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注意喚起:「横浜音祭り」に行かれる方へ [音楽業界]

緊急の注意喚起です。現在、横浜市内各地で開催中の「横浜音祭り」なるイベントに参加なり、どういう形だか知らんけど「サポート事業」とやらなりで関与している演奏会の冒頭では、この録音がホールに鳴り響きます。

何のアナウンスもなく、開演ベルみたいな形で響き渡る可能性が高いです。

これ、オーケストラコンサートやオペラやらバレエ公演なんぞならそれほど気にならない、ああそういうもんか、で済むかもしれませんが、小さな会場での室内楽なんぞでは猛烈に場違どころか、人によっては鑑賞前の気持ちをぶち壊す騒音にしか感じられないかも。これ、沼尻氏や神奈川フィルさんにどうのこうの言ってるんじゃなく、例えそれがフルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団ブラスアンサンブルの演奏であろうが、やっぱり迷惑は迷惑でんがなぁ!

主催者の方によれば、市の側から最初に流すように要請されたそうで、開演ベルみたいにするだけでもいろいろあったとのこと。ま、どんな経緯であれ横浜の区のホールを使ってるわけですから、知らんぷりして流さないというわけにもいかないでしょうからねぇ。

なんとかならないか、怒ってる市民がいるぞ、とさる筋を通して市側に伝えるつもりではおりますが、とにもかくにもご用心あれ。会場入口に「横浜音祭り」なるA4版の青い表紙の冊子が積まれていたらこれは要注意。なんかやられるぞ、という心構えで客席に着いて下さいな。敢えて諸悪の根源という罵声を飛ばすけど、これが問題のトリエンナーレイベント。どういう構造になってるか、調べようとすると頭が海胆になりそうですから、お気を付けて。
https://yokooto.jp/

てなわけで、明日から神無月、文化庁芸術祭も始まり、ニッポン国の芸術の秋、いよいよ本番なり…ううううむ。

[追記]

その後、いろいろ各方面のやりとりがあったようで、鶴見の弦楽四重奏シリーズとしては「ファンファーレは開演10分前くらいに流す。ファンファーレがその時間に流れる告知をし、気になる方はそれ以降に入場してくれるようお願いする」ということになったそうです。ま、いろいろ言ってみる意味はある、ということですな。

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木曜午前11時からの《ゴルドベルク変奏曲》 [演奏家]

神奈川は県の名称にもなっている東神奈川、ある世代には懐かしい(って、今でも米軍しっかり居るけど)瑞穂埠頭米軍基地ノースピアのゲートまで駅前の道路を真っ直ぐ海に向けて5分も歩けばたどり着く些か物騒にも思える碌でもない場所に、「横浜市内各区専門ホール設置プロジェクト」としか言いようがない市の文化政策で造られたかなっくホールというヴェニュがあります。隣の「21世紀10年代の弦楽四重奏の聖地」サルビアホールのロケーションとまるで同じ、JR東日本と京急がスピードを競い合うキョーフの路線に挟まれた狭い空間を住宅含む中層の総合ビル(ま、一昔前の言い方をすれば立派な雑居ビル)なんぞで埋めて、その一部分を公共文化施設にする、という奴ですな。
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両駅の二階空間部分からそのまま繋がっている、便利と言えば滅茶苦茶便利な場所です。

このホール、極端なことを言えば横浜市内に山のようにある「公立駅前ホール」なんですけど、これだけ市内に数があればいろんなことをやってやろうという指定管理者やら公共財団やらが出てくるわけで、中にはおっちょこちょいの跳ね上がりのプロデューサーなんぞもおり、やたらと頑張ってるところもある。←あ、これ、最高の褒め言葉ですからね。

かなっくホールもそういう方がいて、音楽だけではなく演劇とか舞踏とか落語とか文化レクチャーなんかまで含めていろんなことをやっていた。その成果が、このラインナップ。ご覧あれ。
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で、上段左隅が、本日の演奏会。こちら。
https://kanack-hall.info/event/2022%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e3%80%80%e3%81%8b%e3%81%aa%e3%81%a3%e3%81%8f%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%b7%e3%83%83%e3%82%af%e9%9f%b3%e6%a5%bd%e9%83%a8%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%81%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%83%a0/

300席のホールで、入場料はワンコイン500円也。正に公共ホールのやるべきお仕事ですね。数日前にほぼ完売、パツパツ。開場は10時半なんだけど、その前から当然ながらご隠居ばかりの聴衆はもう待っていて
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チケットに振られた番号で呼ばれた順番に自由席のオーディトリアムに入っていく。で、こんなん。
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この客席を前に、佐久間&生野の昴21Q半分と、小澤塾なんぞにもいらしたチェロの奥泉貴圭がコロナ前くらいから始めたという「常設」弦楽トリオが、シトコヴェツキ版《ゴルドベルク変奏曲》をまるっと朝から演奏するわけですわ。

