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ストラヴィンスキー没後50年なのじゃ [音楽業界]

あっという間に1ヶ月が過ぎてしまい、北京五輪まであと1年と迫った2021年。コロナの騒動未だに続き、残念ながらトーキョーはどう考えても無理なのは、選手村近隣住民に復帰するやくぺん先生の実感なのでありまするが、ま、それはそれ。

2021年は、運動会なんぞよりも余程大事な記念年がふたつもありまする。ひとつは言わずと知れた、ピアソラ生誕100年!なんとこちら、100歳のお誕生日が東日本大震災の当日って、ニッポンではちょっと困ったことになっているわけなのでありまして…うううむ、それはそれで大変だろーなぁ。

んで、もうひとつは業界的にはもっと大きな、恐らくはベートーヴェン250年にも匹敵する、はたまたもっと大きな記念年たり得るネタ。ストラヴィンスキー没後50年でありまする。

本来ならば花祭り前、ってか、イースター休み頃の4月6日の半世紀の命日に向け、そろそろいろいろと盛り上がってくださっていても構わない頃の筈で、世界のあらゆるオーケストラが《火の鳥》やら《春の祭典》やり、《詩篇交響曲》含めた三大交響曲全曲一挙演奏なんてコンサートがあちこちであり、世界中の弦楽四重奏団がアンコールに《3つの小品》を弾き、あちこちのバレエカンパニーが《ペトルーシュカ》とのダブルビルで《アゴン》ばかりかピアノごっそり並べた《結婚》どかどかやり、オペラハウスも《放蕩者の成り行き》の力の入った新演出を出す、小劇場系は最新テクノロジーを駆使した《兵士の物語》のあれやこれやの演出が嫌になるくらい出てくる…なーんてことになっていたのやも知れないけどさ。

現時点でのトーキョーで発表されている命日頃のイベントは、このふたつくらいかな。うううむ、両方とも、やれるんだろーか?それにしても、春までに日本で一度も《春の祭典》が鳴らないなんて、とんでもない事態になってるなぁ。
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/iolanta/
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/2021_stravinsky/

そんなコロナ禍のお祭りがやれない現実の中で、頑張ってるのが出版社さんです。ストラヴィンスキーの出版事情って、修士どころか博士課程の論文になるくらいめんどーくさい話があるのは皆様ご存じの通り。ロシアからフランス、アメリカ合衆国へと時代に翻弄され流れ流れた個人の歴史がまんま世界史と結びついてるわけで、非常に興味深いもんです。そんな興味深い作曲家を世間に少しでも知っていただこうという意図か、ストラヴィンスキーの楽譜の多くを扱っているBoosey&Hawks社さんが、こんなサイトを立ち上げてくれてます。
https://boosey-news.com/p/2kd7-3dd/stravinsky-connections-podcast?utm_campaign=2866377_Stravinsky%20Podcast%20launch%20London%20b2b&utm_medium=Dotmailer&utm_source=Email%20Marketing&dm_i=2KD7%2C1PFPL%2C7L7AXE%2C5TOE7%2C1

能書きをまんま貼り付けておくと

Boosey & Hawkes presents a series of audio podcasts in honour of the 50th anniversary of the death of Igor Stravinsky, one of the 20th century’s most iconic composers. The five weekly episodes, commencing 29 January, are hosted by Jonathan Cross, a respected authority on Stravinsky, who invites listeners to explore this colossus of modern creativity.

だそうですわ。やってるのは、オックスフォードの音楽学の先生で、2015年にストラヴィンスキーの英語での大きな評伝を書いてる、世界でいちばん影響力がある言語圏でのこの作曲家の第一人者さんですから、まずは没後半世紀のこの作曲家像の定番中の定番をちゃんと出しておきましょう、ということですな。5回のシリーズでそれぞれ10分くらい、滅茶苦茶聞きやすいまともな英語でのナレーションですので、大丈夫。

第1回は、数年前に発見されて大ニュースになり、あっという間に普通のレパートリーに定着しつつある《葬送の歌》から、いかにも没後50年にやりそうな《レクイエム・カンティクルス》やらを聴かせつつ軽く概論をやってくれてます。でも、やっぱり最後はハルサイなんだわなぁ

他にもいろいろな記念のクリップなどがあるでしょうけど、まずはこの辺りから、ということでご紹介。やくぺん先生の当面の日程表の中に、残念ながらストラヴィンスキーは皆無。うううううううむ…

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ぐぁんばれ千歳空港 [たびの空]

昨日木曜日、朝の5時起きで葛飾オフィスを出て羽田に至り、札幌で葵トリオ取材にならん取材をし(これに関しては、「売文家業」カテゴリーでいろいろ言いたいこともあるのだが、コロナ禍の異常事態が収束するまでは口をつぐんでおきます、いずれ「コロナの頃の笑い話」になったら思う存分記しましょうぞ)、本日は午後4時までに、エクの公開リハーサルの司会という妙なお仕事のために新浦安まで戻らねばならぬ。真冬の北の大地たびの空のドタバタ話で、冷たい心を温めておくんなせーなぁ…って、あったまらんわいっ!

