍用埠頭はハドソン河側にあったのか? [マンハッタン無宿]

「マンハッタン無宿」番外編です。

本日から、東京文化会館でなんと驚くなかれ4日間ぶち抜きでバーンスタインの《オン・ザ・タウン》が上演されています。
http://www.gcenter-hyogo.jp/on-the-town/
ご覧のように、兵庫の劇場で既に8回公演しほぼ売り切ったプロダクションを東京に持ってきたもの。流石に地元で大人気の「サド夏のオペラ」とはいえ、首都圏に乗り込んで連日完売というわけではないようですが、初日は思ったほど酷い入りではなく、ちょっと安心でありました。

さて、この公演ですが、終演後に別の用事で連絡を取っている制作の方に尋ねたところ、基本的には佐渡氏の譜面台上に置かれていたブーシー&ホークスの青い表紙のフルスコアを、一部カットはあるものの、そのまま使っているそうな。それはまあ、そうなだろうということだけど、より興味深いのは演出・セット・衣装デザインを担当したアンソニー・マクドナルドの演出でした。英国系の装置・デザイン系から来た長老でんな。

恥ずかしながらやくぺん若翁ったら、「ミュージカル」というものを過去に眺めたのは…うううん、ブロードウェイは《スパムロット》だけ、オペラハウス系ではスカラ座でかのカーセンの《キャンディード》と、NYPが定期だか特別演奏会だかでやった《ショーボート》セミステージ形式、くらいのものかしら。ドイツの中小歌劇場で頻繁に出るミュージカル系の演目も、あああこういうのやるんだなぁ、とは思うものの、一度として舞台で眺めたことはありませんっ!ですから、なんの常識もないし、さっきの演出が「ミュージカルの演出」としてどうなのか、まるで判らない。

ただ、今、慌ててYouTubeに挙がってるトニー賞受賞の舞台なんかの抜粋を眺めるに…例えばブーシーさんの公式ページのこれとか
https://leonardbernstein.com/works/view/8/on-the-town
所謂モダンな読み替え演出やら、全体をなんかの枠に入れちゃう演出やら、そんな力任せの大技はあんまりやられてないんですねぇ。批判でも何でもなく、あくまでも「金払った分だけ楽しみを与える」のが商売の娯楽商業演劇はそういうものなんだろうけど。

んで、さっき東京初日が終わった舞台も、そういうものでした。つまり、(多分)スコアのト書きまんま。これがドイツの地方都市の劇場と歌劇場を同じインテンダントが兼ねているような尖った場所だったら、時代設定をイラク戦争やらにしたり、はたまた全体に枠を嵌めて外側で1944年1月のタワラ島やら北アフリカ戦線の兵士が眺めている様を見せたり、なんかしらの「現代的な視点」やら「作品の歴史的な位置付けをより明快にする補助線」を突っ込まずにはいられないでしょうけど…そんなことはなーんにもしてません。「第二次大戦中の海軍水兵が休暇でNYを走りまわるドタバタ」まんまです。

そのことそのものに文句を言う気は毛頭ありません。きちんと演出家もやるべきお仕事をやってるし(先頃、新帝都のオペラ愛好家に火を付けた某バルセロナの仕事のまるで出来ない演出家とは全然違いますっ!)、歌手さんもダンサーさんも、趣味はどうあれオケや指揮者さんも、お金を取れる仕事をやってました。猛烈にポジティヴに褒めれば、「なるほど、1944年初頭にブロードウェイで上演された《オン・ザ・タウン》という舞台はこういうものなのか」と妙な雑念なしに理解するには最適のステージであります。お暇でお金のある方は、貧乏なやくぺん先生みたいに天井桟敷上手二列目なんて涙が出そうな情けない席ではなく、ちゃんと下の方の席でご鑑賞下さいませ。明日から日曜日まで、連日午後2時からやってて、当日券もあるようですから。

※※※

ってなわけで、もうこここで読むのを止めていただいて結構なんですが、「マンハッタン無宿」としての本題はここから。このステージ、最初から最後まで、舞台の奥にでっかい地図が掲げられてます、てか、背景が地図になってます。兵庫の公式写真から引っぱってくると、こんな感じ。グランドフィナーレの場面です。
201907180062_ex.jpg
上手にどかーんと勇姿を浮かべている主人公の三馬鹿トリオが戻っていく軍艦がなんあのか、猛烈に気になるけど(丸いブリッジに4本煙突の第2次大戦に参戦した米海軍戦闘艦はオマハ級軽巡洋艦しかいないようだが、なんでこんな最前線には出されなかったロートル艦を敢えてここに持ってきたか、演出家さんになんか意図があると深読みすれば出来なくはないんですけど…こればかりは本人に尋ねてみないと判らんだろーなー)、それはそれとして、もっと気になるのは下手側にどーんと見えている地図ですな。

