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ゆふいん遙かなり:JR久大本線編 [たびの空]

諸事情で、ゆふいんに来ております。寒いですけど、温泉入ったから大丈夫。

大分県は別府の奥、今は「由布市」になってしまって市役所は一山向こうの庄内という町にある湯布院町。去る7月の大雨で天ヶ瀬温泉を跨ぐ久大本線の線路が流された惨状は、コロナ騒動も一息吐いたように思えたニッポン隅々にまで流されたものの、あのときに崩れたのは久留米側だけではなく、反対の市役所に向かう湯平近辺にも及んでいて、なんとまぁ、大分からの久大本線は庄内駅までしか届いておらず、そこから由布院駅までは代行バスが出ている、という話はこちらで記した通り。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2020-12-07

とにもかくにも、所要でどうしてのこの場所に来る必要があり、GOTO凍結だのなんだの世間も御上も上を下へに騒ぎになっていようが、ともかくあたしゃ行かねばならぬ。てなわけで、ベートーヴェンのお誕生日を祝い終わった次の午後、新帝都をひょいっと飛び立ち、まあ半分乗ってるかいないかの737で横浜はノースピア真上飛び越え、遙か江ノ島を眺め、先週半日を過ごしたセントレイアを臨み
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暮れなずむ九重の山々を眺めつつ、国東半島先っぽのほぼ海上空港たる大分エアポートに着陸したのは、新帝都ならそろそろ夜の帳という4時25分くらいのことであった。

荷物を拾い、慌ててバス案内所に走れば、「ええ、由布院行きはないんですよ」と、こんなものを手渡されます。
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うううん、なんだかリュック背負って楽しそうなご一家だけど、要は、大分行きの空港連絡バスで別府の中心部まで行き、駅の西口から出る山越えの由布院行きローカルバスに乗り換えてくれ、ということでありまする。

ああそうですか、上手い具合に接続していれば…ってわけだが、おっとぉ、バスの出発予定は4時35分で、JR別府駅最寄りのバス停まで夕方の渋滞があるかもしれないので50分くらい。そこから10分くらい歩いて駅の下を潜り、由布院行き発は5時半という。おいおいおい、ギリギリじゃんかぁ、ってか、定刻に動いて、走れば間に合うぞ、ってことじゃんか。それを逃すと次の最終バスは1時間後、って…うううむ。

かくて1500円也、って由布院直行便と同じくらいの大枚払って乗り込んだ空港バス
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まあ、そこそこの混雑っぷりで4時40分をまわった頃に出発。別府湾を眺め、新帝都よりも30分くらいは日暮れが遅い感じの冬至も近い夕方を眺めつつ
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別府港へとひた走る。

市内に近づくとしっかり渋滞し、別府北浜バス停に到着したのが5時28分であった。これはもう、どう頑張っても駅西口5時半発には間に合わない。別府大分を結ぶメインストリートからちょっと曲がって数百メートル走ってくれればJR駅なんだが、大分交通はJR駅まで客を連れて行く必要はないと思っているようだ。ま、駅前まで連れて行ってくれたとしても、ギリギリ目の前で由布院行きが出発、ってところだったろうがなぁ。由布岳越えは亀の井バスなんで、由布院に行く客がいるから待ってくれ、とも言わないだろうし。

荷物をバスの下から引っ張り出すともう5時半は過ぎ、ダラダラと登っていくかつての観光メインストリートをズルズル荷物引っ張りながら由布院の要件先に電話、明日の動き方を決めながら、マスクしたサンタの像が楽しげに迎えてくれる別府駅に到着したのは5時39分であった。
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由布院行きバスは、今頃もうアルゲリッチ音楽祭のメイン会場たるビーコンプラザの前辺りを走っていることであろーに。

湯布院町内での飯はもう食いっぱぐれ決定。なんせバスなら1時間弱も待ち時間があるんで、JR別府駅の駅弁を探すが、ありません。このまま6時半だかの終バスを待つか、いっそのこと久大本線周りにしてしまうか、みどりの窓口に行き、暇そうなおねーさんに尋ねると、今、庄内から代行バスなんですが…と想定時刻表をプリントアウトしてくれる。直ぐに来る大分行き各駅停車に乗って大分駅で乗り換えれば、到着は7時27分。で、バスだと7時25分。うううむ、こんなところであと半時間以上待ってるのはいやだなぁ、JRの方が200円弱高いけど、えええい、これも勉強、代行バスに乗ってみましょうか。
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かくて、5時57分別府発大分行きで二駅。大分で久大本線庄内止まりに乗り換え、そこからは代行バス、総計1130円也。

ソニックなんぞ優等列車が行き来するホームにやってきた各駅停車は2両編成で、何故か乗っているのはうら若きマスクの女子大生ばかり。
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わずか数分の乗換で立派になったホームを降りては上がった久大本線のジーゼルカーも、これまた二両編成。おいおい、高校生8割通勤客2割で、溢れそうなラッシュアワーではないかぁ。これは失敗した。

ともかく荷物引っ張って、6時18分発ギリギリに列車に飛び込み、流石に西とはいえすっかり夜となった途切れた鉄路を、えっちらおっちらと昇っていく久大本線各駅停車なのであった。高校生は三々五々降りていくが、途中駅でまたごっそりと乗ってくる。どうやら市立由布高校が終点のふたつ前の駅にあるようで、大分から乗って来た通学の生徒らとは中学時代の友達どおしばかり。車内はコロナの恐怖なんぞどこ吹く風の喧噪状態で夜を往く。