どうやら流れのある企画らしく、ここに来ている横浜はかつての碌でもないベース裏のご隠居連がみんなバッハのマニアだとか、室内楽の滅茶苦茶コアな聴衆だというわけではない。その意味で、感覚的にはお隣の鶴見のホールとは全然違います。恐らく、明日、鶴見のタカーチュQにも行く聴衆は、あくしめ以外はひとりもいないんじゃないかしら。

中身ってば、ともかく12時には終えねばならぬ1時間という縛りがある中で、お喋りやらまで付いているわけで、演奏は抜萃というわけではないけど、30の変奏の中で繰り返しをやったのはポイントになりそうな数曲のみ。良くも悪くもトントンずんずんつるつる進む、とてもじゃないけどこれは寝てる暇も無いぞ、って昼前のお休み音楽でありました。まあ、この状況ではこのくらいのテンポ感(というのかなぁ…)で進んだ方が良いのかしら。

面白いのは、どう聴いても「弦楽三重奏」の音楽だったこと。鍵盤、それもチェンバロという楽器の様々なキャラクターは、特に再現に於いては気にしない。シトコヴェツキ版の楽譜はもう生まれる前からあり、モーツァルトのディヴェルティメントやらシューベルトやらフランセやらの定番弦楽三重奏楽譜と同様の、このジャンルの最も重要なデカい楽譜である、って視点からの再現でありました。うううむ、そういう時代なんだなぁ。

時代なんだなぁ、と感じることといえばもうひとつ、喋りの上手さですね。巧みに喋るというよりも、的確にポイントを掴んだ、ムダのない喋りが出来る。今時の若い演奏家にとって、特にこのようなある種のシチュエーションが前提の演奏会で仕事をきっちり得ていくためには、舞台から直接、それも的確に喋れるコミュ力は不可欠。フランスのアマデオ・モディリアーニQがなんであんなに人気があるのか、正直言えば不思議としか言いようがあいのだが、フランスの業界の人にきけば、奴らはイケメンで喋りが上手だから、という話。なるほどなぁ、と大いに納得したわけですけど、そんな流れはニッポンの業界でもハッキリと見えるようになって来ているなぁ。

次の段階に移行とするなら、やはり音の綺麗さだけど…弦楽トリオでバッハで音を綺麗に、となるともうひとつの高い壁が立ち塞がるわけで、頑張って欲しいものであります。

かなっくホール、来週土曜日はこの団体とヴィブラフォンの鬼才會田瑞樹のコラボがあるんですけど…ゴメン、あたしゃ、かなっくホールから見上げるみなとみらいの向こう、神奈川県民ホールの《浜辺のアインシュタイン》に2日ともいかにゃならんねん。残念だなぁ、ホント、どうしてこういうことがおきるのかなぁ。

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第25回北京音楽祭は来年に延期 [音楽業界]

ノンビリ平和な田圃の真ん中で一日一本〆切ノルマ、というまるで40代みたいな無茶な作文仕事をこなさねばならぬ時間を終え、新帝都は「コクソー」とやらで大騒ぎになってる中にわざわざ帰るアホ爺です。ホントは今晩からクロノスQだったのに…とはもう言いませんっ!

さても、どうなってるか判らぬといえばコロナ以降の中国大陸音楽情勢。まあ、正直言えば、その前からなんだか情報鎖国みたいな怪しげな感じが漂い、恐らくはアベ時代のニッポンを外から眺めていればこんなおかしな感じなのかなぁ、って雰囲気だった。なんせ、SNSでの情報のやりとりは何十万人動員してるか判らぬ電脳上情報監視組織みたいなものでセンサーされ、北京や上海の同業者とのやりとりも相手に迷惑がかかるんじゃないかと「共産党100周年記念で次々初演されたオーケストラ曲の酷いったらないこと…」なんて本音愚痴だってアブナイからこっちは感想の返事を差し控える、なんて状況。ウクライナ戦争以降はロシアも同じ様な感じになっているようだが、そっちはまあ守備範囲外だから大変そうですねぇ、で済ませられるとしても、ねぇ。