てなわけで、本日は「千歳空港の除雪は偉いぞっ!」というどーでもいい話をするのじゃよ。

緊急事態が発令されていようがいまいが有用至急の用事で札幌に向かい、現地でやれることはやった本日朝、昨日同様に爺は朝の5時に目が覚めてしまう。と、iPhone画面には「千歳は暴風雪となります」とアラートが踊ってら。このたびの空、東京を出る前から「金曜日は豪雪が予想されるので便の変更をしてください」などという訳の分からぬ脅しのようなメールがANAさんから来ていた。んで、昨日午前10時前に千歳に到着するや、ANAの出発カウンターにいるおねーさんに「昨日、こういうメールが来てるんだけど、明日ってそんなにヤバそうなんですか?」と尋ねたら、まだ判らない、現状はなんとも言えず、昼過ぎに次のアナウンスがあるので、もう少しお待ちください、とのこと。

仕方なく空港の飯屋で延々過ごし、昼過ぎに状況を確認に再びカウンターに行くと、「夕方に発表があるので待ってくれ」。うううむ、こりゃラチがあかないぞ。いずれにせよ、ここには書けないいろいろなすったもんだで練習は眺められないどころか、演奏家に会ってコメント採ることすら出来ない状況だと判ってきたので、これなら朝にホテルに押しかけ取材ということもないだろう。じゃ、ともかく、少しでも早い便に変更しておくか……と、当初の予定では午前11時半千歳発だった便を朝9時半発のひとつ前の便に変更(羽田千歳便のほぼ半数が間引かれていて、10時半発は運休中)、葵トリオの三重協奏曲をしっかり聴くべくOnちゃんタワー隣の新設ホールに向かった昨日木曜日なのでありました。

そんなこんな、札幌駅徒歩6分の宿を出るのは今朝の午前7時半くらいの予定だったのだが、iPhone画面眺めて、これはマズいと判断。飛び起きて慌てて荷物を纏め、まだ真っ暗な午前5時半に宿を出て、JR札幌駅まで急ぐ。途中、凍った歩道に足をすくわれないようにしながら、ANA公式画面から再びの便変更を行います。混んでたら嫌だなぁ、と思ったけど、午前7時半の千歳発羽田行きのANA朝一便は、可哀想になっちゃうくらいガラガラで、難なく13Aという席を確保。うううむ、縁起が悪そうな席番号じゃなぁ…なんて思ってはいけんのじゃよ。うん。

午前5時35分くらいに改札前に到着、5時50分の空港快速に乗ろうとするが、まだ改札が開いてません。
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待つうちに開場し、ホームに走り、定刻通りに小樽方面からやってきた朝一の千歳空港行きに乗車。日本でいちばん東の大都市とはいえ北緯40度越えの北半球の冬とあって、まだ真っ暗な中をガラガラな車内でウトウトしつつ、6時半前に新千歳空港地下駅に到着。なんのかんので午前7時前、ようやく薄ら白んできた曇り空、もう雪雲はそこまで迫っている下に、我がANAさんの長くデッカい777が雪もないスポットに駐機してら
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あたくしめを乗せてくれようと待っている巨体を目撃し、大いに安心したのであった。

優先搭乗が始まる頃には、ハラハラなにやら空から落ち始め、翼の辺りには凍結防止液をぶちまけるクレーン車が来て作業をしてます。
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10分も眺めているうちに、スポット周辺はどんどん白くなっていくぞ。

7時10分に無事に搭乗し席に着き、窓から眺めると、一生懸命凍結防止作業をやってら。
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7時15分くらいには乗客全員が搭乗したのか、ボーディングブリッジが外れ、すちゅわーですのおねーさんが目の前の扉をロックし、おおおお、雪が酷くなる前にさっさと離陸させてしまうのだな。
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そうこうするうちに、あっという間に窓には雪が付着し、外がまるっきり見えなくなってしまったぞ。

さああいけぇ、さっさと離陸してくれぇ、という客らの無言の祈りを知ってか知らずか、我らがながぁーいトリプルセブン、動く気配はありません。やがて、「現在、除雪作業中で、完了を待って離陸します」との無慈悲なアナウンスが。

ここで客は一斉におねーさんに「電話、まだ使える」と尋ね、電波制限が一時的に解除になるや、人々は一斉に連絡を始めるのであった。ホントに、全員が携帯弄って連絡してたんじゃないかしら。無論、やくぺん先生もしましたよ。

外にはしんしんと雪積もり、あっという間の大雪原。隣のスポットがグラウンド・スタッフが一生懸命雪をかいたりしているので、どうやら羽田を出た朝一番がもうすぐ到着するみたいじゃわ。おお、フライトレーダー24に拠れば、もうANAの短い78くんがアプローチしているでないか。これ、昨日午後の時点でやくぺん先生が搭乗すべく変更した戻り便になる奴ですな。午前8時半過ぎ、雪の壁の向こうに到着しスポットインする78くんが見えたり見えなかったり。
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さあ、わらわらと地上要員皆さんがこっちにやってくるぞ。さあ、いよいよ大雪貫き、やくぺん号の出発じゃ!

雪の壁の隙間から覗いていると、千歳のオジサンおねーさんたち、一生懸命働いてくださっております。あ、転んだぁ、気をつけてくれよぉ。皆さん含め、人命第一ですからね。そういえば、シカゴはミッドウェイ空港で似たような目に遭い、延々と半日間、空港の雪かきシフトが把握出来るまで外を眺めていたことがあったなぁ。オヘアからラグァーディアに向けて離陸したら直後に雪で閉鎖になったこともあったっけ。その後、数日シカゴ近辺空港閉鎖になり、ムーティが足止めになった、とか言ってたっけ。

もといもとい、400人もが乗れる筈の機内に座る我ら4ダースほどの乗客、もうさっきから妙なまったり感も流れていた機内も
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いよいよ動くとなるとこの大雪かきわけての離陸にちょっとは緊張も走ります。お願いだ、無理せず、でも頑張って飛ばせてくれよ。だって、外はなんもみえない真っ白な雪嵐なんだからさ。

延々とタキシングしていく間も窓に雪積もり、どこにいるかも判らない。千歳の民間滑走路の最南端まで行き、まずは前を行っていたJALの737が先触れを切って離陸していく。雪吹雪で赤い鶴丸もろくに見えないが、無事に出て行ったようじゃ。

かくて午前9時前、我がながあああいトリプルセブンもつるつるの滑走路をちょっと走ったと思ったら、瞬く間に離陸。下の動画、真っ白な画面が続くだけですから、そのつもりで。
上がれども上がれども雲は切れず、やっと青空が見えたのは津軽海峡も真ん中辺り、千歳のイーグルが札幌を壊滅させたレギオンを追いスパロー命中させ墜落させた古戦場辺りでありましたとさ。

福島上空辺りからは、空っ風吹く北関東の空。百里、成田と下に眺め、横浜ベイブリッジ向こうに冬の霊峰富士が聳え
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スッカラカンに晴れた新帝都に無事到着、なんのかんのなんのかんので今に至った次第。

結論:偉いぞ、千歳空港!シカゴどころか、トロントにも、はたまたミネアポリスにも負けない、世界一の雪害対策空港じゃっ!

