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ハノイはユリシーズQ順当に優勝 [弦楽四重奏]

ことによると極東湾岸の新帝都より過ごしやすいんじゃないか、って遙かインドシナ半島の根っこはハノイで開催されていたヴェトナム初の国際室内楽コンクール、審査も順調に進み、昨晩、結果が出ました。こちら。
https://vncmf.org/en/competition/result.html

地元最上位の団体の映像、こちらです。
https://www.facebook.com/watch/?v=1227939874075391

念のため、室内楽音結果部分を貼り付けますと、以下。

★グランプリ
Comme Toi Piano Duo (Korea)
Ulysses Quartet & Trung (Canada, Poland, USA, Việt Nam)

★第2位
Amici Quartet (Việt Nam)

★第3位
L' Espoir Trio (Việt Nam)

★ファイナリスト・ディプロマ
Agosto Piano Quintet (Việt Nam)

ま、ある意味、ユリシーズは特別参加みたいなものでしょうから、順当な結果なんでしょうが、驚異深いのは第2位に地元団体が入っていることですね。どういうメンツで、どういう団体なのか、情報が拾えたらご紹介したいと思います。どうもヴィデオを眺める限り、第1ヴァイオリンに見たような顔が入ってるようなんだけど。ま、団体の名前については、かの元東京Qチェロ奏者が加わる弦楽四重奏団が存在してましたよぉ、と教えて上げたいけど…ジャンルが違し、こればかりはなぁ。

てなわけで、次はピアノの入らない形態も含めた室内楽コンクール、ですかね。なんであれ、目標があるのは良いことです。ぐぁんばれ、ハノイの若い演奏家諸氏!

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ホンマモンの古楽器を真夏に持ち歩く人々 [演奏家]

なんとまぁ、古い暦だと本日から秋らしい今日この頃、灼熱の日本列島にお暮らしの皆々様におかれましてはいかにお過ごしでありましょうか。あたしゃ、もうダメですっ。

なんせ本日は昼前から東京湾岸、向こうにまだ使ってないのに売り出しが始まったという御上公認元オリンピック村なる中古住宅が建ち並ぶ晴海まで行き、1時間ちょっとの演奏会を拝聴。その後は地下鉄京急バス乗り継いでヨコハマ市郊外某所まで、某演奏家のアウトリーチ取材で出かけ、今、葛飾オフィスまでのながあああい京急の旅を終えて戻って来た次第。どこが秋なんじゃい、という勢いで生い茂る巨大柿の木、どうもこのところボトボト落ちるダメな実の数が減ってきて、いよいよ本格的に実り出すかいな、ってところに微かな秋を感じる川向こう新開地なのであった。

なぁんて季節の挨拶はそこそこ、暑さですっかり働く気が無い前頭葉を必死に動けと命じて記す本日の御題は、昼間に拝聴させていただきましたデン・ハーグ五重奏団についてでありまする。こちら。
http://denhaagpianoquintet.webstarts.com/
って、あれ、この写真は今日の昼間に眺めたような顔ぶれ5名だけど、下のメンバー名は7つあるぞぉ。なんなん…ってか、妙に納得したりして。

もとい、この団体、本日昼間に晴海トリトンで演奏したのはこういうもんでした。
https://www.triton-arts.net/ja/concert/2019/08/08/2888/
要は、《鱒》タイプの常設、ってか、固定メンバーの所謂「オリジナル楽器」五重奏団。本日舞台の上からの情報によれば、この編成の作品は3ダースくらいは存在しているとのこと。ま、名曲となるとシューベルトと、知る人ぞ知るフンメルくらいなんでしょうけど、それだけあれば年間に4つくらいのプログラムなら作れるのかなぁ。

