SSブログ

謹賀新年:ふたつの窓辺 [売文稼業]

新年明けましておめでとう御座います

2021年、10年前に没した実家をオフィスとしていた巨大柿の木付き葛飾の家を春分の頃に処分。秋分の日の前には縁あって大分県由布院町に新オフィスを移転、冬至前にやっと住居部分のリフォームが完了し、なんとか普通の生活は営めるようにはなりました。とはいえ、葛飾オフィスや佃、それに嫁の田舎から持ち込まれた大量の本、雑誌、紙資料、映像音響資料などは未だ段ボールに収まり、まともにアクセスは出来ない状況が続いております。図書館&勉強部屋となる空間は空っぽで、搬入された本棚キットが未開封のままに転がっている有様。なんとか畑の隅の桜が咲き誇る頃までには、段ボール箱積み上がる和室の奥の仏壇に、現状千葉の妹のところに仮住まい中の亡両親が戻れるといいんだけど。

佃の路地から移ってきた大川端縦長屋も、なんのかんのでいつのまにか10年。眺める風景もアベ不動産バブルで変貌し、東京都庁は辛うじて眺められる程度。首相官邸へのVIPヘリの出入りはまるで見えなくなり、東京駅周辺に林立した200メートル旧高層オフィスの影となった皇居向こうの防衛省ヘリポートは、谷間への着陸風景になってしまった。
IMG_7311.JPG
新しくなったブリジストン美術館の向こう、八重洲口都バス停留所真ん前に引っ張り上がっていた低層階が小学校のビルもほぼ完成、頭の上のクレーンはひとつだけになりました。中央大橋の奥、日銀の隣にはホンシュウ島で最も高い300メートル級のビル建設工事が始まっていて、やくぺん先生がこの風景を眺める最後の頃には、そろそろ竣工してるのかな。

この風景を「美しい」と感じるや、はたまた「醜悪」と思うや…

そして、こちらが現時点でのやくぺん先生のメインお仕事机から眺めた風景。我が庭を目指してやってくる小さな飛ぶ方々は、まだおりません。
IMG_7022.JPG
久大線の裏の藪には、小さな生き物が動き回っているのは分かってるんだけど、そいつらもまだ「ここにくればなんかあるぞ」とは思ってくれていないみたい。

暫くはまだ鎖国が続く2022年のニッポン列島、新帝都と温泉県の往来の中に淡々と春が来て、夏が過ぎ、秋となって冬が来るのか。

いよいよ宿望の隠居仕事に本格着手の年になるのやら、まだまだ道の途中なのやら。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

巴里断念 [売文稼業]

来月11日に巴里行き昼前の直行便で羽田を発ち、真っ直ぐ同月26日午後に羽田に帰国、その後は恐らくは都内での2週間の隔離が想定され、《影のない女》に飛び込めるかギリギリだったツアー
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2021-11-30
昨晩、中止を決断しました。

コロナ状況を眺め渡航を決定し、様々な準備が揃ったのが11月終わりの段階。その時点ではフィルハーモニー・ド・パリ総裁からお嫁ちゃまへの正式な招聘状も出て、大学側もOKを出し学校としての公式の渡航許可がおりたのですけど、その直後から新型コロナ新変種騒動が勃発。あれよあれよと状況が変化し、御上が原則外国人無差別入国禁止という無茶な政策を打ち出してニッポン国世論もそれに賛成の空気が瞬く間に広がって、我が業界すっかり置いてきぼりの大混乱に陥っているのは皆様ご存じの通り。

で、鎖国宣言から1ヶ月、政府中枢が未だに鎖国措置をどうするかきちんと発表はなく、讀賣新聞など政府翼賛系メディアを使った情報リークで世間の空気読みをしている事態に変化なく(というか、自分たちは命令しないけど国民が勝手に萎縮する空気を作る、という我が政府お得意の常套手段で)、宿のキャンセルのタイミングなどからクリスマス休暇明け仕事納め前にニッポン政府の動きがないのを見極め、決定に至った次第でありまする。

葛飾にオフィスがあった頃なら、羽田に入国しどこか数日御上が調達したアパホテルなりに隔離され、そこから最悪でもえっちらおっちら5時間くらい歩けば、なんとか巨大柿の木下まで到達するだろう。となれば、10日の隔離があろうがなんてことなかった。ところが葛飾オフィス無き今、強制隔離解除後に遙か1000キロ近く離れた温泉県盆地の新オフィスまで公共交通機関無しで行けといわれても、いかなノンビリぽかぽか東海道山陽道とはいえ弥次喜多道中越え1週間を野宿しながら徒歩で向かうなど不可能。ヨー・ヨー・マ様のようにHONDAジェットをチャーターして沖縄まで向かう、なんて荒技は貧乏人庶民に出来る筈もない。10日間も自費で都内の宿に自主隔離する費用だけで巴里までの往復航空運賃くらいかかってしまうなぁ、と頭を抱えていた。

それでも、この演目ならば仕方ない
https://philharmoniedeparis.fr/fr/agenda?startDate=2022-01-12&weekend_i=784&utm_source=211215_biennale_quatuors_2022&utm_medium=email&utm_campaign=biennale_quatuors&utm_content=btn_header&fbclid=IwAR0BCeOT8Hw1pbCkuO25oKNXKnezmmwWRHpxo2itqhmhifrj060FaefZlVo
なんせまるまる2年も仕込みをしていないんで、そろそろ商売干上がってしまう寸前。2年分の海外取材経費全部投入、と考えるしかないかぁ、と腹をくくっていたわけでありました。

既に上の日程表に挙がっている参加団体を眺めただけでもアングロサクソン系団体の参加は皆無で(アルディッティは昔みたいにマネージャーはおにーちゃんの家族経営ではなく、欧州大陸拠点みたいなもんですからね、実質)、恒例のビエンナーレに比べるとEU圏内だけ、有り体に言ってフランス文化圏ばかりのフェスティバルになっていることは誰の目にも明らか。それでも、チャリックがどうなっているか、なによりもシンプリーがどうなっているか、そして最大のポイントは16日に予定されている若手団体国際オーディション。このオーディション開催4回目にして初めて日本からインテグラが参加するということもあり、多少の無理は覚悟で眺める必要があるべぇ。

