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コロナの秋の終わりに [パンデミックな日々]

「世界大戦」レベルの全面戦争が実質不可能な21世紀にあって、世界史的には第一次大戦やらと同じような扱いの記述になるであろう「COVID-19の年」となった2020年、霜月も晦日が更けていき、いよいよ新暦師走に入ろうとしております。

某音楽専門誌に「コンサートベストテン」というなんとも罪深い企画があり、その「1年」というのが「前年の12月1日からその年の11月末日まで」になっておりまして、あたしら売文業者とすれば今日が一年のオシマイの日なのでありまする。うちらの業界とすれば、書き手がどういう関心を持っているかを示す一年のレジュメというか、領収書というか、編集者や読者の皆様に向けての「あたしゃこういう視点から業界を眺めてますよ」というシラバスというか、ま、そんなもんであり、一両日中に編集部に提出せにゃならん。これで一年が終わる、って感じの年中行事でんがな。この依頼が来なくなったときが、ホントに売文業者としての現役引退、って感じかな。

昨年に「世界のメイジャー室内楽コンクールを全て追いかける」という現役第一線からの引退を表明したやくぺん先生の世を忍ぶ仮の姿なれど、世界がコロナになってしまい、世の中の方が俺に付き合って隠遁しちゃったみたいなことになってしまい、なにながにやら判らんことになっているとはいえ、今年2020年の回顧は、ことによるとやくぺん先生の30年くらいの現役売文業者キャリアの中でも最も重要かも知れません。戦時下の池波正太郎やら古川緑波の日記みたいなもんですわ。フランス革命家の一市民の日記、なんてのもあるわなぁ。そんなような意味での重要さ。

で、先程一年を締め括るに相応しい會田瑞樹氏の打楽器リサイタルから戻り
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昼間っからの「この12ヶ月の演奏会総浚え作業」にひとつのピリオドを打つわけであります。

では、発表いたしましょーぞ。この1年のやくぺん先生、客席で座った演奏回数は総計132回でありましたっ。

うち、外国はたったの6回のみ。昨年12月のアムステルダムでのダネルQのヴァインベルク・チクルスと、その合間に眺めたネザーランド・オペラの《ヴァルキューレ》だけでありまする。で、2020年は1月のパリとアムステルダムの弦楽四重奏ビエンナーレに行かなかったし、悩んだ挙げ句に結局は10月のパリの《光の火曜日》も行かなかったので、なんとなんとおよそ30年ぶりに一度もこの列島を出ない年となりました。うううむ、ホントに一般庶民には鎖国状態でんがな。

参考までに2019年の同データを記せば、通った演奏会は総計207回(うち外国は39回)ということになってます。無論、コンクールやフェスティバルで「午後の7時からコンサートが始まります」みたいな意味での回数勘定が出来なくなってるイベントがたくさんあり、その辺りはどんぶり勘定でカウントしてますけど。実質3ヶ月なくなって減少数が75回って、まあ、感じてるよりもペースは悪くない、ってことかしらね。

なお、去る12月から2020年2月26日のアベそーりイベント自粛要請、更には花祭り直前の緊急事態宣言までの4ヶ月の最後の平和な日々に限れば、3月に入り激減した時期のびわ湖ホール《神々の黄昏》関係者のみのGP見物とかも含めると、演奏会数は総計40回。何故か1月が異常に原稿が多く、このペースだと年収一千万円だっていくぞ、でも死ぬぞ、なんて思ってたのが夢のよう。ここまでに、今年聴いたの唯一の外来オケたるサロネン指揮フィルハーモニア管とか、ふたつしか聴いてない外来室内楽団たるFluxQとかベネヴィッツQとかを聴いてはいる。

そうこうするうちに「東京春音楽祭」が始まる頃から横浜のクルーズ船で騒動が始まったぞ。春節頃には武漢が封鎖になり、あれよあれよ…びわ湖の《神々の黄昏》無観客上演を最後に外国からの同業者と遇うこともなくなり、ゴールドベルク三勇士のベートーヴェンのピアノ三重奏全曲だけは旧奏楽堂で無事に終わる頃には、入口に消毒液が設置されマスクをして外出するのが常識になり始めていた。そして、イースター頃から延々と夏の初めまで、大阪国際室内楽コンクール&フェスタが吹っ飛んだ世界全体引き籠もり状態。2日の筈の定期が3月28日の一度だけでオシマイになってしまったNJP定期を最後に、6月半ばのミューザ川崎の試演コンサートまでまるまる12週間、一切のライブ演奏会に足を運ばず、個人的には家庭内感染の危惧から葛飾オフィスに実質上別居状態で引き籠もる異常な初夏の日々が続いたわけでありました。

再開後の半年で90回の演奏会に通ったのは、ともかく分母を増やさないと、という義務感が半分。結果として、コンクールを最初から最後まで眺める作業が一度もないし、音楽祭もないし、セミナー見物なんぞもまるでないけど、なんとか室内楽はこの1年で50数回、現代音楽系は20回程度は足を運べたので、業界的な責任は辛うじて全うしたかな、という気にはなっておりまする。はい。

あ、そろそろ日付が変わるので、この駄文も半端なままでオシマイ。いきなり結論だけ言うと、2020年のニッポンの音楽業界でいちばん元気があったのは、現代音楽と打楽器業界だったように思えます。やくぺん先生が勝手に「アーティスト・オヴ・ザ・イヤー」を選ぶとすれば、先程まで多彩な撥の魔力を振り撒いてた會田瑞樹氏と、この無茶な時期に若い才能をまとめ来年に見事に繋いだ加藤訓子氏で決まりでんな。

ライヴとは別の音楽家の生き延び方として「Webでの配信」というテクノロジーが一気に雪崩を切って表に出てきたものの、これがどのように状況を変えていくか、まだ見えない。なにせ、評価をどうするか、新人から巨匠までありとあらゆる人が駅前で「私の詩集を買って下さい」を始めてしまったようなもんで、それらをどうやって俯瞰していくか、まるで手立ては見えていない。演奏会にしても、今年は既に予算が付いていたのでやれた公共主催者ながら、来年はコロナ予算であらゆるセクションをどうやって大幅削減するのかが各自治体12月定例議会の最大の議題。破産寸前の民間の疲弊と相まって、来年の春以降は我らが業界が静かにジワジワと津波に沈んでいくようなことになるのは、みんななんとなく判ってはいる。