もとい。で、そんな中でも情報を送ってきてくれる事務局などはあるわけで、北京音楽祭から連絡が来ました。ホントはホームページを貼り付けてオシマイにしたいところですが、何故か英語版は作業中という画面しか出ないので、こちらを。
https://asiasociety.org/new-york/events/exchange-across-borders-beijing-music-festival-25
ニューヨークのアジア・ソサエティからの情報。北京でチャイナフィルが主催する北京音楽祭が今年で25回目を迎え、ニューヨークで現地時間明日28日夕方から、オンラインでのシンポジウムが開催されます。こちら。

On Wednesday, join us for for a performance and panel discussion celebrating BMF's 25th anniversary - hosted by Asia Society New York.
Music critic Ken Smith discusses the impact of the festival’s quarter-century of continuous international artistic exchange with Jamie Bernstein, Du Yun and Zhou Long, all of whom have graced the festival’s stage multiple times. Shuang Zou, current Artistic Director of BMF, will join the discussion online, and BMF 2019 Artist of the Year Zhou Tian will introduce his String Quartet No. 2 and Rhyme for solo cello, performed live by the Jasper String Quartet.
Tune in Sep. 28 at 6:30 p.m. for free live video webcast #AsiaSocietyLive!

日本時間では29日朝の7時半から、ということですな。もちろん、マンハッタンにいらっしゃる方は、ライヴで行ってみてください。場所はフリック・コレクションの裏あたりのパーク・アヴェニュ沿い。ほれ。しかしまぁ、Googleマップで教えてくれる周囲のホテルは1泊10万円超えなんて滅茶苦茶な値段ですな。今や貧乏なニッポン国民には泊まれない場所でんがな。
https://asevents.eventive.org/schedule/631798b2836fea0030d87ebc

なんのかんの面倒な話はともかく、何故かジャスパーQが登場してゾー・ティアンの弦楽四重奏曲第2番が演奏されるとのこと。ま、それを聴くだけでもよろしいんじゃないでしょうかね。ちなみに、ジャスパーQはこちら。意外にも、ずっとメンバー替わらないなぁ。みんなオッサンおばちゃんになった。
http://www.jasperquartet.com/

んで、今年の北京音楽祭、どういうラインナップなのかしら、と誰でもが思うでしょうがぁ、こんなアナウンスがありました。
http://en.chinaculture.org/a/202209/27/WS63324198a310fd2b29e79d9b.html?fbclid=IwAR0qZ3r0pjhLaVVV7TsJyq-X-GMYkZXYT9IjFj-zAQIsTAMqY6lEQ8s4P-A
必要な部分だけを抜萃すると…

However, the 25th Beijing Music Festival has been postponed this year, according to a statement released by the Beijing Music Festival Organizing Committee.

"Due to the impact of the COVID-19 pandemic, the 25th BMF will be postponed after careful consideration," the statement says. "Along the way, the BMF has received support and patronage from all sectors of society and audiences, and has jointly created many beautiful memories. We would like to extend our respect and sincere thanks to all of you and will treasure this support and expectation to the moment of meeting again."

According to the committee, the programs, which were originally planned for this year's festival, will be rearranged and staged in 2023. With more new programs being mapped out, the festival will contain a large number of events in 2023.

だそうです。うううむ、マンハッタンでのシンポジウムはどうなるとは言ってないので、開催されるのでしょう。

来年の秋は北京に行けるのかしら?そもそも、もうとっくに完成してる筈のチャイナフィルのコンサートホール、どうなってるのやら?博多から2時間かからない北京は、なんだかボーッとした壁の向こう。


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クロノスが来ないならクセナキス! [現代音楽]

夏の名古屋のケージ《ユーロペラ3&4》に始まり、9月末から10月頭にかけては久しぶりの来日となるクロノスQのライヒやらクラムやら三昧、10月の第2週末は日本では天王洲アイル開館以来の日本での上演となる横浜でのグラス《浜辺のアインシュタイン》新演出上演、そして月末には大阪で同作品の日本で考えられる最高メンバーを揃えた音楽面に割り切った上演と続き、やくぺん先生はその足で再び欧州に渡って来年2月に池袋で上演されることはなくなってしまったシュトックハウゼン《光の金曜日》上演で生まれなかった子供の歳を数える、って「ゲンダイオンガク」の古典目白押しの筈だったコロナ明け鎖国も終わった2022年秋だったわけでありますがぁ…

関心のある皆様はもうとっくにご存じのように、数日前には「日本国入国に問題が起き…」という理由で昨日から始まる予定だった京都での公演などがキャンセルになっていた。何があったか知らないが、月末の首都圏での公演はやれるんだろうねぇ、とノンビリしていたらぁ、昨日には「結局、全部中止になります」という悲痛な案内がありました。