無論、ホントはこの後のハイデルベルク、アムステルダムとまわって2月上旬まで滞在出来るにこしたことはないのだけど、ドイツやオランダは同じEU内とはいえ経済優先のフランスとはちょっと違ってロックダウンやら規制が厳しく、フェスティバルがまともに行われるとは思えない。何故かパリは現時点では予定通り決行とのこと。とはいえ、オーディションには日本の室内楽振興財団や中国や台湾の関係者ばかりか、ウィグモアホール総裁やらリンカーンセンター室内楽協会のディレクターやらも来ることになってるけど、英米は来ないだろうし、アジアも日本以下、みんな来られないでしょう。それどころか、オーディションに参加する側だって、フランス圏以外から来られるのかしらね?

コロナへの感染リスク、東京佃大川端のご家族へのリスク、経済的リスク(キャンセル可能な航空運賃以下、普通にパリに行って2週間、って取材ツアーの数倍の経費が予想されますから)、物理的精神的な負担、それらの全てを納得した上での渡航は、流石に無理。これが40代現役バリバリだったら、それでも行くぞ、と思うかもしれないけどねぇ…

ちなみに2022年は4月にロンドン・ウィグモアホール国際弦楽四重奏コンクール、9月にはミュンヘンARDコンクール弦楽四重奏部門、秋から冬にはパリでマキシム・パスカル氏率いるル・バルコンの《光》チクルス「金曜日」が控えてます。ミュンヘンくらいからは顔を出せるようになるんやら。イースター明けに渡欧出来る雰囲気は…正直、ないなぁ。「東京春音楽祭」がホントにやれるのか、って感じだもんね。

というわけで、来月半ばは現状では温泉県盆地新オフィスで粛々と本棚を建て込む生活をすることになりそうであります。冗談ではなく、ひとりで出来る肉体労働を越えているので、日程が決まりましたら「雪見酒露天風呂付き図書館建て込みボランティア温泉県盆地ツアー」を募集するやも。この大寒波で水道管が破裂してないといいんだけどさ。

ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき本棚を背負い
温泉県への通勤にいでてみん

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

曲目解説は不要なのか? [売文稼業]

読者対象は業界内部関係者及び同業者さんのみ、それ以外の方は読まずに帰って下さい。時間の無駄です。

昨日一昨日と、ハクジュホールの主催公演を拝聴してまいりました。明治神宮前からハクジュ産業さんに向かう師走のトーキョー、巨大クリスマスツリーの立て込みも始まってたり。
IMG_6695.jpg

演奏会の中身は、ひとつは室内管、もうひとつは独奏ピアノとデュオながら、共にテーマは「編曲」です。一昨日は、イギリス人の(多分…)現役作曲家さんがユニヴェルサール出版公認というか、出版社絡み企画でマーラーの未完の交響曲第10番を、私的演奏協会タイプの室内アンサンブルで上演する演奏譜を作り、それを我らがゴールドベルク三勇士が今や立派なN響コンマスにまで出世した白井氏がリードするアンサンブルで日本初演するマーラー愛好家なら涎が出るような美味しい演奏会。実際、聴衆はブルックナーとはまたちょっと違ったやろーばかり、男性トイレは長蛇の列という状況。んで、昨日は、コロナ禍のエリザベートで入賞し話題となった若き超絶技巧派ピアニストの阪田氏が、リスト編曲ベートーヴェン交響曲をハクジュ主催で全部弾いていく、というシリーズ。昨晩は前半には交響詩《オルフェウス》ピアノ版やら、ピアノ協奏曲第2番の作曲途中譜を独奏で弾くとか、極めつけは素性がいまひとつわからないヴァイオリンとピアノの二重奏を、あのバルトークのヴィオラ協奏曲演奏譜を作成し、先頃亡くなったピーター・バルトークと喧嘩になっていたので名高い作曲家シェルリが「リストのヴァイオリン・ソナタ」に纏めたという代物。

演奏については、今時、SNSを漁ればいくらでも大絶賛、熱狂の嵐が出てくるでしょうから、そっちをご覧あれ。ちょっとだけ感想を記しておけば、前者は「なんで指揮者置かなかったんじゃろ?」と思わされましたです。今年はコロナ禍を口実に、なかなか舞台に上げられないこの類いの作品の再現が続き、私的演奏協会の小編成試演のための楽譜に準拠した編曲版マーラー交響曲は4番、10番、《大地の歌》と3作品も聴けるという異常な事態。4番は川崎で第1ヴァイオリン頭のまろさん指揮とまでは言わぬがそれと名前が出ており、サントリー大ホールの《大地の歌》はピンチャー御大がしっかり指揮しておりましたけど、今回は300席の小規模空間のホントの室内アンサンブルでありました。

ハコの規模が小さいというよりも、作品そのもののキャラクターとして、「巨大なアダージョの間に性格の異なる面倒なスケルツォが3つサンドイッチされる」というへんてこりんな作品。このような形で演奏されると、ショスタコーヴィチやヴァインベルクなどが50年代以降に盛んに展開するクァルテットの構成感と室内交響曲の響きはここから直接繋がっているのだなぁ、マーラーがあと10年長生きできていたら「無調の息の長い旋律」という真面目なシェーンベルクには対応出来なかった課題をあっさりクリアーしちゃったんじゃないかなぁ、とアホなことを思ったり。それはそれで大変に面白い。

だけど、まったく「室内楽」ではなく、完全な「小規模室内オーケストラ」です。二つ目のスケルツォとか、終楽章へのブリッジとか、白井氏が後ろを向いて指揮をする瞬間も多々あった。指揮者というお仕事が演奏者とは別に存在する理由はこういう作品のため、というような音楽でした。まあ、指揮者を連れてくるとギャラがとてつもなく必要になるという現実的な問題はあるんでしょうけど、井上みっちーさんなんかに言えば、お宅も近いんだから大喜びで歩いてきてノーギャラだって指揮してくれるんじゃないかい、なーんてアホなこと思ったりして。

