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優勝団体に遭いにいく・その4:第3回大阪国際室内楽コンクール第1部門ベルチャQ [大阪国際室内楽コンクール]

韓国の真ん中辺り、ソウルからKTXで1時間ほどのテジョン(大田)に来ています。半島が冬に入った猛烈に冷え込む土曜日の晩、1998年の万博で大発展した当地の立派なアーツセンターで
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ベルチャQとノブスQのオクテットを聴くため。
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ベルチャQと言えば、90年代に日本の若者達の間でなぜか巻き起こった弦楽四重奏ブームが最も盛りあがった頃、始まって3回目となる大阪国際室内楽コンクール第1部門にも過去最大の数の日本の弦楽四重奏団が参加したことで記憶される大会(やくぺん先生個人とすれば、ニッセル先生が審査員として参加なさった大会、という印象が強いのだけど)で優勝し、その直後には、エヴィアンから移った最初のボルドー大会へと転進、後にベネヴィッツQが成し遂げる史上初の国際メイジャー大会連覇という偉業を成し遂げ、現在の「イギリスでトップの弦楽四重奏団」に登り詰めるきっかけを作ったのでありました。ぶっちゃけ、下品な言い方をすれば、大阪大会出身で現時点でいちばん「売れてる」団体、でありまする。

調べてみると、初めて出会ったのは20年前のメニューイン御大がご存命だった最後のロンドン大会のようで、当時のメモには「K.465:音も綺麗だし、大穴かも。張りのある第1ヴァイオリン。丁寧で、好感が持てる。まだまだ押しが弱いけど。」なんてえらそーなことが書いてある。ロータスQがヨーロッパの大会に盛んに参戦していた頃で、アウアーQが優勝したこの大会ではベルチャは3位になっている。だけど、正直、20年経った今、参加20数団体の中でそのときから印象が明快なのは、ロータスQを除けばベルチャだけなんだわなぁ。やっぱり、最初からもの凄く光るものがあった、ということなのでありましょう。

その後、暫くメンバー交代などでバタバタしていたけど、その2年後の大阪の参加団体名に彼女らを眺めた時、あ、ちゃんとやれるようになったんだ、やっぱ、ベルチャで決まりしょ、と思ったもん。んで、大阪では堂々のぶっちぎり優勝を飾り、その数ヶ月のボルドーに乗り込み、横綱相撲をしようとおもったら意外な伏兵が出現し…ってストーリーが続くわけだが、ま、それはまた別の話。

その後、当時ヨーロッパで「歴史上最強の弦楽四重奏専門マネージャー」となりつつあったドイツの某事務所に所属し、あれよあれよと出世していったのは、弦楽四重奏好きの方ならご存知の通り。ファーストのコリーナも無事にイギリス人と結婚して英国に安定して定住できるようになり、EMIと契約し笑っちゃうほど作りに作り込んだシューベルトのディスクを世に出してイギリスの評論家筋が熱狂し大出世となり…

大阪メンバーのチェロのテイトくんが抜けて若くしてギルドホールの室内楽科の主任になったり、創設メンバーだった(と思う)セカンドちゃんも抜けてロンドンの某室内オケのトップになったりと、20年なりの波瀾万丈を経つつも、今に至ってるわけでありまする。

集客面で余り上手くいかなかった来日公演があったことで日本のマネージメントが切れてしまい、その間に彼女らがどんどん格上団体になっていき、日本とヨーロッパでのマーケットバランスが圧倒的に不均衡となってしまったという不幸もあり、日本では「幻の団体」になりつつあのが、ちょっと、というか、凄く残念。サントリーのベートーヴェン全曲でも、当然ながら候補にはなるのだけど…


ま、それはそれ。先程終わった演奏会、思えば3年前にロンドンでタネージの新作を聴いたとき以来なんだが
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2014-12-07
相変わらずの最良の意味での「作り込み、考え過ぎのベルチャQ」面目躍如でありました。

最初のハイドン作品20の4は、もう加わって10年くらいにはなるか、フランス人チェロくんのバロック弓で古楽弾きがやたらと目にも耳にも飛び込んでくる「今時のヨーロッパ中堅若手に大流行の時代演奏をモダン楽器に反映した古典」であります。アタッカQが続けているモダンの響きに古楽のいろんな在り方を必要なら加えていく、ってのとは正反対の、モダン楽器は古楽の響きだって作れるオールマイティなんだよ、って感じの音楽。ある意味、猛烈な力業ですわ。おかげで、続く《アメリカ》では第1楽章ではやたらとヴィブラートが耳についてしまうほどでありました。ま、終わってみれば、《アメリカ》もベルチャ流の作りに作った、イギリスの評論家が大喜びする類いの説得力あるものでありましたけど。
弟子のノブスQを加えてのメンデルスゾーン八重奏も、コリーナ姫を支える7人のやろーども、と言えばそれまでなんだが、なんせ御姫が頭が良くて周囲へのご配慮が出来る立派な方なものだから、ファーストのコンチェルトにはなりません。なるほどねぇ。

てなわけで、久しぶりのベルチャQを堪能し、終演後は毎度ながら、ヴィオラ君なんぞに「お前、どーしてこんなところにいるの」と呆れられたわけでありまする。

そうそう、ベルチャQ、全員がタブレットで演奏してます。もう1年くらい、そうしてるそうな。この写真で判るかなぁ。ちなみにハイテク立国韓国の若者達は、伝統の紙楽譜でありまする。
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コリーナはペダルばかりではなくかなり頻繁に演奏中の画面タッチもして、なるほど、そういう風にもやれるのね、って。ここまで普及してくると、電子楽譜の扱いが随分と演奏者により違うのが判って面白いですな。

日本ではいろんな事情で幻の団体になっているベルチャQ、2018-19シーズンの終わり頃に来日予定もあるとか。いよいよ極東の列島でも20年ぶりにブレイクするか、請うご期待。

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