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ブラスバンド文化のまらろく [演奏家]

高崎駅、新幹線の待合室で、15分後にやってくる東京行きを待ってます。明日朝の9時から葛飾オフィスの書籍&家財道具が豊洲の倉庫に移動するというとんでもない日に、のこのこ遙か高崎までやってきた次第。こんなん。
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関東圏では、昨年226アベ要請以降初となるマーラーの後期本格大規模作品の上演、果たしてホントにやるのか、心配ではありましたがぁ、忙中閑ありで明日に備えハンマーで頭ぶったたかれておくべぇか、と遙々来たぞ高崎へぇ。

裏番組に、遙か横浜は紅葉坂上で還暦の巨匠の創作を振り返る大イベントがあり
https://www.kanagawa-ongakudo.com/detail?id=36776
業界関係者の殆どはそっちに行ってるだろー。やくぺん先生も、職種的に、県立音楽堂さんから招聘がかかってはおりました。有り難いことでありまする。とはいえ、この引っ越し疲労の海胆頭、山のようにいる方々にご挨拶したりするのはとても無理。で、こっちならだれもおらんだろーに、と駅の荻野屋で峠の釜めし定食喰らい
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新装成った高崎芸術劇場に向かったら…長老評論家のTさんにバッタリ。こっちですか、と苦笑する。天井桟敷なんぞにはだれもるまいと、地震にビックリしながらすわっていると、オペラとアジアの専門家となりつつある金町のK先生が隣の隣に座ってるではないかぁ。うううむ、まらろく吸引力、畏るべし!

この演奏会にわざわざやってきたもう一つの理由は、指揮者さんにあります。大井剛史さん、って指揮者、まだ「若手」と言って良いのでしょうが、やくぺん先生が斎藤秀雄賞の下選考委員などというオソロシーことをさせていただいていた頃、指揮者部門で何度か話題になったけど、川瀬氏などの影になっちゃって…というくらいの歳回りの方。そのときにいろいろ言った責任を感じているのだが、このコロナ禍で日本在住若手指揮者総浚え状態になっても、更に若い世代のもっと目立つ派手目な指揮者さんたち大活躍の中にあって、しっかり仕事はなさっているものの、それほど表に出てくる感はなかった。

とはいえ、知る人ぞ知るブラスバンド世界では若き巨匠でありまして、そっち方面の方は知らぬ者なし、って人材であります。そんな方が、なんとマーラーの6番をやってくれるという。これはもう、聴かぬ訳にいかんでしょ。

今、やくぺん先生以外は誰も乗ってない新幹線が、北関東をお江戸に向けて突っ走ってます。高崎から上野はあっという間なので、いきなり結論から言っちゃえば、マーラーの6番に関心がある方は、明日の午後3時からの桐生文化会館シルクホールというところでもう一度演奏があるので、是非ともお出かけあれ。これまで聴いたことがないまらろくが聴けますよ。

コロナ禍だから、なのかは知らないけど、弦楽器は第1ヴァイオリン12人、第2ヴァイオリン10人、ヴィオラとチェロは8人、という弦楽器はこの作品としてはギリギリの小編成。管は小さくしようがないから、結果として、極めて管にバランスが偏ったオーケストラになってます。ギャルドに弦を入れた、とまではいわないけど、どかああああっと弦楽器がいっぱいに入るいつものまらろくを考えると、かなり変わってます。

考えてみれば、この曲って、特に終楽章では重要な部分が殆どブラスバンドになる。終楽章の大暴れが始まる前、序の最後の辺りとか、なによりも最後の最後、心臓に悪いffffがオケ全体に鳴り響く《悲劇的》の極みの前の最弱音とか、重要な部分は管楽器の合奏になる。そういう部分での管の音の練り合わせ、響かせ方が、これまで聴いたことないくらいの練れっぷり。恐らくはマーラーも聴いていなかったであろうような、見事な響きのコントロールになってる。

いやぁ、これを聴きに行くだけで、新幹線に乗る価値はあるよ、皆の衆。

無論、海千山千の指揮者が作りに作る演奏を繰り広げている楽譜です。弦のレガートが大きくうねって押し寄せるとか、細かいモチーフの変化を見せるとか、そういうのは期待してもダメ。ともかく、21世紀ニッポンのオーケストラ文化を支えるブラスバンドという広大な裾野からマーラーを眺めると、こういう風に響くのだなぁ、というのはよーくわかる。

これはこれで、あり。

さあ、お彼岸の雨の日曜日、暇してる奴は東武線乗って桐生へGO!もしかしたら、これが21世紀のひとつのマーラー…かな?

あ、大宮駅だぁ。速いなぁ、シンカンセン。え、やっぱり東北新幹線、停まってるんだ。上越は大丈夫でした。

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