別府のいねこさんとの《イタリアのハロルド》で腰を抜かして拝聴することにした阪田さんも、ベートーヴェンのニ長調交響曲をどんなfffでも絶対に響きが濁らない綺麗な音で弾ききり、第1楽章コーダ前では絶対にオーケストラでは不可能な微妙な揺れ(録音だったら阪田さんもやらないでしょうねぇ)などピアノ独奏でなければ不可能な味わいに、へええこういうもんなんだ、と思わされたり。極めて興味深いものでありました。ま、編曲ものとソナタは「こういうもんがあるんですねぇ、べんきょーになるなぁ」としか言いようがないもんでしたけど。

さても、ここまでは枕。以下が本論。

この二日間の演奏会のどちらも、当日配布の印刷物には所謂「曲目解説」と呼ばれる作文が一切掲載されておりませんでした。マーラーの方は、終演後に慌てて地下鉄車内で検索し、ユニヴェルサールの公式ページに編曲者さんご本人による長大な解説がアップされていたので、代々木公園駅から日比谷で乗り換えて月島駅に戻るまでの時間を全部使ってなんとか読み切って、へえそういうことなのね、と理解した次第。無論、編曲者視点の発言ですから「なんでこんな編曲をやろうと思ったのか」「どういう経緯でやることになったのか」などは一切触れられていませんが、まあ、それは判らんでも良い、と仰るならそれまで。こういう「理解のさせ方」もある、と納得はします。

んで、リストの編曲大会は、なんとなんと、午後7時の開演時間に阪田さんがマイクを手に舞台に登場。ほぼ満席の客席に向かい、延々と作品についての説明をなさいました。途中からゲストのヴァイオリニストさんまで引っ張り出され、対談になり、なるほどそういう作品なのね、と聴衆が納得する頃には、もう7時25分くらい。文字通りのガッツリ長い演奏者によるプレコンサートトークになった次第。結果、演奏が終わってホールを出られたのは、時差退場のお願いもあり、9時半をまわっておりましたです。ふううう…

ハクジュホールの方には嫌がられるかもしれませんけど、はっきり言います。これ、ダメです。

昨今の我らが業界を取り巻く経済環境から、コストカットのためにみんなが知っているしどうせ書いてあっても誰も読まないような当日紙配布の曲目解説を廃止する傾向にあるのは、商売上、誰よりも良く知っております。確かに、リストラとしては真っ先に狙われるのも当然だし、わしら書き手側が営業努力をきちんとしてこなかったと批判されるのは致し方ないでありましょう。とはいえ、当日配布作品解説を無くしては困る演奏会というものはあり、一昨日昨日は、正に絶対に当日プログラムに最低限でも作品の素性などが記されていないと困る演奏会の典型例であった。

マーラーの方は、なんせ押し寄せた聴衆が柴田南雄先生やら金子健志さんの著作を暗記するほど読み込み、自分もアマオケでマーラー弾いてる、なんて聴衆ばかりだったでしょうから、解説がなければ勝手に調べるだろう、でも、ギリギリ許されるかも。だけど、昨日のリストの聴衆は、そんなものには興味がない人達が殆どだから不要、というわけにはいかんでしょう。実際、阪田さんもこれはマズいと思ったのか、予定になかったプレトークをこれから演奏するという前になさる決断をなさったわけでして。

阪田さんのプレトークは、所謂ファン向けの娯楽ではなく、中身についての情報を提供する、というものだった。これ、ひとつの作品300字でもいいから事前に阪田さんに書いていただく、若しくは喋っていただいて主催者側スタッフが作文に落とし込む、という作業をすれば済むものでした。

やくぺん先生の感覚からすれば、本人が「いいですよ」と言っても、これだけ負担が大きな演奏が予想される演奏会の前に本人に30分喋らせる、なんて絶対にやらせちゃダメだと感じてしまう。この主催者、演奏家をなんだと思ってるの、ってね。

流石にこれはマズいと思ったか、阪田さんのベートーヴェン=リストのシリーズ、次回《英雄》の回にはプレトークを行うとチラシに告知されていました。一安心、というか、そりゃそーだろーに、ってか。

結論:主催者の皆様、当日プログラム曲目解説リストラは理解しますが、それをやってはいけない演奏会もある。主催者側の見識が問われ、主催者としての評価に繋がる微妙にして重要な問題です。俺はもうあの主催者の演奏会には行かない、と考える聴衆も出てくると心得て下さいませ。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

ともかく巴里行き準備 [売文稼業]

先週、温泉県にちょっとだけ居た頃には「年が明ければ帰国後隔離も3日くらいになってるんじゃね」ってコロナ終わった終わった感が漂ってたのから一転、昨日来のキシダそーりニッポン鎖国宣言(除く治外法権の占領軍関係者及び家族)のお陰で、我が業界は上を下への大混乱。先程も縦長屋シン・ゴジラ視点の勉強部屋で、某大手音楽事務所元幹部ご隠居さんと深刻なヒソヒソ話しをしてしまいましたわ。来週から公演予定されていたフォーレQはダメだし(後述:来日しており、公演はあるそうです。こちら参照https://www.philiahall.com/html/series/201003.html)、年末第九に来る予定のルイージやらシモーネおばさまやら、どうなることやら。練習期間を考えればノット様は列島に既に入っているんだろうし、以前から滞在期間がやたらと長いツィメルマンは問題ないものの、いろいろと影響があるだろうなぁ。新年おめでとーのヴィーン・フォルクスオパーだって、そーりが大見得切っちゃった手前、いくらS社さんでも無理筋を通せないだろーし…

