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《言葉のない「浜辺のアインシュタイン」》 [現代音楽]

大阪伊丹空港ラウンジです。羽田行き最終便を待ってます。

本日、大阪御堂筋の北の端、曾根崎神社の向かいのザ・フェニックスホールで、このホールの現プロデューサー体制になってから年に一度のペースで行われている「室内楽ホールで現代音楽の古典をじっくり演奏する」シリーズの第2弾、ニッポンでやるならこれ以上の顔ぶれは考えられない、ってムダに豪華な奏者をズラリと揃えた《浜辺のアインシュタイン》演奏会形式・抜萃が上演されました。
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ま、どう考えてもこっちを先にやって、みんなしっかり準備して横浜の舞台上演に臨めれば良かったとは思うものの、こればっかりはしょーがないですわなぁ。日曜日午後とあって、日本列島各地からいかにもいそうな顔ぶれが客席に揃っておりましたです。

さても、この上演、既に県民ホールの客席でも「2時間くらいになっちゃうらしいですよ」などというそれなりに信用出来そうな方からの情報が飛び交ったりして、果たしてどんなもんになるのか、なんせ合唱は5人しか居ないというし、無論、役者もダンサーもいない。正に「演奏会形式」で純粋にガッツリ音楽だけやる、というもの。まあ、ノンビリお昼寝に行くような気分で出かけたわけでありまする。

んでぇ、結論から言えば、「あ、これ、成り立つじゃん」でした。どこをカットしたかとか、話し出せば長くなるけど、ま、それはそれ。誰かマニアさんがWebに細かい情報をアップしてくれるでしょ、そのうち(かなぁ…)。ただ、なんせ「合唱団」が6名ですから、ニープレイ3はやれないから省略されました。また、舞踏はともかく、朗読は合唱団が兼務するにしても数足りるんだろうかと思ってたら、なんとなんと潔くすっぱり無くしちゃった。だから、ホントに辛うじて辿ろうとすれば辿れなくないかもしれなくないかな、という感じのストーリー性は、ものの見事にありません。で、休憩込みで2時間20分くらい。なんで休憩があるかとえば、横浜と唯一出演者が重なる音響のスーパースター有馬さんに拠れば「合唱団が歌いっぱなしですから」とのことです。確かに…

とはいうものの、意外にも、といったら失礼だけど、このやり方だと、マイクで拾って音響補正をされているにせよ、後半の「建物」から「宇宙船」の舞踏ヴァイオリン管楽器総出の壮大なクライマックスに向けて響きの厚みがしっかり変化していく様子がよーく分かりましたです。実質的にCDダラダラ聴いてるようなものとはいえ、ライヴ、それもこの規模のホールでの上演であるからこそ判る音の量感の変化は、それ自身が物語になっていたのは意外と言えば意外でした。最後にバス運転手さんのモノローグもなく静かに終わると、まるで《ヴォータンの告別》や《ブリュンヒルデの自己犠牲》はなかったけど、ガッツリと実質2時間に編纂された《言葉のない「浜辺のアインシュタイン」》を聴いた充実感がありましたです。果たして「オペラ」としての満足があったかは判らんけどさ。

最後のクライマックスの「宇宙船と原野」に向けて、大乱舞の背景で宇宙船が遙か空に向けて飛んでいったりする、なんて演出はないものの、フェニックスホール舞台後ろの壁がずーっと上がっていき、梅田のスカイスクレイパーが見えてくる。そして、ちょっと見えた空を、伊丹から離陸したちっちゃなJALが夕闇の光を浴びて高度を取っていく。ああああ、Einstein on the Beach!って、ちょっと出来すぎた絵面でしたとさ。

日が暮れる大阪の空、ホールを出ると、下弦の月が西に浮かんでら。
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横浜大阪と続いた神無月の《浜辺のアインシュタイン》、この上演で、ことによると抜萃上演やらダンスへの利用など、一気に作品の受容が進むんじゃないかしら。なんせ、どこを切り取ってもインスタレーションの音楽にもってこいの4時間だもんねぇ。名ばかり有名な作品が、ホントに有名な作品に…なるや?

[追記]

その後、つらつらアホ頭で考えるに、結果として実質上演時間2時間ちょいに圧縮されたことで、4時間半の舞台を出入自由で体験している際には感じられない作品としての構造が見えやすくなった、ということなのかなぁ、とも思わんでもないですな。どーなんじゃろね。来月後半のシテ・ド・ラ・ムジークで売り切れになってる演奏会形式上演は、どうやるのかなぁ。ナレーターや演出が記してあるから、所謂「コンサートオペラ」ということなんだろうけど。
https://philharmoniedeparis.fr/fr/activite/opera-en-concert/23751-philip-glass-einstein-beach

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関係者様ご連絡:11月上旬ツアー日程ほぼ確定 [たびの空]

なぜかは知らねど、eurpassが日本ベースのVISAではどのカードでも弾かれ続け、仕方なくPayPalにしてみたらあっさり通ったので、やっと購入できました。欧州内10日間二等車乗り放題で、現時点でのドイツ主要都市のまともな国際チェーンホテル3泊分くらいのお値段。うううむ、DBの事前フィックス大安売りを積み重ねればもっと安く出来るだろうとは思いますけど、今回のように向こうで会った奴が「この日に俺たちここで弾くぞ、来ないのか」なんて言ってくるだろう状況では、必要な部分だけは決めておいてあとは真っ白、そこに行こうと思えば朝から動けばいくらなんでも夕方には到着する、というようにしておけるのは大いに有り難い。それに、ベルリンやハンブルク都市部が余りに高いが(意外にフランクフルトはリーズナブルな値段の宿がそこそこあります)、IC一駅行ったとこの駅前宿は半額以下、なんて状況は起きているようなので、宿代の節約も出来るだろうし。