これ、お判りになる方はお判りでしょうけど、マンハッタン下の西側と、ハドソン河を挟んで対岸のニュージャージーの地図でんな。おお、エラリー・クィーンの《Xの悲劇》かなんかの解説地図か、と思ってしまうような。ここを横断してニュージャージー側からマンハッタンに入ってくるフェリーの上で遺体の指がXに組まれた最初の殺人が起こる、ってとこ。

ところがぁ、《オン・ザ・タウン》という作品、「NYブルックリン海軍工廠がある軍港が母港ではなさそうな軍艦がNYの軍事埠頭に停泊していて、そこから24時間の休暇で兵隊たちが街をうろつく」という話。会話ではマンハッタン最北端のクロイスターも出てたけど、結局、動き回ったのは最北端が西90丁目くらいの自然史博物館で、あとは56丁目のカーネギーホール(カーネギータワーがないカーネギーホールのお姿を久しぶりに眺めました)、53丁目のカフェ、42丁目のタイムズ・スクエア、そしていきなりどーっと飛んでブルックリン最南端(というのか?)のコニーアイランドへと、どんどん南東に向かっていく。

つまり、後ろの掲げられた地図って、舞台になってる場所の反対側なんですな。要は、「上野や浅草を舞台にしたドタバタ劇の背景に、新宿渋谷の地図がかかっている」とか「難波を舞台にした喜劇の後ろに梅田の地図がでっかく出ている」みたいなもんですわ。

正直、それに気付いてから、もう気になって気になって、舞台に集中できない、とまでは言いませんが。なんか意味があるのかなぁ、と考えてしまった。

んで、舞台そっちのけでつらつら考えるに、この地図に意味があるとすれば、「1944年初頭は、戦時下なんで我々が良く知っているウォール街のイーストリバー側の旧軍施設辺りや、対岸の巨大な海軍工廠があった軍港の辺りだけではなく、マンハッタンのハドソン河側にも軍用埠頭がいっぱいあって、この水兵達のオマハ級軽巡洋艦はそっちに停泊している」という設定なのであろーか、と推察するに至った次第。こんなこと考えてるのはアホかと思うかもしれないけど、気になるもんは気になるのだから仕方ないでしょーにっ!

そう考えると、「深夜も終夜運転してる地下鉄A(所謂「A列車」でんな)でマンハッタン南からコニーアイランドに向い、なんのかんのあって、朝の6時までに艦に戻ってくるのは大変だ」というシチュエーションは理解出来る。だって、近くはないといえ、早朝のブルックリンをコニーアイランドからマンハッタン対岸までぶっ飛ばせば、第2次大戦中の車でも1時間は切るだろう(なんせ出演者のひとりに無謀運転OKなタクシー運転手がいるわけですから)。だけど、ブルックリン橋を越え、朝の軍港と市場(1944年にあったのか?)の喧噪を抜けて、今のイントレピッド博物館のある辺りまで戻ってくるとなると、これはもう一仕事。ヘリコプター出せないか、と言いたくなってしまうぞ(←まだ実戦運用はされておらんわいっ!)。

終演後、制作の方に「背景になってる地図、これまでの公演で誰かに突っ込まれませんでしたか?」と尋ねたら、そんなこと言ってきたのはあんたがはじめてだ、と呆れられました。いやはや。だけど、NYに土地勘のある奴なんでいくらだっているだろうから、ホントは「あれええええ」と思ってた人は多いんじゃないかなぁ。

余りの気持ち悪さに、上野から佃まで戻る大江戸線の中で「USS Midway NYC」と検索してみたら、なんとまぁ、こんなもの凄い動画が出て来ましたです。ほれ。
https://www.youtube.com/watch?v=VQkYJRzU76E&fbclid=IwAR0wweO4yMHcLk784gBzZBfpXOSJY035sOzI8xJdnSY4UG2gItANBTdwO6Aわしらには「横須賀にいたロートル空母」としか思えない懐かしのミッドウェイがまだピカピカの世界一巨大な最新鋭空母だった1945年の寒い頃の映像ですから、バーンスタインのミュージカルがブロードウェイで初演されてから1年以上後の映像でしょう。とはいえ、5分くらいからのミッドウェイがでっかくアップになってる映像をご覧いただければお判りのように、背景は明らかにニュージャージーの丘です。正に、今、イントレピッド博物館があるところからジョージ・ワシントン橋にかけてくらい、リバーサイド・ドライヴの彼方のハドソン河ですわ。その真ん中に巨体を浮かべ、どうやら船員達は艀でマンハッタンに上陸していたみたい。