世間では大絶賛らしいそーりの鎖国宣言、やくぺん先生のお宅では大騒動であります。なんせ、2022年1月12日から23日まで、遙かシベリアの向こう華の都ぱりぃで開催されるクァルテット・ビエンナーレに顔を出す予定で準備が進んでおったのでありまする。これ。
https://philharmoniedeparis.fr/en/calendar?weekend_i=784&startDate=2022-01-12T00%3A00%3A00%2B01%3A00

今を去ることもうまる2年も前の12月、アムステルダムで開催されたヴァインベルク生誕100年記念ダネルQ弦楽四重奏全曲演奏会からブリュッセル経由で戻って以降、その直後の前回のパリのビエンナーレは諸事情で(ってか、引退表明をした手前、己に向けた決意という意味もあって)参加をパスしたため、やくぺん先生のパスポートったら、それから延々23ヶ月の間、全く本来の目的で使われていない。使ったのは、葛飾から温泉県へのオフィス移転で必要となった「写真付き身分証明」としてくらいじゃないかしら。

その間の世界の変化ったら、まるでやくぺん先生の「世界のメイジャー室内楽コンクールは基本的に全て眺めて歩く」生活からの引退宣言を、天の神様だか守護天使様だかがお耳に入れて下さったかのようなタイミング。とはいえ、人生最期のステージを細々と生きていくために必要最低限の稼ぎは確保せねばならず、そのためにも必要最低限の商売上の仕込みはしなけりゃならぬ。

となれば、2週間弱の間にプロ団体14、それにこのイベントの最大の売りたる、朝から晩まで30分くらいづつ次々とコンクールファイナリスト級の連中が登場する一種の国際オーディションたるショーケースで20団体ほど
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/musique-de-chambre/23042-audition-internationale-de-quatuors-cordes?itemId=116789
欧州フランス系のメイジャー団体とヨーロッパのマーケットに最初に出てくるクラスの若手が一気にこれだけ聴けるのだから、まあ、隠居はしたといえ状況はある程度は押さえてますよ、と世間様に言えるくらいのことにはなる。これまでならば、この直後にハイデルベルクに移動して「ハイデルベルクの春音楽祭弦楽四重奏シリーズ」でマダム弦楽四重奏のオーディション(前回のロンドンで勝ったエスメが最初に出てきたのがここ)、そのままDBからオランダ国鉄に乗り継いでアムステルダムに向かい、2010年代にムジークヘボウで始まったアムステルダム弦楽四重奏ビエンナーレへと雪崩れ込み
https://sqba.nl/
来年だったら1月11日から2月5日まで3週間ちょいの欧州滞在で、若手から長老までなんのかんの50団体以上が聴ける、って2年に一度の大仕込み市みたいな期間だったわけでありまする。あとは、年に2、3回くらい世界のあちこちで開催されるメイジャー&準メイジャー級の国際コンクールを眺めておけば、ほぼ世界の弦楽四重奏業界の流れは俯瞰出来、商売としてこのジャンルの現役を保てたのでありました。

パリ→ハイデルベルク→アムステルダムと移動し、その間に出くわす副専攻(としか言い様がない)の「戦後のオペラ」を拾って歩けば、連日のコンサート・ヴェニュ通いで頭はパンパン、もー聴きたくない、なんて状態になる。いやいや、流石に体力的にも精神力的にもそりゃ無理。お嫁ちゃまがショーケースの審査員に名前が出ちゃってることもあり、それなら巴里だけはくっついていって、「おおインテグラくん、巴里はいかがじゃね、シンプリーくんたちもすっかり上海Q後続路線じゃのぉ、ぐぁんばりたまぇ」なんて隠居顔してノンビリ気分でえらそーにふんぞり返っててやろーじゃないかい。ま、引退オヤジなりの、ギリギリ最低限のネタ仕込みですな。

まかり間違って2週間の隔離が続いていれば、既に変更不可能なLCC激安チケットを取ってある成田温泉県往復と温泉県からの片道との総計3フライト約100USドル弱をドブに捨てることになってしまうが、隠居とはいえ商売の仕込みのためなら諦めるしかない、と腹を据えていたところに、昨日来の国境封鎖騒動が勃発。またまたわけがわからぬ状況に戻ってしまった。

現時点でパリ側の動きは全く読みようがない(無論、フィルハーモニー・ド・パリからはなんも言って来ません、「なんくるないさ」さもなきゃ「革命だぁ」のラテン系のお国でありますから)。とはいえ、ニッポン政府の今の動きを眺めていると、国を出られて仏蘭西国が受け入れてくれても、ヘタすりゃ帰国時の入国人数制限が厳しくなっていて予定日に戻れない可能性も考えねばならぬ。ここまで来たらもうギャンブル。あれやこれやの条件を考えると、さっさと東京パリ往復直行便、それもニッポン国大使館などに連絡が付きやすい日系キャリア、貧乏人のやくぺん先生が電動自転車を諦めれば買える最安値のキャンセル可能チケットを取ってしまうべきであろー。

かくて、先程、JALの羽田発巴里往復を押さえた次第でありまする。

自民党航空部局と呼ばれ今や日本国際線のトップレーベルたるいつものスタアラANAではなく、かつてのニッポンのフラッグキャリア、空飛ぶ運輸省航空事業部、親方鶴丸での渡欧って、我が人生でこれで3度目…かな。

最初は90年代初め、ベルリン統一直後にJALがなにを血迷ったかフランクフルト経由でベルリン・シェーネフェルトにジャンボを突っ込んだときに取材タイアップでいただいた、人生初のビジネス・クラス空の旅。その後はずっとノースウェストKLMの縛りがあり、青いジャンボで渡欧の入口はスキポールばかり。KLMがミネソタのヤンキーと離婚し仏蘭西のオシャレな奴と政略結婚、その混乱で何故かKLMで買った便がエールフランスと提携していたJALにされてしまい、マイルが付かずに怒りまくった、ってことがあったくらい。お嫁ちゃまに至っては、チューリッヒからアムステルダム経由で戻る筈が飛行機が離陸直後に機材故障で引き返し、一緒に乗っていたハンドボール日本ナショナルチーム一行のマネージャーと一緒になってクローテン空港でわいのわいの談判し振り替えのチケットを出させたら何故かJALだった、という騒動のときしか鶴丸さんには乗ったことないそうな。