演奏そのものは、やはりどうしても関心は「音色とバランス」にばかり行ってしまうのは仕方ないでありましょう。善し悪しの問題ではなく、「ああ、鍵盤ってこんなに聴こえないのか」ってのがホンネの感想。特にメイン演目となったメンデルスゾーンの六重奏曲では、まるで弦楽器群がオーケストラのようにフォルテピアノの前に立ち塞がる、とすら感じられた程でありました。

きけば、この団体が用いている鍵盤楽器はレプリカではなくオリジナルだそうな。弦楽器群はどうなのか訊かなかったけど、ともかく2世紀以上昔の木製工芸品ですから、中に張られた弦も周囲に合わせて強くするなんてオソロシーことは不可能でありましょう。このフォルテピアノにどうやって弦楽器のバランスを作っていくか、ということになるんでしょうねぇ。

こういう音楽って、録音になってしまうとどんなに立派なものであれスピーカーなりヘッドフォンから耳にするバランスは調整されてしまうわけで、ホントのところは判らない。その意味で、極めて貴重な機会でありました。この晴海の会場が演奏会としては限界の大きさだなぁ、と思わせて下さいましたし。

終演後、楽屋裏を襲って、もう他では演奏会ないのですかと尋ねたら、残念ながら今回の日本ツアーは本日でオシマイだそうな。この数日、このアホみたいな暑さの中、楽器を持って歩いていたという。言われてみればそりゃそうなんだろうが、この暑さと湿気の中で、運搬中の車から外にちょっとであれ出てホールへと動かすなんて、アイスクリームを炎天下で運ぶみたいなもんでありましょーぞ。

どうして今、敢えてニッポン・ツアーを、世界大運動会の予習ですか、なんてどうでもいいことを考えんでもないが、とにもかくにも貴重な秋の初めの経験でありましたとさ。

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チェロは歌うだけじゃ…ない? [現代音楽]

昨晩、一部で大いに話題のチェリストのジョヴァンニ・ソッリマがドヴォルザークの協奏曲を弾くのを見物にミューザ川崎まで詣でたでありました。

っても、一部の方々とすれば、ソッリマというのは作曲家なのかも。マネージメント業界現役時代には日本チェロ協会なんぞのお手伝いもしていたうちのお嫁ちゃまなど、ソッリマと言ったら「ああ、作曲家の」と仰いましたですし。楽譜の手配とか、権利関係とか、いろいろあったんでしょうねぇ。

さても、そのソッリマ氏、なにやらマイクが林立するシティフィルの前に登場し、ドヴォコンをご披露下さったわけであります。演奏家としてこういう曲を普通のオケと弾く、という所謂「ソリスト」としての活動はいっぱいあるのか、関係者の方に尋ねたら、先頃イタリアだかで3回だか続けてドヴォルザーク弾いてたそうな。
音楽は、まあお聴きになった方はお判りのように、演歌ギリギリとは言いませんが、楽譜の許容量いっぱいまでのルバートやらアッチエルランドやら、時間を自在に扱う。妙な音譜が山のように入ったりとか(ちょっとは入るけど)、音程がまるっきり違っちゃうとかではないんだけど、「弦楽器」というか、「チェロ」という旋律楽器の音の出方、出し方から不自然にはならない限界ギリギリの中で、最大限にいろんなことをしてみせてくれる、というもの(その意味では、先頃のエベーヌQにちょっと近いものがあるかな。無論、弦楽四重奏はアンサンブルだから、ここまで好きは出来ないけどね)。
ぶっちゃけ、自分でチェロを弾く方なら「ここはこんなことやっちゃったらカッコ良いだろうけど、ちょっと無理だよなぁ、俺には」なーんて思ってるようなことを次々とやってくれちゃう、ってか。なるほど、実際にチェロやら弦楽器やらをお弾きになる方々から演奏家としての人気に火が付き、アマチュア奏者を束ねるみたいな合奏をやっちゃうのもよーく判ります。これは「俺たちのアイドル」でんがな。ミニチュアスコアを手にしながらスピーカーの前で指揮者になった気持ちで聴く、なんて20世紀のオールドファンの方には、かなり抵抗あるかもなぁ。それにしても、これに付き合う指揮者さんとオケはさぞかし大変だったでありましょう。皆様、ご苦労さまであります。