へえ、こういうことが起きてたんですねぇ。確かに今もイントレピッドの隣の埠頭に英国海軍艦が入港していたりするのを見るもんなぁ(って、今はNY海軍工廠そのものがないから、話はまた違うわけだけど)。

そんなわけで、なるほどそういうこともあるのか、マクドナルド御大、もしかしたらいろいろ深読みが出来るように仕掛けをしてるのかなぁ、と納得したのでありましたとさ。

この作品、音楽的に最もリアリティがあって印象的なのは、主人公のカップル以外の二組がA列車でコニーアイランドに向かう間に歌う四重唱で、これが《Make the garden grow》のパイロット版みたいなもん。ここで「オン・ザ・タウンというのは、要はオン・ザ・ボートの反対の意味で、この兵隊達は休暇が終わって大西洋戦線に戻り、北海やら地中海に辿り着くまでにUボートに沈められたり、半年後のノルマンディー上陸作戦に動員されたり、ことによると遙々パナマ運河抜けて太平洋にまわされてレイテ沖で特攻隊に突っ込まれたりするんだよなぁ」と嫌でも思わざるを得ない。そういう背景にある冷徹な現実をどうやってオブラートに包んで楽しくおかしく見せるかが、演出家の求められているお仕事。コニーアイランドから戦場までの距離が遠ければ遠いほど、「あの街場にて」と「あの艦上にて」の対比は強まる…

ま、全て深読みなんだろうけど、それを許す舞台の仕掛けでもあった、ということであります。

もうひとつもの凄く気になったのは、このNYにはアフリカン・アメリカンがダンサーひとりしかいないのかぁ、というところなんだけど…ま、それはまた別の話。

久しぶりにマンハッタンのことを懐かしく考えた、加湿器の中のような新帝都の晩でありましたとさ。

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ソウルでペンデレツキ《ルカ受難曲》 [現代音楽]

いつまでも梅雨があけずにボーッとしてると、もういろいろと秋以降の日程が入ってくる。そんな夏の向こうのことなど考えたくない、と思ってもアッという間に柿の実も色付く頃になっちゃうわけで、そろそろ日程を入れておきましょうか。

この秋、極東で最大の話題のひとつは(←嘘吐け、と突っ込まれること必至)、10月26日午後5時からソウル・アーツセンターのコンサートホールで予定されている第11回ソウル国際音楽祭の目玉公演、ペンデレツキ御大ご自身が指揮する《ルカ受難曲》でありましょうぞ。って、公式ページを探しても直ぐに読めるもんが出てこないので、こちらを下の方にスクロールして下さい。一応、出演者は読めるのでコピペ。
Soprano Iwona Hossa, Tenor Thomas Bauer, Bass Tomasz Konieczny
Narrator Slawomir Holland
Inchon City Choir, Bucheon City Choir, Goyang City Choir, Gwacheon metropolitan City Boys & Girls Choir
KBS Symphony Orchestra (Residence Orchestra for Seoul International Music Festival)
https://culture.pl/en/article/polish-cultural-programme-in-korea-2019
どうも今時は公式がハングルのみみたいですが、Facebookも…同じだなぁ。
http://simf.kr/program.html
서울국제음악제 Seoul International Music Festival
昨年暮れの段階でディレクターさんに洩らされていたんだけど、なんせ御大、この前も広島で指揮をキャンセルしたりしているんで、果たしてどうなることやら。ともかく、極東ではもう半世紀も前に若杉&読響が日本初演して以来…かしらねぇ。前衛時代のペンデレツキ、というか、ポーランド前衛が生んだ最高傑作とされながら、なかなか演奏されない。最初は《失楽園》とか《ラウドンの悪魔》とかもあり得るかな、と思ってたけど、ま、現実的にはこの作品辺りになるのでしょうねぇ。他にも音楽祭でのペンデレツキ作品演奏はあるみたい。ま、前衛以降はねぇ…どーなんだろーなー。

ソウル・アーツセンターの方にはまだデータが挙がってません。毎度ながら、どうなることやら。

ついでながら、その前々週には台中の《神々の黄昏》があります。ハシゴをしようという方も多いでしょうから(?)、そろそろ公式発表がありそうなんで、そちらもお忘れ無く。あたしゃ…パスかなぁ、こっちは。

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オケが指定管理者になると… [指定管理者制度]