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鎖国強化? [パンデミックな日々]

明日から緊急で札幌の葵トリオ取材になっていたのだが、今、ANAさんから金曜日の帰りがちゃんと飛ぶか判らないぞ、という案内が来ました。エクのリハーサル解説のリハーサルのために午後4時には新浦安におらねばならず、午前の便で戻ってくる予定だったのだが…これはヤバい。とはいえ、今、何が出来るわけでもなく、ともかく明日、札幌に着いてから情勢を眺め、最悪、朝6時の札幌発特急と新幹線乗り継ぎ、という酷いことになるやも知れぬ。うううううむ、殆ど取材などない今日のこの頃、ホントに久しぶりの取材でこんなことになるって、なんなんねん…

その葵トリオさん、明日の札幌の後に東京で収録などがあり、一度ドイツに戻り、また年末には戻ってきて名フィルでカセッラの三重協奏曲があったりして、そんな話を聞く予定だったのだけど、とんでもない情報が流れて参りました。ほれ。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-01-26/eu-plans-to-shut-door-to-travelers-from-japan-amid-virus-surge?fbclid=IwAR0MlNQG5RqDLWJ31yeE0dSaydLAsHVicSvCsdcJMRNXKELKr4AqnGIlYIo

日本語メディアではまだ話題になっていないような、一種の飛ばし記事のような気もするけど、ともかく、「欧州は日本からの人を入れないことになるやも」って。これ、ホントに始まったら、細々と再開されていたニッポンのクラシック業界、ちょっと大変なことになるかも。なんせ、欧州拠点にしている日本人演奏家さんは移動が出来なくなる、ってことですからね。欧州に残るも、日本にいるならそのまま動かないも、なんにせよ、その場を離れられなくなっちゃうわけで。

札響だって、先週の大植えーちゃんはハノーファーだし、葵トリオはベルリンだし。世界の「国立劇場」の中で何故かほぼ唯一普通に舞台を出している初台なんかも、凄く困るんじゃないかしらね。

まだ決定事項か判らない話ですけど、明日以降、かなり大事になるんじゃないかしらね。

なんだかコロナ禍、ドンドン長期化し、2021年度は昨年以上の混乱になりそうな予感。うううむ…

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世代交代の演奏会 [現代音楽]

この数年、「実行委員会」を主催者にする形でこのくらいの時期に開催されてきた「高橋悠治作品演奏会」の第3回が、先程、東京文化会館小ホールを会場に無事に行われました。
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コロナ禍だからって、別にどーってことなくいつものように淡々と、って感じなのは、いかにもこの作曲家さんらしいなぁ。

演目はこんなん。
https://www.t-bunka.jp/stage/8022/

これだけじゃ、全然わからないですよねぇ。ま、この演奏会はある意味、非常にハッキリしたコンセプトを持っているわけで、ぶっちゃけ、「前衛の時代の高橋悠治作品を中心に並べ、作曲家ご本人がご存命のうちに、40代以下のポストモダン以降しか知らない世代の演奏家さんたちに本人を前にゆーじさん作品を演奏する経験を積んでもらおう」というもの。

そもそも高橋悠治作品って、古典派やロマン派の意味での「曲を聴く」というよりも、「高橋ゆーじというオッサンが音をいじくり回すプロセスを追体験する」みたいなところがある。良きにつけ悪しきにつけ、楽譜から出てくる音がそれで良いのか、本人がそこに座ってあの風貌でぼーっとしている姿を視野にいれていないと、なんとも不安なところがある。作品、というより、音を作る行為、って感じ。

ですから、企画、という役職だかが記されてるので実質上のディレクターであろう杉山氏などが中心となり、ゆーじさんと一緒に仕事をしてきた60代以上の長老が若かりしバリバリだった頃を懐かしむのではなく、どかっと下の世代に高橋悠治を演奏するという経験を積ませるイベント。年寄り世代は指揮者さんと、あとは電子再構築をやった有馬さんくらいで、実際に音を出す作業をするのに初演者などはひとりもいない。そのお弟子、って世代ばかり。

なんせ、本日演奏された曲だって、アコーディオンが出てくる曲はうちのお嫁ちゃまが某お茶の水でみきみえさんの担当だったときに今井さんとのデュオとして書かれたもので、うちのファックスでやりとりがされてるのを横目で眺めていた記憶もあるなぁ。そういう世代は、見事なまでに全く参加してない。気持ちが良いくらい。最長老(かな?)の杉山さんだって、指揮者として日本の舞台に姿を見せるようになったのって、今世紀になってからだしさ。

結果、出てきた音楽を新鮮と思うか、あああ古いなぁと思うかは、ま、弾いた方々、聴いた方々次第、ってこと。聴衆は、基本的にはゆーじさんと一緒に歳を取ってきた人達が中心とはいえ、演奏者の世代もそれなりに客席を占めており、「前衛の懐メロ大会」という感じではありませんでした。
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演奏として個人的にいちばん興味深かったのは、一昨年に高崎のホールが新しくなって、アルディッティQが登場し、その舞台で世界初演する筈だった弦楽四重奏曲でありまする。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2019-11-24
どういう事情でそういうことになったか知らないけど、結果として、アミティQという「若い世代のニューアーツQ」って感じの立ち位置の連中が世界初演することになった。ま、作品は、いかにも高橋悠治らしい、ぐるぐるっとした線をあちこちにポワポワ放り投げたようなもんで、弓を緩めて弾けとか、弦をぐるぐるこするように弾けとか、いかにもな指示がある断片がゴロゴロ並んでいるもの。アーヴィンたちがやったら、恐らくは「この奏法はこんな音が出るんだよ」みたいなアピールを明快にした、もっとメリハリのある「音楽」になっちゃって、このぼんやりフワフワ感が高橋ゆうじ、ってのとはちょっと違った、かもね。それにしても、アミティQはまるでカーターの2番みたいに4人が遠く離れて座り、まるでマイハートQみたいに全員が客席真っ正面向いて座ってたのは、楽譜の指示なのかしら?アルディッティQもああいう風に座る筈だったのかしら。

