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アーカイヴの商品化について [音楽業界]

日本フィルさんから、こういうリリースが発表されました。
https://japanphil.or.jp/news/jporecordings

「楽団自主レーベル「JAPAN PHILHARMONIC ORCHESTRA RECORDINGS」を設立」というヘッドラインで、今世紀初頭のメイジャーレーベル崩壊後はベルリンフィルやらロンドン響やらを筆頭に、世界中のオーケストラがこぞってやってる「自分の持ってる音源を自分で商品として世に出す」というやり方の日本版ですな。

っても、殆どのマニアさんは、「そんなの、N響だって都響だっていくらでもやってるし、俺は大阪交響楽団のブラームス交響曲全集持ってるぞ」とか思うでしょうねぇ。

今回のニュースの最大のポイントは、「楽団自主レーベルを創る」というところにあります。日本フィルだってこれまでにミュンシュやらあけさんやらの録音が商業ディスクとして出ていたし、あけさんのシベリウス全集とか、とじさんが冒頭ファゴットを吹いてる伝説のマルケヴィッチ《ハルサイ》とかは、もうこの作品演奏史上の定番ディスクでしょ。逆に、こういう形で出てこない演奏の方が貴重と言われるくらいだった。

ところがそれらは、あくまでもデンオンとかエクストンとか、はたまたナクソク(日本フィルさんはあったっけか)とか、既存のレーベルが「ねえねえ日本フィルさん、あのハルサイ、音、あるんでしょ。商売にしませんか」と話を持って行き(かどーかは知らんが、日本フィルから商売として持ちかけるとは思えない)、いろいろと面倒な法務的手続きはレコード会社さんが責任を取る形で出していた。

アーカイヴ録音の利用としては、ライバル(なのかなぁ、今更…)のNJPが、「墨田区にふるさと納税してくれると、そのお返しにNJP定期のライヴ録音を差し上げます」なんて例があり
https://www.njp.or.jp/patronage/furusato-tax
一部マニアさんの間では貴重な音源として知られているわけでありますが、ま、ある意味、これをもっと直接的にオケがやる、ってのが今回の趣旨でありますな。

とはいえ、レーベル創設して商品化というのは、どの楽団もやろうと思えばやれるけどやらないには訳がある。列挙していけば一冊の本が書けそうなくらい、問題が山積み。それをどうクリアーしたかは知らんが、ともかくやってみよう、というのはいかにもこの楽団らしいところでありまする。ちなみに日本では、松本のサイトウキネン音楽祭が自主レーベルを創り、確か《幻想交響曲》を出した筈だが、録音する予定だった《ベアトリーチェとベネディクトゥス》が指揮者交代で録音も流れ、結局、自主レーベルとしては最初の1枚を出しただけで立ち消えになってしまったような。その辺りの経緯、詳しい方は教えてちょ。

この日本フィルレーベル、個人的にはやはり「アールQ&ベニー・グッドマンのモーツァルトくらご」が超目玉なわけで、うううむ、これを最初に出して来たかぁ、と腰を抜かした。何を隠そう、やくぺん先生の手元には黒沼さんの音源のカセットテープがあり、本日、オフィス引っ越しの最中、引っ越し屋さんに間違って処理されたり紛れたりしては大変なんで、葛飾から月島の倉庫にそれら資料の一部を手運びすべく詰め込んだところ。
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こういう貴重な一次資料って、扱いが大変なんだよねぇ。巖本真理Qのボウイングが入った譜面も、新天地にオフィスを開いたら纏めた方が良いんだろうがなぁ…

って、他人様の「過去の資料の扱い」が無性に気になるオフィス引っ越し真っ只、目の前には世に出しようのない貴重なライヴのDAT録音(諸事情あって、いかな当無責任電子壁新聞でも、どんなもんかを明かすわけにはいきませぬ。「某国内レーベルが全て録音し、商業化する予定もあった大企画」とかも…と言えば判る方には判るかな)が倉庫に移動すべく山積みなってる中に埋もれるやくぺん先生でありましたとさ。日本フィルさんも、いろいろと面倒なことがあるでしょうけど、ぐぁんばっていただきたいものでありまする。

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