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マスクを付けてK.575 [弦楽四重奏]

爽やかな初夏の風薫るこどもの日のまだ日も昇らぬ午前3時、プラハ郊外からのインターネット生中継で、チェロを学生が代打参加する元ペンギンことツェムリンスキーQが、だれかんちの屋根裏練習室から世界中に配信いたしました。当電子壁新聞を長く立ち読みなさっている皆様にはすっかりお馴染みの元ペンギン、ここに至る経緯を知りたければ、左下のページ検索に「ペンギン」と入れてみていください。ごっそり出てきますから。

この中継、プラハ拠点のŠPORCL ARTS Agency という音楽事務所が「concerts in the living room」というシリーズをつくって配信をやってるようです。公的なもんじゃなくて、音楽事務所がやってるみたい。無料でも視られるけど、課金してます。あたしゃ、昨晩、日本円にして600円弱で一回券を購入しました。こちら。
https://eshop.sporclarts.com/en/
https://eshop.sporclarts.com/en/40-concerts-in-the-living-roo

かくて、今朝、爽やかな朝ご飯のお供に初夏のプラハ郊外、まだ午後8時なんて全然昼間の屋根裏部屋からの配信の録画を眺めましたです。まだこれ、無料でも観られるんじゃないかな、暫くは。
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https://www.facebook.com/watch/live/?v=260590065084358

ご覧のように、まず吃驚は、みんなマスク付けてること。いやぁ、マスク、文化圏によって随分違いますねぇ。なんか、口の前に布ぶら下げてるみたいだなぁ。これ、この状況が長引けば、ルイヴィトンとかエルメスがマスク始めるな、絶対。

もとい。この中継、とっても楽しませていただきましたです。この団体の英語担当のヴィオラくんが、ホノルル音楽協会のバリーとジムに元気かぁ、と挨拶して始まったり、なんかよく知ってる奴が自分ちでやってるっぽくて、好感度高い。こういう中継で感じる違和感が全然ありません。

初夏の、新帝都の新開地にも新緑の柿の木の下を湿っぽい南風が吹き抜けてくる朝、ドヴォルザークの《テルツェット》の冒頭が、なんとも気持ち良く響きます。後半は、今年卒業なんだけどこの数ヶ月はプラハ音楽院での勉強もなくなっちゃって、卒業演奏会もなくなっちゃった若いチェロ君が代理に入り、K.575を披露。三密ギリギリでんな。
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先生たちがわざわざチェロ君に見せ場がある曲を選んでくれたのかな、第3楽章のトリオなんて最初は緊張感伝わるなぁ。でも、終楽章のロンド主題になる頃には、楽しそうに歌ってくれて、気持ちいい朝が過ぎていく。

この中継、チェロ君のマスクがずれてきたりもしたけど、音もこういう状況でどうこう言うこともない、十分なものでありました。ホントに生ライヴ一切編集無しですから、大変だわなぁ、これだけやるの。

朝飯喰らいながらぼーっと思うに、この2ヶ月程いろいろ世界中の音楽家の皆さんが試行錯誤している中にあって、この中継が最も違和感なく、なんか数年前のラ・フォル・ジュルネんときこいつらと有楽町でなんのかんの喰ったなぁ、なんて思いながらノンビリしていられた最大の理由は、案外ありそうでない本物の室内楽のライヴだったことにあるのでしょう。

個人ならともかく、今は複数人のアンサンブルといえばテレワークで編集して…ってのが当たり前。ホントのライヴの本格的な室内楽中継って、騒動が始まった頃にヴェンゲーロフがロシアのどっかからチャイコフスキーのトリオを中継していたのを眺めて以来かな。ましてやちゃんとした弦楽四重奏をライヴで収録しているものは、今回が初めての鑑賞経験でありました。こういう狭い空間で練習してるのを眺めたりするのが違和感ないジャンルだったり、相手だったりしたわけだし。

そう、考えてみたら、こういう「誰かんちの練習室」とか「ホテルやコテージの一室」とかで弦楽四重奏を聴くって、本番はともかく、やくぺん先生みたいな商売していると、半分くらいはこういうところの経験なわけです。だから、マスクはともかく、この状況って、まるで違和感ない。

今や世界のあちこちからもの凄く立派な舞台ライヴやら、メイジャーなオーケストラの演奏会収録映像やら、はたまたいろんな演奏家さんがご自宅から送ってくれる映像やら、恐らくは人類史上最も多くの量の音楽映像が空を飛んでいる今日この頃。でも、こんな素朴な当たり前の絵面を眺めると、つまるところ俺にはこんなもんで充分なんだよね、って妙な納得をしてしまったり。

朝からおなかいっぱいになり、そういえば裏番組でヴィグモアホールがエベーヌQを今日だけ配信してたっけ、とそっちに行ってみると
https://wigmore-hall.org.uk/watch-listen/live-stream
これまた立派な演奏をやってらっしゃいます。コロナでご家族で倒れていたというピエール、その後、お元気になったか心配だったのですけど、これは2018年12月に「ベートーヴェン世界を巡る」シリーズの最初のひとつとして収録されたライヴ映像。最近のお姿ではありませんでした。まあ、たいそう立派で、「まるでレコードみたいな演奏」という一昔前の表現まんま。演奏が立派過ぎるばかりか、録音の仕方もバランスも、しっかりバッチリとライヴの商品パッケージ、ってものでした。ま、これはこれ。だけど、上手過ぎるなぁ、皮肉じゃなく。

新帝都川向こう新開地は、すっかり初夏。開け放った窓の向こうから、すっかりのお籠もりの友となったほーほーさんが、ほーほーと歌ってます。ベートーヴェンのお誕生日まであと半年ちょっと。その頃は、どんな世界になっているのやら。

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