なによりも、これで来週の水曜日朝8時前くらいにフランクフルト空港DB長距離駅ホーム上の掲示板を眺め、「おおおお、ベルリンに行く列車、バーゼルからの長っぱしりは相変わらず遅れとるなぁ。パリからのタリスは乗りたくないし、一度中央駅まで行って考えるかあ」なーんて思案する瞬間まで、旅程についてはなーんにも考えなくて良くなった。明日早朝から日曜日までの関西ミニツアーを思うに、なんと楽になったことか。金で済むなら済ませてしまえ、どうせ墓場には持って行けないんだぁ、という完璧な老人発想であります。いやはや。

んで、こんなものを日本語で記してもなーんにもならんのだが、欧州方面の方に「やくぺん先生はここにいる予定ですよぉ」というご連絡と、御家族へのアナウンスと、なにより自分への備忘録ですな。

11月1日(火):SQ羽田08:50→15:25シンガポール23:55→
2日(水):→06:20フランクフルト空港着 20:00ベルリンフィル ベルリン泊
3日(木):未定
4日(金):19:30エルプフィルハーモニー小ホール オリバー・ヴィレ氏プレレクチャー&エベーヌQ ハンブルク泊
5日(土):19:30ヴッパタール劇場 ノーノ《非寛容2022》 エッセン泊
6日(日):18;00エッセン歌劇場 《タンホイザー》 エッセン泊
7日(月):エッセン→リール 19:00リール歌劇場 シュトックハウゼン《光の金曜日》 リール泊
8日(火):19:00リール歌劇場 《光の金曜日》リール泊
9日(水):未定
10日(木):NDRハノーファー放送スタジオ 20:00 クスQ ハノーファー泊
11日(金):17:00フランクフルト歌劇場 《マイスタージンガー》 フランクフルト泊
12日(土):未定
13日(日):フランクフルト空港21:55→
14日(月):→17:15シンガポール
15日(火):シンガポール01:20→08:10福岡空港着

以上です。いやぁ、このご時世、まともな航空会社で一番安かったシンガポール航空ったら、フランクフルトからシンガポールだけでシベリア越えて東京まで行くのと同じだけ時間がかかりますから、まるまるシンガポール往復分だけ時間がかかってるわけですわ。これでも、ANAJALHLの半額。ちなみに中東系は、12月のカタール・ワールドカップに向けても雄凄く高くなってます。

いやはや、ホントにスポーツって迷惑ばかりだわなぁ…そもそもこのツアーの理由は、ヴァーチャルトーキョー五輪なんだからねぇ。

てなわけで、欧州在住の皆々様、諸々よろしくお願いしますです。コロナを拾わないよーに、もう本格的な老人なんだから(eurpassもシニア値段です)無茶はしないように、心得ているつもりではありますが、こればっかりはなぁ。

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ターリストリオ来日公演中 [演奏家]

もう、身も蓋もない宣伝です。

現在、アウグスブルグ拠点のピアノ三重奏団「ターリストリオ」が来日公演の真っ最中であります。日本語の正式表記が、途中の・なしでベタベタとカタカナ。意識的にそうなさってるので、ドイツ語のTalistrioをまんま日本語に移した、ということらしい。どうやら日本語の公式はこちらのFacebookみたい。
https://www.facebook.com/talistrio/
公式はこちら。ドイツ語のみ。
https://www.talistrio.com/?fbclid=IwAR3H44T6iUwRuY1G8YasLE4eEYu9nx_UBAI1vntK8i75XBaRqk-qmUUjGsk
アウグスブルクで活動なさってる日本人チェリストの岡田琢朗さんが、奥様のヴァイオリニストたる奥様のエーリカさんと、そのおにーちゃん(だと思う、弟かな)ヴエンツェル氏と組んで活動している、ある意味極めてファミリーでピアノ三重奏団としてはありそうでないグループですな。

岡田さんが関西出身ということで、コロナが明けての里帰り公演。というわけですから、あちこちの主催者さんに直接声を掛けての手作り日本ツアーで、この辺りは師匠のヘンシェルQのクリストフ譲りというか、なんというか。先月、ヘンシェルQのモニカさんが音楽プロデューサーとなりアウグウスブルク市郊外の工場跡地文化施設で開催されたアーツイベントに参加、大喝采を博したとのことでありまする。

紹介が遅れてしまい申し訳ないんですけど、もうツアーはとっくに始まっておりまして、この先の日程は週末に向けて28、29日の兵庫県西脇市、30日の大津のコンサートスペースたるフィガロホールだけです。いかんせん西脇は遠い、などと仰らずに、秋の栗拾い(なのかしら?)兼ねていかがでしょうか。ちなみに室内楽好きなら、28日京都エク、29日びわ湖アマービレ、30日大津ターリストリオ、というなかなか味わい深い連チャンが出来ますよ。

いまどきはこんなカッコいいプロモーションヴィデオがある時代。なんのかんの言わずに、ご覧あれ。日本語字幕付きです。


やくぺん先生ったら、土曜日の兵庫を拝聴する予定です(ゴメン、だって日曜日はフェニックスで《浜辺のアインシュタイン》なんだもーん)。紅葉にはまだちょっと早いけど、秋深き奥兵庫でお会いしましょう…って、2時開演じゃないかぁ、今まで3時と思い込んでたぁ。
http://www.nishiwaki-cs.or.jp/apikahall/event/history/000803.html