その辺のコンサートスペースのオッサンおばちゃんが個人で招聘しているならこんな笑い話みたいなこともあるのかもしれないけど、きちんとした大手音楽事務所のお仕事で、こんな様々な仕掛けが準備されていた日本ツアーがギリギリになって法手続きで入国出来ずにキャンセルなんて、前代未聞じゃないかしら。何が起きたか、いろんな噂は渦巻いていますが、温泉県盆地の田舎者爺にはわかりゃしない。ホントの事は永遠に判らないのかも。

ま、そんなこんなで落ち込んでいらっしゃる皆様、じゃあ、これにいきましょう。クロノスがあるんでこっちは涙を呑んで諦めた、という方も多いんじゃないかしら。こちら。
https://www.kunitachi.ac.jp/event/concert/college/20221001_01.html
内容は、こっちかな。
20221001.pdf
今年は記念年ということであれやこれや上演されているクセナキスですけど、この第1部で演奏される電子音作品は、殆ど耳に出来ないものです。この日を逃すともう聴けない、ってもんですから。

秋のゲンダイオンガク古典シリーズとすれば、誠に相応しいこの作品、期待して秋を迎えましょうぞ。

[追記10月1日]

この日、何故か我が狭い業界でライターが人手不足で、夕方5時開演の紀尾井ホールでの演奏会のレポーターが調達できず、どうしてやってくれ、と某編集部から泣きそうな連絡があり、まさか「娯楽でクセナキスに行くのでダメ」とは言えず、前半の電子音楽《Lの物語》だけを拝聴し、慌てて玉川上水からモノレール乗って立川に急ぎ、特快で四ッ谷まで走ってホールに駆け込む、というオソロシーことになってしまいました。いやはや。
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んで、後半の殆どライヴで聴けないアンサンブル作品群は涙を呑んだのですけど、ともかくこれまた余程の条件が揃わないとライヴで聴けないし、ライヴで聴かないと全然判らん電子音の大作だけにふれたんですがぁ…

これ、結論から言えば、「簡易版《ペルセフォネ》」でした。無論、音楽の中身は遙かに判りやすく、冒頭の秋の夜の田圃で虫が鳴いてるような冒頭から都会の大喧噪に、なりまた田圃の夜に戻る、みたいなストーリーもはっきりしてるノイズアンサンブルでした。こういうもんが文献だけでなく耳に出来ただけで、ホントに有り難いです。電子音の古典って、聴けるときに聴いておかないと永遠に文献だけの幻の作品になりますから、無理をしてでも機会は捉えておかないとね。

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豊後竹田のアンサンブル一周年 [演奏家]

昨日、《荒城の月》の舞台として知られる豊後竹田で1年前に旗揚げした室内アンサンブル「TAKETA室内オーケストラ九州」が、活動開始1年を記念する第3回定期を開催しました。
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https://teket.jp/3162/14578

この団体、竹田市が豊後竹田駅から阿蘇方向に向かう豊肥本線沿いに造った新たな文化施設「竹田市総合文化ホールグランツたけた」を拠点に活動する一般社団法人で、市が直接運営していたり、ホールがレジデントとしての予算で主催公演を行っているわけではありません。あくまでも、竹田市を拠点とする民間団体です。九州でこの規模の団体というと、長崎県は大村の長崎OMURA室内合奏団が頭に浮かぶでしょうが、あちらは認定NPOになっていてメンバー表にも弦管合わせて35名程の団員が挙がり、知る人ぞ知る村嶋寿深子さん芸術監督としてドカンと重みを与えてる、ま、普通の意味での「地方拠点の室内管」ですな。
https://omurace.or.jp/

それに対し、竹田の新団体は規模も公式ホームページでは11名、要は「室内アンサンブル」ですね。オーケストラ、という表現は、ま、一種の比喩なんでしょう。ご覧のように大分や福岡出身者を集め、中にはヴィオラ首席生野氏など、東京の室内楽業界では知れた名前もありまする。なんのことない、昴21Qのヴィオラさんですわ。

竹田という場所、滝廉太郎が住んだところで有名とは言え、空港を抱え今や新幹線停車駅まである人口10万弱の大村と比べても人口2万ちょっとと圧倒的に小さい、なんと我が田舎町由布院町の倍程度という場所。大分県とはいえ大分市からは車でも熊本に抜ける横断道で1時間弱、豊肥本線に至っては久大本線真っ青の阿蘇観光路線でしかない今日この頃、隣町とはいえ由布市側からも宮崎の延岡側からも直接のアプローチはなく、ホントに山の中のトンネルだらけの古都でありまする。普通に考えれば小編成アンサンブルを支えるバックがあるとは思えない。吹奏楽やら合唱やらが滅茶苦茶盛ん、とかいう場所は日本各地どこにでもあり、山陰某所では吹奏楽に特化した「アーティストに住んで貰う町作り」なんてのもやっていて一部から動向を注目されているけど、そういう感じで何か今時の「アーティスト地方環流」みたいな戦略が全面的に打ち出されたプロジェクトというわけでもなさそう。ま、この辺りを議論し始めれば長くなるわけで、それはそれ。とにもかくにも1年間、いろんな風な活動をしてみました、というご報告の演奏会でもあったわけです。