さても、やくぺん先生2年と1ヶ月ぶりのシベリア越え渡航、果たしてホントに実現するや。続きは、多分、数週間後。

nice!(2)  コメント(3) 
共通テーマ:音楽

全ての書物は「限定品」なのじゃ [売文稼業]

なーんの意味も無い暇つぶしの雑談ですから、読んでも意味は無いよ、忙しい奴は返った返った。

田園都市線青葉台駅ホーム下のタリーズ・コーヒーで、フィリアホールでのタレイアQ&とこさんの開場を待っております。帰りはちゃんと東急が走るか心配な大雨、ましてや携帯不携帯。手持ちの金になる原稿のいちばん近い締め切りが20日過ぎなんて情けない貧民三文へっぽこ売分業者状態だから、問題ないといえば問題ないんだけどぉ、世間は一気にコロナなんてなかったような景気拡大イケイケになりつつあるのに、これを機会に構造改革リストラされてしまったのは明白な業種の従事者、「目指せ月収5万円」状況に変化の兆しは見えませんぬ。いやはや、冗談じゃなく、主食は裏の畑で取れる馬鈴薯と茄子、米は近くの農家でいただくしかない生活にせざるを得ないじゃないか、いやはや…

んで、まだ時間があるからとフィリアホール隣の東急デパートだかに入っている本屋さんを眺め、貧乏である事実鑑みず、フラフラと紙の書物を購入してしまったぞ。なんせ、アジアの生産国がコロナでラインが滅茶苦茶、水周り部品がニッポン列島はキューシュー島に到着せず、石武オフィスのリフォームが遅れに遅れとうとう今月末の音楽祭には間に合わず、温泉県盆地で人生最後の宿屋に泊まることになりそうな惨状とはいえ、とにもかくにも「本」という旧来型メディアの王様を納める空間は確保されたことにより、半年ぶりに書籍購入が解禁されたのじゃ!あら嬉しや、おお楽しや!

やくぺん先生、ぶっちゃけ本フェチの系列ではないものの、図書で埋め尽くされた空間ほど落ち着く場所はないと感じる人類に分類される方ではありまする。ある時期から「もうこれ以上本は買わないぞ」と決意し、圧倒的に購入量は減ったとはいえ、流石に葛飾オフィス破棄決定後の「当面は絶対に本は増やしちゃダメ」状態はなかなか心理的に苦しいものがあった。よく耐えたものだ、偉いぞ、あたしっ!

ちょっと真面目に言えば、そんな状況がマズい理由はしっかりあります。21世紀20年代の今、「本」という形であたしらが出会う情報媒体は、商品として見れば、全てが「1000程度の生産数しかない限定商品」と考えるべきだからであります。本というポータブル型不動産、全てが限定生産品で、目の前にある現物を逃したら二度と手に入らない、とても困った商品なのでありまする。

本なんてアマゾンで探せばいくらでも売ってるし、電子書籍で買えば場所も取らないでしょ、と反論されれば、あーそーですねぇ、としか言い様がない。だけど、まあ実感している皆様には言うまでもないことでしょうが、日本語文化圏の電子書籍は極めて偏ったジャンルしかなく、著作権が生きている戦後から今に至る文学作品とかって、電子化率が極めて低い。西脇順三郎とか内田百閒とか、はたまた吉田健一とか田村隆一とか、現代日本語のきちんとした作家の仕事が全然電子化されてません。所謂戦後文学以降の古典も、『死霊』はもちろん、大江健三郎から筒井康隆に至るまで、まるで電子化レスです。なんなんねん。つまり、電子出版や電脳画面の世界の日本語のレベルって、もうニッポン語のシロートが跋扈する滅茶苦茶低いレベルで推移しまくっている、ってことでありますわ。

もといもとい。ま、とにもかくにも、本を買って良いのだよ、やくぺん先生、ってか、必要と思った本はどんどん買っておかないとマズいのだよ…と貧乏である現実を突きつける冷静な己を強引に説得し、本を買うのじゃ。

思えば、去る日曜日に恐らくはやくぺん先生が聴いた最も高齢なヴァイオリン奏者さんの演奏会で、こんな著作を購入してしまったのが引き金であるのじゃ。
IMG_6102.jpg
コロナ禍で絶えていた物品販売がやっとコンサートホールのロビーに戻ってきて、売り子のオジサンに「もう先生の手元にあるこれしか在庫はありません」などと言われ、思わずフラフラと財布を開き、現金を出してしまったのであーる。

たいへんに良い買い物をした、えらいぞ、やくぺんくん、と己を褒めていたら、某ヴァイオリニストさん曰く、「これ、確か古賀書店にあったような…」。

うーむ、いやいや、それならそれで古賀書店さんがしっかりと本来のお仕事をなさっている、という喜ばしい事実であーる、と考えるべきじゃな。本書も、温泉県盆地の新オフィス図書室が完成した折には、しっかりとアレクサンダー・シュナイダー自伝の並びに配させていただきましょうぞ。

さて、そろそろフィリアホールに向かわねば。ちなみに本日購入したのは、岩波現代学術文庫に昨年入った佐藤卓巳『「キング」の時代』
https://www.iwanami.co.jp/book/b492289.html
それに、筑摩選書で昨年暮れに出た武田徹『ずばり東京2020』
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480017208/
でありまする。

前者は、岩波のこの文庫、よくまあこれくらいまで文庫に入れたなぁ、と驚くギリギリ感漂うもので、恐らくは2刷は難しい、あるだけでオシマイの類いだろうから、こりゃ買っておかないと。後者は、何を隠そう、やくぺん先生に人生で初めて「原稿を書いて金を貰う」というアルバイトをくれた研究室の同輩というか、先輩というかで、日本語文化圏最高の大文筆業者の著作に真っ向から挑戦する恐れを知らぬ題名といい、えええ今は大学の先生やってるのかぁ、でも相変わらずやなぁ、と苦笑しつつのお布施であります。これ、褒めてるんだからね。