さても、どうなるか。2020年も師走に突入。鬼の笑いが引きつってら。

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川向こう新開地の交響の丘に作品131が響く秋の終わり [葛飾慕情]

荒川放水路の東、かつては隅田川以上の暴れ川だった中川が大きく蛇行し江戸の入り江へと向かう辺りに放水路が出来、水が出ないようになったのはオリンピックの前の年のこと。いつ洪水になるか判らない悪所は放水路前提に巨大な団地が整備され、水戸街道が北を走っている便利さもあり60年安保過ぎくらいからお化け煙突眺める江東地区から町工場も移ってきて、いつのまにやら新橋まで地下鉄と繋がる京成電車のターミナル駅も出来てしまい、やがては環状道路もまわってくるという大発展が期待される場所となったのであーる。

ま、結論から言えば、景気の良い成長は安保団子をこね損ねた後の73年オイルショックで本格的にオシマイとなり、諸条件を考えれば大いに発展しても良い筈の葛飾区まんなかの街は、近隣の寅さん柴又、りょうさん亀有、はたまた飲み屋天国立石などに囲まれた「葛飾のステルスタウン」と呼ばれる名も無い場所として残り続けたわけだがぁ…区の真ん中ということで京成電車線路と水戸街道に挟まれた畑や原っぱに区役所があり、その近くには区立武道館と公民館も設置されていたのであった。うううむ、葛飾だってスポーツや文化はあるのじゃわい。

んでもて、うちのオヤジの診療所に患者としてやってきてたO区長ったら、川向こうにまで押し寄せたバブルの時代に何を思ったか、亀有から新小岩を結ぶ京成バスが区役所に向けてちょっと横道に入る角にあった公民館&武道館を取り壊し、文化施設を建てると言いだし、勘当されたやくぺん先生がカタツムリの如く膨大な書籍を抱えて各地に転々と庵を結ぶ転居を繰り返していた頃、正にバブルはじけた直後の1992年に、何の因果やら「葛飾シンフォニーヒルズ」なる名称の席1300くらいの大ホールと300席くらいの小ホール、それになんのかんの練習場やら集会場をまとめたような施設を竣工してしまったのであーる。
https://www.k-mil.gr.jp/institution/symphony/index.html

それから幾年月、区民公募の結果、寅さんが生涯で唯一出かけた海外旅行先というだけの理由で(ホントです!)姉妹区契約を結んでいるヴィーンのドナウ近くの下町との関係から大ホールはモーツァルト・ホール、水元公園に咲き誇る区を象徴する水生植物ということから小ホールはアイリス・ホールと名付けられた施設は、最初は区の文化財団、あるときからは指定管理に入った企業によって運営され、今に至っているのであった。区民オケの葛飾フィルはそれなりに活動をしており、京成電車で15分の上野の杜から藝大学長が指揮にやってきたりしてさ。

バブル期に設計された小ホールには、案外とメイジャー好きな指定管理者さんが購入した日本ツアーをする室内アンサンブルがひょこっとやってくることもある。なんせ欧米国際線が羽田にはなかった頃には、最寄り京成電車駅から追加運賃不要の特急乗せちゃえば1時間弱で成田空港第1ターミナルに到着する立地、日本公演の最後を葛飾で行い、駅前のちっちゃな安ビジネスホテルに泊めて、「朝5時起きで電車乗って帰国ですから」なんて無茶な日程が組めたので、意外な団体が弾いていたりして。なんせ、ここで公演終えて明日はミュンヘンに帰るヘンシェルQが、終わっても打ち上げするところなくて、ホールから徒歩6分(Googleマップさん曰く)の勘当中のやくぺん先生御実家に放蕩息子込みでいきなり押し寄せ、オヤジをビックリさせたこともあったり。亡父は死ぬまで「あの凄いべっぴんさんのドイツ娘」って繰り返してたっけ。いまはもう、一昔前なら徴兵されてた少年のお母さんだどさ。まだ売れてない頃のエベーヌQも来たことがあったなぁ。

そんな葛飾区民の遙かシベリア向こうの音楽の街への勝手な憧れ込めた場所に、モーツァルトならぬベートーヴェンの250回目のお誕生日を祝うべく、こんな凄い人達がやってきてくださったですぅ。
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レギュラーの原田禎夫さんは残念ながらバイエルン(だと思う、今は)のお宅を出られず不参加で、久しぶりにお姿を拝見する北本氏が助っ人。「巨匠がクァルテットを知り抜いた専門家とのコラボで弦楽四重奏の譜面に常設団体ではあり得ない発見をする」タイプのフェスティバル・クァルテットでんな。ベートーヴェンの後期を抱えてツアーするなど、日本では案外、ありそうでない。ミドリさんの年末の東アジアツアーとは相当に性格が違うけど、似たような団体…でもないかなぁ。

押し寄せる老人ばかりの葛飾区民音楽愛好家の健康を守るべく、今はキョードートーキョーさんが運営の中心になってる指定管理者は、こんな厳重なプロテクトを用意してくれました。
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すげぇ、と思ったら、アクリル板じゃなくて金属のパイプにサランラップみたいなものを垂らしたものだったけど、それにしてもこんなの客席に並べたのは、「コロナの新しい日常」の中でも見たことない。偉いぞ、凄いぞ、葛飾区!凄いぞ、指定管理者キョードートーキョー!
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流石に312以降、都も国も情報を隠匿しているのに区内に振っているセシウムの量をきちんと区広報で告知してくれていた、ちゃんと区民の命を大事にし物価が安いだけが取り柄と区役所の担当者も自虐するKatsuhsikaだけのことはあるっ!