高橋悠治が「音楽史」の中に納められるのか、それとも、そんなもんあたしゃ関心ありません、ってものなのか、考えさせていただけただけでも、大いに有り難い演奏会でありましたとさ。正直、これだけ規模の大きな電子音とライヴとの絡みなどがあると、オペラシティの地下ではなくて上野小ホールの空間が必要だったと感じられたです。会場が上野になったのは、主催側の意図だったのかしら。

正直、これらの音楽、ディスクで音だけでは聴かないだろうなぁ。

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一年ぶりの「外国人」室内楽 [演奏家]

明日、川口リリアホールで、イザベラ・ファウストとアレクサンドル・メルニコフの二重奏が行われます。こちら。
https://www.lilia.or.jp/event/2326
演目も、こんなん。ガチじゃんかぁ。

シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ短調 op.105
ウェーベルン:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 op.7
ブラームス:クラリネット・ソナタ第2番(ヴァイオリン版) 変ホ長調 op.120-2
シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ短調 op.121

チケットは22日金曜日午前の段階で後ろ二列とあとちょぼちょぼ、という感じで残っているそうで、当日券も出るかも、とのことです。直前の申込みが多いそうで、今日もそこそこ動くでしょうから、ご関心の向きはお急ぎご連絡を。公共ホールの主催公演で€50越えってのはなかなかだけど、このメンツでこの曲なら仕方ないでありましょうな。ブラームスのクラリネット・ソナタのヴァイオリン版なんて、ライヴで聴くの初めてだぞ。

なんだか当たり前に演奏会の勝手な宣伝をしているようだけど、なんとなんと、やくぺん先生としてみれば、昨年1月の今頃に横浜で開催されていたFlux Q以来、まるまる1年ぶりの「外国人演奏者のみによる室内楽」でんがな。演目も「さあみんな、いよいよベートーヴェン年は終わったぞ」ってガッツリしたもんだしさ。いやぁ、これはもう、どんな貧乏とはいえ、借金しても行かないわけにはいかんでしょに。

イザベラ・ファウスト様、既に関西ではコンチェルトをお弾きになり、これまたコロナ後ニッポン初の「外国人ヴァイオリン独奏者」なんじゃないかしらね(違ったら、教えて下さないな)。

ちなみに月曜日の浜松アクトシティでは、リゲティのホルン・トリオなんてもんも入った演奏会が予定されており、どうしてモルゴーアQの新ヴィーン楽派とぶつけるんだ、と天を仰いでいたのだけど、そっちはホルンさんが日本での二週間隔離というわけにはいかなかったようで、デュオのリサイタルになりました。おおおおお、なんとなんとぉ、クラリネット・ソナタを両方やる、って突拍子もないプログラムじゃないかいっ!
https://www.hcf.or.jp/life/guidance/premium_series/2020/0125/index.html
っても、静岡の公共ホールさんは緊急事態宣言が出ている都道府県の人には切符売ってくれるか、あたしゃ、知りませんけど。

正直、この1年間、「ニッポンを拠点にしている若しくはニッポン国籍」の演奏家による室内楽しか聞くことが出来ず、ガイジン演奏家ってどんな室内楽やるか忘れちゃいそう。なんせ、先週、ホントに久しぶりに若い連中の弦楽四重奏を聴いて、隠居宣言前は年に何十回となく聴いていたこのくらいの連中の演奏のレベル感をすっかり失っている自分を発見し、愕然としましたです。これはヤバいぞ、って。

ライヴをきっちり聴いていないと、ホントに耳のレベルが下がってしまう、というか、おかしくなってしまう。コロナの世界ったら、やくぺん先生に本格的な引退を迫るものなのであろーかっ。

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第2次緊急事態は格差を助長している? [パンデミックな日々]

なんだか過激な意見保持者への煽りやらツリやらみたいなタイトルだなぁ…後の為の時事ネタです。

昨年4月8日の第1次花祭り緊急事態発令に続き、去る1月8日には第2次松の内緊急事態発令が成され、我が零細業界も大混乱に陥っているのは皆々様よーくご存じの通り。とはいえ、昨年春から初夏の世間がみんなじっと身を潜め、電車に乗っても車両には自分しかいない、なんて状況とはまるで異なり、善くも悪くも「緊急事態慣れ」としか思えぬ世間の有り様なのも、これまた皆様日々実感なさっておられることでありましょうぞ。

今回の緊急事態、前回に比べると、「地域」や「業種規模」での対応がずいぶんと異なっているように感じます。

やくぺん先生の場合、オフィス退去という特殊事情はあるにしても、ちょっと回復してきていた仕事がまたまるでなくなり、数週間はまた滅茶苦茶暇になるだろうから引っ越し準備に専念できる、って思ってました。

実際のところ、緊急事態発令直後には、予定されていた「閉鎖空間に人が集まるイベント」の主催者さんからは、どうしたものか悩んでるけどともかくやる、という連絡があり、そんなものなのか、と思ってた。東京都や千葉県はそんな感じなんだけど、六郷川の向こう神奈川県はちょっと様子が違うようで、横浜市がバブル期以降に各区に建てた多彩なキャラの駅前アートセンターでは、イベント中止の連絡が相次いでいる。神奈川新町のイッサーリスも、鶴見のエクも、葉山の葵トリオも中止。