そうそう、去る土曜日には、浅草橋の出版社さんの某音楽雑誌も、ホントに四半世紀ぶりくらいに銀座のヤマハでお金を出して買いましたっけ。ま、それはそれで別ネタなので、また暇つぶしに、いずれ。

なお、「目の前にあるものは全て限定品と思え」という商品は書物だけではなく、CDやらDVDもそうなのでありますが、それもそれでまた別の話。本日これから目の前にタレイアQのCDが売っていようが、買いませんっ!まだそっちはどう処理出来るか見えてないんじゃわ、ゴメン。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

石武オフィス開設 [売文稼業]

2021年9月3日、大分県由布市湯布院町に「石武オフィス」を仮開設いたしました。
IMG_4341.jpg

過去10数年、「書いてあることはみんな嘘、信じるなぁ」をモットーとする当無責任私設電子壁新聞を立ち読みなさってる酔狂な皆々様におきましては薄々ご存じの通り、当電子壁新聞が何故かいきなりPMFプロフェッショナル弦楽四重奏コースをやってた札幌で開設された0年代半ば頃は、佃二丁目の路地に庵が、窓を開ければ紙飛行機か糸電話で連絡が出来る向かいのマンションにオフィスがあった。以降、オフィスだった部屋が大家さんの息子が住むことになったと追い立てられ、庵と一緒になるような別の路地の長屋へと同じ町内でリヤカーで引っ越し。311の秋に葛飾で一人暮らしとなっていた父親が没し、その遺言で、無人となってしまう葛飾の実家に数十年ぶりに住民票を移さねばならなくなり、なんのかんのなんのかんので同じ佃二丁目内ながら「お嫁ちゃまの家族が暮らす縦長屋」と「柿の巨木がある元親の実家のオフィス」との二重生活になった。葛飾オフィスの方をどうするか、いろいろと家庭内で話をしている真っ最中にコロナ禍が勃発。ぶっちゃけ、フリーのやくぺん先生はモロにコロナの影響で収入激減、葛飾の家の固定費支払いすら困難な状況となる。かくて、成田空港へ降下する旅客機を見上げる千葉の親の墓の前で手を合わせ、葛飾を離れることを決意したのが昨年のサンクスギビングの頃。去る3月末には、涙なみだで巨大柿の木とシジュウカラさんやメジロン夫妻にバイバイし葛飾の地を去る。以降の半年ほど、佃縦長屋で嫁のご家族の居候状態で蟄居しつつつ、月島と豊洲の倉庫に収めた家財を含め最終的なオフィス移転先を探す作業を続けぇ…

いろいろ縁あって、ここ温泉県は別府の奥座敷、観光地としてそこそこは知られる湯布院町の観光地からは反対側に、恐らくは終の棲家となるであろう庵を結ぶことになった次第だっくだっく。
IMG_4344.jpg
とはいえ、お嫁ちゃまの上野での任期があと5年ありますので、ベートーヴェン没後200年で盛り上がる年までは、新帝都と温泉県の奥座敷の二重生活になることになります。幸か不幸かコロナ前に「世界のメイジャー室内楽コンクール全てに顔を出す」という現役生活からの引退を表明しておりましたので、新帝都などで顔を合わせる皆々様とすれば、日本列島を離れてる間が温泉県滞在になった、というくらいの感じになるだけでありましょうが。

連絡先などは、これまでと変わりません。月末までネットの工事が入らず、暫くは携帯小型ルーターがライフラインとなってしまいますので、10日に大川端に戻るまでは大きなデータは送らないで下さいな。

ちなみに、「石武(いしたけ)」とは合併で巨大になってしまった湯布院町内のある地域を示すローカルな呼称で、現在は公式な地名としては用いられておらず、Googleマップなどで検索しても出てきません。悪しからず。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

18ヶ月ぶりの… [売文稼業]

新帝都の狂気のパンデミック&炎天下世界運動会騒動を離れ、遙々南は薩摩の国、霧島高原の民宿畳四畳半に布団敷いて座ってます。隠してもしょーがないのでハッキリ書いちゃえば、この演奏会の下準備取材のため。ぴあさんのサイトをアップしているのはタイアップでもなんでもなく、単にチラシが簡単に出てきたからです。
https://lp.p.pia.jp/shared/cnt-s/cnt-s-11-02_1_848fc56c-498b-47ff-aa72-b606cdc87660.html

松原編曲版弦楽五重奏の為の《ゴルドベルク変奏曲》、9月23日に浜離宮で演奏の前に松原先生とプレトークをせねばならず、そのネタ取りというか、打ち合わせというか、まあ、そういうもの。どんなもんか、楽譜や音はあっても、実際に聴いてみないと判らん、ってこと。演奏メンバーはコントラバスのしゅーさん以外はまるで別の長老ではありますが(チェロが病気で交代になってますけど、パンデミックの病気ではないそうな)、練習を眺めさせていだだくことが出来、とても勉強になりました。正直、練習を聴けて、先程、宿舎ロビーで松原氏と話をさせていただき、これで明日の本番を聴けば、ネタは充分。

とはいうものの、なんせ新型コロナの常事態下でありまする。そもそもこの取材、取材として成り立つかも数日前まで判らず、ともかく9月の浜離宮本番前にこの楽譜が音になるのはここ明日の霧島だけなので、最悪聴くだけでも聴けるだろうから…という状況だった。なにしろ数日前に札幌PMFで裏方にコロナ感染者が出て、今週末の野外演奏会を含め残りのプログラムが全てキャンセルになった、というとてつもない事件が起きているわけでして、霧島の裏方を支える財団のスタッフさんたちも、ピリピリしているという感じではないものの、もの凄く慎重に事態を進めていらっしゃいます。普通の意味での取材も、地元のローカル紙を除けば実質上は誰もやってないようですし。