もちろん、こういうメンツですから、いねこさんがバリバリ頑張って形を作り、巧さんがボスの音色に少しでも近づけつつしっかり支え(作品18の4はセカンドが猛烈に重要とあらためて判らされるし、作品131でも変奏曲でのセカンドの役割が際立つ)、第1ヴァイオリンは好きにやって、チェロは必要な場所は歌う、というもの。《セリオーソ》がどういう理由でこういう終わり方をしているかなどには関心は無く、最後の和音がもの凄い音(ポジティヴな意味で)になることが大事、って音楽。

寅さんの眺めたヴィーン、とは言わないけど、これはこれでありなだろー、と思わせてくれる記念年の音のひとつ。

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西に光る天樹の向こう、秋の装いではもう寒くなった空の彼方、最近は毎朝頭の上を跨いでシベリアを越えていく機械鳥を眺めるモーツァルトさんは、今や慣れ親しんだ異郷の地で無茶ばかりの後輩の音楽をどう感じるのやら。

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たびの終わりに北関東のスタバでマンハッタン厄遍庵を思う午後 [たびの空]

世界史に「以後の世界経済を変えたコロナの年」として記録される2020年唯一の2週間の国内ツアーの最後、遙か佃縦長屋勉強部屋から天気が良い日には姿が眺められる関東と東北の境は白河の関まであと一歩、東北新幹線が頭の上を通過するJR西那須野駅から延々とバイパスを真っ直ぐ歩いて半時間ほど、那須野が原ハーモニーホールに来ております。
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ここ、バブル後に竣工された頃は、某著名音楽評論家先生が何故か館長だか顧問だかをなさっていたこともあり、その頃に尋ねたこともある筈なんだが、ホントに久しぶりに訪れたら、こんなところだったっけ、と思ってしもーた。なんだか周囲はこの季節なら百舌さんやらヒタキの方々が縄張りを巡って歩いてるようなノンビリした田舎だと思ってたら、うううむ、駅からの道は単なる地方の郊外。バイパス沿いに車屋や拉麺屋、そしてコンビニの隣にはスタバまであるわいな。
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どうやらこの辺りでは思いっきりオシャレな場所のようで、いるのはここは渋谷カロッポンギか、って若い子ばかり。勤労感謝の日の午後、まるで地方都市の図書館みたいに参考書積み上げてお勉強してる奴も。入口に、「今日は勉強しないでください」って張り紙があって、意味が分からんと思ったのだが、こーゆーことだったのね。

思えば昨晩は、京都駅新幹線口前のスタバで、同じようにパソコン開いて「京都の観光地は三密の危機」と騒ぎ立てられた観光客がお土産満載で新幹線に吸い込まれていくのを眺めてたっけ。

ニッポン列島、狭いんだか広いんだか…

2週間前の日曜日に北九州は黒崎でベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲1日で演奏会というとてつもないイベントで始まったコロナの年唯一のツアー、京都でのエクの五重奏、静岡での長老らの《ガリツィン・セット》全曲、その間に初台のナショナルシアターでの世界初演なんてもんも挟み、富山から名古屋、びわ湖とまわる葵トリオのツアーも無事に終了。そして最後は、アンコールのようにちょっと北関東、やくぺん先生大川端ノマド場からヘリを出して貰えば30分くらいの関東外れで、どうやら木枯らし一号ではないか、って北からの風に赤くなった葉っぱが飛ばされてるのを眺めてます。

実質上の世界第一線取材から引退を表明したら実質上の鎖国状態になってしまい、神様は「お前がちゃんと見てこなかった奴らを、これからはしっかり眺めるのじゃ」と仰っているような今日この頃。ツアーの最後は、思えば10数年前の大阪大会で聴いて以来、驚くなかれ一度たりとも聴いたことがなかった昴21Q。あのベネヴィッツQが文句なしで勝った年に、確かセミファイナルまでは行ったのかな、あのときの連中でどれだけが今日まで生き残っているかは知らぬが、「団塊の世代」一斉オーケストラ退職後に次々とそのポジションを得ていった世代らしく、今はN響やらのメンバーになってるようです。
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[追記:大阪のあと、昨年まで同じメンバーでやっていて、広響コンマスだったりN響だったり。で、N響で指揮も始めてるヴィオラが昨年辞めて、なんとまぁ、シェンクさんにドイツで習っていたというヴィオラが加わったそうな。どうやらチェロさんがこの辺りの方で、年に一度、この会場で演奏会がやれるらしいです。]
んで、聴かせてくれるのは、《アメリカ》と、作品127。この先なーんにも予定が入っていない、お嫁ちゃまの扶養家族必至のやくぺん先生に、「まだまだこれから始まりなんだよ」と仰ってくれるような、変ホ長調の和音がまたどっかーんと響いて、半月のツアーが閉じられる。

日差しがあるからなんとかなるもの、日が陰ったらひたすら冷たい風になりそうな北関東のからっ風に吹かれ、刈り取りも終わった田んぼの中のバイパスを風に吹っ飛ばされる雀たちに頑張れと呟きつつ歩いてくると、お嫁ちゃまから連絡が。なんと、やくぺん先生のマンハッタンの定宿、マンハッタン厄遍庵が廃業になったとのこと。これとか。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2011-01-11
うううむ、思えば20世紀最後の10年くらいから、いったいどれだけあの宿に寝泊まりしたことか。恐らくは、全部を数えれば半年くらいにはなるんじゃないかしら。社長が交代し、でもカウンターで働くにちゃんたちはいつも同じで、JFKからズルズル荷物を引っ張ってきたり、はたまたボストン辺りから誰かの車に乗せて貰って表に乗り付けたり、どんな形であれ到着すりゃ、「はーい、やくぺん先生」と迎えてくれ、サインひとつで部屋が出てくる。クリスマス季節のどうしようもなく混んだタイミングで飛び込んだときだって、カウンターにいた知らないねーちゃんが部屋がないというのに、奥からイタリアンの二枚目店長が顔を出し、いよぉ、って顔をし、ねーちゃんに頸を縦に振ると部屋が出てきたり。世界がインターネットで繋がる前は、到着するや「スピルバーグくん」と呼んでたにーちゃんがあちこちから来ている連絡物や広報資料をごっそり出してきて、さあ仕事しろ、って顔をする。

向かいのアパートにはかつてはミドリさんが住んでいて、ブロードウェイの世界一のスーパーに向かうとスワナイさんが彼氏と歩いてたり、エレベーターの中で上海Qの先代のチェリストにばったり出くわしたり。南にはトスカニーニとホロヴィッツが住んだアパートが聳え、その向こうの72丁目をセントラルパークの方まで行けば、バーンスタインのアパート。そう、林光さんが名曲ヴァイオリン・ソナタ《72丁目の冬》を書いたのもこの辺りという。

