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気付けばクァルテットの秋なのであった [弦楽四重奏]

一昨日にミサゴ舞飛ぶ温泉県盆地から戻り、昨日はここで聴いておかないといつ聴けるかわからんと一念発起し突然のいわきへの1泊プチたびの空。今、未だに夏と冬が喧嘩しているようなアヤシい天気の東北の外れから北関東を延々と常磐線で南下し、上野へと向かっておりまする。周囲は北関東から新帝都に遊びに行く若い人ファミリー爺婆でいっぱい、関東は賑わっておるなぁ。

なんのかんので結局のところ実質10日間となった今回の新帝都滞在、来月は半分以上ニッポン列島を離れているし、その後はその後の処理で温泉県盆地に籠もる予定なんで、年末の長逗留までの最後の長期新帝都滞在。なんせハイシーズンとあって、当然ながらほぼ毎晩どっかの演奏会場やらに繰り出していることになり、佃縦長屋で夕飯食えるのは…2日くらいしかないかも。で、以下、今更なんの用事もなかろうが、やくぺん先生の世を忍ぶ外の人を捕まえる必要がある方のために、出没メモでありまする。

10月27日:いわきアリオス音楽小ホール ヴィルタスQ
28日:東京文化会館小ホール ほのQ&澤和樹
29日:ハクジュホール 東京クライス・アンサンブル ヒンデミット八重奏曲など
30日:東京文化会館大ホール 都響定期
31日:トッパンホール ハーゲンQ
11月1日:ルーテル市ヶ谷センター 古典Q ショスタコーヴィチ・シリーズ
2日:浜離宮朝日ホール カザルスQ 《フーガの技法》
3日:東京文化会館小ホール エク定期

4日から5日は、結局エクの韓国地方公演には付き合わないことにしたんで(スイマセン…)新帝都におりまするが、当初は日本を離れている予定だったんでまだ日程を立ててません。ゴロゴロしていたい気もするがなぁ…そういうわけにもいかんじゃろのぉ。

って眺めると、おおお、久しぶりにとーきょー・クァルテット・ウィークじゃないかぁ。残念ながら第2ヴァイオリンのMrリンカーン以外はひとりも知らないメンツになってしまったジュリアードQは全く拝聴出来なかったものの、そもそも演奏会が凄く少なくなってるハーゲンQが一度聴けるわけだし、カザルスQの切り札演目(ヴィオラはどーするんだろー…)がなんとか聴けるし。オケもひとつくらいちゃんと聴いておかないとね、って感じだし。案外とロートル爺らしいラインナップではないかい。

そこから先の、爺とは思えぬ怒濤の日々、東京→ソウル→大分→ヴィーン→パリ→フランクフルト→パリ→東京→千葉某真言宗寺亡父十三回忌、という地獄の日程、果たしてこのところ突然右肩が痛みで上がらなくなる老体が持ちこたえるのやら…

ともかく、もう暫く生きていこう。

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エク韓国公演発表 [弦楽四重奏]

以下、本日の浦安でのエク公演でNPOエクプロジェクトブース辺りに地味に貼り付ける告知です。昨日の大森さん同様、商業ベースでガンガン宣伝するという今時のクラシック音楽業界とは異なる仕組みのイベントなので、当無責任私設電子壁新聞でのみ勝手に告知します。ご関心の向きは、ソウル公演、今ならチケットの手配も可能です。昌原公演は既に売り切れだそうで、残念ながら手配出来ません。悪しからず。
エクセルシオ 韓国公演.jpg
エクセルシオ 韓国公演.pdf

なにせソウル公演は、「ソウルのサントリーホール」たるロッテホール(小ホールはないので、大ホールです!)で、政府関係者も来るの来ないのという大事になっているみたい。どうなることやら。

なお、雑用やくぺん先生はボランティア・カメラマン(&ことによるとツアーガイド)としてソウルには馳せ参じます。昌原は当初は行く予定だったのですが、流石にその後の欧州ツアーと日程が近すぎバタバタしていて、現時点では無理そう。温泉県盆地オフィスからだと、単純直線距離だと岡山より近いくらいなんだけどねぇ。

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ジュネーヴ大会もう始まってます [弦楽四重奏]

室内楽の歴史に残る(?)「国際レベルのピアノ三重奏コンクール三連発+α」という異常な2023年がトロンハイムで幕を閉じたと思ったら、大阪、メルボルンに続く今年最後のメイジャー(うううむ、開催史は長いと言え、今のボルドー大会がお隣エヴィアンでやっていた頃の実質中断期間もあるので、「メイジャー」のひとつと言うにはちょっと微妙ながら…)弦楽四重奏大会たるジュネーヴ国際音楽コンクール弦楽四重奏部門も既に始まっておりました。今月末開催で、残念ながら来月欧州渡航の際についでに覗けないなぁ、と思っていたんだけど…