「指定管理者制度」というカテゴリー、一体、いつ以来のことやら。今やすっかり忘れられた話題になってしまいました。なんせ、現政権になって「文化政策」とは「劇場音楽堂を拠点に地域再開発」とか「文化に拠るまちづくり」とか、芸術文化基本法や劇場法の本来の趣旨とは些か異なる「どうやって文化ネタで金を稼ぐか」というところが関心の中心になってしまいましたからねぇ。善し悪しの問題ではなく、事実としてそうだ、というだけで、いずれ「あの頃は…」と振り返られる日が来ることでしょうが。

ま、そんなわけで、誠に以て久しぶりのこのカテゴリー、今更ながらに引っ張り出した理由は、先頃、某演奏団体に取材し、その中で「指定管理」が大きな話題になったから。何を隠そう、先程初稿を入れたその取材の原稿には、結果として「指定管理」の部分は殆ど使えませんでした。要は、毎度お馴染みの「取材したけど出せないままになってもーた」でありまする。

んで、表原稿に差し障りのない形で、極めて興味深い「指定管理の今」について、ちょっとだけ記しておきましょうぞ。テーマは極めて明快、「オーケストラが音楽堂の指定管理者になったら何が起きるか」です。おお、普通ならA4版4ページくらいはいただけそうな、きっちり表の原稿になる堂々たる王道テーマでしょ。でもねぇ、これがどこにも売れないのがニッポン音楽業界(アート業界、文化業界、かな)の厳しい現実でありまするよ。いやはや。

愚痴はここまで。さて、もう隠してもしょうがない。大阪府の北、伊丹空港に向けて飛行機が頭の上を降りて行く辺りに、豊中市というところがあります。大阪音大がある場所で、今や既に忘れられかけている現総理の大疑獄事件たる森友学園騒動の舞台となった場所でもあります。ここに数年前、「豊中市民芸術文化センター」というヴェニュが出来ました。その劇場&音楽堂&諸処文化施設が指定管理に出て、以下のような結論になり、今年で既に運営が始まって3シーズン目です。このネタ、当電子壁新聞でやったっけ、まるで記憶がないぞ。
https://www.city.toyonaka.osaka.jp/jinken_gakushu/bunka/hall/siminhoru-siteikanri.files/senteikekka.pdf
ご覧のように、指定管理騒動で名を馳せた栗東の文化会館以下、日本各地で指定管理を取ってる専門企業ケイミックスさんと争って勝った連合体に、同じ豊中の府営公園の中、かつては府営だったここオーケストラホールに今は借家住まいをしている
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大阪府から離縁されたオーケストラ、日本センチュリー交響楽団が加わっているわけでありまする。

「オーケストラが自分が活動拠点とする公共ヴェニュの指定管理を取ってしまう」というのは、ちょっと考えれば極めて自然で合理的だと思うわけだが、どーしてかニッポン国ではそういう例はほぼ皆無。現在、オーケストラが指定管理に加わっている例としては、こちらがあるくらい。
https://www.kanagawa-arthall.jp/
出し物を見ていただけばお判りのように、ここは5年前からカナフィルが指定管理やってます。
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2014-06-11
日本で音楽の実演団体が指定管理者となった最初の例でありまする。先頃、目出度くも二期目が決定したばかりです。って、他に応募はなかったんね。ううううん…やっぱり指定管理はオワコンなのか。
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/hy8/prs/r7537518.html
ここはカナフィルは定期演奏会はやらず、要はレギュラー練習場の指定管理をやってる、ということ。日本センチュリーで言えば、「緑地公園内のオーケストラハウスをオケが指定管理する」みたいなもので、本来それが最も合理的なんですけど…いろいろあってそういうわけにはいっていない。話をカナフィルに戻せば、こんなイベントがもうすぐあります。
https://www.kanagawa-arthall.jp/project/kanaphil-land-2019/
眺めに行こうかなぁ、と思ってます。夏のオープンハウス、といえば聞こえは良いが、要は縁日夏祭り、ですな。オケの規模ではこれくらいが妥当なところかなぁ。

もうひとつ、今進んでいる話としては、こういうのがあります。
https://www.pref.yamagata.jp/ou/kanko/020073/yamagataekinishiguchiseibi/shiteikannrisyabosyu/kouhosya.pdf
山形に新しく出来るホール、となんとなく思ってる「山形県総合文化芸術館」で、点数は低かったんだけど総合的な評価として山響が加わる事業体が指定管理を取りました。面白いのは、やっぱり「平等性の確保」というところで低い点が出ていること。そりゃ、山響が指定管理するとは山響が優先的に使うに決まってるわけで、この辺りで「指定管理」というシステムと実演団体の相性が悪い部分が露呈してますねぇ。Ⅲという項目でも負けているのは、やっぱり経済性だなぁ。つまり、「経費削減が出来るか」ってことでんな。ふううう…