どうやら、ニッポンのコロナ発症の地として独自の見解を示している神奈川県では、緊急の度合いが高いと認識されているのか、それとも夏に再開されたコンサートを巡って知事の意向と民間主催者の間での対立も伝えられ、間に入ったホールなどは慎重な動きをするようになっているのか、なんとも判らないのが現状。ともかく、「神奈川は厳しい」というのが第2次松の内緊急事態のひとつの特徴のようでありまする。

それから、たまたまやくぺん先生が巻き込まれた状況としては、静岡県は県の主催イベントに対して極めて対応が厳格で、オーケストラでも緊急事態宣言が成された地域に居住する奏者は出演が許されず、結果としてある楽器の奏者がいなくなってしまい、曲目を変更せねばならない、なんてことが起きてます。似たようなことは去る秋のヴィーンフィル来日でもあったみたいだけど、あっちは人を交代して来日させて演目は変更しなかったっけ。

もうひとつはかなり本質的に深刻な問題。松の内緊急事態発令から2週間弱、そろそろ上がってくる感染者データは緊急事態宣言発令後の人の動きを反映するものになりつつある頃となり、ひとつのハッキリした特徴が見えてきているようです。ぶっちゃけ、「オーケストラやオペラなど仕込みが大きく会場が大きく関与する人の数が多いものは開催、室内楽やリサイタルなど会場が小さく関与する人の数も少ないものは中止若しくは延期」という傾向にあるような。

具体的に言えば、ロマン派オペラやら大管弦楽は本来のフィールドとしていないやくぺん先生は、コロナ貧乏でチケットが買えないこともあり、年明け以来、素オケのコンサートにはひとつも参上しておりません。オペラは天才パスカルくんが結果的にサン=サーンス没後100年記念年を祝ってくれるのを見物させていただきましたけど、オーケストラがガンガン鳴ってるのを聴くのはそれっきり。でも、あくまでもやくぺん先生のケースであり、どうやら周囲の同業者お友達関係者などの皆々様は、今日は都響と読響の連チャンとか、明日はN響で外国人指揮者とか、それなりの演奏会をこなしていらっしゃるようであります。練習でコロナ陽性者が出て東響えーちゃんの演奏会が中止になる、なんて事態も勃発しているようでありますが
http://tokyosymphony.jp/pc/news/news_4455.html
それでも新帝都周辺では連日なんかやってるし、初台も予定通りコロナ仕様演出というわけでもない《トスカ》だかを出しているし。

大規模な公演であればあるほど、上演しなければ被害が大きくなるのは理解出来ます。なんせニッポン国のパーフォーミングアーツに対する助成は、「上演されたものに対する半額助成」とかが基本。どんな形であれ「このイベントは行いました」という事実がないと助成金が入りませんし、助成する団体もお金を出してあげられない(花祭り緊急事態の最中、やってくれないんで私たちとしては助成のしようがない、と助成財団の方が頭抱えてました)。逆に言えば、どんなに客がいなくても、大スターの作曲家ご本人が来なくても、そのイベントを行いさえすれば助成金は入る可能性がある。上演しないと、準備にかかった費用やキャンセル料がまるまる主催者に被さるだけ。だから、大規模イベントは赤字でもやった方が良い。

それに対し、小規模会場の室内楽は上演に対する助成金が出ていないのが殆どだから、「ともかくやってしまえ」とはならない。結果として、現時点では、第2次緊急事態宣言下、オケやオペラはやれるけど室内楽はダメ、って業界内格差が出来つつあるよーな。

なお、イベント中止に対する御上の支援が始まる、という話もこの数日飛び交っております。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210120/k10012823491000.html
これで状況は変化し、オーケストラやオペラも安心して中止が出来、ホントの緊急事態になるのかしら。この額ではオペラはなぁ…

さても、手元に月末までの締め切り原稿がふたつしかないやくぺん先生ったら、次の演奏会は日曜日の高橋悠治演奏会での新作弦楽四重奏初演。翌月曜日のモルゴーアは生き残ったけど、火曜日のエクは中止、水曜日の現代音楽演奏会も中止。オフィス撤収カウントダウンが迫る2月の日程なんて、なにひとつ判ってないぞ。ある方から《タンホイザー》のチケットを買ってたくらい、かな。

ううううむ…神様が演奏会には行くな、と仰ってるとしか思えぬわい。さあ、引っ越し準備じゃ。

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葛飾下町三十六景 [葛飾慕情]

「葛飾慕情」カテゴリーもカウントダウンに入ったというのに、巨大柿の木下葛飾オフィスの移転先関連で数日「有用至急」の移動をしていたものの、コロナで話が遅々として進まず。世の中が平時に戻れば当電子壁新聞で笑い話として済まされるんでありましょうが、今はそんな冗談言ってられない状況、このままでは最悪、佃の狭い縦長屋に数ヶ月ご家族と蟄居というプランZも冗談ではなくなってきている今日この頃。ふううう…

まともな音楽関連ネタもまた「パンデミック」絡みばかりになりつつあるし、本日は完全に無駄な雑談でありまする。あ、葛飾で最後に聴ける大物と思ってたつんさんのベートーヴェン、チケットやっぱり売り止め状態は変化なく、明日はいけません。巨大柿の木から徒歩5分のところでやってて、席もあるけど、御上の要請で聴けない、という状況です。ううううむ…

さても、半世紀以上人が住んでいた家を物理的に潰すとなると、ホントにもういろんな積み上がっていたものが次から次へと出てくるものであります。家財道具や食器、細かい家庭用品、はたまた庭木弄りの掃除機や鷹枝切り鋏から、落ち葉掃除マシン、燻製器、焼き芋焼き器、30数年ものの梅酒やらアヤシげな梅干し…どーするんじゃ、こんなもの。