ミュンヘンARD同様に「いろんな課目の中から数年おきにいくつか選んで開催」というデパート型のやり方で、今年はフルートと弦楽四重奏。とにもかくにも弦楽四重奏部門の公式ページをご覧あれ。
https://www.concoursgeneve.ch/section/competitions/string_quartet_2023/
「第77回ジュネーヴ大会は10月23日から11月4日に開催されます。メンバーは35歳以下で合計年齢は120歳以下です。」って書いてあるじゃん、まだ始まってないじゃん、って思うでしょ。でもぉ、なんだか様子が変なんですね。だってさ、「参加団体」とあって、ポチョっと押すとずらずらっとエントリーリストが出てきて、15団体も並んでら。ああ、相変わらず、ニッポン拠点の連中は誰もおらんなぁ。

ALBERO QUARTET, Korea
Kaewon Ma, Yeojin Lee (Violins)
Woojin Lim (Viola)
Yejin Kim (Cello)

ANIMATO QUARTET, Netherlands
Inga Våga Gaustad, Tim Brackman (Violins)
Elisa Karen Tavenier (Viola)
Pieter De Koe (Cello)

AST QUARTET, Korea
Sungmoon Kim, Minju Park (Violins)
Jinju Yang (Viola)
Eunju Cheung (Cello)

ATENEA QUARTET, Spain
Gil Sisquella Oncins, Jaume Angelès i Fité (Violins)
Bernat Santacana i Hervada (Viola)
Iago Domínguez Eiras (Cello)

ELAIA QUARTETT, Germany
Iris Günther, Leonie Flaksman (Violins)
Francesca Rivinius (Viola)
Karolin Spegg (Cello)

QUATUOR ELMIRE, France
David Petrlik, Yoan Brakha (Violins)
Hortense Fourrier (Viola)
Rémi Carlon (Cello)

QUARTETTO EOS, Italy
Elia Chiesa, Giacomo Del Papa (Violins)
Alessandro Acqui (Viola)
Silvia Ancarani (Cello)

QUARTETT HANA, Germany
Fuga Miwatashi, Gyurim Kwak (Violins)
Emiko Yuasa (Viola)
Johannes Välja (Cello)

KANDINSKY QUARTET, Austria
Hannah Kandinsky, Evgenii Artemenkov (Violins)
Ignazio Alayza (Viola)
Antonio Gervilla Díaz (Cello)

QUATUOR MAGENTA, France
Ida Derbesse, Elena Watson-Perry (Violins)
Claire Pass-Lanneau (Viola)
Fiona Robson (Cello)

MODULOR QUARTET, Switzerland
Gregor Hänssler, Beatrice Harmon (Violins)
Mila Krasnyuk (Viola)
Milena Umiglia (Cello)

MOSER STRING QUARTET, Switzerland
Kanon Miyashita, Patricia Muro Francia (Violins)
Ariadna Bataller Calatayud (Viola)
Lea Galasso (Cello)

NOVO QUARTET, Denmark
Kaya Kato Møller, Nikolai Vasili Nedergaard (Violins)
Daniel Śledziński (Viola)
Signe Ebstrup Bitsch (Cello)

QUATUOR WASSILY, France
Marine Faup-Pelot, Vincent Forestier (Violins)
Clément Hoareau (Viola)
Raphaël Ginzburg (Cello)

なのに、その直ぐ下に「セミファイナリスト」とあって、またポチョ、っとすると…

AST QUARTET, Korea
ATENEA QUARTET, Spain
QUATUOR ELMIRE, France
QUARTETTO EOS, Italy
QUARTETT HANA, Germany
NOVO QUARTET, Denmark

って6団体の名前が挙がってます。なんなんねん?

どうやら、今年のジュネーヴは…

20 April : 参加受け付け終了
8 – 9 May : ヴィデオ審査
10 May : 参加団体決定
10 July : オンライン・リサイタルのヴィデオ〆切
18 – 20 September : オンライン・リサイタル放送
21 September : セミ・ファイナル参加者発表
25 September : オンライン・ワークショップ開始 ←今ここ
23 October : ジュネーヴ音楽院で開会セレモニー
24-25 october : 音楽院でセミ・ファイナル開始

ということになってます。これはもう中身的には、「ぐぁんばれ僕らのハナQ!」でしかないわけじゃなぁ。コンクールとしての運営の仕方としては、なんとなんと、「予備審査で大会参加者とされた15団体は、その後、自分らでヴィデオで1次予選の演奏を収録しジュネーヴ大会に送り、大会はそれを公開し審査、6団体を選び、今月23日にジュネーヴに集まって貰って、セミファイナル、ファイナルをライヴで開催する」ということでんな。

なんのことはない、実質的には「参加は6団体で、15団体まで絞られたテープ審査の最終ステージを一般公開でオンラインで行う」ってことですわ。

ええええええ、って腰を抜かすでしょ。そりゃ、これをやれば経費は一気に削減されるし、1次予選で40分弾く為にチェロ含め実質5人が14時間飛行機乗ってジュネーヴまでやってきて、はいオシマイ、ってどう考えても無駄な、でもどうしようもないよねぇ、とコンクール関係者が常に頭を抱えている大問題が、あっさり解決されるわけですわ。

コロナ禍でのオンラインやテクノロジーの発達を前提に、タブーを破るとも言えるやり方で国際合奏コンクールの永遠の課題をクリアーしようとしているジュネーヴ大会。流石に第2次世界大戦中も開催していた唯一の国際コンクールだけある、とその割り切り方を賞讃すべきや、はたまたこれじゃダメじゃんと呆れるべきか?