ちょっと意外だったのは、独奏のダイナミックレンジは案外と広くはなかったこと。痛いような強烈なピアニッシモとか、オーケストラに負けじと鳴り渡る耳を聾せんばかりの大音響とか、そういうもんはありません。これまた、チェロという楽器が自然に歌える範囲内で、強弱の指定は物理的な音響ではなく、あくまでも表現として提示されます。だから、結果として、すごく聴き易いんですわ。これは一歩間違うとネガティヴな評価になりそうなんだけど、所謂「クラシック音楽」も滅茶苦茶広いダイナミックレンジを前提に存在する静寂なコンサートホールや自宅のオーディオルームではなく、電車の中でYouTube音源をちっちゃなヘッドフォンで聴く愛好家がいっぱいいる、ヘタするとそっちが圧倒的な多数である、という2019年現在の現実を鑑みるに、納得はいくやり方ではあります。
恐らくライブ録音していたであろう昨晩の演奏、今時の再生環境でも独奏者としてのソッリマ氏の芸風をきっちり伝えられることでありましょう。

てなわけで、ここまでは前座。面白かった、というか、とても興味深かったのは、アンコールで弾かれた自作の無伴奏作品でした。ソッリマ先生、なんとなんと、関係者が客席からスマホで撮影したとしか思えぬ動画をご自分のFacebookにアップしていらっしゃいます。Facebookの動画をどうやって引っぱってくるか良く判らないんで、ともかく、ソッリマ氏のFacebookページそのものをご紹介。ほれ。
https://www.facebook.com/sollimamusic/?__tn__=kC-R&eid=ARBYDLxBjU4jUj8GmJX__9j6r0YIHusC4Cumf-R8Ae0wBnpyVqYqXvl8ROTAyiMWxvDqnG72amRHA1xd&hc_ref=ARQZxWkr2BmwgbKw_vUYMWT2WYSPcEeacq1y2lgSGzaFn_uQgNGiwSmEvnGPAs348Bg&__xts__[0]=68.ARCpZiTjGZcNBSSI-d6DtbvmtfhbI5mfIPhxUZWfxJfHlxeBOfgrbQFjG5JL-H8YndI9o_DAFtpVCEabLZn2shPNpisjVZzVjO_3dE3u1weVUS-hYEDkbEgF4neSAl8-eXXilplKX74EgYHTFxtQ0MZlCeWrmT-uGhA7TW57V6DNnRwMBN26sPHykHaGygxrTCNVQwNgmQsM7Ax9AWaVRthcb_yRAExIfdHR7Hov-ar7KzC0xcGFT9XGPt7hDMx7c65wcRwUQ3WeaMEvi59gT8aWTDTOYZlK-rlzeV3CLrYOllawfDbUnMkaJEo_cGQmsQnZiMhUxPZbfwAhLq7ChrSCSo0zTZRBYzz8virNayb_5zMIrReAHHpZgaN9dO7JUkEksLZ3YCyuSLlwQ8OUWXVQ4zfPqL5rvdbVgTlXzfTqVplIV3BZolWTFNvKn7w
これを上からスクロールしていって、「場所:MUZA川崎」となってるホールの映像が昨晩のアンコール。こういうのを演奏も作品も著作権がある御本人がアップして無料で世界に見せちゃう世の中になったんですなぁ。もう「著作権」とか「映像権」とかの議論なんて、明後日の方向に置き去りでんな。JASRACさんも必死になるわけだわ。