北関東の木枯らしに吹き飛ばされるムクドリの群れたちを眺めながら、マンハッタンの家がなくなったことを哀しむ。

あと1時間もしたら耳にする《アメリカ》は、なにか特別にきこえるかしら。

秋のたびの終わり。実は、昨晩、人生最期の大きなたびの始まりを告げる連絡もあったしさ…

楽聖が 往けと背を押す Es-dur

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コロナ下の海外拠点団体大ツアー [演奏家]

世界の歴史に「コロナの年」として記録され、中学生が一生懸命「ええと、新型コロナ流行はぁ、2020年だっけ」と暗記することになる異常な秋、ニッポン列島各地で歴史的なツアーを行ったと演奏史に記録される団体がふたつありまする。ひとつは、まあ、言わずと知れた天下のヴィーン・フィルハーモニー。そしてもうひとつが、我らがベルリン在住のニッポンの若者達、葵トリオでありますっ!

本日11月21日、無能の極みを晒しつつある我らがニッポン政府も流石にこれはマズいと「人の移動の誘導」政策たるGOTOキャンペーンを見直すと発表せざるを得なくなった勤労感謝の日連休の初日、一度塒に戻ってたやくぺん先生が新帝都から久しぶりに混雑するシンカンセンに揺られてやってきた名古屋は宗次ホールで、葵トリオのツアーもあともう1日だけ、って公演が行われました。
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宗次ホール、本日はミュンヘンARD大会ピアノ三重奏部門ニッポン拠点団体初の優勝の葵トリオ、そして明日の前橋汀子Qのセカンドには1984年ミュンヘンARD大会ヴァイオリン部門をニッポン人として初制覇した久保田巧さんが登場、ミュンヘン・コンクール祝祭の秋祭りとなっておりまするっ!宗次ホールのスタッフにそう言ったら、「ああ、そうですねぇ」って拍子抜けの反応でありましたが、うううううむ…

もとい。このコロナの秋、実質上鎖国のニッポンに入国しようという奴は、それがどんなパスポートであれ、何故かヴィーンフィル団員関係者のみを例外に、全ての人類は入国を許可されてから2週間の隔離が要求されております。今この瞬間も、我らが天才指揮者マキシム・パスカル氏が、都内某所で軟禁状態6日目を迎えておりまする。

葵トリオの面々も、ドイツから先月末に帰国、関西某所の実家でそれぞれ2週間の隔離期間を過ごし、晴れてシャバに出て活動を開始。11月10日の東京のコンサートスペースを皮切りに、四国は香川、そして今週頭からは懐かしの富山に入り3日間の「帰ってきました演奏会」を行う。
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そこからサンダーバードで関西に戻り、昨晩は関西のお披露目たるフェニックスホールで演奏。そして本日の名古屋は宗次ホールに、昨年の夏以来の二度目の登場となった次第。ツアーは、明日のびわ湖ホールのオール・ベートーヴェン・プログラムで打ち上げとなり、その後は関空からアムステルダム経由で独に戻り、来月にはレーゲンスブルクでの演奏会が控えておりますが…果たしてこれは可能なのやら。
https://aoitrio.com/concerts/

指揮者ひとり、ピアニストひとりならまだしも、わずか3人とはいえ「室内楽団」の日本列島ツアーが、このコロナの霜月にきっちり恙なく行われ、明日、無事に終わろうとしているという事実は、大いなる快挙として記録されるべきことでありましょうぞ。なんせねぇ、コロナがない幻のタイムラインだったら、今頃はオリパラ騒動も終わり、盟友トランプ勝利を追い風にアベちゃん意気揚々と憲法改定に突っ走る極めて不穏なご時世の中を、あたくしめは17日から23日までの1週間で7公演を敢行するふきのとうホールのベルチャQのベートーヴェン・チクルスに行ってた筈で、葵トリオはなんとか東京だけ聴いて(実際にやられたサロンではない、某公共ホールでの公演だった筈)、本日は雪もちらつき始める札幌にいて「あと2日」とユンケル煽っていただろーに。

現実のタイムラインといえば、本日の宗次ホール公演、いずこも同じコロナ対応公演で、開演前には聴衆は整理番号を貰ってホール前に並びます。時間になると、番号順に呼ばれて、検温され、消毒され、順番に会場に通されるのであります。
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6月以来すっかり見慣れた光景とはいえ、連休初日の夜を迎えようとする名古屋の大繁華街のど真ん中、ホール外に伸びる列は、なんとも異様な風景でありました。思えば、最初に「入口で消毒」ってのをやったのは、明日のびわ湖ホールで3月頭に《神々の黄昏》GP見物したときだったなぁ。明日の本番は無料ネット中継やる、なんて話にビックリしていたっけ。

宗次ホール公演は、エク以来のバンフ招聘団体となったクァルテット・アルパでガッツリとアンサンブルを鍛え上げた弦楽器2人の猛烈に達者なアンサンブルが完璧なバランスと響きを創り上げるフォーレに会場が涙する大盛況。終演後、宗次オーナーも大満足でありましたとさ。
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ちなみにここ宗次ホール、あまり話題になってない「GOTOコンサート」にも参加しております。
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なんだか今ひとつ良く判らぬこの御上主導補助金導入政策、財源はどこだか知らないけど、大丈夫なんだろーかねぇ。

さて、明日はいよいよベートーヴェン生誕250年を葵トリオが祝い、今回のツアーで唯一の《大公》が披露される最終公演です。関西地区の皆様、びわ湖ホールに午後2時に急げ!貴方は後に語られる歴史を目撃し、体験するであろー!