審査員に今井信子さんやエベーネの第2ヴァイオリンくんもいるので、訊ねてみねば。

あ、ヴィーンのエベーネの切符、昨日発売じゃないかぁ、すっかり忘れてた!

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ベルチャQ第2ヴァイオリン決まりました [弦楽四重奏]

今年の春前から現場で目撃していた方からはいろいろな情報があったことで、あたくしめがなんのかんので聴けなかった去る4月のブーレーズ・ザールでの演奏会でもそうだったようですが、この半年ほどのベルチャQ演奏会が第2ヴァイオリン代理メンバーで行われておりました。

コロナ禍は弦楽四重奏の世界には非常に大きな影響を与えていて、それは若い団体だけではない。既存の、それも現役横綱の東と西を争うような普通の意味で「売れている」団体でも、4人のメンバーが同じようなモーティヴェーションと同じような方向性で音楽を続けるのは困難な時期が続き、その結果、新たなフォーメーションとなっている団体がいくつもあります。

ベルチャQに何があったかはホントに知らないけど、ともかく、創設メンバーのラウラが0年代の終わりにナッシュ・アンサンブルに転出した後の黄金時代を支えてたセカンドくんが抜け、新たなメンバーが決まったようであります。こちら。
https://www.belceaquartet.com/

なんせ猛烈に作り込むタイプの団体ですから、この秋からの新フォーメーションでのレパートリーは極めて限られたもののようですけど、イスラエルからトルコのツアーのあとに北米、それからドイツ、英国と、順調な活動は続いているようでありますな。流石に「常設弦楽四重奏団」が作られるための条件たる「結成から10年は嫌になるほど一緒にいて弾いている」という時代はとっくに過ぎていますから、演奏回数はそれほど多くはない。それでももう問題ない時期に入った円熟のアンサンブルとして、今やアーティスティックな意味ではなく経済的な意味でその存続が危機に瀕している「常設弦楽四重奏団」のトップとして、しっかり活動を続けてほしいものであります。

来年の初夏にニッポンを訪れ、いよいよトッパンやら、なんと鶴見などという猛烈な贅沢もあるそうな。請うご期待。

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弦楽四重奏の配置について [弦楽四重奏]

些かどころがガッツリ旧聞に属し、惚け老人候補やくぺん先生個人としても南の島シンガポールやら新帝都の祭りの彼方の記憶になりかけていることなんだけど、こういう演奏会がありましたです。
365936755_1394216547822551_8059128008172444032_n.jpg
演奏しているマイ・ハート弦楽四重奏団ひろしまについては、こちらをご覧あれ。
https://takashiokita.jp/

要は、そろそろ高齢者くらいの世代の広響ベテラン団員さんなどがやっている、オケベースのローカル団体です。当電子壁新聞を立ち読みなさるような酔狂な方なら、やくぺん先生が使う「ローカル」という言葉はネガティヴな意味ではないとご存じでしょうから、ま、どーのこーの言いません。この団体の活動やら評価やら、知りたかったら勝手に調べて下さいな。

んで、翌日に遙かシンガポールに向かうというこの日、わざわざ関空対岸の宿に仮眠みたいな宿泊をすることになっておったわけですがぁ、そんなときに大阪は伊丹空港最寄り阪急駅から15分くらいの川西能勢口駅南口真ん前の駅ビル「アステ市民プラザ」上層階に入ったアステホールなる半端に広いコミセン講堂みたいなところでこの団体がドヴォルザークの作品105なんぞ弾くとなれば、まさか知らんぷりもできまいて。かくて、朝っぱらに温泉県盆地からバスで熊本空港まで向かい、台風であちこち混乱、到着が遅れるANAさんのダッシュ8君に無事に飛び乗り、阿蘇眺めながら豊後竹田、大分半島先っぽ空港を眺め、瀬戸内海の島々を跨ぎ、今晩はあそこに泊まるんじゃなぁと関空島対岸の本来ならばツィンビルになる筈だった半分が大阪湾の光に逆行を晒すのを見下ろし、伊丹空港に着陸。なんとか開演時間に駆け込めた次第。

この団体には、知る人ぞ知るもの凄い特徴があります。それは、こちら。ほれ。
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お判りかな。配置であります。

弦楽四重奏の配置はどうあるべきか、永遠の正解のない議論でありまするがぁ、正直、歴史的には正解などない、というのが正解でありましょう。演奏するご本人らが弾きやすく、聴衆を想定している場合には聴衆にとって猛烈におかしなバランスになるとか物理的に聴こえないとか、そんな困ったことにならない限り、どんな風に座ろうが立とうが、はたまたヘリコプターに乗り込もうが、そのグループのお好きなように、はたまた作曲家さんが指定したいならまあ敬意を持って可能な限りはそれに従ってあげましょうか、って以上のことは言えません。

とはいえ、やはり結果として行われている配置にはいくつかのパターンが出来ているわけですが…このマイ・ハートQ という団体、恐らく一回こっきりの臨時編成ならともかく、メンバーの交代はあろうが数十年に渡って活動してきている団体としては唯一無二の、トンデモない座席配置で弾き続けているのですよ。