定刻6時56分に庄内駅到着。学生達はだだだっだだだぁ、と降りて跨線橋を渡る。連絡バスの出発は7時10分となっているので、何を焦ってるのやら、と思ったら、おおおおお、待っているのは亀の井バスの普通の路線バス仕様車が1台のみ。
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やくぺん先生がノンビリやってくる頃には、車内は既に満杯。外で待ってる2人の高校生はなんなのかと思ったら、次の駅湯平で降りる連中。先に乗ってしまうと降りられない、と知ってるわけでんな。それにしても、これは三密必至のちょー危険な乗り物であるなぁ。

真っ暗な道をぐるぐる曲がりながらバスは行く。途中、道の修復工事で片側一車線になったところで対向車待ちをするも、
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信号もなくジーゼルカーよりウンと速いぞ亀の井バス!湯平でさっきの高校生男子2名、その次の東由布駅でおねーさんひとりを下車させ、バスはゆるりゆるりと由布盆地へと降りていく。かくて、定刻ぴったりの7時27分に未だ健在の中央公民館横バスターミナルに到着。
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別府からのバスが先に到着していたかは、まるで判らず。

新帝都は羽田を発って正味5時間、国東半島の空港からでもまるまる3時間…ゆふいん、やっぱりホントに、遙かなり。

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祝ベートーヴェン250歳 [弦楽四重奏]

というわけで、本日はベートーヴェンさんの250回目のお誕生日(ホントは判らない、だの突っ込まないよーに!)。コロナ禍とはいえ、世界のあちこちでその都市の状況なりにお祝いがなされているようでありまする。例えば、日本同様にコロナ禍でもなんとかオケが活動してる中国でも、寧波響が今日を挟んだ5日間連続で交響曲全曲サイクルをやってる、なんて話が上海の同業者から来たりもしてさ。

ライヴのお祝いばかりではなく、この春以降の流れとなってるオンラインイベントは花盛り。列挙していったらキリがないので、当電子壁新聞を立ち読みなさるような酔狂な連中に関心がありそうなものを、ちょっとだけ紹介しておきましょうぞ。

まずはこれ。
https://heifetzinstitute.org/heifetz-multimedia/the-beethoven-experience/
当電子壁新聞ではお馴染みのボロメーオQが、北米東海岸時間の16日朝から晩まで、1,7,12,2,8,15,3,9,14,4,10,13,5,11,6,16,13,《大フーガ》
という順番で演奏します。これ、ライヴ…じゃないですよねぇ。ま、この方々なら、ライヴでもやるだろーけど。何で荒れ、日本時間の午後10時半からですので、お暇な方は是非どうぞ。

さても、やくぺん先生はこれからエクが最後の弦楽四重奏曲なんぞでお誕生日をお祝いする会場に向かいまする。池袋ではヴァイグレ社長が第九、上野では藝大の先生やらがいろいろ
https://www.geidai.ac.jp/container/sogakudo/93847.html
新帝都でもあっちこっちで鳴ってる楽聖なる夜。

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火曜の早朝に《午後の曳航》ライヴ配信 [現代音楽]

私事でいろいろバタバタしており、無責任電子壁新聞どころではない日々が続いております。ホントに2020年は人生空前の特別な年になりつつある。ま、それはそれとして…

自分のためのメモ。4月から6月のお籠もりの間は、切り倒しが決まった葛飾巨大柿の木の下で連日パソコン画面に出現する世界各地の歌劇場のライヴ舞台映像を眺め、すっかり視力を落としてしまったわけだが、秋以降、もうまるっきり眺めなくなってしまった。ヴィーンやらミラノやらメトやらが、ストリーミングなりをやってるのか、知ろうともしなくなってはや数ヶ月。アドヴェントに入り、またコロナが再流行し、ニッポンや中国本土では普通にコンサートが始まっているのに、またお籠もりが始まった欧米主要都市の劇場が再び日替わり無料配信を行っている…らしい。

すっかり関心もなくなっていたので、特に眺めることもなかったところへ、ある方からとんでもない情報をいただきました。こちら。
https://www.wiener-staatsoper.at/en/staatsoper/media/detail/news/current-streaming-schedule/

おおお、ニッポン列島から8時間遅れた時間が流れる音楽の都、現地時間の明日月曜日の午後7時から、ヘンツェの《午後の曳航》の新演出がライヴで放送されまする。予定されたプレミア上演を、無観客でライヴ放送だけでやる、ということのようですね。
https://viennaoperatickets.com/opera-premiere/das-verratene-meer-vienna-state-opera/?p=31&l=2&id=2190

Monday, 14th of December 2020, 7 p.m. (LIVE, PREMIERE)
Hans Werner Henze
DAS VERRATENE MEER
Musical conduction: Simone Young
Production: Jossi Wieler, Sergio Morabito
Stage & Costumes: Anna Viebrock
With: Vera-Lotte Boecker, Bo Skovhus, Josh Lovell, Erik Van Heyningen, Kangmin Justin Kim, Stefan Astakhov, Martin Häßler et al.

どうやったら視られるか、ライヴで視なくても何日かは大丈夫なのか、また公式サイトに再登録せにゃならぬのか、いろいろ判らんことばかりだが、ともかく、火曜日の午前3時には数ヶ月ぶりにパソコンをスピーカー前にセッティングして、開演を待たねばならぬではないかぁ。

こんな生活、いつまで続くのか。うううむ…

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名古屋で最高のノマド場は… [たびの空]

やくぺん先生一押しの若手指揮者、敢えて身も蓋もなく「天才」(=「教えられなくてもみんな判って知ってる人」、だから、全然正しい使い方ではないんだけどさ)という安易この上ない形容詞を付けよーぞ、「電子音楽オーケストラをマーラーやシュトラウスの後期ロマン派型オーケストラのように扱う21世紀の世界の大巨匠」我らがマキシム・パスカルくんったら、10月末に正に奇跡的にパリで《光》チクルス第3回となる《火曜日》を無事に上演し、池袋のアパートでの2週間の監禁を承知で遙か極東の《光》チクルス生誕の地へとやってきて下さった。自分の会社は大丈夫なのか、って気もするが、そもそも華の都じゃお仕事やれない状況になっちゃってるので、何故か音楽業界が細々とはいえ動いているニッポンやら中国に出稼ぎに来るしかないのだろーかなぁ。