やくぺん先生は直線距離にすれば50キロないくらいの山1つ越えた北の盆地から来るわけだが、なんせいちど大分市に出ないと公共交通はないので、昼間の演奏会じゃないと行けない。先頃あった古澤巌氏がアンプリファイされてない生のヴァイオリンで弾きまくる演奏会は夜の開演だったんで、戻ってこられる終電が8時半くらいで行きたくても行けないのであった。今回はマチネだったんで、行きは台風で走るのか心配な豊肥本線、帰りは熊本空港経由でやってくる大分行きバスで往来した次第。

さてもさても、そんなこんなで開催された演奏会でありますが、今回は「オケのメンバーだけでやる」という1年目にして初の原点回帰的なステージとなり、団の地力が問われる真剣勝負となったわけであります。日頃の営業広報努力の結果か、それなりに地元の中学生なりも会場に姿を見せ、完全車社会らしく開演前の広い駐車場もそれなりに埋まってら。
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冒頭はSQ+コントラバス編曲の《荒城の月》でご挨拶し、まずはブルッフの秘曲、ヴィオラとクラリネットの為の二重協奏曲が披露されます。うううむ、この規模のホールとはいえ、ロマン派ベッタリの響きを指揮者無し弦楽器パートひとりで担当するとなると、やはりもっとボリュームが欲しくなるのは否めないなぁ。ま、そんなの判ってやってるのだろうし、作品としてはこれ余程バランス頑張らないとヴィオラ聴こえないんじゃないかい、って楽譜っぽいので、このやり方は意味はあるのだろうとは思わせてくれました。こんな曲ですわ。ほれ、今は簡単に楽譜まで見られるんだよなぁ。
https://www.youtube.com/watch?v=Qepj2m6F01Q

この演奏会、やはり白眉は団員のみで演奏されたラインベルガーのノネットでした。なんでこの曲、と思うでしょうが、理由はあるらしい。無論、団員だけで演奏出来るメインピースになる4楽章の大曲であること。それから、どうやらこの団体が顕彰する滝廉太郎がラインベルガーのピアノ曲を日本で最初に紹介していて、その関連の演奏会をやったときに団長のコントラバスさんがラインベルガーに興味を持ち調べたらこんな格好の曲があった、ということらしいです。

自分のメンバーだけでやれるし、滝廉太郎を顕彰するという団の基本姿勢にも合致してる曲で、余り「クラシック音楽」の演奏会との付き合いがない(首都圏のマニア聴衆のようなすれっからしではない、ということ)方々を前にロマン派の知られざる名曲を自分らのレパートリーにしていく方針なら、決して間違ってはいない。そんな意欲をしっかり感じさせてくれる、大いにお腹がいっぱいになる再現でありましたとさ。お疲れ様。
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竹田という市の規模を考えれば、維持出来るギリギリの規模のプロ団体でしょう。ひとつの県とはいえ山を越えればまるで別の文化圏で交流は殆どなし、孤島の集まりみたいなキューシューという不思議な島で、これからどのように活動していくか。ま、山の向こうからノンビリ眺めさせていただきましょか。

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お彼岸に「ゆふいんの森」号は走りません [ゆふいんだより]

先週末に温泉県盆地の西側をかすめ、福岡帝国中枢から哀しみに沈む(んだろうなぁ?)山口県へと抜けて行った台風14号、幸いにもやくぺん先生の田舎オフィスは日曜夜に大雨で倉庫床上浸水の危機を迎えたものの、これまでも何度も無茶無理を乗り越えてきたふーふの力でなんとか最悪の状態は回避。台風一過の爽やかな空ではないものの、いきなり秋がやってきた盆地でありまする。

んで、さあこれで秋の観光シーズンに向けて温泉県盆地の観光地側も大賑わいじゃろ、と思ったら、なんということでしょー、やくぺん先生のオフィス横をかすめて連日「ゆふいんの森」号やら或る列車やら、観光立国キューシュー産業を支える明観光列車が博多と別府湯布院の間を通っている線路が、日曜から月曜の大雨で一部で線路の基盤が流されたんだか緩んだんだか、ともかく由布院駅と隣の野矢駅の間でなにやらあって、あっさり運休とのこと。これ、最新にアップデートされてる筈の現状です。
https://www.jrkyushu.co.jp/common/inc/emergency/__icsFiles/afieldfile/2022/09/22/220922_typhoon14_higai.pdf