中でも際立って困るのは、「価値があると思わない人にはなんの価値もないもの」であります。流石に鉄砲撃ち道具は処分してくれていたようだが、壺、茶碗、パッチワークの素材、NikonCanonの一眼レフフィルムカメラ、釣り具、等々…

数日前、靴箱の中に放置されていた亡父や亡母の靴をええええい、と大量に捨てた際、妙なところからこんなものが出てきました。
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うわぁ、困ったなぁ。いちばん始末に困る、「アート」じゃないかいっ。

素朴で判りやすい色使いの都電、そして「葛飾三十六景」と包んであったパッケージには記されております。最初、「なんで葛飾三十六景で都電なんねん?」と不思議だった。なんせ、東京都電は荒川放水路を越えた新開地には一切入っていませんでしたからねぇ。ほれ。
map_color_all.pdf
で、よく見ると、「葛飾下町」とありました。なるほど。

どうやら荒川線沿線、町屋やら箕輪やらの辺りのように思えるし、不忍池から動物園横の専用軌道があった辺りかなぁ、とも。あ、「最後に残った都電」だから、荒川線ですな。なんにせよ、絶対に葛飾ではない風景でんな。

…って話をfacebookにアップしたら、とある文化人類学の先生から「これでしょ」という情報をいただきました。
http://www.kaminokura.co.jp/p/item-detail/detail/i4970.html?fbclid=IwAR2ZMzSdkTryBSFwKeY35Uk74O42vZ4HPIG-LjvXpeLIOh3-lCIDmbEsnZ8
へええ、成田駸太郎という版画家さんの作品らしいし、お値段もまあ、神保町のこの類いの店なんかでよくあるくらいのものですな。ある意味、とてもリーズナブル。

とはいうものの、この駸太郎画伯の三十六景、春先の上野と
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旧四ツ木橋
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そしてこの都電風景というのは判った。じゃあ他の三十三景って、どんなものだったのかしら。猛烈に知りたくなってきます。

どなたかご存じの方、ご教授くださいませ。

かくて、引っ越しは無駄な時間がドンドン過ぎていく、という典型のような駄話でしたとさ。さて、9ヶ月ぶりのテープ起こしをやらねば。働け、あたしっ!

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「売り止め」という対応 [葛飾慕情]

葛飾巨大柿の木下オフィスの閉鎖まであと70日と迫る中、葛飾区役所の広報車が「不要不急の外出は避けて下さい」とスピーカーで連呼しながらかつての町工場街を流している冬の曇り空、皆様、いかがお過ごしでありましょうか。やくぺん先生ったら、明日から3日間、有用至急の外出で遠出をせねばならず、状況としてはなかなか追い詰められている感が漂ってきておりまする。いやはやいやはや…

そんな中でも、ニンゲンに必要なのは麗しき音楽なのであるぞよ、とばかりに、天下の元NHK交響楽団コンサートマスターつん様が、荒川放水路彼方の新開地にご来訪下さいます。ほれ。
https://www.k-mil.gr.jp/program/symphony/2021/0120i.html
「今年生誕250周年を迎えるベートーヴェンに、もう少し深く触れてみませんか?」って、ホームページの表記は書き直した方が良いんじゃないかとは思いつつ、皆様お忙しいからまあ笑って済ませるのが善き葛飾区民なのじゃよ。うん。

なんせ会場は90年代ニッポン様式の小規模「室内楽専用ホール」級の空間、そんな場所で、モダン楽器の二重奏としてはこれ以上の名曲はない、って案外ありそうでない堂々たるラインナップですから、これはもう新開地の善男善女こぞって集い会場は大賑わい…かと思ったら、なんとまぁ、現時点では売り止めだそうです。

「売り止め」という言葉、このコロナ下、特に二度目の緊急事態発令後の先週以降、随分と耳にする言葉になってきているような。恐らくは業界用語なんでしょうけど、なんのことない文字通り、「席に余裕はあり販売できるチケットは手元にあるのだが、諸事情によりチケット販売はストップする」という意味です。

要は、緊急事態下、御上がヴェニュのキャパシティなどに関してどのような規制を急にするか判らない、売ってしまったチケットはそのままでOKにするが、これ以上の客は増やさずに様子を見る、という状況になっている。実際、今、チケットセンターのおねーさんと電話で話をしたら、「前日の段階で席を開放するか判断しますので、またご連絡ください」とのことでありました。

それにしても、ホール開設時に区民名称募集があったとき、当時は実質勘当状態で殆ど付き合いのなかった亡き母親が当時現場バリバリだったお嫁ちゃまに「どういう名前が良いのかしらねぇ」などと珍しくアドヴァイスを求め、お嫁ったらホール関係者の立場から「担当者はこんな名前を想定してそう」ってのをいくつか列挙し、それを参考に応募して亡き母親が応募したら見事に今回つん様がいらっしゃる小ホールの命名者のひとりに名を連ねることになり、記念品にモーツァルト像ミニをいただいた。
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まさかこいつがここ葛飾の地を離れ、また楽譜やらの間にブックエンドとしてちょこんと立つことになるとはなぁ。

もとい、ええと、現在の緊急事態が2月上旬に解除されない場合を想定し、いろいろな団体がそれ以降のチケットも売り止め状態にする動きがある、という話も伝わってきます。皆様、2月7日だか以降の公演で現在販売されているチケット、売ってるとはいえ実際は常に売ってくれない状態になる可能性が高いですので、心配な方は迷ってないでお買い上げなさった方が賢明でしょう。中止の場合は払い戻しがあるし、最悪の場合は主催者へのドーネーションにもなりますから。

来週の水曜日、午前中に荷物搬出用の段ボールが壮大に届く予定になってるんだわなぁ。さても、当日券で聴けるや否や。

[追記]

明日土曜日16日の大分いいちこホールの「小林道夫パルティータを弾く」第2回は、売り止めもなく、当日券も出るそうです。既に道夫先生は由布院から大分に入られて、会場練習をなさってるそうな。なんか、地域で対応はバラバラですなぁ。