もうこういう映像と音があるから、なんのかんの言うのも気楽なわけですが、ただ、現場で接していると、前半の歌を中心とした部分はともかく、特殊奏法と呼ばれるいろんな音の出し方が繰り出される後半は、やっぱりライヴでないと伝わらないなぁ、と思わされます。そんなんを割り引いても、いろいろ伝わるものはある映像でしょうけど。

お判りのように、作曲家としてのソッリマという方、この作品に限って言えば、「20世紀後半以降に開拓された無数にある前衛のチェロ奏法の中から、実際に演奏者として有効なものを選び出して並べる」って仕事をなさってる。正に「演奏者兼作曲家」がやるべきことを、しっかりおやりになっている。

チェリストの作曲家といえば、それこそ19世紀のヴィルトゥオーゾから延々と続く系譜があるわけで、20世紀後半にもウェルナー=トーマス・ミフネとか、知ってる方は良く知ってる作曲家兼チェリストがいた。そういう中で、ここまできっちり「前衛の響き」の最良の遺産を広く人々に伝えようと本気になってる奴は、いそうでいない。そういう意味で、このソッリマという作曲家さん、やっぱり只者ではないと思った次第。

100人チェロでそういうものが前面に出て来るか、ちょっと判らないけどねぇ。
http://plankton.co.jp/100cellos/

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ハノイの室内楽コンクール始まりました [音楽業界]

昨年暮の藝大&ヴェトナム国立音楽院の室内楽セッションのときから話題になっていた
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2019-03-05
ヴェトナムで初めて開催される「室内楽ジャンルの国際コンクール」が、本日4日朝から恙なく始まったようであります。日程表はこちら。
https://vncmf.org/en/competition/time.html
なるほど、音楽院の大ホールを会場に、朝から夕方まで独奏ヴァイオリン部門のセッションがあり、夕方頃から総計11団体が参加するピアノ付き室内楽のセッションになるようです。これって、審査員の先生、無茶苦茶大変だと思うが…ヴァイオリン部門と室内楽部門は別の審査員さんなのかしら。審査委員長は室内楽は別にいるようなんですけど。
https://vncmf.org/en/competition/judges.html
ま、その辺りは、昨年の藝大室内楽セッションで「是非とも審査員に」ということになり呼ばれた村田先生に、こっそり連絡してみましょう(ちなみに藝大で室内楽科の実質上の主任格の松原かっちゃん先生は、「コンクールは大嫌い」とのことではじめっからパスであります)。審査委員長に尋ねちゃうと、なんか表のメディアに紹介するのかと誤解され、大事になっちゃうかもしれなからなぁ。

正直、独奏ヴァイオリンには高い関心があるけど、室内楽部門はなかなか告知広報が大変だったそうな。ちょっと心配なところもありましたが、とにもかくにもこれだけの参加があったのだから、良かったよかった。このコンクールも音楽祭の一部として位置付けられている「Vietnam connection music festival」のゲストとして既に先週シューベルトの大ト長調とかバルトークとか演奏会を行っている日本でもお馴染みユリシーズQが、Nguyen Viet Trungというもうキャリアがある地元ピアニストさん加えて参加しており、ま、一種の特別参加みたいなものでありましょう。結果として、ズィ先生達は大変だったでしょうけどなんと10に迫る国内団体が結成され、本気で数ヶ月は練習をしたのでしょうから、「コンクールを開催することで国内の関心と水準をアップする」という本来の目的は見事に達成されているわけです。始めの一歩がなければ、何にも始まらない。うん。

ちなみにユリシーズ、ハノイの後は一気に太平洋を越え(多分)バンフ入りし、月末からのバンフ国際弦楽四重奏コンクールで優勝を狙いに行きます。隠居爺さんのやくぺん先生は指くわえて極東の湾岸でネットライブに張り付く予定でありまする。
https://www.banffcentre.ca/2019-competing-quartets
あー、極東勢はユリシーズのチェロ嬢だけかぁ。無論、メルマンのリッキー君は半分同胞だけどさ。