残念ながら、パスカルくん新帝都でのお仕事たる「世界でいちばん部数がある新聞社」のオーケストラが賑々しくお祝いした池袋ウエストゲート横のヴェニュ30年目のお誕生日演奏会は所用があって見物出来なかったんで、こりゃ仕方ないわい、21世紀の真の大都会、ニッポンの真の中心ナゴヤのオーケストラで、ちっちゃなヘ長調の交響曲をお振りになるのを見物にいくしかなかんべぇ。まさか、このまま正月を極東の島国で過ごして《サムソンとデリラ》振るなんて、知らなかったもんね。
http://www.nikikai.net/lineup/samson_et_dalila2020/index.html

んで、今が2020年1月頃と同じ状況だったなら、池袋は本番はダメでも練習見せてよ、うん、しょうが無いからナゴヤ行くけど、せっかく行くんだからGPとか眺めても良いかなぁ…なんて話になるわけだが、なんせ現状、公共ホールは「裏に関係者以外は入れません、練習眺めに来るなどもっての他」ってピリピリ状態。終演後に楽屋に挨拶にいくことすらままならぬ。

とはいえ、話題沸騰のGOTO日帰りでナゴヤに行こうという貧乏人、神の如きJR東海様が設定してくれるフィックス格安列車は朝っぱらと深夜しかない。ま、そりゃそーだわね。車内換気に怯えながら5,6時間も東名高速バスに揺られるのは初期高齢者爺には危険すぎる。んで、なんとなんと、朝7時のシンカンセンに乗り、名古屋発最後の東京行きのぞみで戻ってくる、というアホこの上ない行程になった次第。

こうなると、朝の9時前に名古屋に到着し、素晴らしい名古屋朝ご飯で昼前まで粘り、昼には「ともかく行けば毎日なんかやってる」を目指す神の如き宗次ホールで昼間の演奏会でも拝聴し、あとは栄のきっちゃてんで夕方まで粘って…なーんてすーぱーうるとら情けないノマドな1日を考えつつ、始発が6時40分過ぎというたわけた時刻表設定で都バスが使い物にならぬ大川端から新帝都中央駅まで歩く、睡眠時間3時間弱のやくぺん先生なのであったとさ。

幸いにもシンカンセンは朝7時の新大阪行きという切りの良い優等列車なのにそれほど混んではおらず、新横浜を過ぎて、数年前までは世界のシンカンセンの上を空母ロンの超蜂くんたちが朝からギネス認定世界一煩い飛行機の面目躍如、車内からも頭の上を横切っているのが判る程の轟音たててたクリスマス休暇前ってのに、今やすっかり静かになった小田急線の下を潜る辺りを過ぎても、二人がけの隣席は空いてます。やった、三密回避、と喜んで、動かない頭を動かしてテープ起こしを続ける勤勉さ。

頭を雲の中に突っ込んで、麓のミサゴくんの遠征塒の辺りだけが臨める辺りで、頭の上はどうなってるじゃろか、と興味本位にフライトレーダーを覗いてみると、おおおお、こんなもんがナゴヤに向けベーリング海を渡ってくるではないかぁあああ!
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思えば€1,000くらい出せば羽田成田からちょろっと半日で世界のあちこちに気楽に行けた頃、丁度今くらいの寒くなり始めくらいの季節だったっけ、ハンブルクで細川氏のアフター原発オペラ初演を待つ昼間に、地下鉄が地上に出る河口にあるエアバス工場対岸の公園に座って平田オリザのリブレット読みながら、ベルーガくんがお腹いっぱいになにやら詰め込んでよっこらしょと上がっていくのを眺めてたっけ。
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やっぱり、これは最大にして唯一のライバル、夢運びくんもこの目でしかと眺めておかねばならぬぞよっ。風向きによっては葛飾や大川端から、大宮や浦和上空10キロを渡っていく姿を眺められるとはいえ、見えるだけ凄いとはいうものの、レンズの埃みたいにちっちゃいもんなぁ。

というわけで、8時半過ぎににゃーごやぁ駅到着するや、在来線ホームに向かい駅立ち食いきしめん屋で濃厚ナゴヤ味きしめんで朝ご飯。
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やってきた上り東海道線で金山駅まで一駅、名鉄に乗り換え、ホームに入ってた特急セントレイア行き特別料金不用席に駆け込み、ゆったりクロスシートをひとりで占領して、殆ど寝てない頭ガンガン、遙かお伊勢様を臨む海の上人工島に辿り付いたのは9時40分のことであった。
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佃大川端からにゃーごやぁ人工島まで、徒歩&朝飯時間含め3時間って、羽田から数少ないセントレイア便で至ろうとするよりもよっぽど速いじゃないかい。

