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《西部の娘》ではなく《西部の娘たち》 [現代音楽]

エクが定期関連のツアーをやっているところに、ヘンシェルQが来て博多から関西、名古屋を経て帝都に来訪。その間に高岡から始まったアイズリQのグランプリ日本ツアーが足かけ3週間ほど、なんのかんのなんのかんのとクァルテット連中にただ付き合うばかり、という新暦霜月もやっと終わろうとする感謝祭休暇最後の日曜日の朝。皆々様にはいかがお過ごしでありましょうか。当電子壁新聞もなんのかんの更新が進まず、書きかけをまとめてアップする、なんて荒っぽいことをやってますが、ま、別に誰にも責任のない私設媒体ですので、ゴメンナサイとも言いませぬ。はい。

んで、いよいよ今日からは、《アッシジの聖フランチェスコ》演奏会形式全曲演奏に始まり、シカゴでのパウントニー演出《ヴァルキューレ》、そして今シーズンのハイライトのひとつたるサンフランシスコ戦勝記念オペラハウスでのジョン・アダムス&ピーター・セラーズの新作世界初演、という娯楽なんだか好きでやってる苦難なんだか判らぬような1週間ちょっととなります。それが終わると、既に厳冬の半島に飛んでベルチャQ&ノブスQのオクテット、なんてまたクァルテット漬けの方に戻り、1月2週後半から3週間で3ダース以上の団体を聴く2年に1度の欧州弦楽四重奏漬へと突っ込むわけで…

ふうう、そろそろこういうバカな生活もなんとかせねばなぁ、と思わざるを得ぬ爺初心者なのであった。いやはや。

んで、世間ではライブ・ビューイングが予定されているメトのアデス新作《皆殺しの天使》の方が話題なのかもしれないけど、やっぱり、アメリカ合衆国からカナダへの亡命者が絶えないという(数日前に、某所でご一緒させていただいた先頃までカナダ大使をなさっていた方から聞いた話で、冗談ではないそうな)こんなとんでもないご時世に初演されることになってしまったアダムス作品でありまする。これが公式。
https://sfopera.com/1718season/201718-season/goldenwest/designers/ggw-moving-moment-1/
全米メディアお役所全部お休みの感謝祭休暇に合わせての初演だったからか、反応は些か遅いようですが、21日の初演以降、いろいろ報道も出てきています。舞台写真としてはこれがいちばん充実しているかな。
http://www.playbill.com/article/first-look-at-the-world-premiere-of-john-adams-and-peter-sellars-opera-girls-of-the-golden-west
ま、中身その他については来週、SFに到着してから自分の勉強のために記すことになるでしょう。まずは、バックトラックさんの批評がアップされてるので、ご覧あれ。ついでに、ファイナンシャルタイムズの批評もどうぞ。
https://bachtrack.com/review-john-adams-girls-of-the-golden-west-world-premiere-sf-opera-november-2017
https://www.ft.com/content/f891bd0c-d056-11e7-b781-794ce08b24dc

このオペラ、なんといってもこの先、困るのは題名でしょう。なんせ、既に誤った表記が氾濫しております。正式の題名は、《Girls of the Golden West》です。これが屡々、《Girl of the Golden West》と誤って表記されることがあり、もっと酷い場合は《The Girl of the Golden West》にされちゃっているのもある。

そー、最後の表記は、かのプッチーニの《西部の娘》の英語表記と全く同じなんですわ。アダムス&セラーズは、頭の定冠詞はなく、The Girl じゃなくて、Girlsなのですよ。だから、敢えてちゃんと訳せば、《西部の娘たち》とか、《西部の若い女たち》なわけですね。

この微妙な英語題名の違いは、おおよそ100年を隔てて世に出たアメリカ合衆国西部開拓時代ゴールドラッシュのカリフォルニアを舞台にしたふたつの中身がまるっきり違いますよ、と表明している。

誰でも判るように、プッチーニはゴールドラッシュの西部を背景とした毎度お馴染みラブロマンス、それに対し、アダムス&セラーズはゴールドラッシュ西部で生きた様々な女たちの姿を描く群像劇とは言わぬが、歴史絵巻です。なんせ、後者はアフリカン・アメリカン(黒人、とか、ニグロ、という今のアメリカ社会では使えない表記を敢えて用いるのが正しいのでしょうが)の娘の悲劇がメインとなり、そこに東海岸から来たエリートのインテリ女性や、中国人娼婦が絡んでくる、というのだから。なんせ娼婦の宿が舞台だったりするわけだしねぇ。

なんだか、この秋から始まった「スタートレック」の新シリーズが黒くて若い女性士官が主人公で、第1話で大活躍し殉職するのがミッシェル・ヨー演じる中国系女性艦長だったり、ドクターと科学仕官がゲイのカップルだったり、艦長と保安主任がPTSDだったり、なんてクリントン大統領のアメリカを前提にした話なのとも通じるような…と言っていいのかは、また先の話。

てなわけで、この先、この作品に関しては《西部の娘たち》という表記を使い、プッチーニ作品との混乱を避けるようにしますので、皆々様もヨロシクお願いしますです。

さて、これからメシアンで、明日は法事。ずーっとお経を聴いてるような2日間じゃ。

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