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作曲者の私オペラ(?)初演へ [現代音楽]

先程、新日本フィルの本拠地たるすみだトリフォニーの小ホールで、来年1月定期演奏会で世界初演される井上道義作曲ミュージカル・オペラ《降福からの道》制作記者会見がありました。
https://www.njp.or.jp/concerts/23152

この作品、まあ井上道義という指揮者さんに関心ある方ならなんとなくご存じだったであろうこの音楽家の個人的な背景を巡る劇的に過ぎる話を、フィクションとしてオペラの形で世に出すもの。ご本人曰く、「オペラですけど、歌手がPAを使うのでミュージカル・オペラという言い方にしている」とのことです。

長さにして2時間を越える本格的な規模の作品で、上演の仕方としてはNJP本拠地のトリフォニーホールでは所謂「コンサートオペラ形式」。今回は定期演奏会の一部なれど、NJPはピットに入り、実質上完全なるオペラとしての上演とのことです。で、サントリー定期の方は「Pブロックもう売っちゃってるから」ステージ形式には出来ず、所謂演奏会形式で衣装は着け、簡単な光演出での上演となるとのことです。同じ値段だから、どう考えても錦糸町の方が格安でんなぁ。

内容は、一言で言えば「井上道義の父に対する複雑な気持ちを、作品とすることで許しへと昇華する」という極めて個人的なもの。なんせ、わしら同業者はみんななんのかんのミッチーさんと話をするにあれこれ断片的は話は聞かされていた「僕、オペラ作ってるんだけどね…」ってのが、ようやく完成してステージに顕れた、って感じ。作品そのものは金沢時代にほぼ完成していたけど、NJP50年記念の年に第2代音楽監督へのトリビュートとして上演に漕ぎ着けたわけでありますね。もうスコアは出来ていて、ほれ
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ガッツリ紙として存在しております。

配布されたあらすじに拠れば、主人公は画家の太郎という姿になっております。1幕は太郎がアトリエで作業をしていると自分が過去の描いた両親の肖像画から幻想の両親が出現、2幕の太郎誕生前の第2次大戦下マニラに舞台が移る。日本人ながら米国生まれで本土での居場所がなく左遷のようにマニラにいた父正義は、己のアイデンティティに悩みつつ現地のメイドなんぞと奔放な生活をしている。日本から呼び寄せられた妻みち子は、それを見守る様な生活をしていた。そこに米軍が上陸してきて、家は艦砲射撃で崩壊。ダンサーの米兵に助けられたみち子は捉えられ、米兵とダンスを踊る。第3幕はアトリエに戻り、太郎の両親の幻想との様々な対話が成され、自らの出生の秘密も明かされ(るのかな?)、太郎は許しに至り、賛美歌461を皆で歌う。これ。
https://www.youtube.com/watch?v=xJ0cJ5DQeIs

…というもの。あくまでも本日配布されたあらすじからの内容抜萃ですから、幻想との対話中心の3幕など、もっと舞台として複雑だと思います。

本日舞台に登場した主要キャストがそれぞれ重要なアリアをピアノ伴奏で披露してくださいましたので、いずれ近い将来にNJPから出るであろう公式記者会見動画でそれらを聴けるんじゃないかしら。音楽的には、ご本人が仰るに「バーンスタインの《ミサ曲》みたいなシアターピース」とのことで、ま、お判りの方はだいたい想像はつくでありましょうぞ。中身はどちらかというと《A Quiet Place》ですけどね。

井上道義氏が指揮者であるということを横に置けば、作曲家が自分の両親との関係をそのまま舞台に上げてしまった昨今の作品としては、シュトックハウゼンの《光の木曜日》を誰もが思い出すでありましょう。ですがこの作品、道義氏自身の芸術家としてのあり方や歩みを語る自伝というよりも、己のルーツそのものへの疑問をオペラという形にしてしまったもの。本人曰く、「上演のことなどなんにも考えずに作曲した」とのことで、正にそうじゃなきゃ書けない内容ですね。

なんだか隔靴掻痒な言い方になっていますが、ぶっちゃけ、主人公太郎は父正義の実の子ではなく、母みち子の米国人ダンサーとの不倫の子供で、父はそのことを太郎に秘密にして世を去った。その父と、己への許しの物語、ということ。じゃ、母みち子は…と思うけど、その部分はあらすじでは語られておりません。

想像以上に重く、象徴性と具体性が複雑に重なり合った舞台になりそうで、これがどのように処理され、形になるか、まだまだ判りません。道義氏はホントは指揮はしないで演出に徹したかったそうですが、オケ側からそれは困るといわれたそうな。作曲家井上道義氏とすれば、一回限りのイベント上演ではなく、作品として世に遺すことを望んでいらっしゃるようでありました。

とにもかくにも、1月を待て!