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まだまだやってるベートーヴェン! [弦楽四重奏]

「社会構造がひっくり返る戦乱の時代の作曲家」ベートーヴェンらしい大混乱の2020年記念年が終わり、さあて、始まってはや2週間になる2021年は、なんといってもストラヴィンスキー没後50年を筆頭に、ツェムリンスキー生誕150年、そして恐らく大本命として扱われそうなピアソラ生誕100年、なんて騒々しい年なのであるぞよ、皆の衆!
https://www.schottjapan.com/composer/anniversary/2021.html

やくぺん先生ったら、新年一発目は没後100年のサン=サーンスの代表作たるオペラで幕を開け、もうこの作曲家はこれで充分、って思ってしまったです。平時ならばストラヴィンスキーは大いに盛り上がり、弦楽四重奏はみんな《3つの小品》を演奏し、オペラハウスは《マブラ》と《ペルセフォネ》のダブルビルとか、著名ピアニスト総動員する《結婚》とか、《アゴーン》が舞台で観られるとか、いろいろあったんだろーけど…なんもないですな。うううむ…

そんな中、「生誕250年は尻すぼみだっけど、没後200年の2027年に向けての長い始まりの年なのでーる」とでも宣言するかのように、まだまだベートーヴェン、やってますぞ。すれっからしの音楽ファンは、「もうベートーヴェンは結構、他をやってくれ」と仰ってるのは知ってるけど、いえいえあなた、ホントに昨年、いやんなるくらい聴きましたかね?だって、ニッポンではひとつのオーケストラが交響曲全部を短期間でやる、なんてチクルスは、毎年恒例の大晦日上野しかなかったんじゃないかい。ひとりがやる気になればやれるであろうピアノ・ソナタだって、ショパン全部なんて無茶をやってる横山さんがやったくらいで、所謂著名スター外来演奏家のチクルスは結局なかった。室内楽ではヴァイオリン・ソナタは数チームが完奏、あっさりやれそうなチェロ・ソナタだって完奏は数えるほど。弦楽四重奏に至っては、例年なら必ずサントリーの初夏のフェスティバルで全曲がある上に、外来含めひとつや2つのチクルスはあるものの、結果はご存知の通り。《橄欖山の基督》は絶対に聴けると思ったのになかったし、各地で軍楽隊が大砲ぶっ放す《ウェリントンの勝利》があると思ったらひとつもないし。

そーじゃ、楽聖記念年、消化不良のままにまだまだズブズブとしつこく、まるで第8交響曲コーダのいつまでも終わらない和音連打のように、年が明けても続いておるのじゃよ。嫌だったらサン=サーンスでもブルックナーでも、はたまたフンパーディンクでも聴きにいきなされっ!

てなわけで、ふと気付くと、葛飾オフィス撤収のバタバタが本格化し始めるやくぺん先生ったら、昨日からなんとなんと、ベートーヴェンの弦楽四重奏ばかり三連発のポスト記念年なのであった。

※1月13日:浦安音楽ホール クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェン全曲第3回目
ラズモ第1番、《大フーガ》、作品130最終稿版

※1月14日:石橋メモリアルホール クァルテット・インテグラ&チェルカトーレQ プロジェクトQラズモ第1番、《ハープ》
http://www.tvumd.com/program/detail/?event_code=projectq&program_id=this_time

※1月15日:晴海第一生命ホール ヴェールズQ ベートーヴェン全曲演奏会
作品18の1、《セリオーソ》、作品131
https://www.triton-arts.net/ja/concert/2021/01/15/3167/

ってなわけで、こいつは春から…って調子でいっぱい聴けるんですわ。ともかく先生に習ったことをまともにぶつけるコンクール前の超若手、猛烈に明快なコンセプトで21世紀の混沌のマーケットを突破しようとするまだ若手、そしてもう「上手に弾く」ということそのものには関心がなくなりつつある巨匠への一歩を踏み出している中堅――今の実質鎖国ニッポン列島でもここまで広いスタンスの解釈が聴けるのだ、と驚かされるようなラインナップでありますな。実は、サイトをご覧のように、この三日間、プロジェクトQは別の若い人たちも出てきて、ずっとベートーヴェン弾いてるのじゃよ。

ちなみに、来月にはもうひとつ、若手の中でもしっかりファンもマネージャーもついて、更には先生達に凄く好かれるキャラのようで仕事もたくさんいただけていて、順風満帆としか言い様がないQアマービレが、はっきりと2027年を視野に入れたプログラム作りのチクルスを始めるようです。
https://www.ojihall.jp/concert/lineup/2020/20210221.html

ヴェールズにせよアマービレにせよ、現場で目の前で眺めた「あのミュンヘン第3位」ってのが、直後に大手のマネージャーさんが付いたとはいえ、こんなに一人歩きみたいに騒ぎになるとは思ってもみなかった。エクやアルモニコ、すばるなどの世代のときは、最高位になっても弦楽四重奏がこういう風に扱われることがなかったので、なんだか凄く不思議ではあります。ま、それはそれ、いろいろな巡り合わせがあるのでありましょう。

ところで、昨日無事に開催されたエクの第3夜には、こういう告知が出ていました。
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初回から出ているのですけど、要は「ライヴを映像収録して、DVD若しくはBlu-rayにして販売します」ということ。コロナ下で今や映像配信はすっかり当たり前になってしまいましたが、これは配信を販売するのではなく、複数カメラを会場に入れてプロが撮影し、編集し、プライヴェート・レーベルのディスクとして販売する、ということ。

冷静に考えると、なんとなんと、ニッポンの弦楽四重奏団でベートーヴェン全曲を正規の録音している団体はまだなく(現在、エクとヴェールズが初回となる栄冠をさりげなく争ってる真っ最中)、映像は勿論ありません。メイジャーレーベル崩壊後の自主レーベルという形であれ、エクがその最初の栄光を担うわけでありまするな。ちょっと意外だけどさ。