上の客席から眺めたスチール写真では、開演前にガチャガチャ椅子が置いてあるだけのように見えますので、動画でご覧あれ。ほれ。昨年の収録のようですね。
あれ、チェロさんがいつものメンバーじゃないような気がするけど、ま、そこはそこ。ご覧のような絵面ですわ。なかなか衝撃的ですよねぇ。弦楽四重奏にお詳しい方であればあるほど、この映像眺めて、頭がクラクラしてくるでしょ。なんじゃこりゃあああああ、ってね。

ちょっと斜め方向を向くように客席を向いた椅子が前後2列並んでいる。演奏家が出てくると、前列は客席から見て左が第1ヴァイオリン、右がヴィオラ。奥の列は左が第2ヴァイオリンで、右がチェロです。で、前列の2人は後列の2人を振り返って見ることもなく、みんな客席方向を向いたままで演奏します。つまり、第1ヴァイオリンとヴィオラは、第2ヴァイオリンとチェロとのコンタクトは完全に音のみ。アイコンタクトなどは一切ない、ということ。

動画では「へええ」って感じでしょうけど、これ、ライヴで眺めると、ちょっと驚きますよ。実際の音の出方は、下手から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、と半円で座っているスタンダードな配置と、見かけほど大きな違いはないんですけどねぇ。

なんでこんな配置をするのか、正に「誰もやらないには訳がある」だろうことを敢えてやっているのですから、演奏している方々にはハッキリと意図や意味があるのでしょう。その部分を突っ込んでる同業者さんの記事やら、演奏家さんたちが説明している文章などは、寡聞にして目にしたことがありませぬ。

じゃあ、お前、自分で尋ねろ、って言われるでしょうから、もうこれでこの話はオシマイ。関心のある方は、演奏会に出かけて、直接きいてみてくださいな。

この演奏会、もうひとつ極めて興味深いことが。当日配布の刷り物、ピラっと開くと、こういうページがありました。
IMG_E7870.JPG
お気づきかな。真ん中から下のところ、川西市長、広島市長の前に、「衆議院議員 岸田文雄」さんの祝辞が刷られてるんですね。

え…でしょ。さすがにこれは当日MC担当だった川西出身のヴィオラ奏者沖田氏も説明が必要だと思われたか、客席に向けて「内閣総理大臣という肩書きでこういうところに祝辞などをいただくには、官邸の面倒な手続きが必要でなかなか大変でして…」とのこと。そーり大臣になる遙か前から、広島選出の衆議院議員として支援してくれているので、そっちなら問題ない。で、こういうことになってるんだそーです。

いやぁ、世の中、いろいろ難しいことや判らないことがまだまだ沢山あるなぁ。ちなみにマイ・ハートQ、この演奏会の後に広島の三次市でドヴォルザークの作品105と106の録音をしたそうな。残念ながら、というべきか、録音パッケージになってしまうと、この配置 だと判らないんですよね。その方が良いともいえるんだろうけどさ。

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タンQ(唐四重奏)の30年 [弦楽四重奏]

大変に失礼ながら、寡聞にしてタンQが結成30周年を迎えていたとは知りませんでしたです。あらためて、御目出度う御座います。
https://www.tangquartet.co/

今、シンガポールをウロウロしていろんな人に遇ったりしてるわけでありまするが、昨晩、来年頭の室内楽フェスティバルの参加者のひとりとしてホーカーズで気楽に飯食った奴が、なんのことはないコロナ前までタンQのチェロを弾いていた創設メンバーのレスリー・タン氏だったわけでありまする。
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ちなみに一緒に真剣に話をなさっているのは、言うまでもなく、元ハレーSQチェロの我らが山本ゆーちゃんさんでありまする。前世紀の終わり頃という同じ時代にアジアで弦楽四重奏をやってたパイオニアの、遅すぎる邂逅でありますな。

90年代の初め頃、ヴィオラとチェロの唐兄弟らシンガポール響の若いメンバーが一念発起、このライオンの島で初の「常設弦楽四重奏団」としての活動を始め、オーブリンに留学したり、ヨンシュトウ音楽院発足後はそこでファカリティをしたりと、創設メンバーはコロナ前までメンバーを交代せずに活動を続けておりました。やくぺん先生ったら、なぜかハレーが東南アジアツアーをした1993年だかにたまたま昔のヴィクトリア・ホールでタンQの演奏会を聴いていて、ラズモの2番やったりしたのは今でも覚えてますわ。その話をしたら、ああああ遠い日の…とレスリーは苦笑してたけどさ。

コロナ禍が関係あるのかは知らんけど、事実としてコロナ禍を経て、創設以来の唐兄弟が団を離脱、今はチェロは1991年生まれのお弟子さんというもの凄く若い奴が入って、活動を続けているようです。ちなみにレスリーは今はバロックチェロを中心の活動にシフトしていて、来年1月に予定されている室内楽フェスティバルにもチェロ奏者として出てくるみたい。ま、その辺りはいずれまた。

遙か南の島にも、弦楽四重奏で生きていこうとしてきた奴らがいる。その記録を今、取り寄せ最中。果たして手に入るのやら。でもこれはやくぺん先生文庫には必須だなぁ。
https://www.tangquartet.co/tangat30.html

では、タンQの演奏をどうぞ。ちょっと前、創設メンバーのローカル作品です。ケリー・タンって、親戚かしら?