[追記]

その後、ドロドロ縄縄とあちこち勉強したら、どうやら井上道義氏はこの数年、要はこのオペラ作品を舞台上演する計画が本格的になった頃から、ご自身の出生を巡る話はどんどん自分で喋っていらっしゃるようですね。ネット検索で「井上正義 道義」と調べると、いくつものインタビュー記事が出てきます。

それらをあらためて眺めて本日記者会見で配布された資料を見るに、この作品の第2幕の出来事は、「父と母が戦時中にマニラにいて、マニラ時代のあとに自分が生まれた」という史実以外は、基本的にフィクションのようです。いろいろと時系列がぐちゃぐちゃになってないか、と思いながらあらすじに目を通していたんだけど、そういう風に捉えるものではない。

なかなか一筋縄ではいかんなぁ、この作品。

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シンカンセンで武雄に行って… [音楽業界]

どう見ても「たびの空」カテゴリーだけど、「音楽業界」な話なのじゃ。

長崎県民悲願の長崎本線シンカンセンタイプでのバイパス新線、所謂「西九州新幹線」が地元の大盛り上がり(なんだろうなぁ…)の中で開通して本日で1ヶ月。このタイミングで早くも1ヶ月の総括なり将来への不安なり(なんせ、新大村駅のタクシー運ちゃんに拠れば「乗車率2割」だそうですから)がおおっぴらに語られ始めようとする昨日
https://news.yahoo.co.jp/articles/fdad5139b1fe3f9733506261b5a0e4e3912967fa
現時点でシンカンセンタイプ運用の終点というか始点となっているJR九州武雄温泉駅から新線が猛然と突っ込んでいくトンネルの方へと15分も歩いたところにある武雄市文化会館で、こんな演奏会が開催されましたです。
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このコンサート、その題名からして誰がどう見ても「西九州新幹線開業記念」のイベントなわけで、主催は実質上武雄市。会場の表方にも明らかにボランティアさんたちらしき熟年さんと一緒に、新幹線開通記念のTシャツを着た市の職員さんと思われる人たちが働いておりました。
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ロビーにも開業記念写真展なんてあったりして、もう新幹線大盛り上がり、ってかな。

で、演目はこちら。なんと、最後は豪華九響をバックにタケカワユキヒデさんがGalaxy express 999 will take you to a journey never ending journey, journey to the star!と歌い上げるゴダイゴヒットパレードではないかいっ!
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数ヶ月前から長崎本線や佐世保線沿線には置かれていたチラシでは、地元合唱団が出るとか《新世界》をやるとかは記してあるものの、普通の意味での演目はよくわからず、ともかくゲストにタケカワユキヒデさんが出ることはハッキリしてた。どれくらい出るのかは知らんけど、これはもう何がメインで歌われるかは誰だって判っちゃうわけでありましてぇ、どうやら会場にはこの日がたまたま70歳のお誕生日だというタケカワさんのファンだか年季の入った追っかけだかがしっかりいらしてたりして(実際、主催者提供でサプライズのケーキが出ました)。ま、その意味では、市が税金いっぱい投入して大人2000円で聴ける正しいローカル・イベントでありましたとさ。

なお、プログラムで合唱団が歌うことになっている新実徳英《空、海、大地と木のうた》は、この武雄ベースの合唱団のために市政50年を記念して書かれた作品とのことで、市内では夕方やらの時報で使われているから、みんななんか知ってる曲だそうな。これを九響のオケ版で、この演奏会特設の4歳から80代までの市民による合唱団KAMOME(おいおいおい!)が披露したわけであります。こういういわれ。
https://www.panamusica.co.jp/ja/product/8119
マスク付きのあれだけの大合唱って、初めて聴いたぞ。ちなみにこの合唱団、アンコールではもう一度登場したタケカワユキヒデ氏と一緒に999を歌い上げ、大いに盛り上がってました。

九響さん、ポップスはあまりやってないということはないと思うけど、《A列車で行こう》のオケ版なんかでは主旋律が弦だけになったときにやたらと音量落ちたり、ブラスとのバランスが難しそうでしたけど、流石に《銀河鉄道999》なんぞになるとの、絶対に腹の中で一緒に歌ってただろう引退近い世代くらいの長老団員さんらは、とっても楽しそうでしたね。

ま、そんなこんなの演奏会、鉄道に関する曲なら《パシフィック231》はやらんのかとか、せっかくだからやはり鉄道が題名になってる曲としては恐らく最も長大な作品であろうグラス《浜辺のアインシュタイン》から「夜汽車」をやってくれとか、いろいろと言いたいことはあるが、武雄市のみな皆様とすれば大いに盛り上がったことでしょう。あ、ちなみになんでドヴォルザークかといえば「鉄道オタクだったから」で、指揮者さんのMCに拠れば《新世界》終楽章冒頭は鉄道が出発する様子だそうな。へええええ…

かくて大いに盛り上がった武雄市民、日が暮れていく文化会館西の武雄のシンボルたる特徴的な山を貫き、1時間の1本若しくは2本のシンカンセンは長崎へと向かうのであったとさ。
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ちなみに、本日朝、武雄温泉駅からシンカンセン新線で2駅17分の新大村駅から眺める大村湾に浮かぶ長崎空港から離陸した機内からは、山々を貫く新線と彼方の武雄の市街、そして文化会館もしっかり眺められましたとさ。
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おっと、鉄道おめでとうコンサートの帰りなんだから新鳥栖まで行って延々6時間新幹線に揺られ東京まで戻らにゃダメじゃん、などと突っ込むことなかれぇ。

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8月15日久留米で作品18の4演奏…1915年のことだけど [音楽業界]

久留米大学御井図書館1階展示室と、市内の六ツ門のデパート5階の市立図書館展示コーナーで、このような展示会が開催されてます。
https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1500soshiki/9125bunkazai/3010oshirase/2022-0927-1023-280.html

内容は上の公式URLをご覧になればお判りのように、第1次大戦青島攻略で日帝軍の捕虜になったドイツ兵が、大戦中から戦後の1920年まで熊本を経由して久留米の俘虜収容所に集められていた、その生活の記録を当時の資料と写真から覗う、というもの。

