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復活祭なので受難曲を聴こう! [現代音楽]

パンデミック下のイースターの日曜日、皆様、教会など行かずにちゃんとお宅でお過ごしになられましたでしょうか?

さても、そんな午後に、時間を潰す最適の作業と言えば、今更ながらにながあああああい受難曲をじっくり聴くことではありませぬか。もう聖金曜日は過ぎちゃったんで、《パルシファル》はタイミングを逸しているとしても、まだ今日の良き日を暗示する受難曲なら許される…かしら。

去る金曜日の日本時間深夜にライプツィヒからの《ヨハネ受難曲2020》をライヴで視聴させていただいて以来、もの凄く気になっていた受難曲がひとつあるので、午後からじっくりとそいつを聴いてやろうではないか。と、CDを引っ張り出し、あらためて全部ラテン語というちょっと変わったリブレットを眺め、昨今はいろんな映像付きもあるからまさかどんなんかあるなか、とGoogleさんに動画があるかどうかを尋ねてみたら、あらまぁ、こんなとんでもないものが。
先頃お亡くなりになったペンデレツキ御大の出世作、《ルカ受難曲》の総譜付き全曲録音であります!こんなものが無料で眺められるなんて、驚くべき世界になったものでありますなあ。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2020-03-29
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2019-07-23
てなわけで、驚愕しつつ狂喜乱舞、今、全曲を拝聴させていただきましたです。無論、猛烈にダイナミックスの幅の大きな作品だけにとてもじゃないが収まりきれないし、総譜も細かい音符や歌詞は潰れていてきっちり拾えないけど、耳で聴いているだけではどうなってるか絶対に判らない部分がいろいろ絵面で見えるわけですから、こんなに有り難いことはありませぬ。何を隠そう、恥ずかしながら、やくぺん先生ったらこんな著名な作品ながら楽譜付きで聴くのは始めてて、へえええええ、そーなってたのかぁ、と思うところばかりでありましたです。

ペンデレツキ御大という方、やくぺん先生なんぞの隠居初心者くらいの世代とすると、もう「前衛の頃は凄かったけど、今はすっかり丸くなってしまって…」という頃からしかライヴでのお姿は知らない存在。個人的には、プエルトリコのカザルス音楽祭の監督を90年代になさってて、短パンはいて凄く派手な奥さん連れて、ってお姿とか、第3弦楽四重奏曲世界初演をワルシャワで上海Qが練習から作曲家立ち会いのGPから世界初演までべったり眺めていたときの「凄く偉い人」みたいな様子とか
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2008-11-23
あとは、新ロマン主義としか言い様がない作風になった自作のコンチェルトを1曲くらいやって、他は古典名曲を振ってる指揮者姿とか…。

だから、この出世作は1966年の作品なのだ、とあらためて思いつつ久しぶりに全部がっつり聴き、最後の最後の和音が前衛の時代にどれほど衝撃的に響いたかを想像するに(なんせ、例えばツィンマーマンの《兵士たち》が初演されて2年後ですからねぇ)…なるほど、晩年の作風って、なるようにしてなったわけね、とあらためて思ったりして。

どうしてルカのテキストを用いたのか(ヨハネからテキストに持ち込んだ部分を含め)、なんでラテン語にしたのか(無論、西ドイツからの委嘱だった、というのはあるんでしょうが)、実質《スタバート・マーテル》がクライマックスに来るような構成にしたのはどうしてなのか、などなど、いろいろと判らんことだらけの曲ではあるものの、やっぱりこの合唱は力があるなぁ。昨年の秋、ソウルで御大が自ら指揮するというのに行けなかったのは一生の不覚…って、あれ、やったのかしら?

それはそれとして、なんで本日、この曲をあらためてガッツリ聴こうと思ったか、勿論、ペンデレツキ氏追悼という意味もあるにせよ、もうひとつは、かの聖金曜日の晩の《ヨハネ2020》でありました。

あのネット上での世界に向けた放送、ぶっちゃけ、やくぺん先生とすれば「現代音楽」カテゴリーで話をしても良いと思った。その理由は、《ヨハネ》の最大の特徴たる民衆の怒号の合唱部分を打楽器ひとりがじゃんじゃら叩いて表現するとこにあった。で、あれを聴きながら、「あれぇ、これって…」と感じざるを得なかったわけですよ。あのパンデミック下の《ヨハネ》、打楽器さんもテノールさんも、というか、編曲を担当した方というべきか、20世紀後半の前衛が生んだ受難曲がどれだけあるか知らぬが、唯一生き残ってるこのペンデレツキの響きが、絶対に脳内に響いてるじゃろ、ってね。

どのようにお感じになったかは皆様のご自由でありまするが、正にこれこそが「クラシック音楽」。過去に書かれた文献を前提にした新しい創作、再創作が基本のアーツの、王道のあり方だわなぁ。

受難曲は、しっかりこの21世紀のパンデミックの世界にも生きている。2000年前のイェルサレムだけじゃなくて、20世紀の世界も引っ張りながら。

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