てなわけで、正直、結果だけ聞かされても「へええ、そうですか」としか言いようがないハノイの大会ですけど、ともかく一部の方々にご心配書けましたが、無事に始まった、ということ。ことによると結果などは直ぐにこちらにアップされるんじゃないかな。
https://www.facebook.com/bui.c.duy
ズィ先生の個人Facebookなんだけど、なんせ最近はFacebookが公式、ってのが当たり前になってきてますからねぇ

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秋の気配:上海編 [音楽業界]

さても、共産党政権獲得70年を祝うこの秋の中華世界、首都北京から宿命のライバル、西洋文化導入は近代市民社会誕生の頃とほぼ同時の伝統の街上海編でありまする。ま、共産党の旗揚げがここだ、というのがあるから、お祭りもきっちりやるんでしょうねぇ。

この瞬間、大手アスコナス・ホルトの仕切りでそれこそ長征みたいなオーケストラ設立140年記念世界巡回ツアーが始まろうとしている上海交響楽団
https://www.askonasholt.com/tours-and-projects/upcoming/shanghai-symphony-orchestra-world-tour-summer-2019/
なんか、60年代初頭のN響世界ツアーみたいだけど、上海響は日常的に海外ツアーをやってるのはちょっと時代が違いますねぇ。

ま、それはそれ。で、この記念年、秋のシーズン開幕を飾るのが、ロン・ユー御大指揮のこんな演奏会。
https://www.shsymphony.com/item-index-id-7683.html
ああ、これは売り切れになる勢いだなぁ。前半は、今、北米で名前が出て来ている中国の若い作曲家。後半は言わずと知れたロン・ユー御大のお爺ちゃんが作曲した《長征》交響曲、ってある意味王道プロ。

蛇足ながら、この作品に対する我らがニッポンの作品といえば、こちらなのかしらね。
https://www.sso.or.jp/concerts/2019/09/post-496/
https://www.symphonyhall.jp/?post_type=schedule&p=16351
http://kaidoutousei.com/
この作品、最近、妙にさりげなく上演されるようで、それも一頃までは日本会議様御用達みたいな状況でしかあり得なかったけど、若年層右傾化教育が成功しつつある今、もう演奏されても特に話題にすらなならくなってきてまんなぁ。恐らくは、こういう作品というのは実はたかが150年くらいしかない「西洋クラシック音楽」の世界には各文化圏に存在しているのでありましょう。生誕150年のプフィッツナー《ドイツの魂について》とか、例外的に存在が知られる傑作はあろうが、殆どは埋もれているのだろーなー…

おっと、話がおかしな方に行っているけど、ま、どうも世の中がなんだか半端に「政治の季節」になりつつある昨今、生きていればこういう秋に巡り会うこともあるんだろー、ってことで。

あ、そうそう、忘れそうだったけど、日本語文化圏の方にはこっちの方が大ニュースかな。
https://www.shsymphony.com/item-index-id-7785.html
これ、東混が出る筈なんだけど…なんで上海響公式には出てないねんっ!

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秋の気配:北京編 [音楽業界]

これくらいの季節、なんせお盆休み前なんですっかり暇。貧乏な爺が頂ける原稿の締め切りはみんな今月後半以降になっていて、目の前3日以内の締め切りがないと緊張感がわかないという体になってしまっているものだから、どーにも頭ぽかーんとしてしまい、葛飾オフィスで緑の巨大な固まりになってる柿の木眺めながら、買ったけど積み上がっている本などを朝からぼーっと開いていることになる。そんな中に、春頃から積んだままになっている『亡命者たちの上海楽壇』という神楽坂のすっかりスキャンダル出版社になってしまった元文芸出版社じゃない方の某専門系出版社さんが現在の新書版フォーマットで出しているシリーズの一冊をやっと手に取り、眺め始めたわけであります。
https://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail_sp.php?code=371120
中身は題名通り、折に触れて出て来る、というか、定期的にポロっと一般書の形でも出て来る感じの「20世紀前半東アジア演奏史中国編」ネタで、現実業之日本社社長さんの朝比奈本などで皆さんお馴染みの話題とも一部重なってきますので、その辺で興味のある方は是非どうぞ(と、少しでも宣伝するのじゃ、こういうもんは)。