さてもさても皆の衆、あらためて説明してしんぜよーぞ。空港という公共施設は、実はノマド仕事には最高の場所のひとつなのじゃよ。列挙してみよーかい。

※どこに行くにも便利。わからなければ懇切丁寧に教えてくれるおねーさんも控えておる(凄く暇そーだけど)。
※半日座り込むなんて深夜ファミレスの高校生みたいなことはせず、ちゃんと1時間とか2時間くらいでお店を変えてそれなりの場所代を払うつもりがあるなら、潜り込む快適な場所はいくらでもある。基本、放課後の学生街や昼過ぎのサラリーマン街とは違って席の回転は速いので、場所の確保も難しくない。小腹が空いても、食いっぱぐれることはない。
※無料のWi-Fiが飛んでいる。ヘタすれば、空港会社が提供する無料Wi-Fi、地域の無料Wi-Fi、喫茶店や店舗の専用Wi-Fi、ことによると航空会社のラウンジのWi-Fiなんぞも拾える可能性があり、ひとつがタイムアップしても簡単に別のものに乗り変えられる。
※今や空港にとって最も重要なインフラたる携帯なんぞの充電用電源は、家電会社提供のデカいマークがある下のあちこちに備わっている。
※作業に煮詰まったら、気分転換をするためのランチスポットやら、ひこーき見物の露天席も用意されている。なんせセントレイアにはスーパー銭湯もあって、もうホントにやめだやめだ、って気になったら、風呂入って湯上がりにビール煽ることだって可能(残念ながら、千歳みたいな空自イーグル眺めながら温泉三昧、という訳にはいかぬが)。天気さえ良ければ、滑走路眺めるベンチにずーっと陣取ってもいられる。マニアさんの動きを視界にいれておけば、フライトレーダーもエアバンドもなくても、なんか妙なもんが出入りするのは気配で一目瞭然。
※線路だろうが空港電源車だろうが怖いものなしセキレイさんとか
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実はヒヨちゃんとは親戚じゃないぞいそひよさんとか、はたまたミサゴくん、ノンビリと入り江に浮かぶ鴨類やら鵜くん、バンさんなんぞ、生身の飛ぶ方々もいっぱい見物できまするぅ。雀どもやら鴉、ドバなんぞは案外とおりませぬ。

ほれどうじゃ、施設はバッチリ整って、でも羽田やオヘアみたいにぐちゃぐちゃに混んではいない空港って、格好のノマド場なのじゃよ。そういえば、住所を持たず空港で生活してる奴の映画って、どっかの機内で観たことあったなぁ。

かくて、まずはスタバで1時間半作業。ナゴヤ飯屋のランチで地元産業育成GOTOセット飯1時間弱。
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昼過ぎからはデッキに出て、ちょっと雲が出てきて良い按配の緩い逆光になってきた冬の暖かい日差しの中でウトウトして三時間しか寝てない前頭葉を少しでも夜に向けて治していると、マニアさんたちの動きが慌ただしくなってくる。午後2時半前、小牧空港の真上を突っ切って市内を横切り、やってきました
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セントレイアとシアトルはエヴァレット工場名物、空の超大型専用トラック夢運びくん、御到着でありまするぅ。

うううむ、正直、ベルーガくんみたいなビックリ感がないのは、お腹にデッカすぎる腹巻きつけちゃってるけど、顔そのものはお馴染みのジャンボまんまだからなのかなぁ。

南風着陸だったので、残念ながらギャラリーの目の前を威風堂々横切ってはくれなかったものの、海の向こうのお伊勢様を背景に滑走路をいっぱいに使って南の端まで行き、名古屋市だかに造らせちゃってる専用の78部品搬入スポットへと真っ直ぐ入っていきましたとさ。

さても、冬の日はどんどん傾くぞ。ノマド作業もそこそこ出来て、明日明後日頑張れば、なんとか月曜朝にver1.01納入も成りそうだ。さっさと名鉄で金山まで戻り、地下鉄で栄へGOTO!コロナ大減便がなければ、栄までの直行バスもあるんだけどねぇ。

おされなナゴヤ高校生がたむろする栄のスタバで薄暮の時間を過ごし、食いっぱぐれのままにここまでやってきたお目当てのパスカルくん指揮するベートーヴェンのあんたなんでこんなにヘ長調が好きなのさちっちゃな交響曲を堪能し(あたしのお気に入りは、第1楽章展開部後半の第9第1楽章のテストみたいなところさっ)、夜の9時を過ぎて駅弁半額もってけどろぼーやってるキオスクで「なごや三昧」なるえげつない弁当530円也で購入し、ホームで空いている唯一の売店でビール買って
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朝と同じくらいの感じのガラガラのシンカンセン最終列車で新帝都に到着すると、もう深夜まであと少し。シンカンセンホーム掲示板には、もう先の列車がありません。
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なぜか始発は遅いくせに、夜は深夜過ぎまでお値段倍額都バスが走ってる。大川端まで、あとちょっと。テープ起こし仕事は…まだまだ先は長し。

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お願い:2週間隔離で入国した室内楽アンサンブルは? [パンデミックな日々]

「音楽業界」と「パンデミックな日々」の両方カテゴリーのお願いです。

毎年日本演奏連盟が発行しております「演奏年鑑」という媒体があります。数年前から、情報公開の諸問題が語られるようになり、どうやら一般販売がなくなってしまったらしい年鑑ですが、音楽学校の図書館などには完備されるでありましょうから、眺めようと思えばそれほど困難なく見られる筈。無論、上野の音楽資料室なんぞにも入りますし。

師走も半ばとなり、いよいよそっちの年鑑総括原稿のひとつを考えねばならない季節となってきました。今年は特に「コロナの年特集」という編集はしないとのことで、まあ、淡々とやればいいわけでしょうが、とはいえ、例年にはなかった情報も必要となる。

そのひとつが、「外来演奏家の招聘状況」でありまする。例年ならデータはいくらでもあるのだけど、今年は「予定されたけど来られなかった」「チケットも売ったがキャンセルになった」「やるかやらないかギリギリまで判らず、結局、やった」とかいう例がいっぱいありそう。日本の例ではありませんが、ゲルギエフ指揮マリンスキー劇場が10月初旬にパリで引っ越し公演を行ったのだって、ギリギリまで判らず、恥ずかしながら数日前までキャンセルだったと思い込んでた。だって、フィルハーモニー・ド・パリの公式日程表、事前には全く挙がってなかったんだもん。ゲルギー、日本だけじゃなくて世界各地で相当無茶やってる、ってことでんな。流石プーチン友達、「今年最も活躍した指揮者」決定だなぁ。