とにもかくにも、12月のオープンに向けて山響さんも動き出しているとのことです。

さても、問題の豊中ですが、日本センチュリーが指定管理になって3年目、ここもかながわアートホール同様に、指定管理しているオケが定期演奏会を移してきているわけではありません。練習場も歩いて20分くらいの場所に今は大阪府からの賃貸があるので、カナフィルみたいに指定管理している場所でやってるわけじゃない。どういうことをやってるか、もう記すのがめんどーになってきたので、こちらをご覧あれ。
http://www.toyonaka-hall.jp/
センチュリーは年4回の名曲定期とか、いろいろなスペシャルコンサートとか、団員の室内楽とかやってるです。定期はシンフォニーで、あとハイドン定期をいずみでやってる。

というわけで、現状、日本に36団体あるオケ連加盟プロオーケストラのうち「指定管理」をやってるオケは3つある、という事実を確認したメモでありました。だからどうだ、という話は…どっかで表でさせてくれるところ、ないかなぁ。今や「指定管理」は文化ネタとしてはオワコンになっちゃってるんで、まるで商売にならんわい。ふうううう…

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エベーヌQが達成した偉業 [弦楽四重奏]

昨晩、いつまでたっても梅雨が終わらない新帝都は溜池で、エベーヌQの世界ツアー東京公演が開催されました。
https://www.quatuorebene.com/beethoven-around-the-world-engl
この「ベートーヴェンで世界を巡る」と題されたツアー、言うまでもなく迫り来るベートーヴェン・イヤーに向け仕掛けられた(誰が仕掛けたのか、というのはまた別の話)イベントなわけで、ご覧のようにこのイースター明けくらいから年内いっぱいで世界各地をベートーヴェンを中心とする7種類のプログラムで総計40回くらいの演奏旅行を行い、それぞれのツアーで演奏が練れてきた最終回を中心にライヴで収録、ベートーヴェン・イヤー記念で世界超メイジャー会場で連続演奏会をする際にパッケージとして会場販売出来るようにする、というもの。ベートーヴェン全曲で7回ってどういうプログラムなんじゃ、とマニア筋の皆様はお思いでしょうが、個々の主催社側情報を眺めると

第1部北米編:作品18の1、作品131
第2部独墺編;ラズモ第1&2番
第3部極東編:ラズモ第3番、作品130&《大フーガ》
第4部南米編:作品18の6、作品127
第5部豪州編:作品18の2,《セリオーソ》、《ハープ》
第6部アフリカ編:未発表
第7部インド編:未発表

ってことになってます。まあ、作品14をやるかどうか、作品130改定版終楽章をどう扱うか、7回という余裕のあるサイクルならどうにでもなる(一部のツアーではベートーヴェン以外の曲もやっており、それほと求道的な感じになってないのはこの団体らしいというか、ジメナウアー新社長の現実路線というか)。作品18の4と作品132という人気曲がまだ温存してあるので、恐らくはアフリカがハ短調メインの作品18の残り3曲(+αで作品14?)、インドが最後なら最後らしく作品135と作品132、ってところじゃないかな。

昨日の演奏を聴く限り、この「ライヴ」の全曲録音は、ディスクとしては作品番号や作曲順に並べ替えるよりも、各ツアー毎に●●編という形で1枚づつのお皿にするのがいいんじゃないかい、と思えました。
予想部分も含めてだけど、7回でこのプログラム、これまでのベートーヴェン全曲演奏会でもなかったプログラミングで、なかなか上手くいってるじゃないかい。ライヴの演奏会としては短すぎる回もあるものの、ベートーヴェンだけを抜き出せば長さも丁度良い。なんせ、ラズモの1番と2番の間に性格の異なる別の作曲家の曲を挟む、って、やりそうでないプログラミングは、こういう年間企画をきっちり立てたイベントじゃないと出来ないしさ。

実はいちばん無茶っぽいのが、演奏会の前半と後半が共にでっかいフーガで終わる極東編だったんじゃないかしらね。昨晩はそこを無事に乗り切ったんだから、もうイベントとしての山は越えたんじゃないかな。その辺り、直接本人達に尋ねようと思ったんだけど、終演後に30分以上サイン会の列が出来
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終わるまで待ってたんだけど挨拶するしか時間がなかったもんで、尋ねられてません。ゴメン。