よくある地方史のネタだと思うでしょうし、確かに殆どの久留米市民の関心は「俘虜収容所のドイツ人さんが記録した大正初めの久留米の写真」なんでしょう。

でもこれ、日本の室内楽演奏史からすれば一種のエアポケットみたいになってる話なんですね。というのも、今回久留米市と久留米大学共同でやってる展示会の資料の出所が、青島で招集されて負け戦になり日本くんだりに連れてこられてしまったエドヴァルト・ヴィルという予備役陸軍少佐の遺したもの。この方が猛烈な整理魔というか、記録魔で、さらにはなんとなんと、アマチュアのピアニストで、久留米収容所で演奏会や演劇会を総計200回以上も主催した演奏家兼プロデューサーだった、ということ。で、その当日配布プログラムやらがごっそり現物として遺されている。その一部が展示されるというのですわ。

で、とにもかくにも温泉県盆地から朝一の特急乗って、カッパの駅で乗り換えて、久留米大学前なんてバス停みたいな駅で下車し、大学図書館に行って参りました。保健所免許証など、身分保障が出来るものを提示し、入れていただいた大学図書館の一隅、狭い練習室くらいの広さの空間に、5つのテーマに分けてヴィル少尉が撮影した写真やら、現物資料が展示されております。点数はそれほどありません。第2会場の市内図書館も、基本は同じ規模ですが、無論、展示品そのものは違います。なんせ当日配布物(要は、チラシですな)はごっそりあるんだからねぇ。

正直、展示のされ方は文面がちゃんと読めるようにはなっておらず、ガラスケースの中で重ねられたりしており、隔靴掻痒どころかちゃんと見えるようにしてくれないとガラス蹴り破るよ、と言いたくなるようなところもありますが、まあ、この資料を「日本に於ける室内楽演奏史のウルトラビックリ生資料」と思って書かれた全てを読んでやろうとするような輩は、この地球上に数人しかいないでしょうし、ましてや久留米市民にそんな方がいればとっくに研究は進んでいるでしょうから、敢えて大人の態度でグッとこらえましょう。いいですか、そこの貴方、ノコノコ出かけて文句言って司書さんを困らせないで下さいね。

見える資料から判ることは、このヴィル少尉、かなり本気の室内楽演奏会をやっていて、例えば1915年8月15日には
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まずはベートーヴェン作品18の4全曲、オーケストラと合唱で《ローエングリン》より、《熱情》緩徐楽章、オケ伴オーストリア軍歌、そして最後はヴァイオリン2つとチェロのための三重奏ロ長調、ってプログラム。おいおい、半端ないほんまもんの演奏会じゃあないかい。

プロデューサーのヴィル少尉、ピアノは自分が担当してます。って、ピアノどっから持ってきてるんじゃ、と思ってしまうが、ま、それは考えてもムダでしょうねぇ。コントラバスだってしっかりあるし。

無論、この時代、既に遙か帝都は上野で幸田女史などが室内楽を始めており、ベートーヴェンの作品18の4のプロによる演奏も1907年に成されているという。ですから、室内楽の演奏会がやられていた、ということに驚く必要はないにしても…いやはや、ここ、筑後川流れる軍都大牟田でありまする。遙か筑豊から九重へと連なる山並みが、なんとなくフランクフルト南からマンハイム辺りの風景を思わせるとは言え、独逸国ではありませぬ。それどころかヴィル氏、翌月には誰が集まるやら50銭という木戸銭を取ってベートーヴェン作品18の6とかの演奏会もやってるし。こんなんもあるし
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うううむ、青木繁が早逝し数年、石橋正二郎が戦時景気に便乗して本格的に足袋会社を始めた頃の久留米で、まるで今の九州北部でやってる室内楽と同じようなコンサートが行われていた。

なお、ドイツ人俘虜収容所といえば定番ネタの「第九」も、久留米でしっかりやってて、そっちは流石に郷土史家の皆さんの注目を集めているようであります。
https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1080kankou/2015bunkazai/3030shuuzoukan/files/rokukai.pdf
でも、室内楽のネタはまるでありませんねぇ。

てなわけで、日本の、はたまた九州の室内楽演奏史に関心のある両手ほどの数の方には必見。市内の第2会場は来月早々に終わってしまいますので、お急ぎあれ。

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訃報:セント・ローレンスQのジェフ逝去 [弦楽四重奏]

本日、知られざる日本の室内楽演奏史の資料が展示されるのを眺めに朝から久大本線で久留米大学図書館まで向かう車内で、トロントの友人から驚くべき訃報がもたらされました。セント・ローレンスQの創設来の第1ヴァイオリン、ジェフ・ナットールが急逝なさったとのこと。伝えてきて下さった方は、狼狽えているような素振りでした。公式ページをご覧あれ。
http://www.slsq.com/