基本、真面目な博論だかを一般人が読める形に薄めた、というこの出版社のかつての定番ものであります。個人的な感想は、「なるほど、やっぱりこういう仕事をするときの基本作業は新聞広告を山積みにする物量作戦なのであるなぁ」ってかな。皮肉ではなく、結構、現状に対する危機意識でありまする。
やくぺん先生が世紀の変わり目に『第一生命ホールの履歴書』をやったときも、三宅坂の国会図書館だけでは無理で、ヴァージニアのアメリカ合衆国国会図書館分室、そこからとうとう最後はノーフォークのマッカーサー資料館までおいかけねばならなかったのは、「当時の新聞のイベント告知欄」を少しでも網羅するためでした。アムトラック駅から港の宿までの連絡バスで、進水したてで艤装作業真っ最中の空母ロンが巨体を浮かべてるのを眺めたっけ。ひとりでは不可能なエレファントな作業で、お嫁ちゃまと、今は栗東で子どもオケの母やってる初代我が家の娘を連れて行かねばならなかったっけ。この井口さんの調査、チームでやったのかしら?一部はデータベース化されているようなので、少しは楽にはなってるんだろうけどなぁ。

もとい。んで、読み進んでいくうちに、1世紀前はともかく、そういえば今年は中国開放70年で、10月の頭はいろいろ盛り上がるんだろうなぁ、澳門の音楽祭でもかの《長征》交響曲やるみたいだし、そういえばちょっと前に北京の音楽祭の広報君からなんか連絡来てたっけ…

考えて見れば国慶節まであと2ヶ月。チケット発売どころか企画内容発表も3ヶ月前にならないと行われない日本以外の東アジア地区だけど、流石にそろそろオープンになったろう、と調べてみたら、おおお、やっぱりあの連絡は7月18日に北京で記者会見があったぞ、ということだったようだなぁ。

で、今の上海フランス租界の辺りの話の前に、まずは宿命のライバル北京から。共にロン・ユー社長が押さえてる世界ですから、根っこは繋がってるわけだけどさ。

毎年秋、国慶節の休みくらいから始まる「北京国際音楽祭」、内容が発表になりましたです。
94b001cf-a31a-4042-8a0e-475087251080.jpg
今年は10月4日から28日って、ちょっと早くないかいな。どれが公式ページなのか判らないが、英語アクセスが出来るのは、とりあえずこれかな。22公演のプログラム一覧表みたいなものはどっかにないのかしらね。
https://www.facebook.com/BeijingMusicFestival/
現時点では7月20日に出た長大なリリースを読んでいくしかないみたいだけど、ポリー・シアターで10月18,19日にDu Yun "Angel’s Bone" 上演がいちばんの目玉みたい。日本でも春前にすみだトリフォニーが招聘してやっと少しは世間の認知を受けた感があるマックス・リヒターが万里の長城の足下で8時間のライブをやるがもうひとつのハイライト。これ、なかなかトンデモ系イベントのようだが、どうやっていくんねん、北京から?どうやら今年はアシュケナージ率いるマーラー室内管にレジデントオーケストラという名前を付けるらしい(チャイナフィル、良いのかぁ、それで!)。来年からパリのオペラ・コミックと3年間の提携、とぶち上げているのは、具体的にはまだなんだか判らないけど、今年はともかく "Angel’s Bone" を共同制作。先の話では、ホキモ演出ロン・ユー指揮《カルメン》、それにこの前香港で出ていたZhou Longの《Madame White Snake》 新演出とか…まあ、フィルハーモニー・ド・パリのオンドレ総裁が燃えてるからパスカル君の《光》サイクルはもうオペラ・コミークとは関わりそうもないんで、ま、やくぺん先生とすれば、それはそれ、ってとこでんな。