演奏の中身に関しては、書き出すとキリがなく、本日は先週の関西取材を原稿にする間に不在者投票に行かねばならぬので、ダラダラこんな無責任電子壁新聞をやってる暇はなく、敢えて誤解されそうなひとことで言っちゃえば、「21世紀型イタリアQ風ラテン系ベートーヴェン」でんな。基本、音程が自分で作れる旋律楽器という弦楽器のキャラクターに逆らわず、ヴァイオリン族の音色をそのリミッターの範囲内でギリギリまで拡大し、ダイナミックスやきっちり訓練された微妙なテンポ変化を細かく多用し輪郭をハッキリさせ(室内楽はメイジャー系奏者でも小規模ホールでの公演が常識になった今でこそ可能な、20世紀後半の大ホール対応型メイジャー弦楽四重奏団演奏様式ではやりたくてもやれなかったやり方)、まるで録音技師がミキシングルームでコントロールしたみたいな絶妙なバランスで各声部をきちんと聴かせつつも常に第1ヴァイオリンの旋律線が際立ちすぎずに聴き取れるようにする。
口で言えば簡単だけど、実際にやろうとするともの凄く大変な職人的作業をしてます。晩年のベートーヴェンの意外な程豊かな旋律性を追いたいオールドファンはそれでよし、古楽が再開発したヴィブラートや弓の使い方の違いを多用した音色の豊かさに溺れたければそれもよし、彼らの「ジャズ」から引っぱられた方なら強烈なアタックと明快に設定された高揚感に酔いしれればよし…どんな風に聴いてもそれなりにきちんと聴衆の求めるものが聴こえる音楽をやるって、プロとして凄く大変なことで、正に「メイジャー」でんな。これじゃなきゃ高いギャラは取れん、という音楽でありました。

個人的に興味深かったのは、《大フーガ》の作り方(というか、聴かせ方、かな)で、第1フーガ部を5つくらいだったか、第2フーガ部は3つくらいかな、ともかくいくつかのブロックに分けたこと。正直、あたくしめのようなどんぶり耳がライヴで1回聴いただけでは、どうやって聴衆にそういう印象を持たせたのか完全には判らないままでした(フーガ・モチーフのアクセントの付け方、実はフーガ内でも微妙なテンポの変化があった、アップボウのアタック中心の中に違うボウイングを混ぜ込んでくる…等々)。おおおおっと思った奴らは、ディスクになったら家で楽譜手にしながらもう一度聴け、ってことなんでしょう。

世界のメイジャー会場が2020年のベートーヴェン記念年弦楽四重奏業界代表に選んだだけの「メイジャー」感たっぷりの、ちっとも偉そうにはしてないけど堂々たる音楽でありましたとさ。

ま、それはそれ。昨晩の演奏会でやくぺん先生がホントに仰天したのは、客席でした。一昨日のハクジュさんはどうだったか知らないけど、少なくとも昨晩の縦使いにした溜池の紫薔薇会場には、いつもお馴染みの東京首都圏の室内楽好きの皆々様の顔とはちょっとばかり違った熱気で溢れてたのでありますよ。要は、客に30代以下くらいの若い男女がいっぱいいた、ということ。そんなの音楽学生だろーに、とお思いでしょうけど、確かにそういう層もあったが(きくところでは、桐朋学園の弦楽器にエベーヌ追っかけ隊がいるそーな。なんかこういうのって、90年代のカルミナ以来じゃないかい。エベーヌ出現後にヨーロッパの学生たちが古楽はしか転じてエベーヌ風ジャズはしかに一斉に罹っちゃって今に至ってる現象が極東の島国にも?)、明らかに今時の若年富裕層風なお洒落なお嬢さんとか、ちゃんとした青年とか、頭の白い爺やらがしかめ面して怖そうに座ってる弦楽四重奏会場とはまるで異なる雰囲気が醸し出されていたんですわ。なんなんねんっ!

エベーヌが売れる前の若き日から生活のためにやってた「ジャズ」の方で撒かれた種が、21世紀も10年代の終わりになって少しづつ育ってきているのか?そうであれば、そういう客層に対してもベートーヴェンでアピール出来る音楽を、エベーヌがしっかりやっている、ということ。

これ、スゴいことでありますよ。ホント。

終演後、やっと挨拶だけできたピエールとガブリエルに「こんな若い客、東京のベートーヴェンで見たことないよ」と言うと、本人達もビックリしてました。健全だっ!