そんな中、先月のヴィーンフィル騒動の頃から、「日本での2週間隔離を前提に来日し、演奏会を行う」という外来演奏家がポツポツ出始めた。指揮者では今日は名古屋で練習してるパスカルくん、昨日に読響振ったヴァイグレ社長、広響今年初の外国人指揮者というフィドセーエフ、N響も第九をまさかのエラス・カサド、そして東響もいよいよノット御大登場とのこと。各オーケストラが次々と「外国人指揮者」の招聘を再開している。

ソリストも、コジママネージメントさんがぐぁんばったガブリーロフを皮切りに、オピッツ御大やらも来ているようだし。

ところが、所謂「室内楽」系では、二週間隔離来日の話をあまり聞きません。ロータスQの日本に実家がある3人が戻ってきてロータス弦楽トリオをやったのと、葵トリオくらい…なのかな。

さても、そんなわけで、皆々様にお教えを請いたいのは以下。コロナ騒動以降の室内楽(二重奏から九重奏くらいまで)の演奏会で、来日後の2週間隔離を経てコンサートなり、コンサートツアーを行った事例はありますでしょうか。「こんなのがあるぞ」という例があれば、お教え下さい。なんせ、殆ど告知なく演奏会が行われていることがある今年の状況、とんでもない名前を落としてしまう可能性もありますので。

よろしくお願いします。

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「奏」コロナ総括号 [パンデミックな日々]

2020年も年末進行がギリギリの状況になってきた今日この頃、大阪の日本室内楽振興財団が年に2回発行する広報誌、というか、機関誌というか、「奏」の2020年冬号が世に出ました。なんとも有り難いことに、PDFでどなたにもダウンロード、全ページお読みいただけまする。ほれ。
http://www.jcmf.or.jp/about-jcmf/pdf/magazine/vol54.pdf

一昨年くらいから、創刊以来の「ヨーロッパの何やら綺麗なホールや劇場のある風景」といういかにもヨーロッパ泰西名曲をやるぞぉ、って感じのパッケージから一転、イラストレーターさんの個性が明快な表紙になってます。今回も、訳あって表紙の没稿というか、別案も眺めさせていただいたんだけど、そっちも含め、なかなかセンスが良いなぁ。大阪っぽい(と勝手に想像する)どぎつさはないけど、室内楽っぽい手作り感が漂ってくるし。

なお、2011年以降のバックナンバーはこちらでご覧いただけます。もう、顔つきだけでも20世紀前半の「優雅で素敵なお城で室内楽」って感じは変わったと思わされることよ。
http://www.jcmf.or.jp/about-jcmf/magazine.html

で、最新号ですが、「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ」という去る5月に予定されていながら、緊急事態宣言の真っ只中で延期となった国際イベントのスタッフ、コンクールの会場として予定されていたいずみホールの関係者などが、コロナの年に現場で起きていたことをレポートしております。

このような「現場の状況報告」というのは、後の歴史的資料とすれば、責任追求やら大局的議論よりも遙かに重要な一次資料になるわけで、ホントに貴重。正に、こういうものが欲しかった、という情報ですな。やっぱ、いちばん面白いのは徳永さんの漫画だけどさ。

ヴェールズQのインタビューも、この連中もこういう風に自分らの歴史を振り返られる年まわりになったんだなぁ、と感慨深い。インタビューをしているのが同世代の売れっ子書き手というのも、彼らには良かったんでしょう。突っ張り返らずに済むからねぇ。

お暇な方は、是非ご一読あれ。各業界でこういう基本的な纏めが出てくると良いんですが。

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ゆふいん遙かなり [たびの空]

急な用事で、来週末にゆふいんまで行かねばならなくなりましたです。

隠すようなことではなく、前、というか、元湯布院音楽祭実行委員長のKさんが、お隣さんの小林道夫先生の年末恒例、上野での《ゴールドベルク変奏曲》演奏会のために出てくるついでに話をする予定だったのだけど、それが急にキャンセルになった。道夫先生の演奏会がキャンセルになったのではなく、Kさんの新帝都状況がキャンセルになった。「キャンセル料1万6000円もとられちゃいましたよ…」と仰ってる。実はK実行委員長夫人は大分の病院に勤務するお医者さんで、そちらからの強い要請で上京中止となったとのこと。えええ、なんじゃらほい、と思ってたら、昨日、こんな報道が。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a2d9dfabcdd5d48c42d8362a896d0882c60a9642
http://www.kamenoibus.com/topic/pdf/20201206203128.pdf
ううむ、大分市内や空港と湯布院を結ぶ大動脈たる亀の井バスの運転手さんがコロナ陽性と判明したそうな。なるほど、これは大事だなぁ。

てなわけで、しょうがないからこっちから出かけて、でもK氏宅には泊まらずちゃんと別に宿を取りさっさと用事を済ませ、道夫先生の演奏会の日に間に合うように戻ってくるべーか、ということになった次第。考えてみたらアドヴェントの頃にゆふいんに行くなんて…そうだなぁ、いちどだけあったっけ。かつて音楽祭ボランティアスタッフが寝泊まりした亀の井別荘の別館というか、社長宅の隅っこに転がり込んで、冬の盆地の寒さを痛感したっけなあ。

