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静かに桜が咲いて… [パンデミックな日々]

昨日夕方、2週間ぶりに「コンサート」というものに足を運びました。場所は上野の杜、藝大向かいの旧奏楽堂。京成電車がまだ博物館動物園駅をやっててくれれば、葛飾巨大柿ノ木下の最寄り駅から各駅停車にチョロッと乗って、目の前なんだけど、今は京成上野駅から延々と歩いて行かねばならない。

帝都の老若男女ご存じのように、それって、まさに春の上野の狂乱のお花見会場突っ切り、ということになるわけです。やくぺん先生ご夫妻が多摩県の僻地深大寺を捨て、根津は三段坂下に庵を結んでいた20世紀終わりには、動物園の向こうから春の風に乗ってビールの香りが漂ってきた狂気の季節でありまする。

上野広小路側から西郷さんに向けて入っていく交番横は、明日はもう春分の日の夕方、上野地区でいちばん早い交番横桜が満開で、お花見インフラのスポンサーとなってる各雄志の提灯が例年通りにずらり。
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って、なんじゃ、この人の少なさは。

ほらほころんだ、そら一輪咲いた、というだけでそれを理由に酒を飲んでる花見客が出る桜のトンネルの両側にも、場所取りも夕暮れ前から飲んでる輩もおりませぬ。と、こんなん。
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なーるほど、今年は御上がこんな御触れを出してるわけね。一応、花見インフラは整備してあるけど、御上としては花見禁止(自粛要請、なんだろうけどね、我が御上お得意の)にしてるのかぁ。

残念そうにそぞろ歩く人々、よくみると文化会館の裏の野球場脇では、ここはダメとは書いていないと強引に集まってビールかっくらってる猛者もおるようじゃが、流石にこの上野花観ゴールデンルートで花見を強行するオソロシー連中はおりませぬ。かくて、花見風景取材のメディアさんも手ちぶさた。なんと、この時期のこの場所に立って、遙かしっかり門を閉じた東博正面が見晴らせるなんて…
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薄暮のなか、静かに桜の木の下に動かない上野のオジサンらの姿を眺めつつ、藝大方向に向かい、旧奏楽堂の入り口へ。
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今やすっかりお馴染みの体温測定マシンが、こっちを見張ってら。

久しぶりに業界関係者と挨拶し、向かいの珈琲屋でテイクアウトした珈琲をすすりつつ、こんなの飲んだら体温チェックに引っかからないか心配しながら検査マシンを抜けると、はい、まずは手を消毒してくださいな。
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これも今やすっかり見慣れたパンデミックな日々の光景でありまする。

さても、前日の篠崎さんのハープ演奏会でやっとライブ演奏会が始まった東京春音楽祭、会場に入れば、顔見知りの映像収録スタッフさんからは「仕事が半分になっちゃいましたよ」、横浜の某プロデューサーさんったら「もう来月の演奏会、大変よ」と、会場ロビーでもあちこちに電話してら。あれやこれや現状を巡る碌でもない話を仕入れ、100人弱の人が距離を取って座ると、我らがゴールドベルク三勇士がすっかり立派になって登場し、ピアノの津田氏を中心に据えたベートーヴェンのピアノ三重奏全曲演奏会、始まり始まりぃ。

パンデミックだろうが、ネット配信だろうが、ゴースト演奏会だろうが、この数週間上を下へになってるあれやこれやがなんだろーが、若きベートーヴェンのやってやろうじゃんか感満載の作品1の1が鳴ってしまえば、さああああいよいよ新帝都にもやってきたぞ、ベートーヴェン・イヤー!

それにしても、この作曲家のピアノ三重奏全曲って、やっぱり「題名付き著名曲《幽霊》《街の歌》《大公》を一つづつ入れ、作品1の3曲をひとつづつ入れ」ってやり方しかないのかなぁ。同じようなタイムスパンで書かれたチェロ・ソナタだと、頭からやってしまえば綺麗に纏まるんだけど…

♪春の宵、桜がさけぇば、花ばかり上野ぉちょおおお~と鼻歌交じりで坂を下り、また京成電車で川向こう新開地に戻れば、「メトロポリタン歌劇場オーケストラ、レイオフ」なんてとんでもないニュースが飛び込んでら。ふううう…

とにもかくにも、春が来た。ベートーヴェン記念年が、やってきた。

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