エベーヌQ、ミュンヘンARDが「優勝を出します」大会に変貌して最初のこのジャンルの優勝団体として、その求められる歴史的な新たな使命を果たしつつある。いやぁ、立派になったものであーる、と老人初心者は有り難ぁくその天使が如きお姿を眺めるばかりな晩でありましたとさ。エベーヌのオリジナルメンバー男子のファーストネームって、ピエール、ガブリエル、ラファエル、ですからねぇ。

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一帯一路ユース音楽祭澳門で開幕 [音楽業界]

一昨日だかに引き続き、またまたニッポン国現内閣やらネトウヨさんやらを激怒させそうなネタ連発であります。こういう音楽祭が、明日、澳門で開幕します。
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http://www.artmacao.mo/2019/en/event/7649
澳門のアーツセンター全体の告知はこちら。
http://www.artmacao.mo/2019/en/
なんか、どんな団体が参加するのかとか、基本的なことがちゃんと判る音楽祭の英語ページはめっからんなぁ。なんなん。

今のニッポン社会には、もう「一帯一路」などという文字を見ただけで目がつり上がってヒステリーになりそうな方々もいっぱいいそうなんで、まあまあ落ち着いて、としか言い様がないのだが、要は「7月17日から21日に澳門に地元団体と一帯一路に関わる国(United States, Greece, Hungary, Italy, Nepal, Poland, Portugal, Ukraine, and from Mainland China’s Jilin, Beijing and Shanghai, Hong Kong, Asia Pacific、だそうな)なんぞからの13団体のユースオケ(殆どが所謂チャイニーズ・オーケストラ系みたいだけど)が集まり、いろいろなんのかんのやりますよ」ということ。会場は澳門文化中心ばかりか、澳門博物館、空港、フェリーターミナル、公園など、いかにも、って感じ。中華人民共和国建国70年、それに中国とポルトガルの国交樹立40周年記念だそうで、ま、ローカルってばローカルなイベントですな。別のリリースによれば、中国から参加する団体は
Central Conservatory Chinese Chamber Orchestra
Dancing Phoenix Kayagum Band of Jilin Normal University
Tang Junqiao Bamboo Flute Orchestra of Shanghai Conservatory of Music
Hong Kong Youth Chinese Orchestra,
だそうです。

日本からの参加はないみたいなんで「だからなんだ」としか言いようがないイベントではありますが、世の中にはこういうもんもあるんだ、ってこと。やっぱり「チャイニーズ・オケ」って、こういうときにはホントに文化展開の王道中の王道になるんですなぁ。

ま、日本に日本語で入ってくる情報はホントに限られてることよ、と今更ながらに思わされる話でありましたとさ。

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日本では上演不可能なオペラの独墺公演 [現代音楽]

タイミングを逸してしまったニュースなのですが、ま、記しておかないわけにはいかぬので、遅ればせながら記します。

今月の頭、ベルリンのリンデンオパー、エルプフィルハーモニー(演奏会形式)、ヴィーンのRonacher劇場で、こんなオペラの公演が行われています。これがツアーの公式ページなのかな。
https://www.johnrabe.info/
南京発のニュースはこちら。
https://www.prnewswire.com/news-releases/chinese-opera-the-diaries-of-john-rabe-starts-european-tour-in-germany-300880273.html
ちょっとだけ舞台映像もありまする。
https://news.cgtn.com/news/2019-07-11/Opera-from-China-portrays-European-hero-in-Vienna-IfnUFhUwxi/index.html
まあ、ご覧になってお判りのように、南京大虐殺を記録したドイツ人の日記をオペラ化した中国の現代オペラ、ということですから、今の反中反韓感情を御上自ら盛り上げてるような現状ニッポン社会ではとてもじゃないが受け入れられないでしょう。なんせ、《ドクター・アトミック》ですらやれないような「自主規制」という名の情報コントロール社会ですからねぇ。

作品がどうだこうだというより(なんと、上演に3時間もかかるそうな!)、興味深いのは、このツアーを仕掛けているのがウー・プロモーションという「中国の梶本」とも言うべき民間の音楽事務所である、ということ。小生、このツアーを知ったのも、なんのことないウー・プロモーションからのリリースでした。

このような作品が、リンデン・オパーやらヴィーンやらで上演され、それに対する記事もきちんと出ている、という事実は、ニッポン列島で引き籠もってるだけで済む方はどーでもいいかもしれないけど、やはりその辺りの関係者と付き合いのあるような人は事実として知っておかないとマズいでしょうね。
https://www.tagesspiegel.de/kultur/oper-ueber-john-rabe-der-gute-nazi/24526038.html
https://onlinemerker.com/wien-ronacher-die-tagebuecher-von-john-rabe-oper-von-tang-jianping/
https://www.abendblatt.de/kultur-live/article226379579/Europapremiere-in-der-Elphi-Oper-ueber-den-guten-Nazi.html

ドイツ語圏では「ナチスの南京支部副部長が南京大虐殺の際に中国人市民を守った」という視点からの受け止め方になるんだろうけど。なんせ、「ハーケンクロイツ旗を掲げて日本軍の侵入を防いだ」方なわけですから、人によっては頭がクルクルしちゃうかもねぇ。日本では右派論壇が「こいつは武器商人である」と必死に叩いている人ですし。なんであれ、歴史とはかくも簡単ではない、ということ。