かくて、飛行機と宿がついた格安パックを慌てて物色し、実質1日仕事にするために木曜日の午後の半端な時間でいちばん安い便で行き、土曜日の午後に戻ってくる手配をちゃっちゃっと済ませてしまう。んで、夕方になって雑務終えて、ええと、大分空港4時半着だから、6時には到着しますとKさんと宿屋には連絡を入れておこうか、飯もKさんの家に行って酒飲みながら喰らうわけにはいかんコロナ情勢だからなぁ…と空港から解体中の(多分)湯布院中央公民館の隣のバスターミナルまで行く亀の井バスだか大分交通だかの時間をチェックするかぁ、と空港のホームページを眺めたら…あれ、湯布院行きの時刻表、ページはあるけどスッカラカンじゃないの。大分駅方面行きの時刻表はちゃんと出てくるのにさ。

バタバタ調べたら、なんとまぁ、緊急事態宣言が出された4月頭から12月20日まで、湯布院バスターミナル行き空港バスは運休中だそーなっ!おおおおおお…

空港連絡バスというのはどういう時刻表表記をするのか知らないけど、定刻4時25分着となってる便に4時半と4時35分の大分行きバスが接続しているのだろう(これは荷物は預けられないなぁ)。で、別府まで行き、湯布院行きのバスに乗り換える、ということになる。ところがこれ、時刻表を見る限り別府での湯布院行き乗換は考慮されていないようで、かなり厳しい。うううむ。ちょっとでも飛行機が遅れたり、荷物出てくるのを待ってる団体さんとかいたら、空港連絡バスはいくらでも待つだろうけど、乗り継ぎ予定の湯布院行きはそんなこと知ったこっちゃなかろーに。別府で1時間の待ちになってしまうかも。

じゃあ、少し面倒だけど大分駅まで行き、久大本線に乗ってしまおうか、どうせこの日は着くだけだからさ、と思ってそっちを調べたら…ななな、なんということでしょう。
https://www.jrkyushu.co.jp/railway/notice/index.html
由布市役所がある庄内までは走ってるけど、そこから先はバス代行になってるじゃあないのぉおお!

コロナ騒動が一段落ついたかに見えた夏休み前、天ヶ瀬温泉を抜ける久大本線が大雨でやられたのは報道されましたけど
https://www.youtube.com/watch?v=tELo9mQJ51A
まさか夏休みも過ぎ秋も終わり師走になっても、まだ久大本線が復旧していないとは。観光列車で稼ぐ気まんまんのJR九州にしてこれだから、JR北海道だったらそしらぬ顔で廃線にしてしまいそうな勢いだなぁ。

庄内から湯布院までバスに乗り換えるとなると、ここだけで延々半時間もかかるようだ。そもそも久大本線はここから先は観光と免許がない高校生の通学だけの路線ですから、ある時間を過ぎればそんなに走ってないし。

てなわけで、新帝都は羽田を3時前に出て、半島隅っこの半分海上空港に4時半前に到着してから、別府の向こうに聳える由布岳麓の盆地に至るのは、上手くいっても7時前くらい。ヘタすると8時を過ぎることになりそーな。

うううううむ、なんだか、バブルの終わり頃に湯布院に通うようになった頃、まだ福岡から大分に向かう高速道路が湯布院に到達していなかった懐かしい時代に戻ったような気分になり、思わず青空文庫から中谷宇吉郎の「由布院行」なんぞ引っ張り出してしまった師走の晩なのであった。

「この道位、自動車で馳はしって気持のよい所は少いだろう。何しろ三千尺じゃくの峠を越して、由布院の盆地が二千二百尺の高さなのである。六里の高原を、一時間半自動車が走りつづける。山が急なために、道は色々に折れて、渓たにに沿いながら登って行く。アメリカの活動によく、広々した高原を見渡しながら、自動車が山腹を縫って走るところがあるが、丁度あのような所なのである。大きい岩の蔭かげで急に道が折れる時など、自動車が丁度天へ馳かけ昇るような気がする。岩を越して、その裏に脈々として続く道を見るまでは、随分冷や冷やすることもある。時々ふり返ると、別府湾がだんだん低く小さくなって行く。登りつめた頃から、周囲は茅かやの草原になる。鶴見山つるみさん、由布山のなだらかな麓ふもとに、針葉樹の黒い密林が望まれる。そして緑の高原が遠く続いて、ゆるやかな起伏に沿って、所々に黒土の道があらわれている。自動車は安心したように全速力を出す。ここまで来ると、急に空気の冷ひややかさに気が付く。」(中谷宇吉郎)
https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/53209_49816.html

ゆふいん、100年経っても、やはり、遙かなり。

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公開リハーサルは曲目解説ではない [音楽業界]

昨晩、新浦安駅前の浦安音楽ホールで、クァルテット・エクセルシオが「ベートーヴェン弦楽四重奏全曲演奏会公開リハーサル第2回」を開催いたしましたです。
https://www.facebook.com/QuartetExcelsior
んで、やくぺん先生の世を忍ぶ仮の姿が、「公開リハーサルの司会解説」なんて珍妙な役回りで舞台上手に控えることになったのでありまする。

公開リハーサルというのは、演奏会シリーズやフェスティバルでは一種の定番イベント。なにやら珍しいものでもない。やくぺん先生も、室内楽からオーケストラ、オペラまで、様々な「公開リハーサル」を眺めてまいりましたがぁ…そうだなぁ、公開リハーサルを眺めて「ああそうかぁ」と膝を打つ、みたいなことは、実は、あんまりありません。オーケストラの場合には、現実的には「支援者や関係者、学生に無料で演奏の一部を聴かせる」みたいなことになるのが殆ど。ホントにリハーサルをやってる内容をきちんと聴衆に伝えようと、マイクを使って指揮者の発言を拾ってみたりとか、いろいろ努力をするところは屡々眺めるものの、それによって「なるほど、この指揮者さんはこういうことをさせたいのかぁ」などともの凄く腑に落ちて、翌日の本番の演奏内容が猛烈に良く判った、なんて例は、ぶっちゃけ、あまり記憶にはありません。