この久大本線という九州横断線、別府から由布院盆地まで500メートルほどをダラダラ登ってきたあと、一気に分水嶺を越えて九重の山の裾野を抜け、天領日田へと向かうわけなんですが、実質上大分から由布院駅までがひとつの文化圏になっている。で、やくぺん先生のところはその隅っこも隅っこ。あとは鹿さんを車窓から眺めることもあるような深い森と谷をトンネルやら谷筋やらで越えて、久大線全区間で最も標高が高い分水嶺向こうの野矢駅に至る。各駅停車を利用するのは沿線の通学高校生くらい、免許が取れれば移動はみんな自家用車、という状況なんですな。

この区間、由布院駅から野矢駅までGoogleマップさんで「徒歩で行きます」というと、あっさりと「8時間かかります」と仰る。鉄道は道ではないので歩けないから、旧道を通りぐるりと南を迂回し、分水嶺を踏破し、反対の北側に抜け、またぐるりとまわらないと、駅と駅を繋げないのですわ。

あああ、これは一体どこの山奥でやらかしちゃったんだろー、お彼岸休みには通ってくれないと困るなぁ、なーんて思ってたら、今朝から鉄道一切通らず静かな筈のやくぺん先生農園の向こうで、なにやらガタガタやっておる。お、線路状況を調べに来たな、と思ってテラスから除いたら、あれええええ、大変なことになってるぞ。

どうやら、大雨で線路下の地盤が緩んだというのは、やくぺん先生んちの馬鈴薯やら西瓜やらが生産される小さな畑の直ぐ裏みたいじゃわ!

線路を走る特殊仕様になったトラックが2台、何やら積んでは踏切まで行きを繰り返してます。
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しばらく眺めているに、「我らが生活のライフラインたる久大線を一瞬でも早く復旧させよう」って切羽詰まった感はなく、ま、10月まで動きませんっていっちゃったんだから、ノンビリいきましょーかぁ、って空気が流れてるなぁ。

以上、事実関係だけ再び記して起きますと、やくぺん先生の福岡方面に向けての基本的な足たる久大本線、10月上旬まで普通です。博多に出るには1日7本だかの亀の井バスのみになります。無論、別府への路線バス、大分への久大線下りは走っております。秋の良き空の下、やくぺん先生を福岡方面から訪ねてやろうって方は、ゆふいんの森号はやってませんので、悪しからず。

JR九州、数日後に迫った長崎本線の新幹線規格での新バイパス線開通に向けて、頭の中は「新幹線かもめ」しかない状態。いくら本業は観光業と不動産業、旅客輸送は赤字の副業とは言え、一応は鉄道会社という名称で株売ってるだから、米の飯みたいな仕事はきっちりやっていただきたいなぁ。

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盆地に台風接近 [ゆふいんだより]

明日〆切の原稿がまだアウトライン程度しか出来ておらず、相当に焦っているところに、先程から盛んに防災無線が高齢者避難勧告を繰り返し叫ぶ敬老の日連休真っ只中。皆様はいかがお過ごしでありましょうや。

温泉県盆地は朝から怪しげな空模様で、昼前から雨が降り始め、午後には大雨。風も強く、パーシモンゲートの柿の実が、大風に煽られてボトボトと落ちてます。午前中はムクの大群が柿の木にたかって必死に喰らっていたんですけど、流石に午後になると飯よりも当面の逃げ場の確保ということか、まるで姿を消しました。

普段はセットしていない市内防災無線を朝からセットしていたら、午後に突然騒ぎ出しました。
この仕事場オフィスは、盆地の一番低いところを流れる大分川とそこに流れ込む支流の宮川からダラダラと登った辺りなので、幸いにも洪水ハザードマップからは離れていて、その後に警戒レベル5まで上がったものの、ぶっちゃけ避難所の方が川に近くて危険。日出生台演習場の方から大分道(当然、ストップです)を跨いで土石流が発生した場合は、ハザードマップに拠れば被害地域のいちばん南の隅っこ辺りなんだけど、ま、我が軍の由布院駐屯地で働く兵隊さんのごつい官舎と久大本線(これまた当然、朝から全面運休)線路の盛り土があるので、なんとかせき止めてくれるでしょ。ぐぁんばれ、ニッポン陸軍っ!災害派遣は君たちの本来業務じゃっ!