地球上に広がる弦楽四重奏の世界、まだまだ知らんことがいっぱいあるなぁ。

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2023年最後の闘いは神無月ジュネーヴへ [弦楽四重奏]

昨日のメルボルンの結果は、いろんな意味で「コロナ時代」の若手弦楽四重奏団マネージメント戦略をまざまざと見せてくれるようなものでありました。「地元グランプリで地元団体初優勝」に向けたムジカ・ヴィーヴァさん含めたオーストラリア業界の戦略が見事に嵌まった、って感じ。なんか昨晩のシルバーストーンの名門マクラーレンみたいだったなぁ、ある意味で。

そう考えると、ホントに大阪は…と思うなと言われても無理。ああ、やっぱり俺が見ている目の前での母国団体メイジャー大会優勝は見果てぬ夢であったか…と虚しくなる気持ちを振り払い、隠居爺はこそこそと今年最後の大会の様子を眺めに行くと、うううむ、こんなことになっておったかぁ!
https://www.concoursgeneve.ch/section/competitions/string_quartet_2023/

もの凄く面白いのは、永世中立国ということもあってか歴史だけはやたらと長いこの大会、ここにリストアップされた15団体がいきなりジュネーヴ音楽院ホールに集まるのではなく、まずは9月18日から20日までオンライン上での公開審査をする、なんて前代未聞のやり方を採用したこと。

へえええ、まあ、基本、参加者はホームステイという大会ですから、コロナ禍が明けたとはいえ戦時下の今、普段のようにやってるわけにはいかん、という割り切った考えなんですな。で、セミファイナルに残った6団体が、押っ取り刀シベリアを越え(られないから、ゴビ砂漠を跨ぎ、キスタン諸国上空を抜け、遙か左手に戦場を眺めながら)ジュネーヴまで呼び寄せられて、10月23日から27日までのライヴのセッションが始まる。ここで参加はやっと、ベルチャ様審査委員長(!)率いるクスのウィリアムやら、エベーネのガブリエルやら、元セント・ローレンスやら、かつての大阪優勝ダリ・トリオからアルテミスの第1ヴァイオリンを経て今やベルリンフィル初の女性コンマスとなったヴィネタ様やら、知り合いだらけの審査員の前に引きずり出されることになるわけですな。正直、パリに行く前に顔を出そうと一瞬思った程の顔ぶれなんだけど(目的は審査員連中で、もう参加者じゃない!)、なんせジュネーヴの滞在費の高さを考えると二の足を踏まざるを得ませんでした。ま、もう収入が現役時代の三分の一以下の隠居なんだから、ここは諦めるしかないわい。

んで、参加団体は、なんと15団体中3団体が純粋韓国チームでありまする。無論、コロナ後に再開した闘いももうまる3年目ともなれば顔ぶれも見えてきていて、「お馴染み」と言える連中もおりますな。ニッポンにはこれだけ若手が出てきているのに、どこもエントリーしてないのは、ますますのガラパゴス化、正直、これで良いとみんな思ってるとすると大いに問題としか言えぬが…ま、それはまた別の話。個人的にはやくぺん先生、もうサントリー室内楽アカデミーくらいの日本拠点の若手連中は好きにしてくださいとしか思えず、ホントに関心あるのは、マーケットがないのにみんな弾ける奴らが次々と弦楽四重奏を始めちゃってこれをどうするんだ、って程の室内楽フィーバーが勃発してるお隣半島の若い連中の方です、はい。ぶっちゃけ「頑張れハナちゃん!」なんだけど…ここももうメンバーはオケのキャリアを始めてるんだよねぇ、うううむ…

とにもかくにも今年唯一の「欧州グランプリ」のジュネーヴ、これでコロナ後の状況がひとわたり見えることになる若手弦楽四重奏業界でありましたとさ。

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メルボルンは地元団体初優勝! [弦楽四重奏]

先程、メルボルン国際室内楽コンクールの弦楽四重奏部門の結果が出ました。途中吹っ飛ばし、いきなり結果で申し訳ないですけど、こちら。

優勝:アフィニテイQ(オーストラリア)
第2位:テラQ(アメリカ合衆国)、リススQ(韓国出身アメリカ合衆国)
詳細はこちらを参照あれ。
https://www.abc.net.au/classic/programs/special-features/micmc-2023-string-quartet-final/102526998

テラQは、先頃の大阪3位ですから皆様もまだ記憶に新しいかも。ま、大阪的には順当なところですね。で、リススQは去年のミュンヘンARDセミファイナリストで、テキサスのミロQのところで研鑽を積んでる韓国(&韓国系アメリカ人)の女性4人組。こちらも、やくぺん先生的には誠に順当、去年のミュンヘンでもファイナル行っていいんじゃね、と思ってましたから、誠に良かった良かった。