室内楽でも、今でも想い出すのは90年代の始め、カザルスホールでグァルネリQが公開リハーサルをやったんだが、これがもう、完全に「リハーサルっぽい事を見せるショー」でしたね。ネガティヴな意味で言ってるのではありません。これはこれ、でした。でも、ホントに彼らが練習をしているところを見せるのではなく、練習でやってることの一部を凄く強調して、ある意味、わざとらしく、舞台で再現してみる、ってものでした。きけば、グァルネリQはリハーサルを公開することなどめったになく、どうやらこのイベントも萩本総合プロデューサーが相当無理を言ってやって貰ったとのこと。なかなかショーマンやねぇ、おじいちゃん達。

ともかく、リハーサルで行われていることをギャラリーがぼーっと眺めていても、殆どなにも判らぬ。それをなんとか判らせよう、練習で起きていることを可視化しようと、昨今ではテクノロジーを用いてろいろな試みも成されている。どうやらいちばん可能性があるのは、「演奏家たちが練習しているところをライヴで映像と音を収録、解説者やコメンテーターがニコニコ動画の画面書き込み機能などを用いて実況するのをスクリーンやスマホ画面で眺める」というものみたいですな。日本語文化圏でも、デジタル・ディヴァイスに対する抵抗が少ない30代以下の世代では、そんな試みも始まっているようですし。

さても、いずこも同じ高年齢聴衆さんが多い浦安音楽ホールさんでも、コロナでスタートが遅れたとはいえ、実質2020年シーズンに新帝都首都圏で唯一になってしまったベートーヴェン弦楽四重奏全曲チクルスの付帯事業として、「公開リハーサル」をやることにした。でも、ただリハーサルを公開したって、スコアにしがみついて眺めたとしてもやってることがどれほど判るやら。リハーサルって何をやっているのか、ちょっとでも納得出来るような方法で示せないだろーか…

というわけで、今を去ること数週間前、ともかくやってみて、いろいろ批判苦情文句が来たら少しでもフィードバックする形で良くしていきましょう、ってベートーヴェン的イケイケ気分で、最初の「公開リハーサル」第1回をやってみたわけです。これが公開リハーサル第1回のリハーサル風景。
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舞台にはエクが座り、後ろに大きなスクリーン。上手に司会者というか、要は突っ込み役のやくぺん先生と、解説及び投影画面譜めくりという重要なお仕事担当のカッセル(だったと思う)の劇場で何年か弾いて日本に戻ってきて、今は室内楽や教育活動をなさっているヴァイオリンの高橋渚さんとが座っている。エクの4名は、何食わぬ顔で、まるで聴衆なんていないかのように、普通に練習を始める。一応、喋っている声はマイクで拾えるようになってます。

渚さんは、「ながらの春音楽祭」でエクのセカンドを弾いたこともあり、自分でもエクとして練習や本番を行ったことがある経験者でありまする。要は、「5人目のエク」ですな。ですから、勿論、急に音楽を止めてボソボソっと誰かが何かを呟いても、それがどういう意味で、何をしようとしているかは判ります。とはいえ、わしら聴衆には判らぬぞ。んで、手元のパソコンで今エクが議論しているところのページを追いかけてくれている渚解説委員に、「今、なにやってるんですかぁ?」とやくぺん先生がアホな質問を投げ、それに「今、この音にもっと重さが欲しい、と言ってます」「重さって、音量が足りない。ってことですか」「いえ、音色というか、響きの質というか、弓の速さとかでも違ってきますし…」って。

そんな風にして、1曲につき30分弱、エクの練習とはなにをやっているのかを、演奏者の視点からお伝えしようとしたわけですわ。無論、この時間ではひとつの楽章の3分の1も終わらない。ホントに、練習のごくごく一部を除いていただきました、ってこと。あまり見せたくないけど、これが抜粋。
https://www.youtube.com/watch?v=vb5D29WTEKs

そんな最初の試みの後、練習室に座って見下ろす熱心な数十人の聴衆から、様々な声をいただきました。「解説や突っ込みが煩くて、エクの喋っていることがきこえない」「エクがやろうとしていることに集中できない」とか、散々な評判だったわけでありまする。

皆様からの批判非難の声にどうお応えするか。昨日の第2回を前に、やくぺん先生としては決断をしました。それ即ち、「出来るだけ喋らない、曲の説明は一切やらない」って2点。

この「公開リハーサル」で聴衆の皆さんが知りたいのは「演奏を創るときにエクが何を考え、何に気をつかっているか」を知ることでありましょう。「今演奏されているのが冒頭のモチーフから引き出された第1主題の前半部分なのである」とか「このスビトピアノはなぜかヴィオラのパートには書いていない」とか、そんなことじゃない。そんなの、自分で勉強してくれば判ることです。ベートーヴェンの弦楽四重奏なら、今時、曲の説明はググればいくらでも出てきます。楽譜だってよりどりみどり。オリジナルの自筆譜ですら、ボンのベートーヴェン・ハウスのアルヒーフにアクセスすれば貴方のパソコンで無料で眺められます。そういうとんでもない世界になっている。

だから、もう曲について喋るのは止めましょ。ともかく、エクが何をやってるかを、実際に弦楽四重奏を弾いている人が教えてくれる。それで十分じゃないか、ってこと。

ぶっちゃけ、第1回では作品127の冒頭を「説明」しようとしてしまい、「最初のEs-durの和音が楽章で調が変わりながら3回出てきて、3度目はC-durになるですよぉ、ほぉら」…なんて喋ってしまい、エクがやろうとしていた和音の響かせ方の微妙な質の違いの練習を、聴衆の皆さんに聴き取り難くしてしまったやも。あれはマズい。今回はしゃべらんぞぉ、つっこまんぞぉ…