伊勢湾台風クラスの巨大台風がキューシュー島直撃という予報が流れ、一昨日くらいから周囲の田圃は慌てて収穫が始まってた。
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先程、とうとうカエル大明神が並ぶ宮川橋辺りが氾濫とのこと。うううむ、周囲の田圃やら辻馬車の馬さんの塒はどうなっていることやら。

やくぺん先生仕事場おうちも、母屋と畑の間の掘っ立て小屋物置と線路裏の畑仕事用水場の間に雨樋から溢れた雨水が溢れ、このままでは物置が床上浸水する可能性があるため、この雨が降り続く間は数時間おきに水をかき出しにいかねばなりません。
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ですから、川の近くの避難所にはいけません。雨樋、修理しないとなぁ。

てなわけで、18日午後7時過ぎの時点では、やくぺん先生とお嫁ちゃまは健在です。心配なのは駅を挟んで反対の小林先生のお宅の方で、以前、土石流被害があって、「近くにお住まいの小林さん(80)」ってテロップでローカルニュースに出ちゃったりしたこともあるんだよねぇ。その後、水路が補修されたとはいえ、地形が変わるものではないのだから…

台風一過、温泉県盆地にはスッキリと秋がやってくるのやら。台風ニュースの合間に割り込む台湾の連続地震も、ここキューシュー島では他人事ではないし。それよりも、明日〆切の原稿、ちゃんとやれるんか、こんな中途半端な状況でぇ。停電やらネット回線が切れたらオシマイだぞぉ。

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ウィグモアホールから女王追悼レクイエム無料ライヴ [演奏家]

月曜午後に無事に帰国以降、もう滅茶苦茶な日程。佃大川端で急ぎの所要を済ませて一昨日に温泉県盆地の仕事場にやっと戻り、山積みの作文作業と思ったら、流石にこの歳での無茶な移動に体調を崩し、昨日はなにも出来ず。今日もやっと這いずるように月末まで7本ある原稿のひとつを入れ、今、やっと直しにOKが出たところ。防災無線は付けっぱなし、いつ近くの中学に避難しろという命令が出るかも判らぬ中、どーしろというの。

そんな中、ヴィグモアホールから緊急のメール連絡が来ました。グリニッジ標準時の本日午後8時、日本時間の明日午前4時という些か困った時間から、逝ける女王追悼でフォーレ《レクイエム》が無料でストリーミングされます。
https://wigmore-hall.org.uk/watch-listen/live-stream?utm_source=wordfly&utm_medium=email&utm_campaign=MSW-Sep22-SeanShibepostcard&utm_content=version_A&emailsource=13302

演目をまんまコピペすると以下。《レクイエム》は最後ですね。台風情報で寝ずの番の方は、是非どうぞ。まだネットが繋がれば、ですけどね。

Théodore Dubois (1837-1924)
Benedicat vobis

Camille Saint-Saëns (1835-1921)
Tantum ergo Op. 5
O salutaris in A flat
Offertoire pour la Toussaint

Charles Gounod (1818-1893)
Elévation in B minor

Léo Delibes (1836-1891)
Ave maris stella

Théodore Dubois
Ave Maria
Méditation in D

Alexandre Guilmant (1837-1911)
O salutaris Op. 37

Gabriel Fauré (1845-1924)
Requiem Op. 48
(1893 version, adapted for solo baritone, mixed choir and chamber orchestra)

日本の報道は知らんけど、ババリア国ではそれほど目立った追悼騒ぎにはなってませんでしたね。これくらい。空港で売ってたシュピーゲルの表紙。
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英独の二重国籍で、某オペラのコンサートマスターを努め、なんとヴェールズQが3位になったときのミュンヘンARDで審査員だったという某ヴァイオリニスト氏とかなり長く話す機会があったんですけど、どうも英EU離脱前にはBBC響のコンマスなどもやってた方ながら、あんまり熱心に逝ける女王については喋ることもありませんでした。そんなもん、なのかな。

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ヘンシェルQ元気です [弦楽四重奏]

なんとか何事もなくアブダビ経由で戻り、昨晩のエクのショスタコ・チクルスでのプレトーク司会というお仕事も終え、明日からは温泉県盆地オフィスに戻って作文三昧。恐らくはまた、当電子壁新聞は実質放置状態になるでありましょうから、いつアップされるか判りゃしないお話。