関係者の皆様のご協力により、無事にこんなものをいただき
IMG_3588.jpg
おお、こういうもんを手にするなど、いつ以来のことか?思えば2019年暮れのアムステルダム、ヴァインベルク記念年取材以来のことではあるまいか。

コロナ禍でやくぺん先生の狭い業界もはっきりと世代間格差が広がり、SNSやネットワークでの取材に抵抗がない40代以下の書き手さんたちがどんどん表に出てきてます。正直、やくぺん先生ら旧世代は、ネットワークでの取材には「射角が限られてしまう」感覚がつきまとい、どうしても違和感というか、見えるべきものが全部は見えていない感がしてたまらないのでありますわ。「見せたいものをいただく中から、こっちの必要なものを拾う」という取材のあり方が存在するのは百も承知ながら、どーにもそれじゃ気持ち悪い。

とりわけ、この松原版《ゴルドベルク変奏曲》は、鍵盤楽器なら最後に向けて超絶技巧大盛り上がりになる25変奏から先辺りは、松原かっちゃん先生が意図的に「普通の意味での上手なアンサンブルは不可能」な楽譜を作っている。それを、海千山千の藤原はまお先生やら巨匠たなむらさんらがなんとか組み伏せようとする悪戦苦闘ぶり、果たして明日はつるっと綺麗に纏まってしまうなんてあり得るのか。そんな風に思えるのは、画面で練習風景を眺めていても恐らくはないことだったでしょう。やっぱり現場の空気は、直接に触れないと判らぬもんじゃわい。

一方で、9月お彼岸の浜離宮での本番では、かつて葛飾巨大柿の木の下で弦楽四重奏を合わせてた某チェロ女史を含むアンサンブル巧者の若手中低声陣がこの楽譜をどうするのかが興味の中心。まるで違う音楽が、大いに楽しみでありまする。

久しぶりの現場での緊張と疲労を温泉で休め、明日に期待する霧島の宿。これがあたしの、いつもの売文家業たびの空。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

ご報告 [売文稼業]

やくぺん先生ご夫婦関係者の皆様に、第一報。なにせ相手があってのこと、まだ細部が固まったわけではないので、詳細は全てが確定した段階まで発表を控えさせていただきます。とにもかくにも「判る方には判る」表現となってしまうのをお許しあれ。

昨年末来の懸案、本日、決断いたしました。当面の直接の交渉相手さんからも、これで動きますという連絡が先程ありました。いろいろすったもんだはあり、当初の目論見からは二転三転したものの、人生最大にして二度とない買い物をすることにします。ご先祖様も、お許しあれ。
IMG_2646.jpg
上の写真はあくまでもイメージですけど、だからこそお判りになる方にはお判りになる、正にこのイメージ通りの話だっくだっく。なんなんねん。

これから半年くらい、皆様にはいろいろご迷惑をおかけすると思います。実質上の出国禁止、通常の取材活動や営業活動停止、結果としてこの商売を始めてから空前の仕事無し暇状態を、人生最後のステップに向けての転機のために神様が与えてくれた貴重な時間と考え、利用させていただくことといたします。

現時点での見通しでは、現在の実質上オフィス無し状態が解消されるのは、早くても秋が深まってからになりそうです。逆に言えば、年末前には再び膨大な資料に囲まれ作業が出来る状態になる見通しが立ちました。その頃にはワクチン・パスポートも出そうだし、流石にニッポン列島足止め状態から解放されているであろうと期待しております。 当面は10月のフィルハーモニー・ド・パリでの《光の木曜日》に行けるか、それがダメでも来年1月のパリ・クァルテット・ビエンナーレにはいくらなんでも…

なお、郵便物などの連絡先は、この先数年は佃の現住所を変更いたしません。メールやfacebookメッセージは世界の何処にいようが同じですから、ご心配なく。

以上、中途半端ながら、売文家業関連連絡事項でありました。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

期待の新商売 [売文稼業]

ありそうでなかった、我が業界の新商売が登場しました。って、もしかしたらとっくにあったけど、やくぺん先生が世捨て人で知らなかっただけかも。

こちらであります。
https://shop.columbia.jp/shop/g/gW7183/?fbclid=IwAR30L9CgLQgrxneBiItqvmmd-u2FSNN-pbqZoA7Fdq3CI8bvd1FKLrFbU_Y

何かと言えば、「CDの曲目解説部分を220円で販売します」というものです。説明がめんどーなんで、まんま商品案内用をコピペしてしまいます。ほれ。

※※※

◆ 販売期間
2021年6月16日(水)9:00~ 2021年7月29日(木)23:59

◆ ご購入・商品(PDF)お届けまでの流れ
①本ページより商品をご購入ください。
②後日、お客様へダウンロードサイトのURLをメールにてお送り致します。
※メール送信に関しては、本ページ記載の【商品(PDF)送付スケジュール】を参照
③メールに記載のURLよりダウンロードサイトへアクセスの上、ご購入いただいた商品(PDF)のダウンロードをお願い致します。

◆ 商品(PDF)送付スケジュール
予約期間(6/16~6/22)のご注文分:6/23 正午頃にメールにてダウンロードサイトのURLをお送りします
発売日(6/23)以降のご注文分:注文後3営業日以内 正午頃にメールにてダウンロードサイトのURLをお送りします

※メールは会員登録されましたメールアドレスへお送り致します。
また、「info-cfc@columbia.co.jp」のアドレスから送信されますので受信可能な設定にしていただくようお願い致します。
※ダウンロード期間は7日間となっております。記載の期限までにダウンロードをお願い致します。
また、ダウンロード期限を過ぎたコンテンツのダウンロードの保障はございません。
ダウンロード期限が過ぎている場合、再ダウンロードするには再購入いただく必要がございます。
データをお客様が誤って削除をいたしましても、ダウンロード期限が過ぎた場合は対応致しかねます。予めご了承ください。
※ダウンロード、コンテンツの不備がございましたらこちらよりお問い合わせください。