なんせまだ56歳、弦楽器奏者というか、室内楽奏者としてまだまだこれから、というくらい。

セント・ローレンスQは、北米や世界的な評価、とりわけ祖国カナダではバンフ初の自国優勝団体ということもあり、圧倒的に特別の存在でありました。今になって思えば、今時のぶっ飛んだ系弦楽四重奏団の走りみたいなところもあって、そのぶっ飛びの一様を担っていたのが、こいつちょっとヤバい奴なんじゃないの、とすら感じさせられること屡々なジェフのパーフォーマンスでありました。日本では全くキャリアが不遇だった彼らが何故かカナダ大使館が直接招聘だか、それに近いことをやっていて、あの青山のカナダ大使館のオーディトリアムでマリー・シェーファーの太極拳クァルテットを演奏し、バリーらとキレキレの、というか、アホぎりぎりのパーフォーマンスを繰り広げたのが圧倒的な記憶になっております。正直、バリーがバンフの雇われ社長になるためにセカンドを辞め、あっとビックリのスコット・セント・ジョンが入ったくらいから、この団体を聴くチャンスは殆どなくなっていて、最近のジェフがどんなんだったか全然知りません。落ち着いた重厚なジェフ、なんて想像も出来ないけど…

今後のセント・ローレンスQがどうなるか、何のアナウンスもありません。ともかく、合掌、としか言えませんです。

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UNO弦楽四重奏団実質上の旗揚げ公演 [弦楽四重奏]

昨日、福岡の大繁華街天神のど真ん中(なのかな?)、オシャレだったり庶民的だったりアヤシかったりする飲食店無数に溢れかえり、そんな中に猛烈にレベルの高い古本屋やら町和菓子店がポツンポツンと生き残っている大名なる場所のビル地下、新帝都ならさしずめ20世紀末の渋谷ジャンジャンみたいな場所たる大名MKホールなるコンサートスペースで、80名近くのギュウ詰めの聴衆を前にUNO弦楽四重奏団の実質上の旗揚げ演奏会が行われました。
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最寄り地下鉄駅は赤坂、ってのも頭クラクラしそうだけど。
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https://news.goo.ne.jp/article/eventbank/region/eventbank-10453387.html
https://www.facebook.com/events/%E5%A4%A7%E5%90%8Dmk%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB/uno%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E5%9B%A3-vol2/1058822988144929/

メンバーは九州交響楽団にこの数年加わったばかりの若い連中に、北部九州を拠点にフリーで活動するチェロの宇野健太氏が加わるという顔ぶれ。ホントに「若い」、まだ全然コンクール受けに行くくらいの世代の団体です。共通項は、セカンド氏以外は(多分)皆がヴィーン留学経験があることなのかな。宇野氏は上野藝高から直接ヴィーンに行き、そのまま新帝都には戻らず九州拠点に活動、という興味深い経歴ですし。

本来ならば去る8月に旗揚げ公演を行う筈で
https://www.nishinippon.co.jp/kyushu_event/17011/
その日は佐世保の弦楽四重奏の最終回とぶつかっており、大いに悩んだ結果佐世保に向かう途中でコロナがらみで中止が発表される、というアンラッキー極まりないことになった団体。今回、仕切り直しで第2回演奏会(ヴァージョン2、と呼んでますね)からスタート、いずれ第1回演奏会はリベンジ公演を行うとのことであります。

さても、キューシュー島新米のやくぺん先生、30年も前からアマデウス・セミナーに参加なさってた福岡ハイドンQの活動は存じ上げているし、その流れで澤先生が主催するクァルテット・フォーラムが福岡をひとつの拠点のようにしていたのは知っているし、その前には岸邊百百男先生の福岡モーツァルト・アンサンブルが巖本真理Q亡き後のニッポンの室内楽空白時代を本土には知られずに埋めていたという事実があることもなんとなくは判ってるけど…実際のところ、福岡帝国中枢の趣味嗜好については、なーんにも知りません。

コロナ前から九響の中で日本フィルコンマス兼任の名手を中心にクァルテットを定期的にやっていこうという動きがあるのはなんとなく察してはおりましたけど、今回のUNOQはそういう世代とも一線を画した、ホントの若い方々の活動です。正に、福岡室内楽のニュー・ウェーヴ、なんですかね。

正直、聴衆の感じも首都圏のサルビアホールやらサントリー室内楽のお庭、はたまた京都はカフェ・モンタージュやらの空気とは随分と違う。なにより、働き盛りの世代が聴きに来ている。若い世代から高齢者まで、男女満遍なく客席にいる。どうやら、九響のファンという方々と、自分で室内楽も含め演奏するアマチュアの方々がかなりいたような。そもそも、アマとプロの垣根が低いのは洋楽導入時以降の福岡文化圏の特徴みたいだし。東京首都圏のアマチュア室内楽フェスティバルに出るような方々や、はたまたいくつかのプロ団体がやるアマチュア向けセミナーに参加するような方々って、意外にも室内楽の演奏会にあまり来ないんですよねぇ。

ま、それはそれ、また別の話。で、UNOQの実質起ち上げ演奏会、うううむ、果たして正しい発言なのか判らないんだけど、なによりも「ああ、ヴィーンで音楽聴いてきた人達だなぁ」という感があったです。「これが俺たちがやる音楽の基礎となるフレーズだぞっ、びしっ、がちっ」ってのを提示し、ひたすら説明してやろう…ってのじゃない。もっとふんわり、柳腰というのではないのだろうけど、するっと音楽が流れていく世界でありました。最近やくぺん先生が使いたがる、商売作文では絶対に編集者さんから意味が判りませんとアカを入れられる比喩を用いれば、「成田空港に到着するや漂う千葉の醤油ではなく、どっかノンビリした九州醤油みたいなベートーヴェン作品18の4」ってかな(うううむ、地域限定過ぎる)。