現代ものもいろいろあり、羨ましいなぁ、と思う日本の作曲関係者さんも少なくないでしょうねぇ(なんせ、膨大な金をぶち込んでる世界大運動会でも、普通なら当然ある筈の国立オペラハウスでの新作オペラ初演なんてもんがないという我がニッポン、創作系文化予算に関しては東亜細亜諸国にあって中韓台にぶっちぎりで負けてる最底辺国ですからねぇ)。日本語媒体で商売になるかもしれないのは、デュトア指揮する上海響の《ファウストの劫罰》に日本の合唱団が加わること。うううん…こういうの、困るなぁ、商売的に。この団体なによ、って、広報君に問い合わせないとなぁ。今年こそ神楽坂の某専門誌編集長を招待しろ、って入れ知恵した方がいいかも。ま、ともかく、お暇な方はこのリリース、しっかりお読みになっていろいろ悩んで下さいな。

おっと、北京の話だけでずいぶんと長くなってしまった。上海編はまた次回、ということで。無論、デュトア御大のベルリオーズ、上海の定期でもやりまっせ。

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イエローレーベルの楽聖記念年 [演奏家]

メモ代わりにFacebookに記したら案外と面白そうな話題みたいなんで、自分への備忘録としてこっちにもアップしておきますです。

さても、漸く梅雨も明けて極東の島国も新暦葉月、っても、葛飾オフィスなんぞどう考えても「葉っぱが生い茂りまくる月」なんだけど、ともかく、夏も盛りでありまする。これで世界大運動会やろうって一億火の玉特攻隊、俺は加わらん数千万の方に入るぞぉ!

もとい。来る2020年ってば、なんといっても期待のドバイ万博とベートーヴェン生誕250年記念年でありまする。他のイベントで意味があるのは6月の第10回大阪国際室内楽コンクールくらいですから、静かな年であって欲しいもんですなぁ。あ、7月には養父チェロもあったっけね。

そんなわけで、楽聖で商売しようという方々は、いろいろと既に準備万端整えているわけであります。クラウドデータの世界になったとはいえ、未だに多少なりと影響力は保持しているようなディスクの世界でも、エベーヌQが世界五大陸でベートーヴェン全曲ライブ録音やってる、なんてのが先頃日本でも話題になった(のか?)わけですが、いよいよかつての大横綱も動きました。見よ、世界で最も古いクラシックレコードのレーベルたる天下のドイッチェ・グラモフォン様が、秋の盛り頃にCD118枚とBlu-ray3枚、それにDVD2枚総計€240也、という大物量作戦で、こんなん出します!
https://store.deutschegrammophon.com/p51-i0028948377367/various/beethoven-die-neue-gesamtedition-limitierte-auflage-/index.html?onChangeLanguage=1&language_id=DE
なんか、上の公式ページは案外素っ気ないなぁ。判りやすいこちらをご覧あれ。
https://www.hmv.co.jp/en/artist_Beethoven-1770-1827_000000000034571/item_Beethoven-The-New-Complete-Edition-118CD-2DVD-3blu-ray-Audio-Limited_10112427?utm_campaign=LHdiv_hmv_extra&utm_medium=email&utm_source=190731_cl_jouhou&site=hmv_extra_in65&fbclid=IwAR2lekTfvp9hU5cVZqLKbMCCNfzVKYmLZ0RD1HovNW9mvJ3AvOGzfuIHWak