《ドクター・アトミック》とか、《パサジエーレ》とか、はたまたこういうものとかこそ、オリンピック文化事業でやるべきなんでしょうねぇ、ホントは。「オペラ」という猛烈に金がかかり規模もでかくなる総合芸術は、極めて「政治的」な要素がある、ということくらいは、どっかで心得ておかないとね。

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「オペラ夏の祭典2019-20」は何をしたいのか? [売文稼業]

昨晩、「オペラ夏の祭典2019-20」という音楽祭(なんでしょうねぇ)の初日として、東京文化会館で《トゥーランドット》のプレミエ上演が行われましたです。中身に関しましては、既にSNS上では「怒り」「戸惑い」中心の熱い議論が巻き起こっていることでしょうから、当無責任電子壁新聞まで参入するつもりはありません。こうやってみんなが熱くなれることをやっただけでもうオリンピックはええんちゃいまっか、それよりドバイ万博に期待しましょか、って爺っぽい感想で充分でしょ。

とはいえ、一応、後の自分の為にメモとして記しておきます。舞台の中身ではなく、音楽祭としてのプロジェクトの在り方について。

このフェスティバル、公式にはこういうもんですな。
https://opera-festival.com/
要は「東京五輪に向けた公式文化事業」のひとつで、所謂「クラシック音楽」ジャンルとしては最初にして最大のイベントのひとつ。ミッション・ステートメントらしきページに「オリンピック」という言葉が影も形もないのは、IOCなりJOCなりが使わせてくれないということなんでしょうかねぇ。だけど、誰が考えたってこれは「オリンピックの文化イベント」なわけですわ。昨日も、黒ジャケットで招待席にいた方々は、みんな、と言っていいほど襟にオリンピックのバッジを付けてましたし。

どうしてこうなったか知らないけど、今年はスペイン、というよりもカタロニアをフィーチャーしたプロダクション。来年は(せっかく同時期にベルリンフィルが来るというのに、オケはベルリンフィルじゃなく)都響がピットに入り、既にこのイースターにザルツの音楽際で出された《マイスタージンガー》の演出を持ってくる、というもの。音楽ファンとすれば豪華な歌手とか、いろいろポイントもあるんでしょうが、ぶっちゃけやり方としては今や初台がレギュラーでやってるのとそう違うわけではなく(合唱団が藤原さんも入ってる、というのが初台とは違うけど)、東京のオペラ好きの皆さんにはそれほどビックリするようなもんではない。

運営的にみた最大のポイントは、「なんとまぁ、日本国のトップ劇場たる初台と、東京都のトップ劇場たる上野とで、同じプロダクションを続けて上演する。そのあと、かつての2国構想で2国の下に配される予定だった札幌、びわ湖、兵庫などの地方拠点劇場に同じプロダクションをまわす」というところにあるのでありましょう。

本当に「世界を目指す」なら、この後に同じプロダクションがソウル・アーツセンターに行くとか、大邱のオペラハウスに行くとか、高雄やら台中やらの新しい劇場に行くとか、はたまたゲルギー&プーチンが力入れてるウラジオストックの音楽祭に回るとか、そういう動きがあっても良い筈なんだけど、そこまではやってない。

つまり、「ニッポン国と東京都が音頭を取って、新国新制作レベルの舞台を日本中にまわす」ということなのでありましょうな。30数年前の構想を、オリンピックでお金が動かせるときに今やれる現実的な規模でやってみた、ってこと。

そういう視点で眺めると、昨日のプレミアは、正直、プレミアというよりもプレビュー初日というべきだったのかもしれません。ネット上のオペラ雀たちの間では、本日土曜日に上演される別キャストでは最後のオチが別になるんではないか、なんてぶっ飛んだ憶測まで飛んでいる。演出家の舞台のコントロールが緩く、ちょっと困ったレベルとまで言えるもんなんで、歌手や合唱団が演奏を重ねる間にどんどん舞台全体から受ける印象も変わってくる可能性があります。最後の札幌で聴ける方が最もラッキーかもねぇ。それにしても、会場の移動が前提だったらなんであんなにタッパがあるデッカい装置を作るんだ、と不思議に思っちゃうけどさぁ。そんなにお金が溢れてたのかいね。

てなわけで、ま、こういう試みだったのか、と自分を納得させるための作文でありましたとさ。当初、某媒体に書く可能性もあったのですけど、そっちはちゃんとオペラが判った方がやることになったんで、心から安心しておるやくぺん翁でありました。あれ、表の媒体に書かねばならないとすると、ホントにただ無駄にのたうつことになったろーなー。いやはや。

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