で、優勝はなんとなんと、このコンクールが始まって30余年、タンクストリームQもパイゾQの前に阻まれたオージー悲願の地元団体優勝ということになった次第。一昨年のロンドンの3等賞で、経歴を見るとオーストラリアとはいえ欧州の弦楽四重奏養成エリートコースをしっかりやってきている奴らだそうですけどぉ(完全にこの試合で勝つことを最大の目標に団をマネージメントしてきた、って流れですね)、実はやくぺん先生はもうぜーんぜんライヴで聴いてない世代。この結果が妥当かどうなのか、PC画面だけでは「ああそうですか」としか言いようがないです。

とにもかくにも、ある意味、とても「コロナ後」の「コンクールのローカルイベント化」のひとつの現れとも言えるような結果とまで暴論しませんがぁ…うううむ、インテグラが大阪受けてくれてればなぁ…なんて言いませんっ。

で、大阪国際的により興味あるのはピアノ・トリオ部門でありまして、結果はこちら。
優勝:トリオ・オレロン(ドイツ)
第2位:トリオ・パントゥム(フランス)
第3位:トリオ・ボヘモ(チェコ)
詳細はこちらをご覧あれ。
https://www.abc.net.au/classic/programs/special-features/micmc-2023-piano-trio-final/102526956
いやぁ、こちらは正に大阪の参加団体が1,2位ですな。大阪トリオ部門最高位がここでも2位ですから、こういうものなんでしょう。

音はまだオンラインで聴けますので、ご関心のある方は是非どうぞ。グランプリはどっちに行ったのか、よー判らんわい。

これで弦楽四重奏は意外な程に欧州業界での注目度が高い10月末のジュネーヴ、そしてトリオは今年の最後にして最大の闘いオクトーバーフェスト前のミュンヘンARDへと、若者達のグランプリ・ツアーも最終コーナーに雪崩れ込むわけでありまする。これで暫しの夏休み。

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Qインテグラがジャパンアーツと契約 [弦楽四重奏]

些か旧聞に属しますが、先週、一部業界内を驚かせたニュースがありました。こちら。
https://www.japanarts.co.jp/news/p7985/
7月1日を以て、クァルテット・インテグラがジャパンアーツに「所属」することになった、との告知です。

いやぁ、これはもう、コンクールで何等になったとかいう問題ではない、とんでもないニュースなのでありまするよ。だってね、日本の所謂「大手」マネージメント事務所が、まだ実質学生(コルバーンのレジデンシィというのが「学生」なのか、というメンドーな話はさておいて)の「常設」弦楽四重奏団とマネージメント契約を結ぶなんて、過去の例がないことでありましょう。

そもそも日本の大手マネージメント会社さんは、弦楽四重奏団との契約を殆どしていません。20世紀型「メイジャーレコード会社で新譜を録音し、世界各地の大手マネージメント会社と契約し、世界をツアーして歩く」というスターシステムが成り立っていた21世紀初頭まででさえ、室内楽団で大手と契約して日本で定期的なツアーを行っていた団体はアルバン・ベルクQとか東京Qとか、はたまた某大手の社員さんが「俺が売ります」と宣言しちゃってやってた初期のアルテミスQとか、そんなんしかない。今は、ハーゲンQがジャパンアーツでやってるくらいじゃないかしら。

そもそも、日本の大手マネージメント会社は「室内楽」、特に「弦楽四重奏団」は抱えたがらない。このジャンルは、室内楽趣味のある社長が個人でやってる昔ながらの小規模事務所か、若しく自分のところにお抱えの目利きディレクターがいるホールが直接招聘してがやるのが常識でした。あとは巨大音楽祭などのパッケージの一部になるか、くらい。巖本真理Qも、最終的には甘利さんが虎ノ門の文化庁から道渡った直ぐのビルの小さな部屋でやってた個人事務所がやってたようなもの。今も日本の団体を抱えている大手音楽事務所は、室内楽団メンバーのひとりかふたりが自分のところ所属のスターアーティストで、「ねえ、これもやってよ」と頼まれてお付き合いでやる、というのがあるくらいです。各社のアーティスト表を眺めれば、それはもう一目瞭然ですわな。

若手ピアニストやらヴァイオリニストなど「ソリスト」候補生の場合は、大手事務所が学生時代から契約し、担当マネージャーが実質的に育てていく、というやり方はあります。てか、マネージメント会社の本来業務のひとつです。KAJIMOTOさんなど、21世紀に入ってからそういう会社のあり方から大手広告代理店型にシフトしていましたけど、コロナ禍でまた旧来のマネージメント会社の王道に戻そうとしてますな。ま、それもまた別の形。

ジャパンアーツはアマービレを持ってるじゃないか、と仰られるでしょうが、これも第1ヴァイオリンさんがジャパンアーツの若手育成枠というか、若い演奏家を拾い上げていく枠の中にアーティストとして入っていたので、その流れでやっていたということでしょう。

インテグラがミュンヘン2位という看板で、まだコルバーンに在学中でこの先のキャリアの拠点も決断していないだろうタイミングでジャパンアーツが契約したというのは、ホントにもう、あっと吃驚!日本の室内楽の歴史で初とも言える驚異的な事態なのでありまするぞっ!