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大先輩に捧げる [シモン・ゴールドベルク・メモリアル]

数年前に新設成った富山県美術館には、「シモン・ゴールドベルク・メモリアル」展示室があります。
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勿論、廃館になった富山近代美術館から引っ越してきたもの。新しいモダンな建物の3階の奥、滝口コレクションの隣の、こじんまりとした、ちょっと目には気付かない控え室みたいな、静かな空間。

展示内容は代わるのですけど、今は、五反田のお宅にあった椅子なんぞが鎮座して
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足を踏み込むと、まるでお宅を訪れているような、静かな落ち着いた気持ちになれる。誰も来ないしさ。

そして、階下のロビーからは、ベルリンフィルの遙かな後輩がヴァイオリンを弾くラヴェル、この数ヶ月の間、ベルリンでひたすら練習を重ねた響きが、嫌でも漏れ聞こえてくる秋の晩。
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ほんのちょっとの繋がりであれ、繋がり、伝わっていくものがある…のだろう。

山根先生、お久しぶりです。三勇士も、藝大の先生になったり、N響のコンマスになったり、頑張ってますよ。そうそう、今の世界が滅茶苦茶になる直前、上野でベートーヴェンのトリオ全曲を弾いたんですよ。お聴かせしたかったなぁ…

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合宿所までの道 [たびの空]

魚津に来ております。先程、ニックたちのセミナーからサントリー室内楽アカデミーの合宿まで、この10数年、無数の若者達が研鑽した場所で、葵トリオがトリオなのに始終相談の練習を終えたところ。
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交流館合宿所隣の森は、数年前にまたいろいろ手が加えられたようで、あの頃はまだ走っていなかった新幹線が足下から地下を抜けて神通川の平野へと出てくる辺りから、ヒヨちゃんの夕方の雄叫びの彼方に、無骨な騒音が響いてら。
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来年度には介護施設かなにかになってしまうという話も流れる交流館
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https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2020-07-25
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2020-05-10
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2020-04-17
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2019-09-23

あらためてつらつら細部を眺めると、確かに維持管理もきちんとは出来ていない感は否めない。こういうバブル期の建物は、決して美しく古びていくことが出来ないんだわなぁ…
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朝っぱらに新帝都を出て、昼前に魚津市が差配している黒部宇奈月温泉からの予約制1000円現金のみの送迎タクシーで、いきなり金太郎温泉に乗り付ける。葵トリオの面々も、東フィル若きコンマスも、仙台フィルのヴィオラを辞してまた帝都に戻ってきたダンディくんも、今や若き人気チェリストとして大活躍の美女も、先頃地元で楽聖のヴァイオリン・ソナタ全曲一挙演奏なんて大仕事やった二児のパパも…あんな顔こんな顔、ほんの数年前に、この大広間で風呂上がりの夕飯を喰らっていたっけ。
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そんな場所も、GOTOってもやっぱりコロナには勝てず、ノンビリ閑散、秋の午後。

温泉を出れば、流石に刈り入れも終わったけどまだまだ緑色の田んぼや畑の向こうに、低い光が射し、まるでPhotoshopで弄ったような鮮やかな秋の色。
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ドバたちとお米大好き雀たち、たまにセキレイさんがピチピチ叫ぶ中を、シンカンセンが真下を貫く辺りまで高速道路越えてまぁあっすぐダラダラ登ってく。そして、半里向こうの熊も出るという裏山の足下に、若者達の合宿所が広がってる。

振り向けば、西に見えるあおい海。あの彼方、遙かシベリアの向こうから、帰ってこれない奴らもいる今日この頃。
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今晩の演奏会は、「アフターコンサート」と題されてます。
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魚津の人達は、敢えて「オカエリナサイ」と言わないのかな。葵トリオは、今晩はどんなに遅くなっても絶対に温泉に浸かるぞ、と申しておるそうな。

湯本への 半里の道を 秋が往く

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《アルマゲドンの夢》という夢 [現代音楽]

コロナの2020年唯一の2週間のツアーの中日、静岡から9時過ぎに新帝都中央駅に戻り、明日の朝一で富山に向かう途中、今日だけ見物可能な新帝都のナショナルシアターでの新作初演を拝見して参りましたです。欧州ツアーで室内楽漬けになってる最中にまるで異質のこういうもんを眺めて頭をリセットするのとまるっきり同じパターンを、この本州島でやっておるわい。
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終演直後、歌劇宮中庭人工池を眺めつつ、思わずfacebookのタイムラインに速攻投稿してしまった素直な感想は、「うーむ、音階上昇と繰り返しとダメ押しの子供の歌…我々は未だ《ヴォッエック》を超えられないのか…」でありましたとさ。

以下、それ以降、いろんな方の書き込みに反応してしまったコメントを列挙しておきます。ツアーの道中、いい加減にピアノ三重奏が嫌になったらどっかでまとめまて最終稿にするかもしれませんし、このまま放置かもしれません。ともかく、「感想になってない感想」以前のメモ書き、ということで。


最後の神さま持ち出し「ハレルヤ」で終わる皮肉をサラッとやって誰も怒らないのは、かの《仏教パルシファル》以来の我が異教徒国ナショナルシアターの面目躍如じゃのー、いやはや。(自分の当稿への追記)


いろんな意味で、我らニッポンの国税で英国圏や独仏の地方都市劇場で上演可能なものを作りやがったな、と思いました(笑)。NYTとクイーンズ地下鉄を見た瞬間、「あ、Music from Japan の枠でブルックリンのアーツセンターとの共同制作だっけか」と思ってしまいました。そういうテイストだったし、最終的にはキリスト教文化圏に持ち出さないと意味がないし。確かに初台なら、この中味でも制作プロセスの途中で余計な文句を言う奴はいないでしょうからねぇ。藤倉氏は賢い!

なんか、アムステルダム辺りがいかにもやりそう(大野氏に、モネやリヨンに持っていく力が今、あるんですかね)。鎖国状態の今年はこういうもんは観られないと思ってましたから、頭の使ってなかった部分を久しぶりに使った感がありました。ただ、《ソラリス》みたいな声の伝え方の実験みたいな要素がなかったのは、大劇場からの委嘱新作だからとはいえ、ちょい残念。レーゲンスブルクの《ソラリス》を池袋というオフブロードウェイでみんな眺めて、それから初台に来る、という理想的な流れだったのにねぇ。(以上、オペラ研究者M先生のタイムラインへの当稿)

オペラは何度も来させてなんぼですからねー(笑)。昨年にサントリーでやっと日本初演された《Written on skin》にも似た、作る側の仕掛けの悪辣さを感じました。ヨーロッパの新作で生き残る作品には感じるものですが、初台では初めて感じた。