無論、忙しいオケ生活の中で時間を作って練習するわけで、団としての響きや基本的アンサンブル、音程など、することはまだまだある。団としての趣味や嗜好はハッキリしている(意外に第1ヴァイオリン優先、とか)ので、あとはどう精度を上げていくかですな。その意味では、このようなメンツの団体としてよくある年一回の演奏に向けて頑張る、ってのではなく、数ヶ月に1度はやりたいと仰ってる。「ベートーヴェンはやっていきたい」というガッツり王道なことを仰ってるのは、心強いところでありまする。

それにしても、ハイドンの零番とか、ボロディンの1番とか、いきなり内角ギリギリみたいなくせ球投げてくるなんて、どういう趣味なんじゃい。ハイドンはまるでミニマル音楽に聞こえたし、ボロディンの音色趣味のぶっ飛び具合をしっかり見せてくれたし。次は何をしでかしてくれるやら、興味津々でありまする。ま、その前にデビュー戦で予定されていたフランクのピアノ五重奏、よろしくお願いします。

ちなみに宇野氏はこんなアンサンブルをやり、来週には高校時代懐かしき新帝都は日暮里でも公演が。
https://teket.jp/4317/16098
当然、絶対に行きたいのですけど…なんとこの日は古典Qと松原克也らのQが共にベートーヴェン後期で勝負というとんでもない裏番組があり、ううううむ、コロナ明け早々、なんでこーなるのかなぁ。

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スプリンクラーは指定管理者制度の灯を消すか [指定管理者制度]

今や完全に「死カテゴリー」となっている「指定管理者制度」、久々の登場です。

このところ、業界内では大いに話題になっている、というか、大いなる戦慄が走っているこんな話題があります。皆様、もうご存じだと思いますけど。最近はローカル局のテレビニュースがまんま公式出切り撮られて配信されてるんですねぇ。凄い時代になったなぁ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e092f29cbc0c8b70accca9055e5ebec1d6014c6a

知る人ぞ知る日本でいちばんヤバい演目を並べる室内管、シンフォニエッタ静岡が裾野市の公共ホールで公演を行おうとしている本番直前に、何故かスプリンクラーが作動してホール舞台上に水がぶちまけられ、楽器から楽譜からみんなやられてしまった、という考えるだにオソロシー話でありまする。

で、シンフォニエッタ静岡の名物音楽監督、もうこの人がいないとやれん、って日本でも指折りのカリスマキャラたる芸術監督中原さんが、その後の対応を巡り激怒して記者会見を行った、というのが静岡朝日テレビさんのニュースの内容。で、こちらがシンフォニエッタ静岡さんの公式見解。
http://www1.odn.ne.jp/ssj/
これはもう、28日の三鷹公演、お時間のある方は是非とも行っていただきたいですねぇ。あたしゃ、この時間、大阪で交響曲《仏陀》に心震わせてる時間だわ、ゴメン。ラドミローは首都圏にゴマンといらっしゃる秘曲珍曲マニアさんには、絶対に外せない演目でしょ!

さてもさても、舞台の上で起きたことの被害総額を数えるのはその筋の専門家にお任せするとして、やっぱり気になるのは、「誰の責任か」ですね。もっといえば、「誰がシンフォニエッタ静岡さんに賠償するのか」ですな。というのは、このチラシをご覧になってお判りのように
https://www.susono-bunka.jp/src/2022/07/aac0777d6e66cd272e65b99ffc680a68.pdf
この公演、日本一尖った演目を誇るシンフォニエッタ静岡さんの自主公演とかではなく、裾野市と公文協が主催する公演にシンフォニエッタ静岡さんは雇われて出演する、というものです。要は、主催者は裾野市のホールそのもので、それどころか地元教育委員会やら文化庁さんのアートキャラバン事業まで着いちゃってる、もうこれ以上はない公共主催の公演でありまする。

つまり、公共事業に民間会社が雇われて作業をしようとしたら、作業の準備中に突然作業現場で誰がどう考えても雇用側に責任がある大事故が発生し、機材一切がお釈迦になってしまった、ということ。なんせ、航空会社が空港に飛行機おいといたら燃料引火大爆発があって虎の子のひこーきが燃えてしまったぁ、とか、コンピューターなりを持ち込んでセッティングをしてさあお仕事しましょとなったら部屋の天上から水ぶちまけられてコンピューターも持ち込んだ紙モノも全部ダメになった、とかいうこと。

もう、だれがどーかんがえても、ホールが悪い。

ここで問題なのは、「ホール」って誰かなんですな。で、今や悪名高く、消滅へのカウントダウンになっているとしか思えぬ大失敗制度「指定管理者」が出てくる。

さっさと結論を言えば、シンフォニエッタ静岡さんに億単位の賠償を払う直接の責任があるのは、「ホールを所有している裾野市」なのか「ホールを管理運営している指定管理会社のケイミックス」なのか、ということです。ぶっちゃけ、ここで両者が責任の押し付け合いをやっていて、もの凄く立場が弱い雇われ人、恐らくは失礼ながら日本でいちばん財政状態が悪いオーケストラのひとつシンフォニエッタ静岡さんを泣き寝入りさせてしまえ、零細民間オケのひとつなど潰れてもわしゃしらん、ということになってるのではないかいな、ってこと。

そこまで悪意でことが動いていないことを祈りますけど…この問題、実は根が深く、いちばん心配されるのは、結果としてケイミックスさんが全部責任があり保証をしろ、ということになったら、何が起きるか。

もうハッキリしてますね。恐らく、次の指定管理になったばかりのようなケイミックスさんですけど、こんなことで市から責任押しつけられるのだったら、とてもじゃないがこの市の指定管理は会社としてやれない、とんずらします、って。で、恐らく、別の指定管理者を探しても、まともな会社ならどこも手を挙げないでしょう。