まあ、このリリースというか、公式発表ではこのレップが日本国内なのかそれともインターナショナルなものなのかは全然判らないし、日本でのマネージメントやブッキングの雑用をプロの事務所に依頼するみたいなものなのか、それとも音楽事務所がコンクールで勝った若いソリストみたいに自分らのスターとして育てていくつもりなのか、皆目分からんです。

それにつけても、コロナ禍がまだ明けぬ一昨年だかの夏頃、ミリオンのIさんから「年末のベートーヴェン、若い団体でいろいろ考えたんですけど、インテグラは任せられますかねぇ…」などと相談をされたのは…そう、葛飾巨大柿ノ木下を撤収し、まだオフィスの定まる先もちゃんとは決まらず、大川端の倉庫に潜り込んで仕事してた2年前の夏頃だったなぁ。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2021-08-20
隠居爺のやくぺん先生とすれば、これでもうインテグラは追いかける必要がなっくなった、ということで大いに気が楽になっておりまする。皆様、これからもインテグラをよろしく。「インテグラを日本に帰れなくする会」を結成する必要もなくなったのかな、これで。インテグラが大阪もメルボルンも受けに行かなかったのは、こういう話が動いていたからなのかなぁ…うううむ

爺は、一緒に歳を取ってきた連中と老いさらばえていくのみ。

ちなみにインテグラの近未来のライバルたちの現状をお聴きなさりたい方は、こちらをどうぞ。なぜかセミファイナルからしかストリーミングがないみたいなんですよねぇ。
https://www.musicaviva.com.au/micmc/micmc-live-stream/micmc-live-stream-registration/?fbclid=IwAR2wjDABp-hzQesVbf4ExMheQWIKq_wKT0pDaoogH7_f-48qbMDcwvLsiQ8

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モルゴアQはガラパゴスなのか? [弦楽四重奏]

ホントは「現代音楽」カテゴリーなんだろうなぁ、とは思うけど、ま、こっちでいーや。

昨晩、ロビーから眺める風景はスッカラカンの築地市場跡地と豊海再開発縦長屋群ばかりで、驚くなかれ虹橋の姿が一切望めなくなった浜離宮朝日ホールで、こんな演奏会がありましたです。
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モルゴーアQ活動開始30年記念演奏会でありまする。学生時代から弦楽四重奏の勉強をみんなで始めて…という経緯の団体ではないので、来年のエクのような「結成30年」という言い方はしないのでしょうねぇ。

このような「複数のメイジャー首都圏オーケストラのコンサートマスターや首席を勤めキャリアも知名度もある奏者が、年間数回の定期演奏会と国内ツアーを30年に渡って続ける」というやり方は、室内楽マーケットが小さく主催者となるローカル音楽協会もほぼ皆無で、教育機関が奏者を教職員として雇うレジデンシィ制度も存在しないニッポン文化圏では、弦楽四重奏団を長きに渡り続けるための唯一の現実的な方策であることは、善し悪しの問題ではなく、誰にも否定出来ない現実でありましょう。

オペラであれなんであれ、オーケストラが街のインフラとして存在している欧州の場合には、そのオーケストラを母体に弦楽四重奏団が結成されるものなんだけど、世界でもロンドンとかパリとかくらいしか存在しない「複数メイジャーオーケストラが乱立する」という状況で、異なるオーケストラの首席奏者が集まって「常設弦楽四重奏団」を結成し活動を続けられる、というのは、ニッポン首都圏の聴衆には不思議はないかもしれないけど、世界的には極めて珍しい現象なのです。ってか、ニッポンにしかない、と言えるんじゃないかしら。ソウルとかにはあるのかな(あっても、30年やっているだけの歴史はまだ無い筈)。

ちなみに、ロンドンなんかにはありそうですが、若手からベテランまで無数の弦楽四重奏団が活動するあの街やその周辺でも、「ロンドン響コンマスとイギリス室内管第2ヴァイオリン首席とフィルハーモニア管首席ヴィオラとバーミンガム響首席チェロが、英国で30年弦楽四重奏活動を続けている」なーんて例はありません。コロナ以降は判らんものの、少なくともジメナウアー女帝様が支配していた頃の欧州室内楽界では、「室内楽のトレンドを作る大手音楽事務所は、オーケストラに正規団員として雇用されているメンバーがいる団体とは契約しない」というのが原則でした。だから、前々回2015年のメルボルン大会で優勝したノガQなど、「俺たちはベルリンフィルのメンバーなどがいるので、大手事務所からは絶対に声がかからないんだよね」と開き直ってたものです。これが過去数年のオフィシャルなノガQの演奏記録。
https://www.nogaquartet.com/concerts/
うううむ、コロナのときという特殊事情があったとはいえ、その前のシーズンなど、やはり年間にこれくらいの回数しかやれてないんですなぁ。…とはいえ、冷静にみると、東京拠点の団体でこれだけの数切れてる連中はどれだけいるか、ってことにもなるなぁ。ううううむ…