さても、どういう結果になったか、正直、なんとも言えないところです。が、まあ、とにもかくにも《ラズモフスキー第2番》冒頭と、作品135終楽章の最初の3ページくらいを、リハーサルのリハーサルでエクがやってることを把握し、そこで出ていた問題が聴衆の皆さんにも共有できれば良い、という気持ちで臨んだのですが…

なんと、リハーサルのリハーサルの時は、「《ラズモ2番》頭の和音の二つ目のチェロと他の楽器の音の厚みの違いをどうやってバランス良く響かせるか」、「長いクレシェンドの中で和声が切り替わっていくところをどうやってきちんと聴かせるか」なんぞをやってるな、よおおおおし、なぁんて思ってたら、リハーサルの本番(?)では全然違うことをやってくれるじゃないのさ、エクの皆さん!作品135に至っては、「4楽章冒頭に書いてあるEs muss seinについては今日は説明しませんから、皆さん、自分で曲目解説とかみてください」なんてあたくしめが客席に喋っちゃったのに、いきなり「この2音目のmussの母音の重さってさ…」なーんてバリバリにそこの話を始めちゃうエクだったしぃ、いやはや。

そんなこんな、どんなに練習箇所が動いてもきっちり譜面をめくってフォローしてくださった高橋渚さんにはもう、ひたすら感謝しつつ、今回も試みは試みとして道半ば、という感じでありましたとさ。

ま、なんであれ、聴衆の皆さんには「弦楽四重奏の練習って、アンサンブルが合うとか合わないとかだけじゃない、もの凄く細かい、微妙なことをやってるんだなぁ」とお判りになっていただければ幸いなんでありまするが。

次回はまだまだ正月気分の1月8日、いよいよ、《大フーガ》のリハーサルです。譜めくり特訓をせねばっ。

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告知:柿の木差し上げます [葛飾慕情]

マジです。樹齢52年程、今が盛りで毎年200個以上の渋柿の実をつける葛飾巨大柿の木、欲しい方に差し上げます。
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ただし、勝手に持って行ってくれ、ですが。高さは二階屋を超える程度。
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この場所にあり続ければ、あと20年くらいはこの調子で実をつけると思います。

なお、蜜柑とハナモモは行き先が決まりました。

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ベートーヴェンのお誕生月になったぞ [弦楽四重奏]

世間がコロナ再爆発だなんだで相変わらずまともならざる状況、どうやらこんな世界はまだ数年は続く、ホントに戦時下に近いものになりそうだと感じさせられる今日この頃、皆様、いかがお過ごしでありましょうぞ。

そんな世界であろーが、ベートーヴェンさんの250回目のお誕生日たる12月16日(ホントは判らないだの、いらぬ突っ込みはしないよーに!)は刻々と迫っているわけでありまして、その当日には池袋では読響さんが2週間ホテル住まいも明けたヴァイグレ社長で目出度くダイク、上野の杜では藝大の先生達が隠れた傑作セプテットなんぞ、そしてディズニーの世界の向こうではエクが作品135なんぞでお誕生日を祝ってくれる新帝都なのであーる。

とはいえ、それでお誕生日のお祝いが終わるわけではない。そー、大晦日には先頃没した「最後のマネージャー」小尾翁を偲ぶように恒例の「ベートーヴェン弦楽四重奏名作選」が今年も行われまする。
http://www.millionconcert.co.jp/concert/detail/2020_12/guide/201231beethoven_sq.html
現時点では席数を限らざるを得ないとのこと、結果、お値段もちょっとだけ値上げさせていただいてます。これはもう、仕方ないでしょーねぇ。さあ、今からでも遅くないから慌てて予約すべしっ!

今年はもうひとつ、あまり目立っていないけど毎年この時期に演奏会を行ってきている弦楽四重奏団が、楽聖を纏めて演奏するイベントが用意されています。こちら。
https://www.kcf.or.jp/tiara/event/detail/?id=3837
かつてのN響のセカンド頭、ってよりも、ゼフィルスQの第1ヴァイオリンを務めた山口さんが率いる団体で、年の暮れのティアラこうとう公演に全力を投入する、ってやり方をしてきている。満を持して12月22,23,24日の三夜連続で作品127から最後までの全曲を演奏しよう、ってこと。面白いのは、作品131と《大フーガ》を並べるという2日目の演目で、どうなんでしょうねぇ、こういう風にすると両作品のモチーフが似てると判る…ってこともないだろーなぁ(似てるといえばみんな似てるもん)。それだったら作品132と並べる方がありかもしれないわけだし。

ま、賢人山口翁がなにも考えなくやる筈もない。真意を知りたい方は、クリスマスイブイブの夕方に半蔵門線に飛び乗っておくんなせぇな。

やくぺん先生ったら、ことによるとこの辺り、ちょっとばかり野暮用で新帝都を離れねばならぬかもしれぬので(無論、この列島内ですけどね)、足を運べるかなんとも判らぬ。ううむ。

月末に向けてシンフォニーやらピアノ・ソナタやら、はたまたヴァイオリン・ソナタなんぞもじゃんじゃん演奏されるようで、流石にちょっとは記念の年らしくなってきたかな。

それにしても、先頃《ハ長調ミサ》はBCJさんが立派な再現をしてくれて
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やっぱり《ミサソレムニス》でのリベンジを待つ、という曲だと納得させてくれたものの、《ヨーゼフ二世追悼カンタータ》とか《橄欖山上の基督》とか、今年じゃないとやれそうもないいくつかの作品は、なんだか7年後までおあずけになりそうだなぁ。そういえば、何故か《ディアベリ変奏曲》も殆どやられてないように感じるんだけど…

御年250年の老体に鞭打って、まだまだぐぁんばれ、ベートーヴェン!

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