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三密回避でやれるイベントといえば… [パンデミックな日々]

久しぶりに佃の縦長屋から新帝都のニッポン支配中心地を眺めてます。大川は観光船皆無、空も静かな初夏の週末。大川端にランナーがいっぱい出てるのは相変わらずだけど。

このパンデミックな日々も二ヶ月にもなると、そろそろ緊急避難的に行われていたあれやこれやもネタ切れになってきたようで、出口が見えない中にも「現状で何が出来るか」が模索され始めている皐月の初旬でありました。で、どうやら電網上に仮設された我が業界では、「三密を避けてコンサートを開催するとしたらうちのヴェニュはどーなるか」のシミュレーションがちょっとした流行になっているようでありまするな。先週末にベルリンフィルが無料無観客ライヴでフィルハーモニー大ホールから「三密回避コンサートはこうやれ」みたいなデモンストレーションでマーラー4番室内楽版なんて妙なもんを世界に向けてライヴ配信したのに刺激されたか、今週末は昨晩にブランデンブルク門越えて反対のリンデン・オパーの舞台上で、お馴染みの顔も並ぶシュターツ・カペレが舞台いっぱいに広く散らばってアイネクやら《ジークフリート牧歌》やらを演奏し世界に中継。
https://www.3sat.de/kultur/musik/gedenkkonzert-kriegsende-110.html
こういうメイジャーが団体が業界世論を作っていくのを目の前に見せつけられるような動きになってら。それにしても、どっちかというと、この演奏会に至るまでのすったもんだのメイキング映像を作って欲しいなぁ。どうやって練習したのかしら。

ある意味で「現状打開の仕方をうちらの業界に提言する」系のイベントというか映像を眺め、その周囲で巻き起こる議論を眺めているに、正直、なにやらとても違和感を感じざるを得ない。なんでじゃろね、と考えるに、ま、話は簡単。あたくしめが座っている普段の演奏会のうち、かなりのものがこんな三密回避コンサートと同じ状況じゃん。句点の前に(苦笑)と記したくなるけど、事実だもん。

例えば、席数が300から500くらいで会場使用料が半日使っても数万円、なんて区民ホールは東京にいくらでもあります。そういうところで開催される若手現代作曲家の個展とかの場合、舞台上には面倒な打楽器やらが密集するものの、客席は知り合いお友達関係者ばかりで数十人、なんてのは普通です。100人も入っていると「すげええ入ってるじゃん」なんて思える。

それから、200人から300人くらいの会場で行われる若手団体の室内楽演奏会も、聴衆は数十人なんてのは珍しくない。ってか、それが普通。一列誰も居ないので、好き勝手なところに座れて、なんとも気持ちいいぞ。

究極のガラガラ演奏会で超メイジャーなものといえば、なんといっても国際コンクール予選ラウンドの午前中のセッションでありましょう。もちろん、バンフとかメルボルンとかの盛り上がった地元聴衆が開場前からロビーに詰めかける例外はありますけど、ロンドンもミュンヘンARDも、はたまたレッジョもボルドーも、そして幸か不幸か我らが大阪も、世界に冠たるメイジャー国際室内楽コンクールの一次予選、はたまた二次予選の客席は、正直、閑散としております。恐らくはどれも三密条件を軽くクリアーしているんじゃないかしら。

今や伝説となってるアメリカ文化センターが会場だったアルテミスQが東京Q以来の優勝を果たしたミュンヘンARDコンクールの一次予選、確かツェムリンスキーの1番かなんかをやったような記憶があるのだが、客席にはパルム御大以下の審査員を除けば、聴衆は20人くらいしかいなかったような。会場が中央駅北西端のバイエルン放送スタジオに移ってからは、もうちょっとは入るようになった感じはあるけど。街の真ん中のオペラハウスを無料開放するレッジョ大会も、予選レベルでは開放された平土間に座る聴衆は、うちらプレスが陣取るボックスから眺めるに、勘定できるくらいのものでした。大阪も立派ないずみホールにたっぷり空間を取って座れます。

いつもなら、主催側とすれば「どうやって予選から聴衆を入れるか」に頭を捻る残念な状況なのでありまするが、これって正に「常日頃から三密が避けられ、それでもなんのかんの成り立っている」コンサートではありませぬか。いや、冗談で言っているのではなく、大真面目で申しております。マジ。

つまり、冷静に状況を鑑みるに、ホール運営側スタッフのことなどを全てクリアー出来るなら、流石に持ち出し前提のマイナーな現代音楽や室内楽の演奏会はともかく、コンクールはやれる条件のいくつかがクリアーされ始めているのではあるまいかっ。あくまでも空理空論として、ですけど。

三密を避けてコンクールを開催する条件をつらつら考えるに…

★そもそも予選レベルでは演奏を聴いて貰うのは国際コンクールでも10名ほどの審査員だけで良い。聴衆は出演者関係者、プレス、ある程度以上の額のお金を払ってもどうしても聴きたい数十人の聴衆に離れて貰い、オーディトリアム内部にはトータルで50名程度に抑える。結果として起きることは、現在のパンデミック下でない通常の開催状況とそう違わない。

★審査員の採点は会議ではなく純粋に点数積み上げ式にして、密閉空間での審査員による議論は行わない。これも、今回はそういう規定にします、と決めればそれでOK。

★スタッフワークは限りなく少なくし、ある程度時間をたっぷり取り、転換は参加者が自分で行う。控え室はひとりひとつにする。審査員は直接隣接の宿舎から会場に入って貰う。

★多数の聴衆が期待される本選は、会場の条件は基本的に予選と同じに、スポンサー関係者なども数を絞る。聴衆賞はネットでライヴ中継し、ネット投票とする。

てなわけで、やれるじゃん、国際コンクール。

最大の問題は、参加者及び審査員が会場に来られるのかと、練習をどうするのか、ですね。国際大会の場合はそれが最大のネックだけど、逆に考えれば、今やれるのはローカル大会だけなんだから、と割り切るなら、それはそれでありでしょうし。どうしても国際大会にしたいなら、世界コンクール連盟と交渉して「今回は外国からの審査員の〇〇先生と××先生と△△先生は、特例としてインターネットのライヴ中継を利用しての審査参加となります」ということでクリアーさせて貰う(OKいただくにはハードル高そうだけど…)。

果たしてそこまでして大会を開くべきなのか、本気で考え始めたら「アホいわんといてーな」で一蹴でしょうけど、演奏会制作テクニック的には出来ないことではない。宗次ホール弦楽四重奏コンクールだったら、全然問題なくやれるんじゃないかしら。

なんのことはない、「死んだ子の歳を数える話:大阪国際室内楽コンクール編」というタイトルにすべきだった駄文になってしまった。ふううう…コロナがなければ、来る金曜日午前10時半くらいのいずみホールで、弦楽四重奏一次予選で第10回大阪国際室内楽コンクール&フェスタが賑々しく始まっておりました。なお、蛇足ながら、同時期に浜松で開催される予定だった世界コンクール連盟総会は12月に延期となっております。ま、こっちは延期は簡単と言えば簡単ですからねぇ。
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/shise/koho/koho/hodohappyo/2020/4/documents/2020041501.pdf

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