ま、その辺を始めるとまた別の話になっていくからそれはそれとして、とにもかくにも我らがモルゴーアQったら、極めて日本独自、ニッポン音楽文化圏でしか生まれない弦楽四重奏団であることは確かでありましょうぞ。瞠目せよ、これがロビーで絶賛発売中だった30年記念過去のチラシ全て集めた記念冊子じゃ。懐かしいコピーだなぁ。
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さてもさても、在京オケ首席が年に数回押っ取り刀で集まるモルゴーアQのもうひとつのウリは、「プログレ」でありまする。ショスタコーヴィチをレパートリーのメインにしてプログラミングをしていくという団体は、それこそヴァインベルクの世界的な権威になってしまっているダネルQを筆頭に、世界に案外あります。ダネルの連中なんぞ、もうこれが何度目のショスタコ全曲演奏会かわからん、と苦笑してたり。ですから、今となれば、モルゴーアQの唯一無二の特徴というより、モルゴーアQ結成のモーティヴェーションが、多くの常設団体の最大の目標であるベートーヴェンではなくショスタコーヴィチだった、というくらいに考えるべきでありましょう。昨日の演奏会も、舞台の上からの荒井さんお馴染みのマイクマーフォーマンスでも仰られてましたように、敢えて「プログレ」で一晩埋め尽くすという空前絶後言語道断なものだったわけです。

このモルゴーアの「プログレ」なる演目、前世紀の終わり頃に『クァルテットの名曲名演奏』などという小冊子をやらせていただいた頃には、正直、やくぺん先生ったらまーーーーーったく何が何だか判ってなかった。まだそんなに「プログレ」という言葉を表に出していなかったような気もしますし。だから、当時は吉松氏の《アトム・ハーツ・クァルテット》を挙げるくらいしか出来なかった。

あれから四半世紀も経つというのに、頭の固い耄碌隠居になってもーたやくぺん爺さんったら、未だに「プログレ」は判ってませんっ。ゴメン、って謝るつもりもないけどさ、ともかく、判ってない。で、昨晩の舞台上での荒井マイクパーフォーマンスで、「どれも1970年代前半の5年くらいのとても短い期間の作品」と仰られていたのを聞き、あああなるほどぉ、と数ミクロンくらいは理解が進んだかな、って程度のおバカなのであるぞよ。

まあ、考えてみれば、「現代音楽がロックに与えた影響」だとか「前衛とポップスの深い関係」なんて議論や、それらを実際に「ほらみろ」みたいに纏めたアンソロジーCDやらボックスCDというのは、もう嫌になるほどいっぱいあります。もうそれ自体がひとつのジャンルになっている程でんな。特に1970年代前半というダルムシュタット系前衛が終わって所謂新ロマン主義や多様式、なによりのポストミニマルが創作のメインになっていく直前の時代、正に評価や見直しが行われ、「前衛音楽の古典化」が進んでいる真っ最中の辺りなわけありまするな。

そういう時代潮流の真っ只中で、60年代前衛の響きにモロにやられちゃった「ロック」とか「ポップス」から出現した(らしい…うううむ、アホだからよーわからんわい)「プログレ」の傑作群を、敢えて弦楽器4本で再現してみる(それも、前衛時代に開拓された無茶苦茶な奏法を駆使する、とまではいかないやり方で)、という動きがあることそのものは、不思議ではないどころか、王道の活動と申しても過言ではないのでありましょう。

興味深いのは、じゃあここでモルゴーアさんたちがやっていることが、若い世代に「奏法」や「様式」として伝えられているか、ということでありまして…どうも、浜離宮の客席を埋め、終演後のサイン会に列を成す意外な程拾い客層の聴衆を眺めるに
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じゃあ俺たちもこれをやってやろう、という若い世代の団体が目の色変えて舞台上の荒井さんの技法を盗もうとしている、という感じではないのでありますよ。

モルゴーアさんの「プログレ」は、今や誰もが演奏するピアソラとはまた違うもので、敢えて似たものを探せば、YAMATOQの皆さんが舞台で弾いているクィーン、ジミヘン、なんぞなのかなぁ。
https://diskunion.net/portal/ct/detail/CL-1007828403
正直、よーわからんです。「石田組」なんかは、こういう流れの音楽やって、集まった娘やら元娘共を泣かせているのかしら?荒井さんが最近、日本センチュリーなどに出張ってそこの団員さんとやってるような活動は、「プログレ」の関西への浸透を狙ったものなのかしら?

なんせモルゴーアQ率いる荒井さんは、インテグラやほのQが軒並み参加した今や伝説の秋吉台コンクールで審査委員長を務める程の王道の弦楽四重奏奏者さんでもあります。果たして30年を過ぎたモルゴーアQ、その音楽はニッポンの演奏者たちにどのような影響を与えていき、そのレパートリーは世界の弦楽四重奏演奏史の中でどのように位置付けられるのか。クロノスQに始まった北米の「多文化融合の媒体としての弦楽四重奏」でもないし、エベーネが禁断の扉を開いてしまった感がないでもない欧州の「ジャズ」流行とも違う、全く他に類例のない世界がどのように継承されていくのか、そもそも継承なんてあり得ないものなのか…

とても耄碌隠居爺のやくぺん先生には無理な課題なんで、若い人、ガッツリ議論してちょうだいな。モルゴーアQの30周年、まだまだ来年まで続くそうな。

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