大阪国際室内楽コンクール第1部門第2回の優勝団体で、日本でも大手事務所に頼らぬ個人繋がりでの来日公演を続けているミュンヘン拠点(最近は半分コペンハーゲン拠点なんだけど)のヘンシェルQ、当然ながらコロナ禍でこの3年は何度か予定されていた来日公演も、モニカ様の大阪国際コンクール審査員としての来日も、全てなくなっておりました。関係者の皆様におかれましては、元気にしているのかとお思いだったかもしれませんですが、だいじょーぶ、元気です。ほれ。
ミュンヘンの隣町、アウグスブルクの工場跡地を文化施設にしたガスヴェルクというまんまな名前の場所で、朝から晩まで施設あちこちでいろんな音楽やアート展示をする、というイベントが去る日曜日にあり、その練習の真っ最中。ま、どんな音かを知りたい懐かしがって下さる皆様のためにアップしましたので、あまりおおっぴらに流さないよーに。

いろいろ話をし出せばキリがないんですけど、お気づきの方はお気づきでしょう。そー、第2ヴァイオリンに、サントリー室内楽のお庭第2回でベートーヴェン・チクルスをやったときのメンバー、ダニエル・ベル氏が復帰しております。これ、テンポラリーではなく、フィックスです。

ベル氏は、そもそもは今は無きペーターセンQの第2ヴァイオリン、今や伝説となったアルテミスQ再編時の玉突き解散騒動でペーターセンQが哀れ解散、その後はベルリンフィルの正規団員になっていたものの、やはり弦楽四重奏をやりたいということで脱退。エッセンのオペラオケのコンマスやどこぞBBC響のコンマス、それにヘンシェルQを兼任する生活で弦楽四重奏に復帰。サントリーの初夏祭りのベートーヴェンなどにも参加していたのですけど、流石にこの生活はきついということで、残念ながら引退しておりました。

今回の復帰は、コロナと英国のEU脱離の結果。要は、ベル氏がエッセンの仕事が中心となったため、弦楽四重奏に復帰する時間も出来たということであります。ううううむ、欧州情勢、ホントにひとりひとりの生き方に影響を与えてますねぇ。

ちなみにコペンハーゲン在住のチェロのマティアスですが、コロナ時代に首席チェロが来られなくなったコペンハーゲン・フィルの首席を頼まれ、通常ではあり得ない50代を過ぎての正式な団員になったとのこと。上岡氏のオケで…シェフとはいろいろあった、と爆笑してました。で、結果として、今度はセカンドじゃなくてチェロの日程がなかなか大変、ということになっているヘンシェルQでありましたとさ。

現時点では、再来年の来日が計画されているとのこと。無事に来て下さることを期待しましょう。

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速報:Qインテグラ2位&聴衆賞! [弦楽四重奏]

ミュンヘンARD国際コンクール弦楽四重奏部門の結果が先程出ました。

第1位&新作賞:バービカンQ
第2位&聴衆賞:Qインテグラ
第3位:カオスQ

以上です。ぶっちゃけ、順当な結果でしょう。やくぺん先生としては、「1位無しでインテグラとバービカンが2位、という結論になるかな」と思いながら待ってましたけど、やはりバービカンとカオスは普段からその地力を良く知っている審査員の先生が沢山おり、それに対しインテグラを知ってるのは実質ひとりしかいないというアウェイ戦でのこの結果は、もうよくやったとしか言いようがないです。いぇぃっ!
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なお、ここだけの、表に書けない話ですが、某審査員から漏らされたところに拠れば、1位と2位は僅差だったそうな。正直、本日の出来だけから言えば、だれがどう聴いても1,2位は逆でした。ただ、やはり極めて意欲的なインテグラの選曲は、ポジティヴに評価する審査員とそうでない人が居たようで、例えば5番とかをバッチリやってれば…まあ、極めて栄誉ある聴衆賞、それも地元連中と張り合っての聴衆賞の価値は大きいです。

さあ、これでインテグラは胸を張ってカリフォルニアはコルバーン音楽院で2年間の修行です。アルテミスも、アポロ・ムサゲーテも、ここでの優勝後数年間、表に出ずにしっかりケルンなりで学んだわけで、インテグラはしっかりとマーティンとクライヴ、エベーネはまだ来てるのかな、ガッツリ仕込まれて貰いたいものです。ミュンヘン2位のパスポートがあれば、ヨーロッパはどこでも門が開くしね。

てなわけで、思えば38ヶ月ぶりの隠居爺やくぺん先生のコンクール見物、「やくぺん先生が居ると日本の団体は絶対に勝てない」というジンクスを覆しは出来なかったが、大いに納得の行く、良い結果だっという結論で、これにてオシマイ。

インテグラの皆さん、共同通信のインタビューに「勝てなくて悔しかった」と申しております。ううむ、頼もしい奴らだこと。さあ、日本は「来日公演」で戻ってくる世界のクァルテットを目指してくれっ!

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