これ、いけると思います。ただ、欧州の状況が2019年までとは違いますからねぇ。まずはブルックリン・アカデミー・オブ・アーツで、Music from Japanのスペシャル企画でやるのが最初でしょう。数年前にも藤倉氏のチェロ協奏曲とかやり、坂本竜一氏も来てました。あとは、ホントはモネやリヨンなんでしょうがねぇ。《ソラリス》やってるレーゲンスブルクなんかはありだろうが、今、金があるか。今回のプロダクションで現場通訳をなさっていた方に拠れば、藤倉氏は意外にイギリスの劇場とのコネがないそうな。(同業者で新国立劇場発行「戦後のオペラ」コーディネーターさんのタイムラインへの当稿)


夢、は便利です(笑)。(辛口オペラマニアさんの書き込みへの反応)

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本日《ガリツィン・セット》一挙演奏という壮挙 [弦楽四重奏]

ずっと前から盛り上げねばならなかったのだが、なんせ昨今の静岡でのコロナ第三波でヘタをすると演奏会中止もあり得ると思っていたので躊躇しているうちに、当日になってしまいました。

本日、静岡駅北口ロータリーの向こうのAOIビル、何も知らないと駅前中央郵便局かなんかに見えるビルの中のホールで、このような演奏会が挙行されまする。
https://www3.aoi.shizuoka-city.or.jp/concert/detail.php?public_uid=2645
ほれ、そこじゃ!新幹線のホームからも見えるわい。
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うううむ、どうも上の公式サイトのページも、世間に流れているチラシも、いまひとつこの演奏会の事の重大さをきっちり世間に伝えてくれていないような気がしてもどかしい限りなんでありますが、この演奏会、ベートーヴェン生誕250年記念年にこの実質鎖国日本列島で行われる無数の記念イベントの中にあっても、先週日曜日の北九州でのヴァイオリン・ソナタ全曲一挙上演と並び、ぶっ飛び企画としては二大巨頭のトンデモイベント。やくぺん先生んちでは「こんなアホなこと実行に移すのは、世界でも河野文昭先生かニコラス・キッチンしかおらんじゃろ」と呆れ驚かれている壮大な無茶企画でありまする。

ええ、ご存じの方はご存じのように、第九交響曲を終えたベートーヴェンは、ペテルスブルクの若い音楽好き貴族で《ラズモフスキー・セット》などを書いていた頃にヴィーンに赴任していてベートーヴェンの周囲のエリート音楽好きサークルに出入りしていたロシアのガリツィン伯爵から頼まれ、弦楽四重奏に着手したわけであります。で、何故か異常なまでに好きな変ホ長調和音どっかん爆発で始まる作品127、途中で病気になって死にかけて治ったのでその感謝を長大な緩徐楽章にして突っ込んだ作品132、そして嬉遊曲みたいな気楽で多彩な楽章がとち狂ったフーガで終わる作品130を、3曲のセットとして立て続けに作曲したわけです。

この3曲が《ガリツィン・セット》と呼ばれるわけで、作曲者本人も《ラズモフスキー・セット》みたいな3曲セットで出版する意図があったのですけど、立派なマネージャーだった弟カールは遙か昔に没しており、その息子の甥のカールは可愛がってマネージャー役をやらせていたがマネージャーとしてはあまり腕が良くはなく、作品はバラバラに出版されることになる。さらにはその数年後に作曲者本人が死んでしまって出版の状況を最後までフォロー出来なかったために、現在の作品番号が作曲順ですらないハチャメチャな状態で定着してしまい、最初のベートーヴェン全集を出した出版社がいろんな出版者が出した順番に番号を振っちゃったために、セットの3曲が第12番、第15番、第13番という作曲順やセットとしての意図とは無縁の名前で世に流布してしまい、今に至ってしまった。

うううむ、ヒンデミットの弦楽四重奏曲みたいに、出版社があるときにえええええいっと番号を付け直してくれれば良かったんだけどねえ。

というわけで、一見したところそうは見えないけど、それぞれが優に40分に迫る、場合によっては超える、2020年の今に至るまででもこれを越えるものはない音楽史上最もウルトラ長大な3曲セットの弦楽四重奏集が存在しているわけです。

これを全部演奏すればいろいろなことが見えてくることは、弦楽四重奏を演奏する者もベートーヴェン研究者も、みんな知ってます。だけど、この全曲を一挙に演奏しようなど、誰も考えない。

理由は簡単で、現在の演奏会として確立している「2時間以内で終わって実質上の演奏時間は90分から長くても100分ちょいくらい」という慣例から考えると、極めて扱いにくいからであります。上演時間が休憩含め3時間くらいのオペラなら特に珍しくはないけど、弦楽四重奏演奏会としては普通はあり得ない。主催者としてもこんな半端に時間がかかる演奏会は嫌だし(平日ソワレだったら6時開演かいな?)、弾く側としてもぶっちゃけ1曲がメインになるだけでも猛烈に負担が大きい超難曲を3つならべるウルトラメガ盛りみたいなもんだから、弦楽四重奏団の中で誰かがやりたいと言っても、他の3人はそうそうに賛同してくれるとは思えない。冗談か、と言われるがオチですわ。聴衆としても、絶対に聴きに行くぞという奴らは数十人は確実にいるでしょうけど、猛烈にヘビーで、無理にやってくれなくても良いよ、という愛好家が殆ど。

以上、本日午後3時から静岡AOIで開催される演奏会が、いかに貴重か、お判りでありましょうかぁ。やくぺん先生が知る限り、この無茶な演奏会、かつてやらかしたのはボロメーオQだけでありまする。前述のように、そりゃニックならやるわなぁ、と苦笑し驚嘆するしかない。ボロメーオ会社の他の三人がなんと言っていたかは、敢えて記しませぬっ。

さあ、まだ席があるか知らないけど、今から関東の方々なら新幹線に飛び乗って充分に間に合います。本日3時、静岡AOIへ急ぐべし!やくぺん先生ったら、昨日京都御所前でエクがベートーヴェンの弦楽五重奏と、オマケに作品137のフーガを弾いてくれたのを聴き1泊、これから東海道を遙々静岡まで向かいますぞぉ。

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ドラマトゥルクのいるダイク [音楽業界]

