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優勝団体に遭いにいく・その5:第11回国際モーツァルト・コンクール第1位ノブスQ [弦楽四重奏]

朝っぱらに水原のバスターミナルを出て、国道一号線をソウルに向けて北上。なんでこの道はいつも混雑しているのだと呆れる仁川方向への支線に入り、金浦空港に到着し、ぼーっとしながら半島を出て、鳥取辺りでホンシュウ島に上陸、摂氏10度とうらうらの帝都湾岸に戻って参りました。そのまま都内某所まで急ぎひとつ野暮用を済ませ、今、京急鶴見駅下の喫茶でやっとパソコン開いてます。午後7時から前回のミュンヘンARDの覇者アロドQの演奏会。20日にハノイに向かうまでの1週間、師走の帝都滞在でありまする。

昨晩は水原市が発祥の地というSKグループが、不動産部門のフラッグシップたる45階建て高層マンションを林立させた水原市北の新興開発地区のど真ん中に建てられたSKアートリウムなる文化施設のかなり大きなオーディトリアムで、ノブスQ10周年記念演奏会シリーズのひとつが開催されたのを、遙々聴きに行ったのでありました。ちなみにソウル公演は14日で、すっかり売り切れだそうな。
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ノブスQに関しましては、当無責任電子壁新聞でも随分とフォローしてまいりましたので、ご存知の方は良くご存知でありましょう。そうそう、彼らの表記ですけど、大阪で3位になったときに「ノブース」と記されて、以降、それに従ってきたのだけどやっぱり気持ち悪い。だって、どう考えたって「ノーブス」だもんねぇ。で、ハングル表記ではどうやら「ノブス」らしいので、ま、それで行きますか、ってことにします。韓国語なんだ、と思えばそれまで…じゃないけどさぁ。

もとい、で、ノブスQであります。なんせ、アマデオ・モディリアーニQと並び、弦楽四重奏聴衆の裾野を特定方向にホントに広げちゃった稀有な連中。ソウル公演はでっかいアーツセンターのホールに千数百のお嬢さんらが集まり、終演後の韓国クラシック業界伝統のサイン会は終わるまで延々1時間近くかかるのが毎度、なーんてとてつもないことになってる。

これでやってることがやっつけ仕事や、はしにもぼーにもかからないルックス勝負のみなら「かってにしてちょーだいな」だけど、なんせレッジョを見限ったジメナウアー事務所が本格的にバックアップに入ることになった2014年のザルツブルクのモーツァルト・コンクールできっちり勝ってくるようなまともな(ポッペン先生なんぞにしっかり鍛えられた、押さえるべき所はちゃんと押さえた恣意的ならざる音楽、ってこと)古典を聴かせてくれる。ロマン派やらせれば、ハッタリではなく筋の通った「キメ顔」が出来る。すげええカッコイイんだわさ。

昨晩の演奏会でも、意外にクールでスタイリッシュなシューベルト《断章》に始まり、ファーストぶっとびには決してならない室内楽としてちゃんとしたメンデルスゾーンの作品80。そして、ソナタ形式の構築性をしっかり見せた第1楽章と、弱音中心の第2楽章の泣き節とを対比させるドヴォルザーク作品106。どれもとても立派で、ロビーで流される10周年の軌跡を描いたヴィデオクリップのコンクール受賞歴も当然でしょ、と納得させる堂々たる演奏でありました(結成翌年に大阪で3位になったのは韓国ベースの団体としては初の国際室内楽コンクール入賞で、これが彼らのその後の活動のきっかけになっている、という事実は触れて欲しかったなぁ)。個人的には、ドヴォルザーク第3楽章トリオのテンポに、へええええ、と思わされたのがとても印象的でありましたです。

そんなノブスQ、この故郷でのミニ記念ツアーを終え、来週はウィグモアでハイドンばかりのシリーズのひとつを弾き、それからイスタンブールで公演を行い、ひとつの時代を終えようとしております。

祖国を出て、ミュンヘンでずっと一緒にやってきたヴィオラのイくんが、今月をもって脱退。指揮者の修行を本格化させるとのことです。新しいヴィオラはもう決まっていて、やっぱりヴィジュアル系OKの伯林在住のコリアン・ボーイ。来年に入ると暫く移行期間でコンサートは休み、春前から再稼働とのこと。

それを知ってしまうと、ドヴォルザーク作品106の緩徐楽章は、10年のあれやこれ万感の思いを込めた涙なみだの音楽に聞こえてきてしまうのであーる。そういえば、セシリアQがチェロ脱退が決まって参加したバンフの本選で、いろいろあった苦難の時代を振り返り懐かしむ、すすり泣きが音楽になって響いてるような音楽をやって予想外の(失礼)優勝を飾っちゃった、なぁんてのを思い出すぞ。この曲、晩年の作品なんだけど、「我が青春よさらば」のテーマソングなのかしら。

ま、ここまできちんと作れていれば、ちゃんと弾ける奴が入ればアンサンブルは問題ないでしょう。ノブスQ、10年を過ぎての歩みを、これからも見守って行かねばならんし、なにか出来ることがあれば少しでもお手伝いをせねばならんだろうなぁ。

かくて、新しいメンバーが客席で「すげえよねぇ、今日の演奏」と手を叩く向こう、舞台の上の4人の姿。
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新メンバーを迎えた祖国の初公演は5月の「ソウルの春音楽祭」出演とのこと。11月3日には、なんとロッテホールという大空間でショスタコの3番と8番なんぞを披露する予定だそうな。

日本で聴ける予定は…残念ながら、現時点ではありません。ふううう…

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