つまり、今、日本各地でコソコソと、はたまた堂々と論じられてる「指定管理は公園とか駐車場とかなら安定した商売にもなるが、文化施設はとてもじゃないがやってられない」という現場の声がますます大きくなり、行き着くところ「文化施設の指定管理者が来てくれない、でも自治体は自分でやる程の人材もノウハウもない」なんてことになり、箱があっても運営が出来ない公共ホールが次々と…

そんな話題が静かに燃え広がる中に、第2弾ともいえる水爆弾が投下されてしまいましたぁ。なんてこった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/40dfdbbadb76b50e1b4fa6356b7bd0cc9ec2a3b2
こっちは会場が会場だし、かの問題の横浜音祭りのメインイベント公演のひとつを前にしていたわけで…ううううむ。

ニッポン各地のスプリンクラーが一斉に反乱を起こしたのかとも思えてしまうこの連発する騒動。導入時に大騒動となった文化施設の指定管理者問題は、いよいよ「商売にならない」という末期資本主義の冷徹な理屈で終焉に向かう…のか?スプリンクラーは指定管理者を根絶やしにする水を撒くのか?

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カーネギーホールがマスク義務撤廃! [パンデミックな日々]

このところ、新帝都では連日演奏会に通い、ここ温泉県盆地の田圃の中の仕事場に来ては纏めて山のような(というか、今や隠居の身、五月雨のような、という表現が正しかろー)作文仕事に専念するばかり。この季節は畑作業は端境期で(正にオクトーバーフェストやら収穫祭のハロウィンがやれる、農家さんには閑散期なのかな)、やくぺん先生んちの小さな畑も秋冬の馬鈴薯が芽を吹き出し、薩摩芋は生い茂り、大蒜は葱みたいにひょろひょろ伸び、アスパラは来る春に向けてしっかり地下で根を張っている(のであろー)のをボーッと眺め、おっとセイントタッカーではないかぁ、と黄色い背の高い奴を見つけたら強引に引っこ抜くくらいしか肉体労働はなし。遙か福岡帝国配下の伊都國からボランティア仕事にもならんような畑仕事に来て下さる我らがスーパー庭師様のお陰でありまする。

お嫁ちゃまも、庵前のすっかりヒヨらに位尽くされたパーシモンゲートを抜け、盆地の朝霧を掻き分け
IMG_5726.jpg
新帝都経由4年ぶりという遙か南の島国へと1週間のコンファランスに赴き、早速到着するやF-1サーキットの公道を見下ろすウィークリーアパートからバスで学校やらに通ってるようじゃ。

かくて、温泉県仕事場に居る間は誰とも話すことなく、淡々と作文作業に明け暮れる日々。当電子壁新聞も書くことすらなく、すっかり放置になってしまいまする。スイマセン。

とはいえ、神様が出雲からニッポン各地に戻るのと入れ替わり、というわけではないけど、やくぺん先生も南の島国経由で独逸国真ん中から北と仏蘭西国隅っこの白耳義国近くをウロウロするための準備をやっと始め、この2年半のコロナ生活ですっかり即ゴミ箱行きが常識になってしまった異国からやまのように押し寄せるニュースや広報さんからの案内を少しは真面目に眺めるようになる。と、今や定宿もなく訪れる予定も金もない遙か異国の土地のニュースながら、へえ、と思うものもありまする。んで、今朝入っていたニュース。こちら。ええい、まんまコピペ。

Customer Service Update
Masks No Longer Required Inside Carnegie Hall
Thank you for being part of our worldwide family of music lovers.
Since the start of the pandemic, our team has worked with leading medical and public health experts to assess and adjust our guidelines, working toward creating the safest environment possible for all. The health and safety of everyone coming to Carnegie Hall remains our top priority.
With vaccines, boosters, and antiviral treatments now widely available, we have been advised that it is no longer necessary to require audience members to wear masks. Effective October 24, masking at Carnegie Hall will be encouraged, but optional. Audience members who wish to continue wearing masks are welcome to do so.
We greatly appreciate the commitment audiences have shown as we navigate these circumstances together. If you need assistance, please email feedback@carnegiehall.org or call CarnegieCharge at 212-247-7800.
For the most up-to-date health and safety protocols, please visit carnegiehall.org/SafetyChecklist.
We look forward to seeing you soon at Carnegie Hall.

へえ、来る10月24日をもって、カーネギーホール内でのマスク着用は義務ではなくなる、とのことです。これがWebサイトの案内。
https://www.carnegiehall.org/Safety-Checklist?utm_source=wordfly&utm_medium=email&utm_campaign=cs-10-17-2022&utm_content=version_A&sourceCode=40877

マスクというものの扱いがこれほど文化によって異なると驚きと共に判明したコロナ禍でありまするがぁ、御上がどんなに言おうがエスカレーター片側空けとマスク偏愛だけは言うことを聞かない御上従順な筈のニッポン列島住民はともかく、世界はマスク無しに移行しつつあるようで、先月頭のミュンヘンでも、ホールのオーディトリアム内はマスクしろと壁に貼ってあっても、そーだなぁ、三分の1くらいしてるかどうか、でしたね。公共交通内部はマスクは法律で着用が義務づけられているというアナウンスが繰り返され、してないのは根性入った不良とアナウンスが判らぬ外国人くらいだったけどさ。

法律ではなく空気が支配するニッポン国、果たしてこれからどうなるやら。

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