コロナの日常がどーなっているのか、政権が変わってからどうやら人々は気にしないことに決めたのか、良く判らない今日この頃だけど、ともかく秋になってもかつての御上が許した朝鮮半島オランダ出島からの渡来人みたいな音楽の都維納の楽人を除けば未だ実質鎖国状態が続くニッポン列島、それでも極めてローカルに、もの凄く健全に、「ベートーヴェン生誕250年記念」に向けた盛り上がりは始まっているわけでありまして、去る日曜日の楽聖のヴァイオリン・ソナタ全曲を北九州で拝聴、とって返してた月曜には新帝都マッカーサー橋の袂で特別参加みたいにブラームスのヴァイオリン・ソナタを全曲聴き、昨日はニッポンのコロナ騒動発祥の地の横浜で、「メモリアルイヤーに試みる2つのアプローチ 驚愕の第九そして革新の第九」というとても公立ホールの主催事業とは思えぬもの凄い煽りの演奏会に行って参ったでありまする。こちら。
https://mmh.yafjp.org/mmh/recommend/2020/11/btvn2020-2.php

なんだか、今、ほんの一部では話題の「市長お気に入りのバレエ団のための2500席バレエ専用劇場建設騒動」で揺れる横浜みなとみらいとは思えぬ、なんだかコロナのソーシャルディスタンスやら合唱の飛沫やらはどこへ、浮世離れした古楽器オケの演奏会で、どうやらコロナ後初のニッポン列島での第九全曲演奏だったようでありまする。

とうとう年末に向けてダイクがやれたなんてそれだけでも目出度いことだし、合唱の間にアクリル板立てたりするコロナ対策がどんなだったか、木造家屋の柱になりそうなコントラファゴットがどんな音がしたか、ブロードウッドのオリジナル楽器が巨大ホールでどんな音で響いたか、等々、それぞれの関心でいろいろ議論することが可能な、相当に奥深い演奏会でありました。演奏会としても、後ろにこんなデッカいスクリーンが持ち出され
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カメラ3台くらいスイッチングしてト長調協奏曲でフォルテピアノの鍵盤がいっぱいに使われてるところを真上から見せてくれたり、不思議なギミックがありました。やくぺん先生としましては、シラーの歌詞が対訳どころかドイツ語ですらも刷られていないとてつもない当日プログラムに腰を抜かしそうになってたんですけど。平野先生、やってくれるなぁ。

この演奏会、いちばん興味深いのは、こちら。
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お判りでしょうか、当日プログラム裏のスタッフ一覧表のいちばん上に、「ドラマトゥルク」という役職が挙げられているのですよ。

「ドラマトゥルク」という役職、どういうものなのか、お知りになりたい方はググってみたりすれば簡単に説明は出てくるのでしょうが…正直、どういう職種なのか、あれこれ言われても良く判らないと思います。何を隠そう、やくぺん先生も、未だに良く判ってません。無論、ドイツの劇場システムの中での横文字で記された役職はそれなりに理解はしておりますが、それがなんでピリオド楽器の第九演奏会にこうやって記されているのか、ぶっちゃけ、判りません。誰かスタッフに尋ねたくても、なんせ「ホール内での会話はお控えください」で、スタッフもフェイスシールドの向こうでお辞儀するだけで何も話せない。どうやら横浜では、先頃、県立音楽堂なんぞでセミステージ形式で上演されたバロックペラでも、我らが菅尾友氏が「ドラマトゥルク」として挙がっていましたっけ。
https://www.japanarts.co.jp/concert/p847/
ま、これはこれで納得しないでもないけどさぁ。

オペラの世界ではカタカナ表記で普通に使われるようになってきたこの言葉、というか、役職、今後はいろいろと時代考証や設定が必要になってくるコンサートでも使われるようになるのかしら。なんだか凄く偉そうだけど、「文芸関連情報提供雑用」にしか思えぬところもあるのだが。

ドラマトゥルク、ニッポン語文化圏に投げ込まれると妙にラスボスっぽい響きが醸し出されるなぁ、ううううむ…

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GOTOキャンペーンを使ってみたら [たびの空]

いろんな意味で話題のニッポン国政府GOTOキャンペーンを利用し、東京湾岸から九州は福岡県黒崎に1泊で行って参りましたです。

なんせ一部では「旅Blog」と思われ、そういう方面から広告を出したいなどという素っ頓狂な依頼もあったことがある当無責任私設電子壁新聞、「書いてあることはみんな嘘、信じるなぁ」というモットーもアベトランプのお陰ですっかり「そんなの当たり前じゃん」になってしまった2020年コロナの秋も深まる今日この頃、せっかく通産省内閣時代だったニッポン御上がやっちゃった後先考えぬ緊急財政支出策、実際に旅行業界にどう効果があったか、目の前のウルトラ・ミクロな状況をお知らせしておきましょうぞ。

まずは、今回の取材ツアーで利用したのは、楽天トラベルの飛行機と宿のパックであります。まだ御上が「出張にはGOTOを使うな」などという焦りまくったコメントを出す前の9月末に決めた利用です。羽田北九州スターフライヤー、黒崎駅前のビジネスホテル素泊まり1泊、翌日の岩国羽田ANAがセットになって、楽天側にキャンペーンによる税金の助成があり、やくぺん先生が払った額は16575円也。これに、「GOTOキャンペーンクーポン」という福岡及び周辺県の指定施設でのみ利用できる金券が4000円分付いてきます。交通系YouTuberの皆さんなどはこれも割引き額に入れてるようなので、真似をすれば「東京から北九州に飛行機往復と宿で実質12575円」という謳い文句になるわけですな。後述のように、これは非常にトリッキーな物言いですけど。

さて、この行程、なんで岩国なの、と思うでしょ。そりゃ当然で、ぶっちゃけ、いちばん安く見えたから、です。どうしても本日の夕方前に新帝都に戻り、午後7時から浜離宮に行かねばならなかった。ご利用なさった方はよくご存じのように、このような「飛行機と宿パック」みたいな商品って、使用便によって値段が極端にかわってくる。どうやってあんたは空港に来るんだ、って呆れるような朝一の便とか、逆にどうやって空港から家まで帰れというのですか、みたいな遅い便は、当然、滅茶苦茶安い。で、パックを選択すると、この最安値値段が出てくるんですね。