HMVの日本スタッフさんが汗だくで作品名と演奏家名を全部しっかり日本語カタカナ表記に直して下さったこの膨大なリスト、上から下まで眺めるだけで優に5分くらいかかりそうな名前の羅列を眺めていくと、暑い夏の昼間の格好の暇潰しになりますです。いやぁ、なる程ねぇ、これが天下のイエローレーベルが2020年段階で選んだ「世界を代表するべートーヴェの演奏あれこれ」ってことね。ブックレットには、プロデューサーさんだか監修者さんだかの演説が付いてるのかしらね。

作る側の事情がどうあれ、この大アンソロジー、このラインナップを眺めてどう感じるか、どう反応するかで、その方のベートーヴェンばかりか所謂「クラシック音楽」をどう感じているのか、どう思ってるのか、モロにバレてしまうリトマス試験紙(←死後?今時はなんと言えば良いのか判らないぞ)ですな。「憲法」とか「集団的自衛権」とかいうとその人の政治傾向がモロ見えになってしまうようなもん、じゃわい(…かなぁ)。

やくぺん先生的にも、このラインナップをスクロールしていくに、「へええええ…」とか「ええええええ!」とか、はたまた「おいおいおい!!!!」とか、なかなかスリルとサスペンスの時間を過ごせたのであります(昨晩の京急から都営地下鉄浅草線の車内でありました)。いやぁ、このリストを肴に一晩でも二晩でも盛り上がれるぞ、って感じでしょ。

個人的に最も興味深かったのは、やはり「室内楽」のラインナップであります。正直、大きく太字で「あぁああああああああ…嗚呼ぁああああああ…」ってかな。天下のイエローレーベル、もうこのジャンル、本気でやる気は無いんだなぁ、と再認識させられた、というのがホントのところ。良い悪いというのじゃなく、そういうもんなんだ、とあらためて現実を突きつけられた、というべきか。

ベルリンはシュプレー河畔、Uバーンが渡るレトロな橋を挟んでクスQのベルリンでの定期演奏会場ウォーターゲートに向かい合うように旧ベルリンの壁の跡地真上に聳えるユニヴァーサル・ミュージック
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が考えてる「2020年のベートーヴェン」は、まるでベルリン統一直後のあの辺りに復興の音高らかに響いていた頃で時間が止まってしまったか、少なくとも室内楽に限れば対岸のクラブでやってるようなもんからは全く無縁な世界が広がっているのであるなー。ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ、ピアノ三重奏、弦楽三重奏、そして弦楽四重奏…おいおいおい、としか言いようがないラインナップでありまする。いやはや。

無論、それらの演奏家さん演奏団体が悪いなどとは言っておりませぬ。我が師匠アマデウス、心の爺ちゃんボザール・トリオ、それらを「世界を代表する演奏」と太鼓判を押して下さるなんて、涙ちょちょぎれる思いでありまする。これホント。

だけどぉ…このリストを眺め、オリーくんやヤーナは対岸のデッカいビル見上げて「苦笑」するしかないんでしょーねぇ。アルテミス、ベルチャ、エベーヌ、パシフィカ、キアロスクーロ…などなどが、あのビルから眺めるベルリンの空の下に見えない、聞こえていない筈がない。でもやっぱり黄色いジャケット背負って世界に出して頂けるのは、ブレイニン御大でありプレスラー翁なんであります……かぁ。

交響曲の方には、来年のヴィーンフィルに拠る世界主要都市(除くTOKYO)ベートーヴェン交響曲全曲演奏ツアーでポディウムに立つネルソンスが一応は加わっているのは、あのプロジェクトもバックはイエローレーベルですんでよろしく、ってことなのかしらね。うううんデュダメル&シモン・ボリバルをもってしてもここに加わるわけにいかなかったんか。

ま、そんなこんな。喋り出せばキリがない味わい深いリストでありまする。暑い夏の午後、脳内にラズモ3番フィナーレでも壮大に鳴り響かせ、じっくりリストをご覧あれ。なお、若い人に不用意になんか言うと歳がバレますから、充分にお気を付けあれ。

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