そんなこんな、小さい会場でもそれなりに年頭から演奏会は行われているといえ、二度目の緊急事態宣言のニッポン列島、どうも前回と違うのは、御上は言うだけで民衆の自己責任に任せる、って姿勢が顕著で、結果として「自粛警察」的な空気があらゆる場所に漂っていて、コンサート関連も例外ではない。どうも、主催者さんもヴェニュも、はたまた出演者も、演奏会の告知を控える傾向にあるように感じられます。「演奏会しますよ」というと「非常時に不届きな」という文句を言ってくる人がいる、若しくは居るような空気があるなぁ。

いやはや、を100連発くらいしたくなるけどさ、ま、ベートーヴェンはそんなんには負けない、ってか、気にしませんから。ぐぁんばろー、ポスト記念年!

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緊急事態下午前11時に始まるフルコンサート [音楽業界]

コロナ感染再爆発で一都三県に緊急事態が発令されるなか、埼玉県の県庁所在地も近い与野本町は埼玉芸術劇場で、平日午前11時スタートの新シリーズが始まりましたので、葛飾巨大柿の木下を9時過ぎに出て、京成電車と京浜東北、埼京線乗り継いで拝聴に参りましたです。

目に見えないウィルスがあちこちに俟っていようが、哀れ我らニンゲンの目にはすっきりと晴れ上がった関東地方の冬の空。今日は習志野空挺団跳び始めということで、朝から葛飾巨大柿の木の上空はアベ弟ちゃん大臣を迎える時間待ちするチヌークの編隊や、永田町から習志野への最短距離を突っ走る韋駄天VIPピューマくんの編隊やら、なかなか賑々しい新春っぷり。与野本町で降りると、遙か大宮上空を入間方向から「♪ひーらりひらりぃ、そ・ら・か・ら・軍神がぁ」って歌いながら先鋭習志野落下傘部隊を満載したC-130がふたつ、習志野演習場方向に向かってら。C-2じゃないんだなぁ。木更津で蟄居してる日の丸ミサゴくんも出番なしなのかい。

午前11時というのは県外から届くにはなかなかしんどく(佃から来たとしても、東京駅効果が特にある駅ではなく、まあ時間は似たようなもの)、ホール入口に辿り付いたのは10時45分くらい。で、演目は、こんなん。
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ナビゲーターの林田氏が出演者を選んでるのかは知らないが(今の時期、ホールで見知った関係者や裏方に声をかけていろいろ尋ねる、というわしらの商売の基本が全くやれないのでありまする)、曲目は波多野さんが選んだそうな。ま、ゆうじさんが選ぶとは思えないしね。

そもそもこの演奏会、本来ならば「イレブン・クラシックス」なる新シリーズの第2回目だった筈が、コロナで第1回がキャンセルになり、結果としてシリーズ一発目となってしまったとのこと。平日の昼間、挙がっている演目だけを眺めると1時間で終わるハーフサイズのコンサートなのかと思いきや、今や「21世紀のくろきょーさん」って感じの業界内位置付けの林田氏と出演者のトークを挟み、しっかり途中休憩もあり、終演は午後1時前。たっぷりフルのコンサートでありました。

中身は、いかにもこの演奏家さんたちらしい「埼玉アーツシアターはシェイクスピアを連続上演しているところだから…」というところから始まった演目で、前半はシューベルトの「ハムレット」絡みの作品を英語訳で、それと《冬の旅》からいかにもゆうじさんが弾きそうな3曲。後半はショスタコーヴィチやらフィンジやら、高橋悠治に至るシェイクスピアの「死」をテーマにした歌が並びます。別に意図的に「死」をテーマにしたわけではなく、エリザベス朝期には死が極めて身近なテーマだったからこううことになった、と波多野さんはトークの場で仰っておりましたです。

ま、こう記すとものすごくハイブロウな、なんだかウィグモアホールっぽい演奏会みたいですけど…確かにそういう感じがなくはなかったものの、朝からヘビーなもんを聴かされたなぁ、というしんどさはありませんでした。それはもう、肩の力が抜けきった、というか、常に内角高めに外してくる、ってピアニスト兼作曲家のおじいちゃんのキャラなのかな。

興味深いのは聴衆で、コロナ拡大の緊張が低くなっていた秋の頃にチケット販売が始まったからか、席もひとり空けではなく指定席で、フルで売ってました。入口からロビーはコロナ仕様で、物品販売もなしの会場、6割くらいの入りの殆どは、当然のことながら熟年ご隠居さんばかり。波多野さんのお弟子さんだか関係者だかの40代くらいまではちらほら、あとは老夫婦と高齢者おひとりさま、そして圧倒的に目立つのはおばちゃんたちのお友達グループでんな。ふたりから3人くらいでやってきて、並んで座り、マスクは流石に外さないけど、いつもと変わらぬお喋りをなさってる。コロナ禍再開後の夜の演奏会はとても静かなんだけど、そこそこ賑やかな午前中の彩の国埼玉劇場音楽ホールでありましたとさ。

舞台に目をやれば、最前列から3列だかは潰していて、ステージからの飛沫対策はしているもののトークの間もマスクはなく、フェイスシールドもアクリル板もなし。ま、トークイベントとしてはやたらと遠く座ってるなぁ、って感は否めなかった。今時はこんなもので見慣れてしまってるし、マスクがないのが逆に新鮮でしたね。これが終演後の時差退場風景、後ろ半分を先に退場させてるところ。
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この出演者で、この演目で、こういう聴衆がこういう時期であれそこそこやってくる。与野本町の午前11時シリーズ、まずは大過なくスタート、というところでありましょう。

来年6月には、我らが葵トリオが登場します。乞うご期待。
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…っても、どんな初夏になっているのやら。

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