でも、実際に自分の都合で現実的な利用時間を選び始めると、瞬く間にお値段がアップしていく。今回、行きは朝一の7時45分羽田発を選ぶしかないので有無の言いようがなく、佃はどういう無茶な時間の選択も可能なために塒としているわけで、5時起きすれば全然余裕。ちなみに成田でも、葛飾巨大柿ノ木下からなら、それほど無茶なく朝一の便が使えます。だけど、これを朝8時台とか9時台の便にすると、もう5000円くらいは簡単に値上がりしちゃう。

帰りも同じで、朝一便ならば北九州空港でも博多は板付空港でもお安い。最終便も案外高かったりするんだけどさ。ま、なんであれ、利用しやすい時間の便は、最安値値段から数千円は違ってくる、というのが自由行程選択式パックツアーの常識であります。

てなわけで、帰りを安くしたままに無茶のない時間に羽田に戻ってこようとすると、福岡ばかりか近隣の佐賀、大分、山口などの空港を探しまくるに、岩国空港2時過ぎ発という便がいちばんの底値だった。このところ、やたらと秋吉台に行ったりしていたもので、我らがあべちゃん県は妙な親近感があったりして、「ああ、岩国なら駅からターミナル近いし、延々と山陽本線乗ってるだけで良いんだし、ええんでないかい」とポチっとしてしまったわけでありましたとさ。

問題は黒崎から岩国への移動なんですが、山陽新幹線の事前割引もあるし、ダラダラ山陽線各駅停車乗って来ても2時間半くらいで着くんじゃないの(実際は山口県内山陽本線を甘く見ていたわけで、なんと乗換2回、4時間弱かかりました)、それにGOTOクーポン4000円があるんだから、それを黒崎駅のみどりの窓口で使って切符買えばいいわけだしさ、なーんて思ってた。調べたら、黒崎から岩国まで在来線乗車券だけで3470円もするようだが、なんとGOTOクーポンだけで購入可能な山口県JR乗り放題チケット3500円というのがあるぞ。
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/200930_00_gototravel.pdf
おおおおお、数十円の違いなら、これをクーポンで買っちゃえばいいじゃんかぁ、と思った次第。

で、その後、結果として2020年唯一の実質2週間に及ぶ国内ツアーが出来てしまい、なんのかんのなんのかんの。ふと気付くと、JR西日本の新幹線早割フィックス切符購入可能な2週間前を切ってしまい、小倉から新岩国、若しくは福山まで新幹線ワープ作戦は不可能になっていた。アホじゃわい。

そんなこんな、昨日の朝っぱら5時起きで真っ暗な佃縦長屋を出て、地下鉄京急乗り継いで羽田に至り、ホントに久しぶりに第1ターミナルに到着して朝っぱらなのに案外と人がいるのにビックリ。眠たい海鼠頭を必死に覚醒させスターフライヤーの一番前の列右窓側に座り、客は半分以下かなぁ、とひろびろ三人掛けを独占すること1時間半、猛烈な向かい風で対地速度600キロなんてリニアどっこいどっこいのノンビリさで真っ黒な320は東海道、山陽道を西に進み、去る金曜日にロンから塒に戻った超蜂の群れがびっしりターミナル前に並ぶまりんこー世界最大の航空基地岩国見下ろし
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防府基地眺め、山口宇部空港に相変わらずなーんにもひこーきが居ないのを横目に、北九州空港に無事到着。MRJ計画頓挫でせっかく作ったハンガーがどうなるのか心配になりながらボーディングブリッジを降り、空港セブンイレブンで鶏飯おにぎり230円也をPASMOで購入。ぴーかんの九州の光に照らされつつ、10時20分発の黒崎バスターミナル行きバスを820円也握って待つのであった。

やってきたバスでiPhoneに電気を食べさせながら、7名くらいの客を乗せたバスは高速を黒崎駅に向かい、11時過ぎ黒崎駅バスターミナルに到着すると、ありがたいことに宿は隣。直ぐに向かい、必要最小限の荷物だけを背負ってあとは預け、ここでサインをして、問題のGOTOクーポン券を4000円分をいただきます。うううむ、やっぱり、どうみてもいくらでも偽造可能だなぁ、この金券。

1時開演のホールに向かう前、隣のJR駅のみどりの窓口に向かいます。で、この金券で岩国までのチケットを売ってくんろ、おえーさんや、とJR九州の真面目そうな窓口のねーさんにお願いするとぉ、あっさりと「ダメです」。
って、俺の金券は使えぬというのか、これは御上が、二階様が出したもの、地元選出麻生財務大臣がどんなに文句を言おうがそんなの知ったことじゃないぞ、と文句を言えばぁ、お客さん落ち着いて、これはセット商品にしか使えず、チケットや特急券や回数券は買えないのですよ、とのこと。
なるほど、確かにそんなことしたら、クーポンでチケットや回数券を購入し、直ぐにチケットショップで転売して現金化しようとする輩が続出するだろーからなぁ。じゃ、このGOTOクーポンだけで買える山口圏内JR乗り放題チケットというのを下さいな、近隣県でも買えると書いてあるし、とお願いすれば、「あ、その商品はJR九州窓口では扱っておりません、小倉駅のJR西日本に行ってください」。

うううううむ、なかなか手強いぞ、このクーポン!

もうめんどーなんで、以下、やくぺん先生がこの4000円也の金券をどう使ったか列挙すると…

1:JR黒崎駅改札外ファミリーマートで折尾駅名物鶏飯弁当の豪華版「東筑軒大名道中茣蓙弁当」1103円也購入、実質103円也現金支払い。
https://tochikuken.co.jp/
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2:終演後、黒崎ひびしんホールから黒崎駅までの通りにあったPubBravo!なるビール飯屋で、終演後にヒューガルテン、地ビール、ベーコン炒め、フィッシュ&チップス、以上2910円也を食す。クーポン券2枚使用、実質910円也現金払い。気持ちの良いお店でした。
http://bravo.s601.xrea.com/kurosaki/index.html
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3:岩国錦帯橋空港お土産屋さんで、もみじまんじゅうと「吉田松陰ゆず味ポテトチップ」2袋購入し1680円也。最後のクーポンを使用し、実質現金680円也。
https://store.shopping.yahoo.co.jp/choshuen-y/kashi-yoshipote.html
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以上でありましたぁ。

さても、やくぺん先生ったら、二階幹事長喜ぶ観光業界にお金を落とす善きニッポン国民だったのであろーかね?

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