【仕様等】
・販売コンテンツ:PDF(書類データ)
・データ容量:PCサイズ 609KB、スマートフォンサイズ 2.14MB
・ファイル形式:PDF
・ページ数:PCサイズ 10P、スマートフォンサイズ 38P
・ダウンロード可能期間:7日間
・ダウンロード可能回数:制限なし

※※※

この商売のやり方で興味深いのは、「あくまでも期間限定ダウンロード」というところですね。どうして永続的な商品に出来ないのか、不思議な気がしないでもない。どういう事情があるんでしょうかねぇ。まさか著者の山田先生がそうしてくれと主張したとは思えないし(どっかであったら尋ねてみるけどさ)、対応する日本コロンビア側の事情なのかしら。

とにもかくにも、今時、CDの解説をみたいからダウンロードの販売ではダメで、なんとかして現物を手に入れなければならない、という状況はやたらと頻発するわけで、つい先頃も某シカゴの現代作曲家さんの本人の解説が必要なので弦楽四重奏のCDを大騒ぎして取り寄せねばならない事態もあった。幸い、期待どおり、本人が力入った演説書いててくれて、苦労しただけの価値はあったけど、時間と手間と金をかけてスカ、ってこと多いんですよねぇ。

このように「曲目解説」をきちんと商品として扱ってくれて、アクセス可能にしてくれるのは、とてもとても有り難いです。当日プログラムとレコード解説の最大の違いは、前者は「その場で読み捨てられるための媒体」なのに対し、後者は「資料としてずっと保存される媒体」という大きな違いがあるわけですから。若い書き手にも励みになるでしょうし。

期間限定はともかく、これが常識になってくれますように。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

仮オフィスで納税作業完了 [売文稼業]

一ヶ月遅れでニッポン国民の義務たる納税作業を終え、先程、葛飾税務署宛てにレターパックで投函しました。本日は上野の「東京春」のブリテン大会に行く前に、久しぶりに立石の税務署に行くのかと思ってたら、郵送で良いとお嫁ちゃまが教えて下さり、処理をして下さいました。毎度ながら、有り難いことであります。思えば、確定申告青色申告を始めて以来、郵送は今回が初だなぁ。やっぱり木蓮が香り、年によっては桜もちらほらし始めた頃に書類揃えて税務署に持ってく、ってのがニッポン国民にとっての季節の風物詩だもんねぇ。

葛飾オフィスがなくなった今、領収書の束が積み上がり暫く放置される納税作業を行うのは、セレブでグルメな体重30グラム越えのでぶちんブンチョウ君が飛び回る佃縦長屋では不可能。なにしてるのなにしてるの、これ面白そー、もってっちゃおー、って小型飛翔生命体がウロウロしてるんだもん。

んで、ここ、佃大橋東詰は月島、旭倉庫内やくぺん先生仮設月島オフィスでやるしかない。余りに殺風景なんで掛け軸垂らし、葛飾オフィスの仏壇横に置かれた日めくりカレンダーを配し、アヒル軍団佃派遣部隊からの分遣隊としてボンから新任のベートーヴェンあひる、モーツァルトあひる、そしていかにも季節外れの倉庫送りっぽいクリスマスあひるが見守る中、簡易机を広げ、ネットは実質入らず電源はなく使用時間も週末は朝の9時半から5時まで、という限りなく監獄っぽい閉鎖空間で作業を行うしかない。
IMG_1336.JPG
いやはや、この状況、いつまでも続けられるもんじゃあないわい。

かくて昨日からの納税作業、コロナで世界がひっくり返っている世相はやくぺん先生の家計経済にもモロに反映されてる。昨年は何故か1月から2月頭にかけて、まるで40代後半の頃みたいに無茶苦茶な量の作文仕事が入り、このままでは年間総売り上げ過去最高、だけどその代償に失明するかもしれん、と不安がよぎる程だったので、11月には月収3万6千円だかという過去最低水準を記録しつつも、なんとかお嫁ちゃまの扶養家族にはならずに済みました。

それどころか、例年は収入にほぼ近い程の額になる旅費交通費及び資料研究費が、昨年の2割にも達しない有様。そりゃそうだろーに、なんせ30年ぶりに日本列島を一歩たりとも出ず、国際線航空券はいちども買っていない。コンサートも猛烈に少ない。必要経費とされるが額が記録的に少ない年となった。結果として、無事に御上に納税することも可能となり、立派な東京都中央区在住ニッポン国民として目の前で繰り広げられる(られない、可能性大だろーけど)であろう世界運動会の参加者住宅隔離大作戦騒動に堂々と巻き込まれ、一納税者として文句を言うことも出来るわけじゃ。えっへん。

今年の納税作業がこれほどあっという間に終わった最大の理由は、外貨支払いがほぼ皆無だったことにあります。例年なら、膨大な量の紙っぺらの外国での支払い領収書とクレジットカードの支払い調書を突き合わせ、経費支払い額が日本円でいくらになるのかひとつひとつチェックしては記録していかねばならなかった。この作業、酷いときには丸2日くらいかかり、目はしょぼしょぼで見えなくなるわ、頭はパーになるわ…納税とはニッポン国から課された強制労働である、と国家権力に対する敵意がもりもりと盛り上がっていくわけなんだけどぉ、今年はそれがぜーんぜんない。なんせ、外貨支払いは何を眺めたか判らぬブリュッセルの劇場だかに払った€9くらいと、ツェムリンスキーQのストリーミングライヴを眺めた5コルナだけ。総計、日本円で2000円もいかないくらい。誠に以て鎖国の年であったと実感するのでありましたとさ。

さて、金曜日に完全ノマドでテープ起こしをやっつけた明日初稿を入れにゃならん原稿をやらねば。外は良いお天気、ここじゃやりたくないなぁ。上野公園のスタバに行こうかしら。あそこ、混んでるし、恐らくは永居防止で意図的に電源が設置されてないしなぁ、うううむ。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